一色いろはは捻くれボッチの先輩なんて気にならない    作:せがぁる

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プロローグ

 

――青春と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。

少女漫画のような、白馬の王子様との出会いからの酸いも甘いもあるラブストーリー?

それとも、ハチャメチャなラブコメディ?

はたまた、酸いも甘いもあるほろ甘なラブストーリーだろうか?

まぁ、おそらくはそのようなことを大半な人は思い浮かべるんじゃないだろうか。

そして―ーきっと、そのような物語を浮かべる誰もが共通して疑いもしないことが一つだけ。

それは、自分がその恋愛の漫画とか小説の主人公であるということだ。

事実、私もそれを疑うことはなかった。

青春漫画や小説はよく読んでいたし、こんな青春を送ってみたいだなんて、高校入学を前にした私は考えてたりもしていたものである。

しかし現実はそうは甘くない。

私も含め、大半の人物は主人公とヒロインたちの恋愛模様を盛り上げるためのただの備え付け。

言ってしまえば、お寿司とかについてるあの緑色のギザギザのやつみたいなものだ。

つまり、そんな漫画みたいな恋ができるのは、恋愛の神様とかいういるのかどうかわからない抽象的な存在によって選ばれた、本当に一握りの人間だけということである。

だというのに、大半の人間はそんなことに気づかずに自分が主役だと信じて疑わない。

だからこそ勘違いし、間違い、傷つき、そしてそれを繰り返す。

何度も、何度も―ー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮に、青春=恋などという方程式が成り立つというのなら――。

そんな青春はやはり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間違いだらけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある日の放課後―ー時刻は16時38分。

冬が近い、ということもあり既に日は傾きかけ、窓からは西日が差し込んできている。

そんな中、私こと一色いろはは生徒会の仕事を終えて今まさに帰り支度をしているところだった。

私以外の役員は副会長を除いて全員帰ってしまっているのだが、それもこれも、私がいまだに生徒会の仕事に慣れずにいるからというところに起因する。

そのせいで、副会長が私の尻拭いのために犠牲になってしまっているのだ。

まぁ、こんなかわいい後輩と二人きりで仕事ができるんだから、役得ですよねー?

ほんとごめんなさい。

書記ちゃんと一緒に帰れず、少しばかり気落ちしている副会長の背中に対し、心の中で謝罪をしておく。

 

「それじゃあ一色さん。最後、鍵をかけるのよろしくね」

「あ、はいー。おつかれさまです」

 

そう言い残して副会長が部屋を出ていき、この部屋に残るのはとうとう私だけになった。

最後はお母さん、ならぬ、最後は生徒会長。

いそいそとマフラーを巻き、コートを着込んで扉を開ける。

――と。電気も忘れずに消してかないと。

ぱちり、と電気が消えたのを確認した私は生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

「さっむ…」

 

生徒会室の外に出た途端、寒さが私に襲いかかってきた。

予想だにしない寒さに、思わず身震いしてマフラーに顔を埋める。

生徒会室では暖房をつけていたのであまり気にならなかったけど、夕方になってくるともうかなりの寒さである。

冬が近い、ということを改めて実感する。

 

「ううー…今度からタイツも穿いてこようかな」

 

ぽそり、とそうつぶやくと同時に白い息も漏れる。

コートを着て、マフラーをしていてもこの寒さは耐え難い。

タイツは好きではないが、これも要検討しなくてはならないかもしれない、なんて考えつつガチャリと生徒会室のカギを掛けた。

扉を引いてみて、動かないことを確認した後、何気なく私は、小さくため息を漏らした。

 

「さて、と」

 

鍵を今から職員室に返しに行くとしてー…うーん。

今から行ってサッカー部やってるかなー?せめて葉山先輩にだけでも、挨拶しときたいんだけど。

鍵をブレザーのポケットへとしまう。

 

「とりあえず職員室に鍵を返しに行こう」

 

その途中でグランドの様子を見てみればいいか。

なんてことを考えながら、職員室へと向かっていると。

 

