よしのんPとしてよしのんが活躍する小説が書きたかった為、人外疑惑がある彼女と同じく人外ばかりの宵闇眩燈草紙とクロスしました。
「あぁ~、暇だ、暇すぎる~」
古い日本家屋の一室で炬燵に籠りながら寝転がる隻眼に黒ずくめの男。右目に眼帯を付けスーツ姿の彼は今の時代では珍しい足付きのブラウン管テレビを見ながら居間でゴロゴロとしていた。
テレビの中では何処かの球場だろうか。髪をリボンで二つに結んだ女の子が「プロデューサーさん!ドームですよっ!ドームっっ!」と叫ぶと球場の観衆が大盛り上がりしている。
「女が大衆の前であんなハレンチな格好で出るなんて、感心しないぜ全く」
冷ややかな目で何とも時代錯誤な事を言うこの男。まるで一昔前の風潮を言うこの男はフェミニストではない。“女は家の中でおとなしくしている弱い生物”という男尊女卑思考の延長であり、その風潮が残る時代から生きる男。
名を長谷川 虎蔵である。
良く言えば風来坊、悪く言えばチンピラ。大正、いや明治の頃から生きているにも関わらず外見年齢は20代後半。主に荒事担当の用心棒を請け負いながら生活してきた彼であるが、ここ最近は昔ほどヤクザ間の争いもなく特異な技術を使う時もない。
平和な日々が続いていたのであった。まぁ、それにはあの吸精鬼が別世界に飛んで久しく会っていないのも平和な要因の一つであるが。
そうしているうちに玄関の戸が開かれ「ごめんよー」と一人の女性が訪れる。
「なんだい虎の字。こんな真っ昼間からゴロゴロして。少しは働いたらどうだい」
「うるせー、美津里。今の時代は戸籍がなんとかで全うな職業に付けねーし元々やるつもりねーよ」
「全く、私だって色々動いているのにお前さんと言ったら…」
「お前は自分のしたい事しかしないじゃねーか」
「それもそうか」
そう言ってハッハハハと高笑いする長い黒髪で年齢不詳の眼鏡美人。
彼女の名前は麻倉 美津里。
古道具屋「眩桃館」の妖艶な女主人で基本的には横からちょっかいを出してニヤニヤしている得体の知れない彼女。
そんな彼女だが正体は多種多様の深い知識を持つ「魔女」である。
虎蔵同様に何百年も前、おそらく3世紀半前から生きている彼女は引きこもり生活になっている近所の虎蔵の家へよく遊びに来ているのであった。
ちなみに虎蔵が住んでいる日本家屋は元々、木下京太郎と言う大正の頃に下宿していたヤブ医者の家である。
種族としては真っ当な人間であった京太郎はもう3、40年ぐらい前にあの世に旅立っていったのでありがたく使わせて貰っていたりするのであった。
虎蔵をからかった美津里はそのまま鞄を置くと虎蔵の反対側の炬燵に入り込む。
「お、765の天春ちゃんじゃないか。笑顔が眩しいね」
「けぇ、なーにがアイドルだ。女がチャラチャラとしやがって」
「ほーんと、時代錯誤な事言うね。今はもう平成だよ。時代は写り変わって行くのさ」
そう言って炬燵の上のミカンをとる美津里。
彼女は丁寧に皮を剥がしながら虎蔵に話しかける。
「そう言えば虎の字。お前さん今ヒマだろ」
「まぁ、仕事って言う仕事はねーな。潤花(ルンファ)の奴がくたばってから大陸の方のマフィアとは繋がりも無くなってしまったしな、中東やシリアの方に出稼ぎでも行こうかとしていた所だよ」
林 潤花(リン ルンファ)は昔、仕事を受け持っていた大陸マフィアの女幹部である。
そこの秘書と良く色事に励んでおり、世話になっていたが彼女の亡き後そのツテは無くなりどうやら彼女の属していた組織は香港系の三合会に取り込まれたようであった。
腕っぷしに自信のある虎蔵は日本であまり仕事がないので傭兵紛いとして良く紛争地帯の赴けば金を稼いでいた。
「それでお前さんに一つ提案がある」
「ったく、なんだよ」
彼女の眼鏡が怪しくひかり、口元が怪しい微笑する。
そして彼女は鞄の中から名刺を取りだし、虎蔵の前に渡す。そしてこう言った。
「プロデューサーに、興味ありませんか?」
「ったく、あいつはなに考えているんだ…」
