chapter01 Красная
1
とても静かな鎮守府の廊下に足音を響かせて一人の男が歩いている。
彼の名は石塚史紀。今日この鎮守府に着任した提督だ。
彼には提督の仕事に必要な物と日常生活に必要な物、そして一枚のAC用設計図が与えられている。
史紀はその大荷物を自室と伝えられている部屋に置きに向かっている。
彼が部屋に着くと恐る恐る扉を開いた。
室内には畳まれた布団と小さなタンスとダンボールだけだった。
「なんだこれ・・・」
史紀はそう言ってため息をついた。
生活に最低限必要そうな物は揃っているらしい。
史紀が、この鎮守府に来て初めての印象はボロくて古い建物という印象だった。
この部屋に着く前の廊下も老朽化などが進んでいて長い間人が出入りをしていないという印象だ。
「つい最近まで人が来ていないのか?」
そう言いながら史紀はAC用設計図に目を落とす。
その設計図に記されていた名前は03-AALIYAH。
レイレナード社製のネクストタイプACの設計図だ。
「こんなに古臭い場所にも新型は回されるんだな」
ネクストタイプAC、通称ネクストは日本にて戦闘中に確認された10mのACであらゆる点でACを凌駕していることからネクストと名付けられた。
日本での出現以降は各地の戦線に出現し、猛威を振るっている。
このネクストを一度だけ鹵獲することに成功し、開発されたのがネクストタイプのAC娘である。
「さて、そろそろ提督室に行くか」
そう言うと史紀は自室を後にした。
提督室は見たところ鎮守府の中では一番綺麗だった。
綺麗な床と壁、そしてダンボールがある。
そして提督室に入った史紀を待っていたのは一人の少女だった。
セミロングの黒髪を後ろで三つ編みにし、服装は紺に白いラインが入ったセーラー服だ。右腕には包帯が巻かれている。
「やぁ。僕は白露型駆逐艦、時雨。これからよろしくね」
「俺は今日からここに着任した石塚史紀だ」
史紀と時雨が軽く自己紹介を終えると早速時雨が言った。
「提督、早速手紙が届いてるよ」
時雨は史紀に茶封筒を渡した。
史紀は時雨に渡された茶封筒に入った手紙を読む。
ネクスト戦力にてアフリカ連合の敵AC撃破に協力せよ。
深海棲艦の出現後国家は国際連合という一つの形にまとまった。
さらにその国際連合はユーラシア連合、ヨーロッパ連合、アフリカ連合、アジア連合、オセアニア連合、アメリカ連合と分かれている。
そして世界各地での連合国同士での連携が行われている。
「初任務でアフリカかよ・・・」
史紀はそう言って頭を抱える。
「大丈夫だよ提督。今回の任務のためにユニオンからV.O.B.が無償で配備されてるよ」
「わかった。じゃあ早速ネクストを造りに行ってくる」
そう言って史紀は提督室を後にした。
別れ際に時雨は今回の作戦のオペレートは自分がすると言っていた。
提督室を後にした史紀は工廠へ向かった。
工廠の錆び付いた立て付けの悪い扉を開くと、古い錆び付いた機械とほぼ新品の機械と新品のV.O.B.が置かれている。
古い錆び付いた機械が艦娘の建造装置で、ほぼ新品の機械がAC娘の建造装置だ。
史紀はAC娘の建造装置に03-AALIYAHの設計図を読み込ませる。
すると装置の画面に03-AALIYAHを組み立てる妖精さんと呼ばれる物が映し出される。
史紀は大本営から支給された高速建造剤を装置に流し込む。
これにより通常よりも早くAC娘を建造することができた。
装置の画面に建造完了の文字が表示されると装置の扉が開き、白銀の髪を短く切り揃え、服装は赤い色のパーカーを着た少女が現れる。
少女は史紀に気付くと、史紀に歩み寄り少しの間見つめて言った。
「僕はクラースナヤ。よろしく」
「俺はここの提督の石塚史紀だ。すまないが、早速出撃してもらいたい。大丈夫か?」
史紀は自己紹介を終えた後すぐにクラースナヤに言った。
