カチカチ、とマウスを操作してページを更新していく。
表示された内容にさっ、と目を走らせ、めぼしい情報が無いことを確認すると、再びマウスを操作する。
それを繰り返し、何度も行っていたリヴァルだったが、遂に限界に至り、だーッ、と声を上げながら机に突っ伏した。
「駄目だー。やっぱ、どこのサイトも同じ。特区内で暴動が発生。それに黒の騎士団が関与。これを受けてコーネリア総督が鎮圧に乗り出したってだけ」
突っ伏した体勢のまま、リヴァルは顔だけを動かし、PCに表示されている何度も目にした内容を疲れた目で読み上げた。
「TVの方もおんなじ。やっぱり、情報規制が掛かってるわね、コレ」
リモコンを操作し、TVのチャンネルを変えていたミレイも、困ったような笑みを浮かべて肩を竦めた。
「それって、結構、大事になっているってことですよね?」
「そうね。ただの政策の失敗ってだけなら、マスコミがこんなに大人しい訳ないし……」
暴動が起こったのも、コーネリアが鎮圧に向かったのも、日が沈む前の事だ。
それから、日を跨ぐ程に時間が経っているというのに、情報は更新されるどころか、未だに錯綜中である。
加えて、詳細は分からないが軍の動きが慌ただしいという情報もある。
事が大きくなっているというのは、決して間違ってはいないだろう。
行儀悪く机に座って長い足を組みながら、リモコンを口元に当てて、ミレイが思案する。
それに、リヴァルの男心が擽られるが、耳に入ってくるカタカタカタカタ、カチカチカチカチ……、とひたすら止まらずに聞こえてくるキータッチの音に燃え上がることなく、鎮火する。
同じように、極力聞かないようにと頑張っていたミレイも誤魔化しきれなくなったのか、笑みを引き攣らせていた。
「で、でも、ユーフェミア様が負傷したって、情報はどこにもなかったですよッ?」
なら、大丈夫って事っすよね! とわざとらしく明るく言うリヴァルに、ミレイも頷いた。
「そうね! もし、お怪我をなさっていたら、規制掛かっていても、誰かが漏らしているわよ。絶対!」
根拠のない空元気だったが、少しは二人の気持ちが伝わったのか、タイピング音が僅かに小さくなった。
それに、ホッとしたリヴァルが、さらに話題を変えようと陽気な感じを装って口を開いた。
「あ、でも、こっちはどうなんですかね? ゼロがユーフェミア様を庇って撃たれたっていう―――」
カチカチカチカチカチカチカチ!
「ひぃッ!」
大きくなった携帯を弄る音に、リヴァルは情けない悲鳴を上げた。
いつもとは、スイッチの入る場所が違ったため、物の見事に地雷を踏み抜いてしまったようである。
「あー、うん、どうなんだろ? 映像だと庇っていたのは確かみたいなんだけど………」
情けない後輩のフォローをしようとするミレイだが、情報が不鮮明なため、曖昧な事しか言えない。
特区式典の様子はTVの生中継で、世界中に配信されていたが、暴動が起こるとパニックと規制からか、中継はすぐに途絶えてしまった。
故に、彼女達が最後に見たのは、獣のような声を上げて、ユーフェミアに銃を向けた男と、パンッ、という乾いた銃声の音、そして、それからユーフェミアを庇った、――もしくは庇ったように見えたゼロの姿だけだった。
言葉を失い、口を閉ざすミレイとリヴァル。
目に見えない重圧に、冷や汗を流しながら、二人はそろそろと重圧の発生源となっている一角に目をやった。
「………………」
「………………」
そこに、脇目もふらず、一寸不乱にPCと携帯を操作し、少しでも目的の情報を――つまりは、ユーフェミアとゼロについて――得ようと奮闘しているシャーリーとニーナの姿があった。
「あ、あのー、お二人さん? ちょっとは、休憩したら? 夕飯だって食べてないでしょ?」
鬼気迫る様子を見せる仲間の体を慮ったリヴァルが、地雷を踏み抜く覚悟で、もう何度目になるか分からない台詞を、恐る恐る口にする。
「平気」
「大丈夫」
そして、再び返される取りつく島のない答えに、はあ~、とミレイと二人、重い息を吐き出した。
そして、共に苦笑いを浮かべると必死になっている少女二人のお眼鏡にかなう情報を、また探し始める。
両者とも、いかにも、しょうがない、という感じではあるが、本当に呆れている訳ではない。
