宵闇偶像草紙 ~人外魔境 346プロ~   作:ミキマル

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一応ここでクロス先を簡単に説明すると、男のロマンをごちゃ混ぜにしてダークやインモラル要素を詰め込んだ現代ファンタジーです。詳しくはwiki参照で。


偶像の導き その2

 アタッシュケースから出てきた物

 

 それはまるで

 

 妖精のような小さな少女であった。

 

 

 ドタドタと店の奥から出てくる美津里の使用人達。2頭身の体をワサワサと動かしながら数々の機材を運んでいく。

 部屋を遮る襖が外されると、隣の部屋に布団が引かれそこに運んできた機材、ポンプやフィルタ、検査器具などが配置される。倉を行ったり来たり忙しいようにする使用人達。虎蔵と芳乃は邪魔にならないよう炬燵を部屋の隅に寄せて二人突っ立ていた。

 

「お〜い、カラ松と十四松は荷置いたら戻っておいで。布団を運ぶからね」

「…大変そうだな」

「可愛いでしてー」

 

 そう言って使用人の一体、トド松を引き留めては頭をつつく芳乃とタバコを吸いながら一連の様子を見つめる虎蔵。虎蔵はボケッとその様子を見ながらどこか既知感を感じる。

 

「なぁ美津里。これって京太郎の女の時と同じか?」

「おぉ~、よく覚えてたね。マコトちゃんと同じで人工冬眠させてるの」

 

 そう言って問診を開始する美津里。

 検温、採血、比重検査、色素検査。心電図をとって肺活量も調べておく為、採血。最高圧61mm 色素量9g/dl. 胸や頭にに検査用の電極を張り付け検査。ついでに脳波も測定する。

 

「うむ、今回はちゃんと冷却器官が働いているね」

 

 そう言って女の子目の前でライターをカチャカチャと鳴らしては火を付ける。

 そうして検査している美津里だが虎蔵と芳乃はやることなく先程と同様、未だに突っ立ていたが前例を知らない芳乃が美津里に声をかけた。

 

「ソッフィー、私はそなたが何をしているのかさっぱりでしてー?」

「あぁ、よしのんは知らないだっけ」

 

 そう言って美津里は芳乃に資料を挟んだボードを渡す。

 

「よしのん、これを見てみて」

「これはー…体液成分分布でしてー?」

「そう、そしてこっちも見てみ」

「蛇…アカハラガーターヘビのサンプル…あぁ冬眠ですかー」

「正解。さすがよしのん」

 

 芳乃の言うとおりこの少女は人工的な処置によって冬眠させられているのである。

 美津里曰く施術されているのは大別で二つ。

 一つはグリセノールを主とした不凍保存液の血液への混入。

 二つ目は1チャンネルの交換神経系に上乗せしたアデノシン受容体作用薬の側面内投与と熱生産系の分離指示である。

 手際よく処置を進める美津里。

 別に保存されてあった少女のオリジナルの体液をベースにしての血液洗浄が主な処置。途中、経過観察をしながらCPTの投与をする。

 

「よし、これで80時間以降のいずれかで目を覚ますだろう。後で骨盤内腫瘍性疾患の識別もしないと…」

 

 そうぼやきながらいつの間にか羽織っていた白衣を脱ぐ美津里。

 その時芳乃は参考資料であるカルテや医学書を読み、虎蔵は炬燵を元の場所に戻すと再度テレビを視聴していた。芳乃にとっては珍しい事だが虎蔵にとっては興味がないに尽きる。使用人達の行き来が落ち着いてきたらそうそうと炬燵に潜っていた虎蔵であった。

 

 

 

 

「それでだ美津理、あれはなんだ?」

 

 処置も終わり再び炬燵に入り込む三人。虎造は蜜柑、芳乃は歌舞伎上げ、美津理は何も食する事無く炬燵の上に顔を乗せていた。そんな中思い出した様に布団に寝かされた少女を指差し、美津理に質問する虎造。

 

「あーなんだったかな、昔オークションで面白そうと思って買い取ったんだっけ?」

「そこからかよ」

「けっこう前だから忘れたわ」

 

