魔法が蔓延るこの世界で   作:ボルボル一世

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実験体

 

翌日、俺は基地を出て森の中を散策していた。

 

目的は実験体の確保。基地の研究室には一通りの道具が用意されていたが、施設が不十分な為ウィルス実験などの危険な実験や大規模な実験は行えない。なので手始めに、今できる小さい魔物や動物などの改造をやってしまおうと考えたのだ。

 

ついでだが、戦闘の感覚を取り戻す為でもある。自分で強化した身体はAクラスの魔物とも互角に渡り合えるが、戦えなければ意味はない。

 

強化された五感を総動員し、辺りの様子を探る。

 

 

…………ここだッ!

 

 

草むらに飛び込んだ体は持ち前の身体能力を遺憾なく発揮し、発見した動物を掴んで持ち上げる。

捕まえたのは蛇の魔物。キシャーと鳴き声をあげて俺の腕に噛み付くが、痛覚をほとんど遮断している俺にとっては関係ない。毒は無い種類なので毒の心配も無い。

ちなみにコイツは毒無しだが、腐っても魔物。木の上から落ちてきていきなり首に巻きつかれて首を折られて死亡する事故も多く、最下級クラスのEクラスのくせに『無知殺し』なんていう称号をつけられている。毒がある奴は多少知能を強化してやれば最強の暗殺者になるので、是非とも捕まえておきたい。

 

 

その後も狩りを続け、袋が全部なくなったので帰路につく。

 

基地に戻る途中、森の中に開けた場所があるのを見つけた。なんとなく行ってみると、その広場には薬草がこれでもかと生えていた。

 

「クリッサソウの群生地か。ラッキーだな」

 

珍しい薬草では無いが、群生地が見つかるのは珍しい。医療だけでなく多方面に応用が利くため、採取しておきたい。

屈んで採取を始めようとしたその時、嫌な予感がした。

 

即座に後ろに跳んで前を見ると、2匹の黒いクマが此方を睨んでいた。

 

「レベントベアか…チッ、油断したな。ここまでの接近に気付かないとは」

 

レベントベアはBランクの魔物だ。単体であればそこまでの脅威ではないのだが、繁殖期になると夫婦で行動するようになり、気性が荒くなるためかなり危険になる。放置して面倒なことになっても困るので、討伐しておくことにした。

 

「ガァァァァアア!」

 

1匹が大きく唸り飛びかかってくる。横に跳んで避けると、もう1匹が爪を此方に振り下ろした。

 

急いで回避するが、頬を少し切った。

爪を振り抜いて隙だらけの横っ腹に拳をねじ込む。

 

レベントベアは横に吹っ飛び木に衝突する。

空気の流れを感じて後ろを向けば、すぐ目の前に黒い巨体があった。

 

「ガッ⁉︎」

 

体当たりを受け吹っ飛び、木に叩きつけられる。

衝撃で実験体を入れていた袋が潰れた。

 

「クソッ」

 

前を見れば、いつの間に復活したのか殴ったレベントベアが二匹で並んで立っていた。

ふと1匹のレベントベアが地面を見て拳を振り上げた。

 

その目線の先を見た俺は急いでレベントベアに向かい、拳を受け止める。

 

「せっかく生き残った唯一の実験体だ。殺させやしねぇよ」

 

足元にはさっきの蛇。実験体を守るために敵に向かう自分はつくづく研究狂いだと思うが、それはこれまでの経験から理解している。

 

空いている手でレベントベアの首を殴り折る。

力なくレベントベアは倒れこんだ。

 

「グガァァァァ!!」

 

もう1匹が激怒し此方に向かってくる。

レベントベアの下にもぐり、蹴りを腹に打ち込む。レベントベアは一瞬中に浮いた後地面に叩きつけられ、痙攣した後動かなくなった。

 

「あー治るまで結構かかるなこりゃ」

 

頬の傷はすぐに治るが、肋骨が何本か折れている。

痛む傷を抑えながら下を見ると、蛇が此方を見上げていた。

 

「おいおい、逃げなかったのかよ。まあ、俺からしてみれば好都合だが」

 

蛇は何を思ったのか俺の身体を登り始めて、頬の傷を舐めてくる。

 

「………懐かれたのか?」

 

どうやら感謝しているらしい。

コイツにそこまでの知能は無いはずだが、変異種だろうか。

魔物の中には変異種と呼ばれる個体がいる。通常種とかなりの違いがあるため、コイツも変異種なのかもしれない。

 

折角なので使い潰すのはやめた。変異種の研究は久しぶりなのでワクワクするが、ここまで懐かれて使い潰すのはもったい無い気がする。

 

「名前をつけてやろう。そうだな………『カイン』でどうだ?」

 

爬虫類は表情筋がほとんど無いため無表情だが、心なしか喜んでいるような気がする。

 

カインを限界まで強化してやりたい。具体的にはAランクとタメはれるぐらい。

毒は確定として、基礎能力の強化や知能の強化。巨大化ぐらいはできるようにしてやろう。透明化なんかもいいかもしれない。

 

 

思わぬ収穫をした俺は、ワクワクしながら基地に帰った。

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