もし、本当に呆れているなら、日が変わるまで、面識のない、それこそ雲の上のような存在の安否確認を手伝ったりはしないだろう。
とはいえ、少女達の行動に全く疑問を抱かない訳じゃない。
ニーナは、まだ、分かる。
ここ最近のニーナの、命の恩人であるユーフェミアへの熱の入れようは、生徒会仲間なら皆知るところである。
実際に、特区の中継の最後の映像を見たときの彼女の取り乱しようは、酷いものだった。
ミレイやリヴァルが必死に宥め、落ち着かせる事に成功していなければ、彼女は、今頃、特区に向かっていたに違いない。
それほどまでにユーフェミアを敬愛しているのだから、ニーナのこの必死な様子も納得出来る。
だから、リヴァル達が不思議に思うのは、もう一人の方。今も、携帯の画面を食い入るように見て、そこに望んだ情報がない事に悔しそうな表情を見せているシャーリーの方だった。
ここまでの言動を見るに、彼女が安否を気にしているのはユーフェミアではなく、どうにもゼロの方らしいのだ。
それが、リヴァル達には、分からない。彼等にしてみれば、シャーリーにとってゼロは、父親を半死半生にした仇のような存在のはずだ。
そのゼロの事を、どうしてここまで心配しているのか。込み入った事情がありそうなので、聞くのは憚れるが、疑問と興味は尽きない。
何せ、彼女が、こうまで必死になるのは、彼女が恋してる男の子関連くらいなものだと思っていたからだ。
「まーったく。こんな時にホント、ルルーシュ君はどこに行ったんだか……」
不真面目だが、何やかんやで優秀な副会長がいれば、自分達では想像出来ないような方法で、知りたい情報を得ることが出来たかもしれない。
何の気なしに、そう呟いたリヴァルの言葉に反応して、カチャッ、と陶器の音が不自然に響いた。
「あ………、悪い。ナナリー」
自分の発言の迂闊さに気付いたリヴァルが、寂しそうに眦を下げているナナリーに謝罪する。
その声に、ナナリーはハッ、とすると首を振りながら儚げな笑みを浮かべた。
「いえ、私の方こそ、すみません」
気を遣わせたと思ったのか、ナナリーが頭を下げたのを見て、ミレイが、しらー、とした目をリヴァルに向けた。
「大丈夫よ。ナナちゃん」
リヴァルからナナリーに視線を戻し、ミレイが明るい声で話し掛けた。
健気に心配ないと言わんばかりに微笑みを絶やさずにいるが、やはり、普段と比べて顔色が悪い。
気丈に振る舞える強さは持ち合わせているが、目の見えない彼女は感受性が強く、繊細だ。
加えて、身体もその印象通りに強い方ではないため、精神の不調が、そのまま、身体の不調に繋がりやすい。
そのため、昼の特区での暴動は、ナナリーには堪えた。
何しろ、その暴動の中心にいたのは先日、久方ぶりに会えた腹違いの姉と長く離ればなれになっていた幼馴染みなのだ。
心配にならないわけがない。
ましてや、ナナリーは幼い頃に、テロによって肉親を失っている。
また、再び、同じように近しい人を失うのでは、とそう考えても不思議ではないだろう。
安否が分からない事への不安。喪失への恐怖。
そして、何より。
こんな時、いつも側に寄り添って自分を守ってくれていた最愛の兄がいないという事実。
それらの強い負の感情は、瞬く間にナナリーの心と身体を蝕んだ。
目に見えて、血の気が失せて、崩れ落ちそうな雰囲気を醸し出しながらも、心配かけないようにしようとするナナリーを見かねたミレイが、少しでも気持ちを和らげられるようにと、兄が帰ってくるまで共にいることを提案。そして、夜が更けてからも、一人にさせることを躊躇われた事もあり、ナナリーはそのまま、ミレイ達と共にルルーシュの帰りを待っていた。
「うん。大丈夫よ、ナナちゃん」
目を閉じた顔を向けてきた、自分達にとっても妹のような存在の少女に、顔を近付けて、ミレイは優しく言い聞かせるように、もう一度、大丈夫と告げる。
「スザク君は、強いもの。暴徒なんかに負けたりしないわ。きっとユーフェミア様を守ってくれたわよ」
だから大丈夫、と言う芯のある声に、ナナリーも微笑む。
「ええ……、そうですよね。スザクさんなら、きっと……」
「そ! それにルルちゃんも、もうすぐ、帰ってくるわよ。こんな状態のナナちゃんを放ったらかしにするルルちゃんなんて、想像出来ないもの」
「そうだぜ、ナナリー。今頃、ゼェゼェ言いながら、大慌てで帰ってこようとしてるって」
