大森林〜くさタイプヘイトの俺がくさタイプ一筋になった訳〜 作:ディア
ナギサシティから出た俺達はジムのある街、トバリシティに着く。
「ようやく着きましたわ」
「ええ、そうね……で、コスモ。どこに目を輝かせているの?」
ミカンが俺の視界を遮るように顔を覗く。それまであったゲームコーナーが見えなくなってしまった。
「え、いやこれはあの……」
「まさかゲームコーナーで遊びたいなんて言わないわよね?」
「失礼な! 遊びたいんじゃなく、ゲームコーナーにあるわざマシンが欲しいだけだよ!」
「ふーん……何でこのゲームコーナーにわざマシンがあることを知っているのか知りたいんだけど? ミカンお姉さんに教えてくれないかな?」
ヤバい、半分くらいキレている。ここで逆らったら恐ろしい目に遭う。だけど前世の知識なんて言えるはずもない。
「え? タマムシのゲームコーナーの景品にはわざマシンあるのにここはないの?」
なので全力で惚ける&話の論点をすり替える。これこそが俺の残された道だ。
「知らないわよ……というかエリカさん、タマムシで何でそんなものを認めたの?」
ミカンがそう問うのには理由がある。ゲームコーナーなどの賭博類の店はジムリーダーが認めたものしか建築物や経営は認めれず、すぐに叩き壊されるような法律になっている。その上、ゲームコーナーの店は儲かるが、ゲームコーナーで儲かった金の一部をその所属している街に納めなければならない。
「タマムシにあるゲームコーナーは私ではなく先代のジムリーダーが認めたものですが、人口の多いタマムシシティの収入源になりますので私の代になっても認可していますわ」
そう。都会になればなるほどゲームコーナーから収入を得られるようなシステムだ。だからある程度はエリカも黙認している。流石にロケット団が関わっているとわかったら動くだろうが。
「それでもコスモの教育には悪いでしょう!」
「いずれ通る道ですわ。私のような箱入り娘とは違ってコスモには家を継いで貰わなければならず、綺麗事のみを言うお坊ちゃんでは家を継いでも無意味ですから」
エリカが箱入り娘かはともかく結構黒い事を言うもんだな。何せ……何でもないから睨むのは止めて頂きたい。
「既にその考え方を言える時点で箱入り娘とは言えないと思いますけど」
同感だ。
「と、言うのは建前でして私もああいう物に興味がありますからいってきます!」
エリカが真っ先にゲームコーナーの中に入っていく。行動といい、大胆さといい興味があったら何でも体験するのはやはり箱入り娘なんだと実感してしまう。
「エリカさんを追いかけるわよ!」
ミカンも俺の腕を引っ張ってゲームコーナーに入っていく。そしてゲームコーナーに入った先にはコインの入ったバケツを三つまとめて運んでいるエリカの姿があった。
「エリカさん、何をしているのかしら?」
「コスモとミカンさんの分のコインを購入しましたわ」
「ミカンが聞きたいのはそういうことじゃなくて、なんでこんなに買っているのかってことですよ。いくら何でも多すぎですよ」
「まあまあ私のお金ですし、堅いことは抜きにして楽しんでくださいませ」
コインケースとバケツを俺とミカンにそれぞれ一つずつ渡して、エリカがスロットで遊び始める。
「……もうやけくそよ! コスモ、エリカさんをギャフンと言わせるわよ!」
ミカンがエリカと離れた場所のスロット台に付いて、遊び始めた。
「まあ別に良いけどさ」
俺もエリカやミカンとは別のスペースでスロットをやり始める。ゲームコーナーのわざマシンを手に入れるにはコインと交換して手に入れるしかないからやるしかないんだけど。
この世界のスロットは非常に遅く狙おうと思えば楽に777にすることが出来る。実際、俺の下にはバケツが追加されその中身が溢れんばかりにコインが溜まっていく。それだけに解せないのは隣にいるおっさんは惨敗している。何をどうしたらこうなるのかわからないよ。
「もし、よろしければおじさんの台と交換して貰えないかい?」
「わかりました」
コインを回収し、惨敗しているそのおっさんに台を譲る いや台のせいじゃないっての。それを証明するかの如く俺はまた777を出しまくる。
「少年、もう一度交換して貰えないかい?」
「いいですよ」
そしてバケツを持って俺とおっさんの席を交換し(以下略)
「何故だぁぁぁっ!?」
発狂するおっさんを無視して、コインを出し続ける。数回も交換しておいてこの有り様だからか、おっさんが俺の胸ぐらを掴んできた。
「おい、イカサマしているんだろう! そうでなければこんなにコインが出るはずがないんだ!」
「ビギナーズラッキーだよ。それより手を離してくれない?」
この生意気な口調……まさしく俺だ。俺が俺である台詞を人生で初めて言え、感涙してしまう。