「あ」

 

ふと、見知った背中が視界に入った。

丸まった背中、ぴょんと立ったアホ毛、そしてこの世の終わりと言わんばかりの醸し出される負のオーラ。

そんな人物は、この学校には一人だけしかいないはずだ。

というか、二人もいてたまるか。

そして、まさかまさかの知り合いでもある。

なんであんな人に関わってしまったんだろうかと、今でも多々後悔しているのだが。

まぁ、職員室までの話し相手くらいにはなるかな。

 

「せんぱーい」

「…」

 

無反応。まぁ、予想通りだけど。

先輩はきっと、『先輩っていっても俺以外にもいっぱいいる、俺じゃない俺じゃない』なんて思ってることだろう。

…しかし、予想通りとは言え無視されるのはなんだか腹が立つ。

―ー私の脳内で、葉山先輩と先輩とで天秤の揺れ動く。

葉山先輩に挨拶をしに行って、『生徒会の仕事が終わった後でもサッカー部に顔を出す健気な後輩アピール』をして得点を稼ぐか、あるいは目の前の先輩に絡みに行ってウザがられるか二つに一つ。

…後者に何の魅力も感じないんですけど。

だが、結果として軍配は先輩のほうに上がったのだった。

理由は私自身でもよくわからない。

おそらく、私自身のプライド的にムキになっているだけだろう。

 

「せんぱーい!せんぱーい!!」

「…」

 

再び先輩へと声をかけてみる。

すすと、一瞬先輩の歩みが止まったような気がしたが、それでもこちらに振り返ることはなく、すたすたとこの場を去ろうとする。

しかも、心なしか足早になった気がしなくもない。

なんだか露骨に逃げられてるみたいで、癪に障る。

そんなことするんだったらこっちにも考えがあるんですからねー。

小走りから、徐々に速度を上げながらターゲットへと接近。

そして。

 

「とりゃー!」

「うおぅ!?」

 

先輩の背中に飛びついた、と同時に先輩から素っ頓狂な声があがる。

それがおかしくて、私は抱き着いたままくすり、と小さく笑みをこぼした。

 

「ちょ、おま、いきなりなにして…!」

「いきなりじゃありませんー。さっきから先輩って呼んでるじゃないですかー」

 

取りあえず反応を示したことに満足して、先輩から体を離す。

私に抱きつかれたからなのか、その頬は赤い。

照れている先輩とか、なんか気持ち悪い。

 

「基本的に俺は名前で呼ばれた時しか反応しないし、例え手を振られたとしても振返ったりはしない。なにせ俺にはそう言った交友関係はないからな」

「どうしてドヤ顔で、そんなこと言えるんですか。それじゃあ比企谷先輩、って呼べば反応してるんですか?」

 

うわ、言っておきながら凄い違和感。

先輩は先輩であるからこそ、先輩なのであってそれ以上でもそれ以下でもない。

ということは先輩を、先輩以外の呼び方をするのはおかしいのである。

少なくとも私の中では。

 

「いや、まぁ…そりゃ、そうよばれりゃ、な」

 

と、少し照れくさそうに答える先輩。

いつもと違う呼ばれ方に、照れてるんだろうか。

 

「キモイです」

「おい、真顔で言うのやめろ。泣くから」

 

おっと、どうやら声に出してしまっていたみたい。

失敗失敗。てへぺろ。

心の中で頭をこつんと叩くと、先輩が大きくため息を吐いた。

 

「んで、なに? 俺に何か用?」

 

なんか、ものすごく鬱陶しがられてる。

 

「なーんか対応雑じゃないですかー? こーんなにも可愛い後輩に構ってもらってるっていうのに」

「なんで俺が構ってもらってる体なんだよ」

「ちなみに、別に用事はなにもないです」

「じゃあなんで抱き着いてきたりしたんだよ…なんなの お前。俺のこと好きなの?」

「え、なんですかそれってもしかして告白のつもりですか。だとしたらもうちょっと雰囲気を考えてほしいですし、そもそも私には好きな人がいるのでごめんなさい!」

 