その姿を想像したのか、ミレイとリヴァルが声を出して笑う。それに釣られて、ナナリーもクスクス、と小さな笑い声を上げた。
「ありがとうございます。ミレイさん、リヴァルさん」
先程よりも、自然な笑みで礼を言ってくるナナリーにミレイは、うむ! と大仰に頷いた。
そして、喋って喉が渇いたのか、紅茶を飲もうと側に置いてあったティーカップを手に取って。
「ありゃ」
もう、既に飲み干していた事に気付き、残念そうに口を尖らせた。
「ミレイ様。お飲み物が必要でしたら、私がご用意致しますが?」
それに気付いた咲世子が、ナナリーの横から声を掛けた。
「ん……、そうね。まだ、大分、掛かりそうだし、お願いしても良いかしら?」
ちらり、と横目でシャーリーとニーナを見て、まだまだ、納得しそうにない二人の様子に、ミレイがそうお願いした。
「分かりました。では、皆様の分も。ナナリー様、お持ちのカップを私に。中身が冷えてしまっているので、お取り替え致します」
「あ、はい。ありがとうごさいます、咲世子さん」
礼を言いながら、カップを渡してくるナナリーから、それを受けとり、咲世子は飲み物を淹れるために生徒会室を出た。
そうして、ダイニングに向かおうとしたその時、人気のない廊下に、携帯の着信音が鳴り響いた。
それが、自身の携帯からだと気付いた咲世子は驚きに目を軽く見開いた後、見覚えのない番号に、普段のおっとりとした表情を引き締めて通話ボタンを押す。
「――はい」
『篠崎咲世子だな?』
耳に当てた携帯から、僅かにくぐもった男の声が聞こえてきた。それに咲世子が警戒し、沈黙するが、続けて男が咲世子の騎士団登録ナンバーを口にして騎士団関係者だと証明すると、警戒を解いて返事を返す。
「はい」
『単刀直入に用件だけを伝える。これより、君に指令を与える。ランクゼロの最優先命令だ』
男が告げた内容に咲世子はギュ、と携帯を強く握り直した。
ランクゼロ。
黒の騎士団並びにその関係組織において、他のどんな命令よりも優先される最上級指令ランク。
その全てが、機密事項等に関わる極秘指令であるため、よほど信頼を勝ち得た者か、もしくは実力を示した者にしか下されない。
それが、末端の、しかも、外部協力者と言っていい自分に下された事に咲世子は驚く。
そして、気付く。電話口の相手が誰なのか。
このランクの命令を出来る人物は一人しかいない。
黒の騎士団首魁、ゼロ。彼一人だけである。
「…………なんなりと」
流石に驚いた咲世子だったが、それでもプロの仕事人として培ってきた精神で、動揺を言葉に表さずに返答することに成功する。
しかし、そんな咲世子でも、次にもたらされた事実には言葉を失ってしまった。
『助かる。これは貴女にしか頼めない事だ。………お願い出来ますか?』
『――――咲世子さん』
軽い微笑を孕んで、自分が忠義を尽くす男の声が聞こえてきた。
「――ええ。では、もしもの時はそのように」
一際、慇懃な了承の言葉が電話口から流れてきたのを確認すると、ルルーシュは通話を切った。
「咲世子を使うのか?」
話を聞いていたC.C.の問いに、ルルーシュは首を横に振る。
「唯の保険だ。…お前の話を聞く限り必要になるとは思えないが」
だが、何が起こるのか分からないのが実戦であり、現実である。
罠も、策も、保険も、二重三重に張り巡らせて、初めてその威力を発揮する。
打てる手、然るべき対策があるのなら、それが結果的に意味を為さなくとも、手を抜くつもりはルルーシュにはなかった。
「扇、艦内の制圧は完了したか?」
アヴァロンの制圧を命じていた副司令に進捗状況を求める。
「……? おい、扇。何かあったのか?」
『! あ、ああ、ゼロ? どうしたんだ?』
再度の呼び掛けに、ようやく気付いた扇が反応の鈍い返事を返してきた。
「艦内制圧は完了したのか?」
『ああ、だ、大丈夫だ。艦橋の制圧も、もうすぐ――』
「急げ」
短く、少し語気を強くして命じてから、ルルーシュは荒っぽく通信機をオフにする。
くく、という面白がるような笑い声に視線をやれば、魔女が愉快そうに笑っていた。
「どうやら、副司令殿はトウキョウにいる恋人の事で頭が一杯らしいな」
まさか、本当にあの絶望的な状況から一転して、トウキョウに攻め込むという逆転劇が展開されるとは思っていなかったのか。