「うるさいこのガキ!」
おっさんが腕を振り上げ、殴りにいくが青い犬の手がそれを止めた。
「ルカリオ……?」
そいつの名前はルカリオ。かくとう・はがねタイプであるが故にかくとうタイプが苦手という変わったポケモンだが、その分こおりタイプやはがねタイプ相手ならに無双出来るという優れたポケモンだ。ポケモン世界においてルカリオを切り札にしているジムリーダーは二人もいることからその優秀さが伺える。
「お父さん! やっぱりここにいたのね!」
ピンクに染まった短髪の少女が現れ、おっさんを睨み付ける。彼女の名前はスモモ。ルカリオを切り札にしているジムリーダーの一人だ。
「す、スモモォ……」
「全く今日という今日は許しません! ただゲームコーナーで遊ぶだけならともかくこんな幼い子供に手を上げるなんて……!」
「ち、違うんだ。この少年が」
「初めから見ていた私にそんな言い訳は通りません! ルカリオ連れていきなさい」
「いだだだっ! 耳は、耳は止めてくれぇぇぇっ!」
スモモのルカリオがおっさんの耳を引っ張り、耳障りなBGMを聞きながらゲームコーナーから消えていくのを見届けた。
「父がお騒がせしました。昔はもっとしっかりとした父だったんですが、私との一本勝負に負けて以来あのように自堕落な生活を送るようになって……」
「一本勝負?」
「ポケモンバトルですよ。私のルカリオと父のゴウカザルの一騎討ち。そのバトルに負けて以来お父さん、いえ父はゲームコーナーに入るようになってしまったんです。おかげでジムの改築も出来ない有り様で……」
「苦労しているんだね」
「弱音を吐きたくなるくらいにはですけどね。……って名前も知らない初対面の相手に何を言っているんでしょうか。この事は誰にも言ったらダメですよ?」
「コスモ。それが僕の名前だよ」
「え、ああ。私、トバリジムジムリーダーのスモモと申します。よろしくお願いしますねコスモ君」
「よろしくスモモさん」
「それじゃあの事誰にも言わないようにお願いします!」
「うん。それじゃまた」
「また機会があればお話しましょう。では失礼しました」
スモモがそう言ってゲームコーナーから去る。……それにしても良い尻してやがるな。やっぱり鍛えているとああなるのか。
「おっと、回収しておかないとな回収、回収」
コインを回収して多重影分身したバケツの中に入れ、コインケースの中に一気にぶちこむ。しかしコインケースは四次元空間になっているのか不明だが、満杯にはならないどころかまだ余裕すらもあった。
「さて、皆様のコインを見ていきましょうか。最初にミカンさんから」
「わ、私は後でいいわよ」
「仕方ありませんね。ではコスモ。見せてくださいな」
「はい……」
俺がそう言っていくつものバケツの中にコインケースのコインをぶちこんでいく。2つ目はまだ微笑ましいものを見る笑顔だったが、3つ目になってから顔の表情が引きつって4つ目に突入した頃には乾いた笑い声が響き、最終的には無表情になった。
「こんなものです」
「流石、私のコスモですわ!」
「エリカさん、コスモは誰のものでもないでしょ」
「そ、それよりもミカンのコインはどのくらいに?」
「……」
渋々、本当に渋々コインケースをバケツの上からひっくり返し、コインを出させる。お賽銭のようなコインの音がその場に響くだけで終わった。
「ミカンさん、こう言ってあげましょうか? ギャフンと」
どこから話を聞いていたんだ? この姉は。
「ある意味天才だね……ミカン。この先こう言ったギャンブルはやらないように頼むよ」
「エリカさんよりもコスモに言われたのが一番堪えるわ……」
「ところでお姉様は?」
「私ですか? 私はこの通りですよ」
コインケースの中身をバケツに入れる。バケツ二杯と半分がエリカの成果だった。
「これでも凄い成果なんでしょうけど、コスモの前じゃ慎んでしまうわ……」
いやどうなんだろうな? これはギャンブルというよりもスロットの慣れみたいなものだしな。今でこそ大人でも楽しく遊べるようになっているがポケモンは元々子供向けに発売されたものだから楽勝なんだよ。大人でも楽しめるようなゲームでないと前世の俺がアダルトチルドレンだと認めてしまうことになる。それだけは避けなければならない。
「私も予想外でしたわ。コスモにそんな才能があるなんて。やっぱりゲームコーナーで稼げる方ほどポケモンバトルは強くなるのでしょうか? ねえ、ミカンさん」
「エリカさん、そのケンカ買うわよ」
またこの二人は……もう放っておこう。ミカンにケンカを売った罰としてエリカのコインは俺のコインとともにわざマシンに換金しておいた。
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