大森林〜くさタイプヘイトの俺がくさタイプ一筋になった訳〜 作:ディア
タマムシデパートに着くとセレビィが口を開いた。
『昨日の夜、イーブイから聞いたんだけどここにイーブイがいたらしいけど本当?』
「ん? 本当だよ。何でイーブイがここにいたのかはわからないし、聞かないけどね」
『それじゃあフシギダネはどこにいたの?』
「それは……」
「コスモ!」
俺がそれに答えようとすると着物ではなく洋服を着たエリカが後から声をかけて来たので中断し、セレビィをモンスターボールの中に入れる。
「お姉様珍しいですね。いつもだったら着物なのに」
エリカの顔に影が出来ると、無言で俺の頭を……!?
「あらあら、コスモ。私が着物しか持っていない言い方ですわね。私だって女の子ですもの。このくらいのお洋服なら持っていますわ」
「痛い痛い痛い!」
マジで痛え! 何で俺を片手で持ち上げられるんだよ!? これでお淑やかなんて絶対嘘だ! カイリキー女って称号隠し持ってい──
「ぎゃーっ!?」
なんか力増した!? これ以上力が上がるなんて予想外!!
「コスモ、何か失礼なことを考えませんでした?」
「考えません! 僕は着物だけでなく洋服の姿も似合うなって思っただけです!」
痛みから逃れようと俺はそう言ってエリカの機嫌をとる。
「あら……ごめんなさいねコスモ。でも今度から誤解されるような言葉は慎みなさいね」
あ〜死ぬかと思った。何なんだよこのゴリラ女は
「返事!」
「は、はいぃっ!」
やべっ! つるのムチは飛んできてないよな? 流石に飛んでこないか。何にしてもエリカの目の前でも変なことは考えないようにしよう。それが安全だ。
「コスモ君相手に何やっているのよエリカさん」
「些細な姉弟の戯れですわ、ミカンさん」
「その割にはコスモ君の悲鳴が聞こえたんだけど?」
「気のせいでしょう。ね? コスモ」
うわっ!? エリカの目が笑ってねえ! 賛同しなきゃエリカからの罰が待っているし、賛同しよう。
「気のせいですよ、ミカンさん」
「それなら良いけど……」
ミカンさんがそう言ってショボンとした顔になる。選択肢ミスったな。とっととデパートに入って気分でも変えよう!
「それじゃあミカンさん、お姉様デパートに入りましょう!」
「そうね。エリカさんもジムの仕事で忙しいのに態々来てくれたんだから、早めにお買い物を終わらせましょう」
「ミカンさん、その心配はありませんわ。何故なら──」
話が長くなりそうだからその場に置いてきた。エリカは俺が関わらければ結構マイペースかつおっちょこちょいだ。
この前の挑戦者をタマムシジムに案内する時も間違って他所の家に案内したり、ジムの扉にぶつかったりとドジっ子だが人に迷惑をかけるようなことはほとんどしていない。
要するにエリカは放っておいても問題ないということだ。むしろ放っておいたほうが良いくらいだ。ミカンさんもエリカを放っておくあたり同じことを考えている証拠だな。
○○○○○
「さてコスモ君、何が欲しいの?」
「ソーラービームの技マシンですね。あれが有れば僕のパーティの戦力アップになりますから」
特にくさタイプは晴れパと呼ばれるタイプが数多く、ソーラービームとの相性がいい。これからイーブイの進化形、リーフィアもその恩恵を受ける。
「ソーラービーム……あれ確かに強いわね。私のイワークがエリカさんのラフレシアのソーラービームをやられたことを思い出すわ」
戦ったことあんのかよ? イワーク? ミカンさんの切り札ってハガネールだよな?
「イワークっていわタイプのポケモンじゃありませんでした? ミカンさんははがねタイプのポケモンを使うんじゃないんですか?」
「つい最近までエキスパートタイプはいわタイプだったんだけどイワークがハガネールに進化したのをキッカケにエキスパートタイプをはがねタイプに切り替えたの。それでジムも改築することになって時間が出来たからこうして親友の住むタマムシシティまで来たのよ」
いわタイプか。まさしく砂パで大活躍するタイプの一つだ。ただくさタイプアンチとしてはあまり好きにはなれないタイプの一つだ。まず攻撃するタイプとしては優秀なんだが弱点が多い上にいわタイプのほとんどが遅いから耐久向きのいわタイプはBD種族値二冠のツボツボや弱点が少ないユレイドルくらいのもんだろ。どっちにせよいわタイプのほとんどがくさタイプを弱点にしている為、使うことはなかった。
「親友ってお姉様?」
「そうよ。エリカさんと初めて会ったのは3年前のカントーリーグの大会予選ね。その大会をキッカケにエリカさんと意気投合して親友と呼べるまで仲良くなったわ」
その時にソーラービームを喰らったのか。
「親友か……僕にも作れるかな?」
思わず俺はそう呟いた。こっちの世界で過ごしてから友と呼べる奴はいない。精々そんなやつらはポケモンだけだ。
「じゃあコスモ、私と友達になろっか」
ミカンさんがあまりにも意外過ぎる言葉を出して俺は唖然としてしまった。
「嫌なの?」
「いえ! よろしくお願いします! ミカンさん」
「そう、ならよかった。それと私のことはミカンでいいわよ。もう私達は友達同士なんだし、敬語も使わない方が良いと思うわ」
「それもそうだねミカン」
「……っ! ごめんトイレ行ってくるわね!」
あっ!? おい!! 仕方ない。ミカンさん、いやミカン。……そんなにションベン漏れそうだったのか? 女って変なところで意地っ張りだし無理もないよな。アニポケに出てくるサトシのベイリーフしかり、カスミしかり、なんでなんだろうな?