渋谷駅から歩いて13分。東京の一等地にある346プロダクション本社。その正門の前で隻眼に黒ずくめの男、長谷川 虎蔵は頭に手を当てうんうん唸っていた。
見るからにガラの悪い男が会社の前で唸っているせいで社員は近づかないようにそ~と彼の横を通り過ぎたり、警備員が無線で警戒レベルを上げたりと回りに迷惑をかけていたが彼の知ることではない。
すべてはあの魔女が原因である。
『346プロの今西部長にアポとって。そこで詳しく説明されるから』
『おい、ちょっと待て…っておい止めろお前ら、何処に運ぶつもりだ!』
『おそ松とちょろ松に身だしなみ整えて貰うよういってるからさっさと行きなよ~』
『ふ、ふざけんなよ美津里ぃ~!』
ふつふつとあの時のやり取りを思い出しては怒りに燃える虎蔵。
ちなみにおそ松とちょろ松は美津里の店の使用人である二頭身の生命体である。正体不明の生物であるが減っても新しいのがすぐに出来るのを見るとホムンクルスの類いだろう。自信はないが。
「なにがプロデューサーだ!やってられるか!」
ウガーと叫ぶ虎蔵。警備員が不審者として虎蔵の所へ向かおうとするその時だ。
「静かにしてもらえるかな。ここは公共の場なのだけれども?」
「な・・・!!!」
誰もいないはずの背後から唐突に聞こえる注意の小言。
思わず距離を取り、隠匿術で隠していた段平を何時でも取り出せるよう構える。そこにはロマンスグレーの髪を持つ小柄で初老の男性がニコニコと彼を虎蔵の事を視ていた。そんな彼は両手を掲げる。
「そう警戒しなくても良いよ。私が部長の今西だ。長谷川 虎蔵君」
そう言って宥める彼こそ今西部長。
美津里が話していた346プロの関係者である。
彼の音もなく後ろを取る技術は昔、魔女の狗であり忍け忍であった笹森 房八のようである。
部長は片手をスーツの中に突っ込み、裏側から名刺を取りだすと虎蔵に渡す。そこにはしっかりと今西部長の名が記されており、彼が美津里の言っていた人と分かると虎蔵は警戒を緩めた。
「それでプロデューサーってどう言う事だ?」
「説明するから取り敢えず着いてきてくれ」
彼は正門を抜け、本館に向かって歩きだす。
仕方なく後ろを付いてくる虎蔵に回りの社員たちは一体何ものだろうかと驚きながら彼を見つめており、それがまるで見世物のようで気にさわる虎蔵であったが早くこの場から離れたい一心で部長の後ろを付いていった。
一体これから俺はどうなるのだろうか。漠然と考えながら後ろを付いていく。
受付で部長が虎蔵の分の入館証を発行してもらいそれを肩から掛け、渡り廊下を抜ける。そして本社ビルエレベーターに乗り込むとフロアは最上階である30階で止まった。
30階のフロアには来賓室があり、そこに部長が入ると虎蔵と部長の二人きりになる。対面する形でソファに座ると部長の方から口を開いた。
「ご老体からの紹介でね、腕が立つ君が進められたんだ。彼女は何時までも元気だね」
「あいつがくたばる訳がない。関わらない方がましだよあいつは」
そう言って胸ポケットに閉まっておいたタバコを取りだし火を着ける。すると部長の方もタバコを取りだし火を着けた。喫煙家同士と言う事もあり互いに苦笑が漏れる。
「互いに喫煙家同士、苦労が耐えないね」
「あいつとは一体どう言う関係だ?」
「ただの店主と顧客だよ。いろいろと『アッチ』の方の事でお世話になっている」
そう言ってプカプカと煙を浮かべる部長。何があったのか解らないが遠くを見つめため息を吐くその姿は美津里に振り回されているようだと何となくシンパシーを感じとっていた。
「さて、本題に移ろう。長谷川君には表向き〝プロデューサー〟として雇いたい」
「表向きってことは…」
「そう、裏はボディーガードさ。君の得意な仕事だろ?」
曰く、346プロダクションのような大手プロダクションは多数の芸能人が所属しているため必然的に『あっち』の方のトラブルも増えるそうだ。しかしながら一般人がどうこう出来る問題ではないのでプロであり、仕事の入ってない暇な虎蔵が進められた訳である。
「でもお前さん、『こっち』側だろ?あの身のこなしで一般人はないだろうし」