首都奪還が現実味を帯びるのと同時に、トウキョウが戦場になった時のブリタニア人の恋人の安否が気になって、扇は作戦に身が入らなくなっていた。
「………これも手を打っておかないとならないか」
面倒臭そうに溜め息を吐き、ルルーシュはガウェインのコックピットのハッチを開いた。
突き付けられた銃口に、壁際に寄せられていたセシルは小さく息を飲んだ。
トウキョウ租界へ最速で到達するための手段としてゼロに標的にされたアヴァロンは、あっさりと敵の手に落ちた。
元々、試験運用中であることもあり、アヴァロンにはランスロット以外のナイトメアも戦闘要員も配置されていなかったのだ。
だから、唯一最大の戦力であるランスロットが落とされ、さらに行動不能に陥った総大将とエースに銃口を、アヴァロンの艦橋にガウェインのハドロン砲を向けられれば、非戦闘員でしかないセシル達に選択の余地など残されてはいなかった。
「スザク君……」
先程、徹底的に打ちのめされたであろうパイロットの少年を思い、セシルは彼の名を呟く。
戦闘の途中から、感情と思考のコントロールが出来なくなっていたスザクの耳には、セシルの声は聞こえなくなっていた。
セシルがどれだけ声を張り上げて、落ち着いて、後退して、と呼び掛けてもスザクに届くことはなかった。
その事を思い出し、セシルは唇を噛む。
スザクが、何かしら心に傷を持っていることは分かっていた。
だが、ナリタでのあの酷い錯乱を見ていた事と、唯の仕事仲間でしかない自分に、ずかずか踏み込まれては迷惑だろうと考え、ここまで来てしまった。
その結果がこの有り様だ。
(もっと………)
もう少し、上手くやれなかったのか、とセシルは自分を責めた。
上司として、同僚として、――そして、大人として。
戦闘技術は卓越していても、まだまだ不安定な心で、一人、祖国を奪った敵国の中に身を置く子供に、何か、もっとしてやれることはあったのではないかと、セシルは自身の不甲斐なさを悔やんだ。
そんな風にセシルが後悔の念に駆られていると、シュン、とドアの開く音が聞こえてきた。
それに隣にいるロイドがおやぁ? と珍しいものを見たときのような声を上げたので、俯いていたセシルも何だろうと思い、顔を上げて。
「ゼロ…………!」
瞳に映ったその無機質な仮面の輝きにふる、と身体を震わせた。
艦橋にいたその二人の姿に、ルルーシュは仮面の下で、その瞳を少しだけ、懐かしそうに細めた。
ロイド・アスプルンド。
そして、セシル・クルーミー。
共に、『前回』の最後、スザクと一緒にルルーシュに合流し、ルルーシュの決意に覚悟を持って応えてくれた数少ない人物達だった。
手荒な真似は避けろと命じていたので、二人とも怪我は無さそうだ。
一瞥して、その事を確認するとルルーシュは二人に声を掛けようとして。
「あ、あの…………ッ!」
思い切った、と言う様に先んじてセシルが声を掛けてきたので、ルルーシュは先に相手の発言を許した。
「何だ?」
「え? あ、えっと……」
てっきり無視されるものと思っていたセシルは、驚きに言葉を詰まらせる。
それでも律儀にルルーシュが言葉を待っていると、セシルは意を決して再度口を開いた。
「ス、スザク君は……」
無事なのか? という問いに、ルルーシュは意識して冷たい声を出して答えた。
「外に捨ててある。後で拾いにいくと良い」
「へぇ? それって、僕達を無事に解放するつもりでいるって受け取っても良いのかなぁ?」
興味がないという風に言い捨てたルルーシュの言葉にロイドが食いついた。
「それは貴方達次第だ。ロイド・アスプルンド伯爵」
「おや~? まさか、天下のゼロが、僕みたいなしがない貴族の事を知っているとは驚きだねぇ?」
「ロイドさん!」
聞き方によっては、相手を挑発しているようにも聞こえるロイドの物言いを、セシルが諌めようとするも、当の本人は何が問題なのか分からないという顔で首を傾げる。
内心、冷や汗のセシルだったが、ルルーシュは特に気にする素振りも見せず、言葉を続けた。
「無論だ。君の造った
ランスロットは、毎回、黒の騎士団の勝利にケチをつけていた因縁の相手である。ならば、その製作者について、黒の騎士団が情報を持っていても、確かに不思議な事ではない。