 そういってゲラゲラと笑う美津理。そんな美津理にケッと悪態突く顔をするが彼女は答えずに何時も通り怪しい微笑する。

 

「それで彼女をどうするんだよ。わざわざ起こしたって事は何かしらに使うんだろ?」

 

 そう言って本題、何故あの少女を起こしたかについて言及する虎蔵。それに美津里は答える。その答えは正気を疑うが流れ的に十分考えられる事であった。

 

「プロデューサーになったお前さんへのプレゼントだよ。アイドルにでもしてあげな」

「はぁ!?」

 

 本日二度目の驚きである。

 芳乃に見透かれている時と同じように炬燵の上に落とすタバコ。とっさに芳乃がそのタバコを燃やし尽くし灰にするがこのまま落としていたら焦げ付いていただろう。

 なお芳乃がどのようにして火を着けたかは芳乃だからと言う事で納得してもらいたい。なんせ美津里と対等な関係である。摩訶不思議な『アッチ』な事は二人と同様にお手のものであった。

 

「ちょっと待て。現段階でアイツについて分かっていることを教えろ」

「それならよしのんが持ってた資料にあるぞ」

「はいどうぞー」

 

 そう言って渡される資料。歌舞伎あげの屑が乗っかった資料にしかめっ面しながら受け取った虎蔵はパラパラと目を通す。そしてその資料の中の一文が目に入った。

 

「おいおいマジか、こいつ別世界の奴なのか!」

「そう、お前さんと似たような奴だよ。といってもお前さんと同じで取り込んだ存在か、はたまた別世界の奴なのかはそこら辺はハッキリ分かってないみたいけど」

 

 虎蔵は今から1世紀ぐらい前にアメリカのシホイガンで大怪獣バトルを経験している。

 その時に彼は穴の向こうの別世界から現れた「低気圧」を飲み込み、自分の力としてその力を駆使しているが彼女も同様に別世界の生物を取り込んでいる、もしくは別世界の生物自身であると言うのだ。

 

「厄介事に巻き込まれる気しかしねえ。いらねーよそんな奴、とっととバラしな」

「そうでしょうかー? 一度、話を聞いてあげるのが宜しいかとー」

「…お前さんは聖人君子か?」

「いえいえ、私も気まぐれでしてー。面白そうな事に首を突っ込むのは刺激的かつ退屈しないのですー。これが長生きの秘訣ですぞー」

 

 そう言って美津理の意見に賛同する芳乃に舌打ちする虎造。

 横では計画通りとクククと笑う美津理。

 プロデューサーの件と言い、彼女の筋書き道理に進んでいるのが気に入らない虎造は「分かったよ。この話はそこの奴が起きたらな」と言うとふて腐れたのか炬燵で横になったのであった。

 

 夕食も食べ終わり、三人でダラダラと再度テレビを見る。

 テレビ番組ではふんわりとしたボブカット風の髪型に、左目の泣きぼくろがチャームポイントのややあどけない顔立ちの女性が入浴シーンと言う名のサービスシーンを流していた。

 虎造は「あぁ、俺もこんな子ととの出会いが…」と嘆きながらしみじみと徳利から熱燗を美津理の盃に注ぐ。

 

「虎の字、お前さんってそんなに出会いを求めているのかい? お前さんはどちらかと言うとプレイボーイだと思うんだが」

「最近の女は好みに合わないんだよ。御淑やかでこう、一歩男の後ろを付いて行くような女が欲しいね」

「わたくしみたいなのが好みとー?」

「いや、お前さんには色気がない」

 

 「女に言う台詞ではないですー」と言いながら頬っぺを膨らます芳乃。本人も自覚しているのかその行動一つ一つが愛らしく年相当の姿を醸し出していた。そんな話をしている間、美津理は虎造に酒を注ぎ返す。

 

「身近な存在として私みたいな人がいるのにほーんと時代錯誤だね」

「ほっとけ。あくまで恋愛対象ってだけだよ。お前やジャックの女とかは別。ビジネスはビジネスさ」

「そのビジネスを出会いの場にしようとしたくせに」

 