「まぁ否定はしないけど本業はこっちのテレビ業界だよ。他にも『こっち』側の人間がいない訳でもないが圧倒的に少ないからね。」
虎蔵はその技量や長年の経験により、一般人に背中を取られる事はまずない。取られるとしたら隠形に掛けたものか、転移(アポーツ)の使い手である魔法使いぐらいである。
そんな虎蔵の背中を取った今西部長もどうやら『あっち』側の人間である。
「実は1年ちょっと前から346プロに新しくアイドル部門が設立されてね。一気に事務所全体の人の割合が増えてしまったんだ。するとそっちまで手が回らなくなる。だから君に声を掛けたんだ」
「解ったがなぜプロデューサーなんだ。警備員、もしくはボディーガードではダメなのか?」
「プロデューサーと言う肩書きの方が自由に動けるからね。それに君みたいなガラの悪い人物がボディーガードと紹介されても違和感しかないじゃないか」
「プロデューサーは良いのかよ!?」
「うちは個性を大事にするからね。で、どうだい?この仕事請け負うかい?」
そう言って書類や契約書を机の上に置く。虎蔵は書類を手に取るがパラパラと流し読みしながら一人ぼやき初めた。
「しっかしアイドルなんてな…俺はあんまり好きではないんだがね」
「そう言わずに近くで見てみるといいよ。今の時代は女の子達も夢と希望を与える存在なのだから」
「それは昔からだよ。女郎通いの俺に言うか」
「ハッハハハ、体は体でも一緒にしてもらったらアイドルの子達が可愛そうだ」
虎蔵は書類を机の上に投げるとソファの背もたれに肩を掛け、天井を見上げる。
正直いって暇な自分にとって久しぶりの仕事、それも表向きは違うが『アッチ』側の仕事である。
昔と比べるとドンパチすることは少ないだろうがビジネスには変わりない。それに女ばかりの職場、それに芸能界とはレベルの高い女が集まるのではないか!
お気に入りの女郎である朱乃が亡くなり、遊郭が潰れ、ゲバゲバなピンクと電飾で飾られた風俗は趣がなくここ数十年通っていない枯れた生活を送っていたが新たな出会い。そう思うとやる気が出てくる。
「よし、その話乗った!契約しよう」
そう言って意気込む虎蔵。悠々と契約書にサインをする。
部長はその様子を終止にこやかな笑顔で見守っていた。
「では宜しくね長谷川君」
「あぁ、宜しく今西」
「…社員になったんだから次から今西部長ね」
「うっす」
『どうだい、虎の字は契約したかい?』
『はい、ご老体の仰った通り契約してくれました。流石ですね。これでひと安心だ』
『しっかしあいつがね。あいつは腕っぷしが立つけれど基本バカだから女狙いで契約したんだろう』
『契約書にはアイドルなどに手を出すのを禁止するよう記載してたんですが?』
『読んでないさ、あいつはバカだから』
『はぁ』
「へ、へっくしょん!」
俺の事を噂にしている奴は誰だと呟く虎蔵。
今西部長から貰った書類の入った封筒片手に夕焼け時の街を歩く。時代が写り変わり、町並みを大分変わっていたが美津里の店と旧京太郎の家は当時のままである。なので町の中でも浮いてしまっているが趣があって逆に良いのではないかとどうでも良いことを考えながら帰宅していた。
下駄をカランカランと鳴らしながら歩く虎蔵。しかし足音はそれだけでなく、もう一人分、テケテケと歩く足音が聞こえる。
駅を降りた時からであろうか、小柄な体格に腰まで届きそうな長い髪を纏め、色鮮やかな着物に大きな帯をしており黄色い風呂敷に包んだ荷物を肩から背中に掛けている少女が虎蔵と同じ道を後ろから付いて来ているのである。
アイドル事務所の帰りであり、資料を渡されて直ぐの虎蔵にとって女の子は気になる存在である。
今西部長からプロデューサーにはアイドルのスカウト権が渡されており、部長が言うには『ティン!』と来た女の子をスカウトしてね。と言われているためか彼女もその対象であった。
そんな事を思い出しているとその彼女から虎蔵の方に声を掛けてきた。
「ねーねー、そこのお方ー。眩桃館は何処でございましょうかー」
「なに、お前あんなところに用事があるのか?」