ばっ、と頭を下げると、先輩からは『あーはいはい』という声が聞こえてきた。

なんていうか扱いがぞんざいでならない。

頭をあげて窓の外を見ると、いつの間にかずいぶんと暗くなってしまっていた。

グランドの様子もよく見えない。きっとサッカー部も引き上げたことだろう。

うーん、一人で帰るのちょっと怖いなぁ。

割と最近は暗くなってから帰ることが多いから、多少は慣れはしたけれど。

なんて思いつつ、先輩へと視線を戻す。

…そうだ。せっかくだし、先輩と一緒に帰ってあげよう。

だけど、こっちから誘うのは癪だし、先輩が誘いやすくなるようにしておいてあげよう。

きっと、先輩にとって誰からを帰りに誘うなんていうのはハードル高いだろうし、ましてや私のような可愛い後輩い相手ならなおさらだろう。

ああ、なんて先輩想いな後輩なんだろうか私は。

 

「私、これから職員室に行って鍵を返さないといけないんですよ」

「ほう」

「で、それを返したら帰るつもりなんですよ。でも、最近ってほんと日が落ちるの早くなりましたよね」

「確かにな」

「こんなに暗いと、一人で帰るのは少し怖いんですよね」

「なるほど」

「誰かと一緒に帰れたら安心案ですけどね」

「まぁ、そうだな」

 

これで、誘いやすくなりましたよ先輩!

さぁ、かもん!

 

「というわけで、職員室に行ってきますねー」

「そうか。じゃあな」

 

先輩が背を向けて、すたすたと歩いていってしまう。

………って、ええーーっ!? ここまで振っといて帰っちゃうの!?

一瞬呆気に取られてしまったが、慌てて先輩を追いかけてその袖を掴む。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

「なんだよ。さっさと職員室に行くんだろ?」

「あれだけ話を振っといて一緒に行ってやろうか、とか待っててやるよとかないんですか!? とくに後者! 外はもう暗いんですし!」

「俺に何を期待してんだお前。外が暗くなってるんだったら、早急にかつ危急に家に帰んないといけないんだけど。寒いし」

「ですから一緒に帰りましょうよー。ほら、一人よりも二人ですよー」

 

結局私が誘うことになってしまった。ぐぬぬ。

 

「俺は二人よりも一人の方がいい。気を遣わなくてもいいし」

 

しかしそれでも先輩は、うんとは言わない。

ああもう! 分かってはいたけど面倒な先輩だな!

 

「とーにーかーく! 待っててくださいよ! 待ってなかったら、あることないこと結衣先輩に言いつけますから!」

 

と、言いながら先輩の横をするりと抜けて、職員室へと向かう。

先輩の答えは聞かない。

 

「ちょ、それは横暴だろ! つーかなんで由比ヶ浜に言うんだよ!」

 

あーあーきこえなーい。

先輩の抗議の声を後ろに聞きながら、私は少し小走り気味に職員室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

職員室へと向かう道中。

 

「それにしても」

 

私は一人そうつぶやき、首をかしげる。

 

「なんで、あんなこと言ったんだろう?」

 

謎だ。

…いやいや、なんでもなにも、外が暗かったから一人で帰るにはちょっと心細くて、そこに先輩がいただけってこと以外に何も理由なんてないんじゃないか。

まぁ、頼りがいはないけど。

 

「うーん?」

 

いやいや、それより前もおかしい。

私が葉山先輩を差し置いて、先輩を優先するなんて。

謎だ。

わけのわからない自分の行動に頭を悩ませつつ、職員室へと向かう私なのだった。

 

 




皆さん初めまして!
せがぁると申します。
このたび、こちらで小説を投稿させていただくことになりました。
えーっと…ここって何を書くべきなんですかね?
いまいちよくわかってないですが、よろしくお願いします。

それから、ここまで読んでいただきありがとうございました!
是非ぜひ感想なども頂けるととてもうれしいです。

それでは、今回はこのあたりで!
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