コードギアス もし脳筋の兄がいたら   作:オリーシュ

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ピエール

 ビスマルク・ヴァルトシュタイン。ブリタニア軍最強の騎士にして騎士としての最高位ナイトオブワンに座る豪傑。

 そんな男がとあるスラム街でスリの被害に遭ったという。驚くべきはスリを働いた犯人。子ども特有の細さ、膨らみかけの胸の小娘だったという。そんな思春期の娘が帝国最強の男から逃げ切ったのだ。ビスマルクが酒に酔っていたこと、土地勘の違いを含めても異常なことだ。

 

 ビスマルクの話を聞いた皇帝陛下は娘に関心を持ち、王の間まで連れてくるように命じた。

 ビスマルクは2度捕縛に失敗し、3度目にして目に宿る力を使いようやく娘を捉えることに成功した。

 

 娘の名はマリアンヌと言った。歳は13。スラム街で育った所謂ストリート・チルドレン。抜群の身体能力に加え頭も回り、見た目もよい。万引き、賭けチェス、ストリップダンス等で生活の糧を得ていたという。

 

 皇帝は小娘をいたく気に入り、あろうことか交わった。

 13歳のスラム街の娘と婚姻などしては外聞が悪いので、娘は軍に入り、ビスマルクの部下として、ボディーガードの形で皇帝に近づくことになった。

 そして約半年後、娘の妊娠が発覚する。

 

 13歳の娘を皇帝が妊娠させたとあっては外聞が悪い。娘は特別任務という形で一旦皇帝の元を離れ、のどかな田舎へと移された。

 それから約4ヶ月後、娘は男の子を出産する。名はピエール。この出産は厳重に秘匿され、男の子は娘の弟として周囲に認識させた。

 

 それから約3年後、娘は再びビスマルクの部下へ戻る。ピエールはビスマルクの養子となり、彼の実家へ預けられた。

 母となった娘だが、訓練は欠かしておらず、ビスマルクに一対一で圧倒する程になっていた。目に宿る力を使っても互角だ。

 娘はその力で武功を重ね、ついには誰もが認める形でナイトオブ6に上り詰めた。

 

 娘の息子は母の活躍に喜び、僕も将来はナイトオブラウンズに、と訓練を始めた。母の血をしっかり受け継いだようで、やればやるほど力は伸びた。かけっこでは3つ上の学年の子どもを圧倒。やんちゃな性格も受け継いでおり、大人相手のスリを成功させるほどになった。

 

 それからさらに5年、皇帝とマリアンヌの婚姻が発表され、ほどなくマリアンヌは新たな男の子を産む。名はルルーシュ。さらに3年後、今度は女の子が生まれる。名はナナリー。

 この頃になると、ピエールは本格的な軍の訓練を始めており、マリアンヌに剣の手ほどきを受けるようになっていた。同じくマリアンヌに指導を受けていたジェレミア、コーネリア等とは馬が合った。

 

 そしてさらに6年の月日が流れる。

 ピエールは軍属し、マリアンヌとその子ども達の護衛としてアリエスの離宮で訓練と警備の日々を送っていた。この頃には実はマリアンヌの弟ではなく息子なのだと教えられていた。ただ、皇帝は息子だと認定する気がないので、秘密にするべきだととも。本人はマリアンヌのおっぱいを吸っていた記憶があるので、ようやくしっくりきたという感じだった。歳が離れているので姉という感じもなかった。

 ピエールは妹にして母の才能を受け継いだナナリーをとても気に入り「マリアンヌ様のようなナイトオブラウンズに」とかつて自身が行ったような厳しい訓練を課していた。逆にルルーシュは知性派で苦手だった。訓練に誘うととても嫌な顔をし、チェスは全く勝てない。もう一人、コーネリアの妹のユーフェミアも度々離宮に遊びにくるのだが、緩くてどうも苦手だった。

 

 そんなある日、ナナリーに訓練を課していると、不意に見知らぬメイドがやってきた。

 

「マリアンヌ様からの差し入れです」

「姉さんが?」

 

 メイドはそう言って焼きたてのアップルパイの入ったかごを置いた。

 あの母がまともな差し入れなどするはずがない。どうせカラシか何かが入っているのだろう。

 ピエールは母の性格を熟知していた。アリエスに来てからはおとなしいが、田舎ではしょっちゅういたずらをする悪ガキだったのだ。

 

「メイドさん。お1つどうぞ」

 

 ピエールはそう言ってメイドにアップルパイを食べさせようとした。

 

「えっ? 私が? い、いえ、皇族方のものを、私のような卑しいメイドが……」

「いいからいいから」

「メイドさん。食べてください。私が許します」

 

 ピエールは悪い笑みを浮かべていた。ナナリーは本当はアップルパイをあげたくなかったが、ピエールが楽しそうなので乗っておくことにした。

 メイドは長く食べることを嫌がった。ピエールはぴんと来た。

 