「成程ぉ。……なら、このアヴァロンにランスロット以外のナイトメアや戦力が無いということも、お見通しだったと?」
カチャ、と眼鏡を手で押し上げながら、ロイドは探るような瞳をゼロに向けた。
そのロイドの言葉に、セシルも隣でハッ、としたように口元に手を当てた。
言われてみれば、確かに、と思う。
このアヴァロンは、曲がりなりにも最新鋭艦。第二皇子シュナイゼルが、一時とはいえ、使用していた空中戦艦である。
普通に考えれば、中にも最新鋭の機体や十分な戦力が配備されていると思うだろう。
「枢木少佐の事もぉ。色々と知りすぎていたしぃ? そもそも、致命傷を負っていたはずだよねぇ? 君、さっきまでのゼロと別人だったりする?」
好奇か、探求か。
基本的に人間に興味を持たないロイドが、この時ばかりは、普段よりも饒舌だった。
「致命傷を負ったのに元気でいる以上、別人に違いない筈なんだけど。でも、君みたいなのが、二人も三人もいるとも思えないんだよねぇ?」
状況は、別人である事を示している。
だが、能力は本人である可能性を示唆している。
噛み合わない、ピースが足りない。
そんな感覚が科学者としてのロイドを刺激していた。
「その質問に意味はない。ゼロの真贋は中身ではなく行動と結果によって問われる。中身が何者であれ、ゼロに足る結果を示せば、それがゼロだ」
「ふ~ん……?」
答えになっていないルルーシュの返答に、ロイドは何か感じるものがあったのか、敵であるルルーシュの目の前で思考に没頭する。
「君……、僕達が思っている以上に厄介な存在みたいだね?」
そして、短い思考の間に、一応の答えが出たのか、ロイドがそう言ってきた。
「誉め言葉と受け取っておこう」
そう答えながら、ルルーシュは内心で、ロイドの事を評価する。
大抵の場合、過程に矛盾や疑問があっても、結果が奮えば、人は自分の中で納得のいく形に収めて、消化するものだ。
黒の騎士団はそうだった。コーネリアも、おそらく、スザクもそうだろう。
だが、ロイドは違った。
知りすぎていること。
死んでいてもおかしくない人間が生きていること。
それらを勢いや奇跡と言う言葉で消化せず、受け止めた。
そして、そこにある『今までのルルーシュ』と『今のルルーシュ』の齟齬に気付いた。
(やはり、優秀だな。ロイド)
コードやギアス、そして、時間逆行という非科学的な現象の実在を知らない以上、ロイドが答えに辿り着く事はない。
しかし、それでも、自分の知らない何かがルルーシュにはあるのだろうと理解したようだった。
「さて、質問は終わりだ。すまないが、君達を拘束させてもらう。大人しく従うなら、身の安全は保証する」
ルルーシュがそう言うと、周りにいた黒の騎士団の団員達がカチャリ、と音を鳴らして銃を構え直した。
「…まあ、仕方ないね」
そう言って、へらり、と笑うと、ロイドは両手を上げて、降参の意思を示した。
「ロイドさん………」
隣から聞こえてきた心配そうな声にロイドが肩を竦める。
致し方ないとはいえ、敵に無抵抗で投降し、最新鋭艦を明け渡したとなれば、ロイドの立場は悪くなるだろう。
現状、エリア11、コーネリアの指揮下にいる以上、ひょっとしたら、叱責だけでは済まないかもしれない。
「気持ちはありがたいけど、ちょっと、相手が悪すぎるねぇ。僕達の手に負える相手じゃないよ? 彼」
くい、とアゴでゼロを示すロイド。
「それは、確かにそうですけど…………」
「大人しくしていたら、解放してもらえそうだしぃ? 僕としてはランスロットが弄れれば、それで………、ああッ、そう言えば、僕のランスロット! ぼ、ボロボロに壊され…………」
ランスロットを撃墜された事を思い出したのか、ショックを受けたロイドが、ガクリと首を折った。
「はあ、………仕方ないですね」
ロイドの姿に呆れて、ため息を吐くとセシルもゆっくりと両手を持ち上げる。
確かにロイドは心配だ。だが、同じように心配な少年もいるのだ。
正しさに囚われ、死を望む男の子が。
それを思うなら、ここで死ぬわけにはいかない。
このまま、終わりにさせたくはない。
だから。
「投降します」
覚悟を決めて、生き残るために、セシルも投降の意思を示した。
アヴァロン速達便の話、一話で終わらす予定だったんですが、長くなってきたので切ります。
次回。
アヴァロン×ルルC=???