「お待たせコスモ」
ミカンがスッキリした顔で戻ってくるとエリカも後ろについていた。
「お姉様、影からこっそり見守るんじゃなかったんですか?」
「止めました♡ よくよく考えてみればお二人に助言するという立場なら何一つも問題ありませんわ」
何故だろう。エリカの体温は高いくせに声が冷たい。
「う〜んエリカさん。もうお腹もすいたし、あそこでお昼にしようかと考えていたんだけど」
レストランを指差したミカンがアイコンタクトをとって「話に合わせろ!」と間接的に言ってきたのでフォローすることにした。
「そうですよお姉様。腹が減っては戦は出来ぬというじゃないですか。僕もお腹空きましたし、あそこで食べます」
「それでは参りましょうか」
エリカの言葉に俺を含め全員、レストランへと歩み寄る。しかし妙なことにそのレストランは空いていた。
「おかしいですわね。タマムシデパートのレストランならもっと混雑してもおかしくないのですが」
エリカの言う通り、タマムシデパートのレストランとなればめちゃくちゃ混雑しているんだが……何か理由でもあるのか?
「エリカさん、コスモ、この看板を見て」
俺は言われるがままにミカンが手を指した先にある看板を見るとその疑問が解けた。
【ここタマムシ・バトル・キッチンは普通のレストランとは違い格安で召し上がれます。ただし星のバッチを付けた店員に(星の数×1000)円支払いポケモンバトルをし、勝利した後その店員の星の数の食事を召し上がることが出来ます。ただし星の数が多い店員ほど強くなる傾向がありますので注意してください】
要はバトルフードの相手が店員一人になったってことだな。余程のことがない限り今持っているポケモンで戦えるのはフシギダネだけだ。無難に星二つ程度の店員でいいだろ。
「つまり、店員さん達と勝負して勝てばよろしいのですね?」
エリカの言葉にミカンが頷く。
「ええ。ただ難易度の高さの基準がわからないのはちょっと問題よね」
「それがこの店が繁盛しない原因だと思いますよ」
確かにシステム自体は凄えもんだ。こんなのがゲームにあったら是非とも使いたいくらいだな。だけど現実はそうは甘くない。難易度の基準がわからない以上挑戦したくないんだろうな。無駄に金を取られるだけだし。
「それにしたってポケモンバトルに自信のある方はいてもおかしくないんじゃ……」
「確かにそれは言えている」
とはいえ繁盛しない理由はそれだけじゃないだろ。ポケモンバトルに自信がある奴ならどこにでもいる。そういう客達を呼び寄せるにはうってつけの店なんだがな。
「タマムシ食堂にお客を取られてしまったのではないでしょうか? それに立地場所も悪いですわ」
「「あ〜……」」
言われてみれば納得出来る。タマムシ食堂は安い・美味い・早い・多いの4コンボに加え、誰でも気軽に利用出来る。その上時々大食い大会などのイベントやテレビの取材もある。他のタマムシデパートのレストランが何故繁盛出来るのかが不思議なくらいタマムシ食堂は客を取っていっている。むしろここの店が繁盛しないのは当たり前なんだろうな。
「と、とりあえず入るだけ入ってみましょう。ね? コスモ、エリカさん」
そ、そうだよな? 何か周りの視線も痛いし、そろそろ入らないと気まずい。
「あ!」
「どうしましたお姉様?」
「モンスターボール持ってくるのを忘れました!」
やっぱりおっちょこちょいなんだな。エリカは。というかモンジャラのつるのムチが飛ばなかったのもその理由なんじゃないのか? 十分にあり得りそうで嫌だ。
「エリカさん、いくら何でもそれは……」
ミカン、よくわかるぞ。何せポケモントレーナーがモンスターボールを忘れるなんてことはしちゃいけないはずだ。なのにジムリーダーがそれをするのは片足サンダルを履いているのにもう片方の足に革靴を履いているくらい滑稽すぎる。
「申し訳ござりませんが私はモンスターボールを取ってくるのでお二人で食事して待ってて下さいませ」
エリカがその場を立ち去り、俺たちはその店の中へ入った。
まさかタマムシデパートで食事をする前に3000文字オーバーしてしまうとは…
ということで次回は初めてのポケモンバトル回(トレーナー)です。
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