 グサッと虎造の心に突き刺さる美津理の正論。発言に関しては自業自得の彼であった。

 そんなこんなで時計の針は12時を回り、日付が変わる。しかしばがら相変わらず3人は炬燵に包まっていたがそんな中家主である虎造が口を開く。

 

「…お前らいつまで家にいるんだ?」

「私はよしのんに合わせてるつもりよ。よしのんは何時帰るつもりなの?」

「私は今日はー宿無しでしてー、ここに泊まらせて頂こうと思いますー」

「マジ?」

「まじですー」

 

 曰くこれからアイドルになる芳乃はわざわざ実家に戻る必要がなくここに泊まって行くらしい。しかしながらこっちで伝のない彼女は美津理の店に泊まる予定であったがせっかくプロデューサーになる虎造がいるならばそこに泊まっていこうと打算していた。

 

「今日だけでなくこれからも宜しくお願いするかもー?」

「今日だけじゃないのか…」

「その時はちゃんと家賃は払いますー」

「よしのんに手を出したらいかんよ」

「ださんわ!」

 

 こうして虎造と芳乃の同居生活が始まる事となったのであった。

 

 

 

 次の日。電車に揺られながら渋谷駅に向かう二人。

 一人は隻眼に黒ずくめの青年。もう一人は着物を着た幼い顔立ちの少女。アンバランスな2人組は朝の通勤ラッシュに呑まれ込まれながら出社先の346プロダクションに向かっている。

 

「うぇぇぇ、人混み気持ち悪い…。飛んでいきたい…」

「私も…飛んでいきたい…ですー」

 

 過去の人間である2人は現代名物である社畜の諸行に慌てふためながら流されて行く。飛んで行くのはもちろん論外であり、サラリーマンなどの一般的な会社勤め同様の苦労を味わう二人であった。

 

 そうして前日同様に駅を降りて13分。346プロの正門で突っ立つ二人。

 虎造は面倒くさそうに頭を掻き、芳乃は目を輝かす。

 まるでお城のような346プロは、これからアイドルとなる女の子達にとってはお伽噺話の世界であり夢のような場所である。

 どんな年になっても女の子は夢を見るのである。

 まぁ、女の子と言えるような年ではないのは確かであるが精神は外見に引っ張られると言う。虎造もそれは同様であり今も破天荒な性格が謙虚に表していた。そして美津里もきっと女の子であろう。

 そんな虎造の場合、警備員に警戒されていた昨日の出来事を思い出しせっせと会社の中に入ってしまいたかった。

 

「ほれ、さっさと行くぞ」

「あーれーでしてー」

 

 襟首を持って進む虎造と引っ張られる芳乃。

 前回と違い社員証を首に掛けた虎造は警備員に引き止められる事なく通される。本館から渡り廊下を抜けて本社ビルへ渡り、アイドル部門のデスクに階を合わせるとエレベーターは上へ進む。そしてチンと音がするとドアが開かれ、二人の先に虎蔵の新しい職場が目に入ったのである。

 そして背後から忍び寄る気配。咄嗟に背後を振り替えるとそこには昨日同様に今西部長がコーヒー片手に立っていた。

 

「おや、来たね虎蔵君。おはよう」

「うわぁ! ビックリした。部長は背後から出てくるのがデフォなのか?」

「…幽波紋」

「ん? この子はどうしたの」

「美津里経由でのアイドル志望の子をスカウトした。それで芳乃、さっき何か言ったか?」

「何でもないでしてー」

「じゃあそこら辺の話も含めてちょっと話をしようか」

 

 そう言って会議室に二人を連れていく今西部長。

 連れていかれたのは一般的な会議室であり、折り畳みの長机が横に二つ並べられたテーブルに部長と虎蔵、芳乃と顔合わせで座ると部長の方から話を切り出した。

 

「虎蔵くんにはプロデューサーをやってもらうのだがプロジェクトの開始は来月からとしている。

 このプロジェクトは来年、346プロのアイドル部門2周年記念の大規模なプロジェクトのプロトタイプとなっており去年のアイドル部門発端時と違い、小規模なプロジェクトになるだろう。ここまでは良いかい」