クラースナヤは史紀の言葉を聞き終えるとすぐに言った。
「もちろん。僕の力を見せてあげます」
そう言ってクラースナヤは自分の装備を取りに行った。
史紀はそう言ったクラースナヤ後ろ姿を見つめ、あの自信がどこから来るものなのか気になって仕方がなかった。
2
ここは石塚の着任に合わせて新たに設けられたAC用出撃カタパルトを備えた施設だ。
クラースナヤは出撃タパルトに足を固定し自らの集中力を高める。
『ミッションを説明するよ』
クラースナヤの通信機から時雨の声が伝えられる。
『今回の目標はアフリカ連合の内陸部に展開する敵AC部隊の排除。ミッションの失敗は君の大破、もしくは敵戦力を残してしまうこと。今回の作戦のためにユニオンからV.O.B.が用意されてるね。V.O.B.を使用しアフリカへの到着後はV.O.B.をパージして敵の殲滅を開始してね。今回の作戦はアフリカ連合とアジア連合の繋がりを強くするいい機会だから頑張ってね』
時雨の最後の一言が終わるとクラースナヤの目の前の巨大な扉が開かれ出撃と書かれたランプが点灯する。
そして、クラースナヤの背中にV.O.B.が固定された。
「クラースナヤ、出撃します!」
その言葉と同時にクラースナヤはカタパルトから射出され、空中でV.O.B.が咆哮を上げ高速で風を切るように青空を突き進んで行く。
クラースナヤの視界ではアジア連合各国の景色が流れるように過ぎていき、しばらくするとインド洋が広がる。
その海はとても穏やかで、とても深海棲艦がいるとは思えない。
アフリカの大地が視界に入った時、突然V.O.B.が火を噴く。
視線を後方に向けると海上から四脚型のACがスナイパーキャノンをこちらに向けている。
「当ててきますか・・・!」
クラースナヤはV.O.B.をパージし海面近くまで落下する。
足先が海水に浸かった時OBを使用し、一気にアフリカ大陸へ向かう。
敵ACがクラースナヤの背中を目掛け砲撃をしているが、それを完璧な身のこなしで回避していく。
そしてクラースナヤに命中しなかった砲弾は海面に衝突し大きく水柱を立てる。
敵ACの砲撃をかい潜りクラースナヤはようやくアフリカの大地に足を付ける。
しかし戦場にはまだたどり着いていない。
クラースナヤはもう一度OBを使用し戦場へ向かう。
クラースナヤの視界に戦闘の光が見える。
敵は前方に二脚型が4機と後方にスナイパーキャノンを装備した四脚型が1機という構成だ。
アフリカ連合の戦車隊がAC特有の三次元機動に翻弄され各個撃破されている。
『隊長!戦車隊の被害が拡大しています!』
『クソっ!このままでは!』
戦車隊の焦りの感情が見える会話が戦闘区域に入った途端クラースナヤの耳に入ってくる。
「ネクスト、クラースナヤです。救援に来ました」
『アジア連合のネクストか!救援に感謝するぞ!』
「ACは僕が殲滅します。戦車隊は後退してください」
『了解した。後退を開始する』
戦車隊は後退を始めた。
そして、後退する戦車隊を追うように敵二脚型ACが前進を始める。
「追わせませんよ?」
そう言ってクラースナヤは敵ACの前に立ち塞がる。
二脚型は前進を止めた。
クラースナヤの通信機に連絡が入る。
『こちら時雨。前方の二脚型は3連射型のハンドガンとリロード時間の短い速射型ハンドガンを、後方の四脚型は安定性の高い狙撃型大口径砲を装備してるよ。この装備から考えられる対ネクスト戦術はハンドガンでのPAの減衰後、スナイパーキャノンでの攻撃が予想されるよ』
「なら、前方の3機を先に片付ける」
そう言ってクラースナヤはQB連続で使用し、ACとACの間を縫うようにして移動しながら的確にライフルで射撃をする。
火力の低いクラースナヤはEN回復力と持続力が高いという利点を生かしQBで敵を翻弄しながら全身に攻撃を当てることにより敵に均等にダメージを与えていく。