「はいー、ばばさまからのお届けものでしてー」
まさか眩桃館に用事があると思わず驚く虎蔵。一見、生娘にしか見えない彼女があんな古道具屋に用事があるとは世間では何が起こるか解らないものである。
「俺も美津里の野郎に用事があるから一緒に着いてきな。お嬢さん」
「そなたも眩桃館を知っているのですかー。其は助かりますー」
そう言って虎蔵の後ろを着いてくる彼女。眩桃館までの間、彼女は虎蔵に話しかける。
「久しぶりに此方に赴くとー、町の様子が一変してましてー、道に迷ってましたー」
「一変って…、前も来たことがあるのか?」
「はいー、昔はこんなに町が明るくなかったのでー時代の進歩には驚かせられますー」
一体こいつ何歳だよ。と突っ込む。美津里関係かなと思っていたら案の定であり、虎蔵同様に視た目通りの姿ではないことは確定である。
「れでぃに年を聞くのは禁句でしてー。それに彼女は只の旧友ですー」
まさか心のなかで読み取られると思っていなかった虎蔵。ビックリして口に加えていたタバコを落としてしまうが、直ぐに彼は獣のように縦に裂けている瞳で彼女を問いだたす。
「お前、どこまで知っている」
「何でもは知らないですー、知ってることだけでしてー。
そなたの回りの気はー、面白い動きをしてましてー、その気に引き寄せられた訳ですー」
「それ、答えになってないぞ」
「そうでしてー」
のらりくらりと話題を反らされるのにイラッとした虎蔵は何も言わずズンズンと先に進む。その後ろで彼女が「待つのでしてー」と小走りで付いて来るのであった。
「キャー、久しぶりよしのん!ねぇ元気だった?」
「はいですー。ソッフィーも元気そうで安心しましたー」
まさか本当に友人とは!と驚く虎蔵。
関わりのある人の殆どに嫌われており、それなりに付き合いのある虎蔵すら表に出さずとも嫌っている美津里に友人である。
それもソフィア名義。ましてやあだ名である。このよしのんと言う奴もろくでもないのかもしれないなと頭に手を当てた。
「ゆえにソッフィー、あの男はどなたでしてー?」
「あぁ、あいつが虎蔵だよ。長谷川 虎蔵。手紙に書いていただろう」
「あぁ~、あのないすがいでしてー。こんな方とは思いもしませんでしたー」
ナイスガイと言われずっこける虎蔵。その様子に笑い合う二人。面白くなくなった虎蔵はズカズカと眩桃館の中に入っていった。その後ろを美津里とよしのんと呼ばれた少女が付いて行く。
「はいー、これが預かった石ですー。お納めくださいましー」
「はっはー。確かに受けとりました」
店の奥の居間で臭い演技をする二人。それを冷ややかな目で見る虎蔵は炬燵に下半身を滑り込ませていた。
「それで美津里ー。そいつは誰なんだよー」
「あれ、まだ自己紹介してなかったのよしのん?」
「忘れてましたー」
そう言って虎蔵の方に体を向け、礼儀正しく正座をする。
「わたくしはー、依田 芳乃と申しますー。職業はー、拝み屋?でしょうかー」
「それで良いんじゃない。間違いではないんだし」
「拝み屋ですー」
そんなあいまいで良いのかと思う虎蔵だが良く考えれば美津里も肩書きは古道具屋の店主であるため問題ないのであろう。しかし美津里の友人とは殆ど見たことがない。正直物珍しい彼女だった。
「よしのんは知ってると思うけどこの男が長谷川 虎蔵。荒事担当として助かってるよ。まぁ今日から別の肩書きを持つが」
「ぷろでゅーさーですねー。びっくり、桃の木、山椒の木でしてー」
なぜ知っているのか聞いても無駄であろう。ため息を付く虎蔵。そんな虎蔵にさらなる爆弾が落とされる。
「そなたー、あいどるを探しているのでしょー。ならばわたくしをすかうとしてみるのはどうでしてー」
は、アイドル。こいつが? 思考停止している虎蔵にかまわず理由を説明する彼女。
「あいどるというのはつまりーみなから崇拝される神様のようなものでしてー…つまりわたくしの天職といったところですのねー。そなたの望みどおりにみなに愛されてみせましょうー」
「おぉ、それは良い!流石だよしのん。本当はこれを狙ってこの時間に来たんでしょう?」