「あぁ、大丈夫だ」

「大丈夫でしてー」

「芳乃は関係ないじゃないか?」

「そなたはあまりこのような事は頼りないイメージでしてー。私も把握しておいた方がよろしいかとー」

「まあ、聞かれても問題ない話だし続けるけど何か飲みながら話そうか」

 

 そう言って会議室の社内電話でお茶を運んできてくれるように頼む部長。また電話の途中で虎蔵と芳乃に飲みたい物を聞く。虎蔵はコーヒー、芳乃はお茶である。

 

「それでそのプロジェクトがなんだって?」

「続きだね。この小規模なプロジェクトにはさっきの試験的な立場の他に『あっち』側対策として虎蔵君が自由に動けるように少ない人物にしたと言う点も大きい。

 だから虎蔵くん、プロデュースするアイドルは君の負担にならない人数で自由にしてもらっても良いよ」

「それはつまりこいつだけでも良いって事か?」

「でしてー?」

「いやいや、さっき試験的な立場だと言っただろ。

 同じプロジェクト内で複数のユニットを作る。そのモデルケースがこれだよ。

 だからせめてあと2、3人は欲しいかな。増える分には何人でも良いからね」

「しっかし俺みたいな奴ができるかね?」

「そこは大丈夫。うちはアシスタントも充実しているから自由に使ってもらっても構わないよ」

 

 そうこう話をしている内に扉からノック音が響き渡ると「失礼します」と扉が開かれた。

 部屋に入って来たのは蛍光グリーンの事務服を着た女性であり、さっき頼んだ飲み物を持ってきたようである。

 彼女はテーブルの上に飲み物を置いて行き戻ろうとするが「ちょっと待ってくれ」と部長に呼び止められた。

 

「虎蔵くん、彼女がうちの有能なアシスタントの一人、千川ちひろ君だ。

 ちひろ君、彼が新しいプロデューサーの長谷川 虎蔵くん」

「ご紹介承りました。プロデューサーのアシスタント兼事務員の千川ちひろです。お困りな事がありましたらなんなくお声かけください」

「あぁ、よろしく」

「それでプロデューサー、疲れていませんか?」

「へ? いや全然」

「疲れていたら一言私にお声かけください。元気になるお飲み物を差し上げますよ。もちろん初回はただで!」

「お、おう」

 

 そう言ってお盆片手で部屋をでる彼女。一体なんだったのかとボケッとすると部長が苦笑した。

 

「彼女の趣味の一つにドリンク製作があって得体の知れないドリンクを売っているんだよ。飲んだら体力が回復するんだ。たしか『スタミナドリンク』だったかな?」

「それってまさか薬? ヒロポン?」

「うーん、本当に体力が回復するから多分違うと思う…思いたいな」

 

 ハッハハハと笑う部長。ちひろ特製のスタミナドリンクは謎多き飲み物であった。ちなみに隣にいた芳乃はボソッと「悪魔…」と呟いていたが真偽は不明である。

 

 そして部長は虎蔵に他の事務的な説明、連絡を交える。プロジェクトルームや社員待遇、給料、芳乃についての説明などこみこみ説明が終わると部長が「最後に」と口を開いた。

 

「プロジェクトの開始は一ヶ月後だ。そしてそれまでに部長命令として一つ指示をする」

「なんだ?」

「さっき説明したとおりこのプロジェクトは複数人必要となる。

 なので虎蔵君には三日後から始まるうちのアイドルの全国ツアーに付いて回って、全国の女の子達をスカウトして来て欲しい」

「に、日本中…?」

「そう、日本全国だ」

「日本一周ですー」

 

 こうして虎蔵の最初のお仕事、日本全国アイドル探しの旅が始まるのであった。

 

 

 




感想、評価よろしくお願いします。

冒頭のアタッシュケースの話は宵闇5巻参照。
そこで分かるように宵闇では人身売買は当たり前。
バラす(殺す)のも当たり前です。

美津里なんて相手の脳みそを食べて知識を奪います。
エピソードとしては弟子の代わりに使い魔を召喚。出てきたガブリエルを食べるという罰当たりな事もしていたり…

しかしながら今回の小説では死者ゼロを目指しているのでご安心を!

因みにアタッシュケースの女の子は誰か解りましたか? 別の世界から来た子…一体誰なんだ?
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