「ははーん。つまりお前、黒だな」

「え? な、何がですか?」

「姉さんは今日誰も屋敷に入るなと言っていた。とぼけなくていい。見たんだろ。このアップルパイの中に毒物を入れる瞬間を」

 

 ピエールはメイドが母の共犯者だと考えた。毒物というのは物のたとえであり、ピエールはカラシが入っていると思っている。

 しかしその瞬間、メイドの雰囲気が変わった。

 

「チッ」

 

 メイドは舌打ちすると、懐から何かを取り出し、振りぬいた。

 

「あん?」

 

 ピエールは軽くかわし、次の攻撃でメイドの腕を取った。

 メイドが持っていたのはナイフだった。それも先端に毒が塗られている。

 

「くっ」

 

 メイドはまた懐から何かを取り出そうとした。ピエールはその前にメイドの腹を思いっきり蹴った。メイドは吹き飛び、そのまま気絶した。メイドの懐からはハンドガンがこぼれ落ちた。

 ピエールは通信機で警備を呼びながらメイドに近づいていく。服を脱がし、正体を探る。

 

「こいつ、男か」

 

 メイドの正体は若い男だった。顔は女に似せて整形してあるが、肉体は完全に男。かなり鍛えられている。声は作っていたのだろう。

 

「刺客。狙いはナナリーの命。または人質か?」

 

 ピエールはジェレミア等を呼び、ルルーシュとナナリーに対し厳戒態勢を引いた。マリアンヌにもそうしたかったが、マリアンヌ自身が誰も屋敷に入るなと命じており連絡もつかなかった。

 母の性格を知っているピエールは、命令を破っても本気で怒られはしないと思っており、緊急事態だからと中に入っていった。

 しかしそこで見たのは血塗られた階段。そして母の死体だった。

 

 ピエールは怒り、犯人を捜して駆け回った。しかし犯人は見つからなかった。アーニャという娘がいたが歳は6つでとてもマリアンヌを殺せるとは思えない。事件については覚えていないと言った。

 

 その後、皇帝の命で捜索が打ち切りとなった。これにルルーシュが怒り「何故母を見捨てるのか!」と直談判した。しかし逆に皇帝の怒りに触れ、ルルーシュとナナリーは屋敷から追い出され日本へ留学という名目で人質に差し出された。

 人質と言っても日本にとって交渉カードになるわけではない。むしろルルーシュが死んだらブリタニアは堂々と日本侵略ができる、という釣りの餌のような存在だった。

 

 ピエールは何としてもルルーシュとナナリーを守ろうと護衛として日本へ付いて行った。

 ブリタニア人の3人はとても嫌われた。古臭い倉庫を仮住まいにされた時はナナリーが怒り狂った。ピエールは古きよき貧乏時代を思い出してこれもいいかなと思った。

 そこへスザクと名乗る少年が現れた。ボロ倉庫はスザクにとっては大切な秘密基地だという。スザクは「勝手に奪うな!」と怒鳴り、同年代のルルーシュに殴りかかった。そこへピエールが割って入った。先日姉が殺されたこともあり、ピエールは手加減がきかなくなっていた。スザクを腹をぶん殴り、一撃で入院が必要なほどのダメージを与えてしまった。

 

 これが国際問題に発展した。実はスザクは枢木首相の息子だった。

 日本はピエールに対する実刑を要求。ブリタニアは正当防衛を主張した。

 ブリタニアはこの裁判を利用してあらぬ言いがかりをつけていった。日本はルルーシュ皇子やナナリー皇女を苛めている、日本はブリタニアに戦争をしかけるつもり、などなど。

 この言いがかりがついには戦争へと発展してしまった。

 

 日本は見せしめにルルーシュ兄妹とピエールを殺そうとした。しかし刺客は全てピエールに殺され、果てには枢木首相さえもピエールに討ち取られた。これは、徹底抗戦を唱える枢木首相を嫌った国内勢力がピエールに味方したためでもあった。

 穏健派の桐原が政権を握り、戦争は早期終結。代わりに日本軍の多くが生き残り、テロ活動へ回った。日本はブリタニアの植民地となり、エリア11と名前を変えた。

 

「スザク! 僕は、ブリタニアをぶっ潰す!」

「おいルルーシュ! 瓦礫の中に冷蔵庫あったぞ! 食いもんも入ってる!」

 

 瓦礫と死体の中でピエールの泥棒スキルは役に立った。やがてピエール達はマリアンヌの後援をしていたアッシュフォード家に保護された。

 ルルーシュとナナリーは本人達の希望もあり死亡したこととされた。ピエールは生存して軍人を続行する。ピエールは日本の総大将を討ち取ったが、今後の統治のために表向きは首相の自殺とされた。また、皇族を守れなかったのでピエールの昇進はなかった。

 

 さらに7年の月日が流れる。

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