「さー、わたくしはなんの事かさっぱりでしてー」
そう言って笑い合う彼女達二人組。
たしかにビジュアルは問題ないであろう。ボーカル、ダンスはこれからレッスンをすればどうにかなる。そう資料に書かれていた。
でも違うぞ長谷川 虎蔵。
こう悟った感じの成熟した女性をスカウトし互いに良い関係を結び、そのままベットインする関係を目指す。そう!それが長谷川 虎蔵のゆ…
「虎の字、アイドルとの関係はご法度だぞ。契約書を読め」
「はぁ‼」
急いで立ち上がり、書類や契約書の控えが入った封筒を逆さに向ける。机の上に散らばった書類の中から契約書の控えを探しだし目を通す。
そこには確かに所属事務所のアイドルとの恋愛を禁止するように書かれていた。
「大体アイドルに恋愛なんてご法度って知らないのか。常識だろ」
「過去には責任とって丸ハゲになったあいどるもいましてー」
項垂れる虎蔵。レベルの高い女の子達とのウフフな関係はお預けなのか…。いや、そんな事破ってしまえば良い。こんな契約書なんてただの紙切れなのだから…
「あ、その契約書セルフギアススクロールだから。私特製の」
「マジかぁぁぁ!!」
哀れ虎蔵!
既にそこら辺の対策はしっかりと美津里によって施されていた。やはり因果率を操る魔女である。未来予想もお手のものだった。と言うよりただ美津里のシナリオ通りに事が進んだだけであるが。
「それでわたくしをすかうとするでしてー」
「…あぁ合格。346プロへようこそ…」
「やったーでしてー。そなたー、これからよろしくおねがいしますー」
「うむ、なかなかシュールな光景だ」
そんなこんなで機嫌を取り戻した虎蔵は貰ってきた書類に目を通す。
ビジネスに下心があったのは否定しないが最初から仕事はしっかりと受け持つつもりである。プロデューサーとしての仕事とボディーガードとしての仕事、正確に言うと『あっち』側のトラブル解決のお仕事だが互いの仕事に理解を示す。
ビジネスには手を抜かないのプロであった。まぁ、契約書の件はなしと言う事で。
そうしている間に美津里と芳乃は二人でテレビを見ており、時に「あいどるはこのような激しい舞をするのでしてー」と呟いてはその隣で「ダンスだよ。ダンス」と美津里が突っ込む。しかしながら「だんすと言う舞ですかー」と世間離した会話を繰り返すのであった。
そんな中、ふと美津里が何か思い出したのか「ちょっと待っててね」と倉の方に向かう。
またろくでもない事を考えたのであろうか。今日何度目か分からないため息をつくとその様子を見ていた芳乃が小さく手を降った。それがとても可愛らしくドキッとする虎蔵。
まさかこれがアイドルの素質なのだろうか。少し驚く虎蔵。ちょっとアイドルと言う職業が分かったのかもしれない。
そうしていると黒いアタッシュケースを手に持った美津里がふすまを開けてやって来た。
「おー、懐かしいなそのケース。寄郡の時だろ」
「そうそう、お前さん達が好き勝手暴れたせいで海神様が怒り狂いそうになった時のと同じケース」
「あー、あの時の出来事はー、こちらの方でも耳にしましたー」
「…お前さんは100歳は確実なんだな」
そう言いながらダイヤル式の暗証番号3ケタを合わせる美津里。左から順に2・1・9の合わせるとそのまま左のボタンを押し込む。パチンとロックの解除音がするとアタッシュケースが開かれた。
「なぁ!マジか!」
「おぉー、驚きでしてー」
アタッシュケースが出て来たモノ
それはまるで儚げな妖精のような、髪色がライトゴールドの幼い少女であった。
──大概の人生に於いて
鈍い完成、足りない好奇心
物を考えない頭は
確かに少しは損するだろうが
損をしている事にすら気付かなければ
それはもう幸福な人生であろう
覚えておいた方がいい
「君子危なきに近寄らず」
もしくは
「見なかった事にする」
…まぁ、これはコイツらにとって全くと言っていいほど無駄な話であるが。
感想、評価よろしくお願いします。
ラストのアタッシュケースから出てきた少女。その少女は一体誰でしょう? ヒントは誕生日…!