しかし、これは短時間決戦というクラースナヤのコンセプトから大きく外れて時間がかかってしまう。
だが、クラースナヤには別の狙いがあった。
クラースナヤはACのコアの高さまで跳躍した。
その姿をAC2機が捕捉し、挟み撃ちの状態で3連射型ハンドガンを放つ。
前方のACとクラースナヤ、背後のACが一直線に並んだ瞬間、クラースナヤはQBで真下に移動し、片方のACへ向かっていく。
クラースナヤが避けた弾丸はハンドガンから放たれた方向を変えず、両ACのコア部分に直撃した。
その部分をクラースナヤはブレードを発生させ、突き刺す。
コアを破壊されたACはその場に跪き動かなくなった。
1機撃破した後クラースナヤはすかさずOBを使用し、もう一方のACへ向かっていく。
クラースナヤのスラスターが咆哮を上げる。
敵ACは自分に向かって進んでいるクラースナヤに向けハンドガンを放つがその攻撃はPAにより防がれた。
敵ACとクラースナヤが交差するその刹那、クラースナヤはブレードを一閃させ敵ACのコアと脚部のジョイントを破壊する。
ジョイントを破壊されたACは脆くも崩れ落ちる。
「もう1機!」
クラースナヤはそう言い、最後の二脚型へ向かっていく。
敵ACの放つ弾丸をQBを使用し回避する。
クラースナヤは敵ACの目の前まで来た時、跳躍し背後を取った。
ACの背後は前方より比較的装甲が薄く、上手く狙えばライフルで撃破出来るはずだ。
クラースナヤのライフルから弾丸が放たれる。
そして、クラースナヤの狙い通りライフルの弾丸は装甲の薄い部分や隙間に命中した。
敵ACの装甲は凹み内部構造を押し潰し、隙間からは火が吹き出している。
そのまま敵ACは前のめりに倒れ動かなくなった。
「残りはあなただけです」
そう言いクラースナヤは四脚型ACを見つめる。
もう時間は無い。
クラースナヤは一気に片付けてしまおうとOBを使用し敵ACに向かう。
真正面から来る敵などスナイパーからしたらただの的でしかない。
敵ACはスナイパーキャノンを構えた。
一撃で仕留めるつもりだろう。
敵ACのスナイパーキャノンから砲弾が放たれる。
この攻撃によりPAが減衰し、クラースナヤを守る物は無くなった。
二度目の砲撃はすぐに来た。
クラースナヤはその攻撃を持っていたライフルを砲弾の方向に投げ、盾にした。
砲弾はライフルに直撃し、砲弾とライフルの内部の火薬が爆発を起こし黒煙を撒き散らす。
黒煙の中から光の刃が伸びる。
ブレードを発生させたクラースナヤは黒煙を引きずり敵ACを真正面から貫いた。
コアを貫いた後、クラースナヤはすぐにその場を離脱した。
スナイパーキャノンが爆発し、敵ACのボディを黒く焼き尽くす。
「すみません。恨まないでくださいよ」
作戦を終えたクラースナヤの通信機に連絡が入る。
『作戦目標を全て達成したよ。早く帰ってきてね』
「了解」
クラースナヤは鎮守府の方向を向き、OBの咆哮を響かせ遥か彼方へ消えて行く。
作戦目標の達成を告げ時雨は通信機を置いた。
「提督、僕はちゃんとやれたかな?」
時雨が自信無く史紀に尋ねた。
「あぁ、良くやれていたよ」
「それは良かった」
少し間を置いている史紀が言う。
「なぁ、時雨はクラースナヤの事をどう思う?」
少し考えてから言った。
「天才、かな・・・?」
「天才か・・・確かにそうなのかもしれないな」
「そうだね・・・」
「そろそろクラースナヤを迎える準備をしよう」
そう言って史紀は作戦指令室を後にした。
久々にSSを書いたのでもしかしたら少し変な部分があるかもしれませんが、もし何かあれば指摘していただけたら嬉しいです。
また、設定などもわからない所があればコメントで捕捉するので、遠慮せずに質問してください。
次回の投稿はいつになるかわかりませんが、気長に待っていただければ嬉しいです。
ではまた次回ノシ