大森林〜くさタイプヘイトの俺がくさタイプ一筋になった訳〜   作:ディア

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お待たせしました。年明けちゃったよ……


第21草

「デテイケ……!」

 

「ひっ!」

 

 

 

 わずかに聞こえたその声にナタネさんが震え上がり俺に抱きつく。それは別にいい。ただ少し問題があるとするとその胸で俺を圧迫していることだ。

 

「ナタネさん落ち着いてください。あれはゴーストタイプの仕業です」

 

「ゴーストタイプだから無理なの! 何で一介の生物が幽霊とかに干渉出来るのよ。おかしいわよ!」

 

 確かにおかしい。ナタネの文章力もだが、生物が幽霊に干渉するのはおかしい。

 

 とはいえ、このままでは作業が進まない。何か話題でも降ろうか。

 

 

 

「それじゃ他の地方で見られるくさタイプのポケモンの話しをしましょうか?」

 

「……どんなポケモン?」

 

「アローラ地方に生息するくさタイプのポケモンですね」

 

「アローラ地方……」

 

「そう。ダダリンというポケモンなんですがそのポケモンの特性は、はがねタイプの技の威力を上げてくれるはがねつかいという特性なんですよ」

 

「ってことはくさ・はがねタイプってこと?」

 

「いえいえ。くさ・ゴーストタイプなんですよ」

 

「ゴーストタイプなのにくさタイプ……!?」

 

「ナタネさん、そういうゴーストタイプを含んだくさタイプポケモンはダダリンの他にもいます。ダダリン達でゴーストタイプを克服しましょうよ」

 

「……」

 

 小さく頷くとその瞬間、ゴーストタイプのポケモン達が空気というものを読んでいないのか心霊現象を起こした。

 

「ひゃぁぁぁっ!?」

 

「ぶへっ!?」

 

 ちょっ、マジで苦しい! 頼むから、その胸を凹ましてから抱きついてくれ! 

 

「もうやだぁーっ! 帰りたーい!」

 

「むがーっ!」

 

 俺の貧弱な腕力でナタネの拘束をほどける筈もなく、呼吸が……やばい、窒息しそう。

 

「えっ、コスモ君?」

 

 ナタネさんが流石に異常に気がついて俺を解放してくれた。ナタネさんの拘束から解き放たれた俺はまず呼吸! 呼吸しなければ人間生きていけない! 

 

「ご、ごめん。そこまで苦しかった?」

 

「とても苦しかった。人、息しないと生きられない」

 

 カタコトになってしまうくらいに俺の息は乱れており、顔が紅潮とさせている。見る人が見れば変態、もといエロガキに見えてしまう。

 

「……ごめんなさい」

 

 そんなアホなことをしていると、ゲンガーが目の前に現れた。

 

「げ、ゲンガー!?」

 

「シシシ!」

 

「うわーっ、来ないで! 悪霊退散、悪霊退散!」

 

 悪霊退散て。ゲンガーは悪霊じゃないんだけど。いやどくタイプだから悪霊なのか? 

 

「落ち着いてください、ナタネさん。相手がポケモンなら怖くないでしょう。相手が挑戦者だと思ってください」

 

「相手は挑戦者、相手は挑戦者……」

 

 しばらくし、ようやくジムリーダーの顔つきになってチェリムとロズレイドの二頭を出した。

 

「チェリムはにほんばれ! ロズレイドはウェザーボール!」

 

 チェリムがにほんばれをし、ひざしを強くするとロズレイドのウェザーボールがほのおタイプに変化し、ゲンガーに直撃する。

 

「ンガッ!?」

 

 ゲンガーが呆気なく倒れ、安堵のため息を吐いたナタネが腰を落とす。

 

「怖かったぁ……」

 

 

 

 あんなエグい手を使って何をいっているんだか。ウェザーボールは通常の天候だとノーマルな為、ゲンガーにダメージを与えられることはない。だからといってゲンガーはどくタイプでありくさタイプの技を半減してしまうのでロズレイドが覚えているであろうリーフストーム等は大したダメージにはならない。つまり決定打がなかったわけだ。しかしにほんばれをしたことによりウェザーボールがほのおタイプに変わってゲンガーにダメージを与えられ、決定打を編み出しゲンガーを倒した。しかもあの様子を見るとロズレイドのレベルは高い。それにも関わらずロズレイドがにほんばれを行うのではなくもう一匹ポケモンをだしてそいつにやらせるというのがエグい。

 

 野生のポケモン相手にそこまでしなくてもいいんじゃないのか? と思わせるほどナタネのゴーストタイプ嫌いが伺える。

 

 

 

「大丈夫?」

 

「うん……」

 

「じゃあ休憩しようか。ナタネさん疲れたでしょ?」

 

「そうね、そうしましょう」

 

 俺が腰を落とし、ナタネの視線に合わせるとナタネはポツリポツリと話し出した。

 

「昔、ゴーストタイプに一度だけトラウマを植え付けられたの」

 

「トラウマ?」

 

「うん……とはいってもよくあることだよ。くさタイプのポケモンを追っかけていたら迷子になって……ダメ! やっぱり言えない!」

 

「言えないなら言わないでいいよ。無理して言っても後味悪いしね」

 

 いや本当に。無理に言ってしまったら逆効果だった場合もある。

 

 

 

「……ううん、ここで言わないと一生後悔することになる」

 

「頑張れ」

 

「それでね、迷子になった私は元の道に引き返して、帰ろうと思ったの……でもいつまで経っても帰れない。不思議に思った私が後ろを振りかえった瞬間、ゴーストタイプのポケモン、ゲンガーに襲われたの」

 

「襲われた? 具体的にはどんな風に?」

 

「くさタイプのポケモンがどんどん腐っていく悪夢を見せられたの」

 

「つまりゾン──」

 

「止めて! それ以上いうのは止めて!」

 

 半狂乱になり、耳を塞ぐナタネさん。

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

「うう……そういう訳だから苦手なのよ。いつあの悪夢を見せられるか怖くて仕方ないのよ」

 

 確かに自分のポケモンがゾンビになったら怖いよな。だけどそれだったら尚更、勧めるよな。

 

「ナタネさん、だったら尚更ゴーストタイプ複合のくさタイプのポケモンをオススメします。ゴーストタイプがいるだけで野生のゴーストタイプが近づきにくくなりますから」

 

「それ本当?」

 

「ええ。ゴーストタイプといっても所詮はポケモンであり生き物、彼らにも縄張りが存在します。その縄張りを自分のポケモンに任せることで野生のゴーストタイプのポケモンは手を出しにくくなるらしいです」

 

 事実、ゴーストタイプ使いは呪われるなんて話しどころかむしろ自らのポケモンに恩恵を受けている立場だし。

 

「そうかな……それじゃ、そのダダリン捕まえてみようかな」

 

「それが良いですよ。それじゃ用事を済ませましょうか」

 

「うん」

 

 多少震えてこそいるがそれでも最初の頃よりもマシになっていてびくびくしながらも、もりのようかんの用事を済ませた。




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