コードギアス ~遠き旅路の物語~   作:アチャコチャ

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 すみません。
 色々あって、遅くなりました。


PLAY:11

 皮肉な話だ。

 

 

 ――みんな、どうして……? 修学旅行は?

 

 ――俺達だけで行ったら泣くでしょ? 君

 

 ――旅行なんてのはね、何処に行くかじゃなくて、誰と行くかなのよ。

 

 

 優しい世界が欲しかった。たった一人の妹が健やかに、安らかに生きていける平和な世界が。

 今の彼女を取り囲む優しい日常が、これからもずっと続いていくように、とそう願い動いた。

 

 

 ――それは………?

 

 ――ああ、これ? 願い事が叶うって言うから作ってみたの。誰に教わったのか、どうしても思い出せないけど……

 

 

 だというのに。関わらせる事はなかったというのに。

 巻き添えにしてしまった。犠牲にしてしまった。

 結局、自分のしたことは、その日常を壊す事だった。

 

 

 ――何を願ったんだ?

 

 ――もう、叶ったよ。少しだけ、皆と一緒に花火がしたいなぁって。

 

 

 一人の敬愛を憎しみに変え、狂気に走らせた。

 一人の感情と記憶を滅茶苦茶にし、その果てに自身の運命に巻き込み、命を落とさせた。

 三人の記憶を好き勝手に弄られ、一年という時を自らを閉じ込める檻を彩る人形として無駄にさせてしまった。

 そして、妹は。

 あれほど遠ざけようとしていた、あの澱んだ感情とどす黒い欲望と身動ぎすら出来ない程の権謀の渦巻く場所へ、一人連れ戻される羽目になってしまった。

 

 

 ――――皆。

 

 

 自分が何もしなければ壊れることのなかった、あの夏の日のように美しく優しい世界。

 望めば、まだ、選べるだろう。今、全てを投げうれば、まだ、その世界に戻れるだろう。

 そんな可能性を前にして、しかし、首を横に振る。

 それは違う。そうではないと。

 彼女達を守る事と、その世界を守る事は、決して同義ではない。

 少なくとも、壊れない『今日』という日を続けていきたいが為に、この道を歩んできた訳ではない。

 だから、今、自分がすべき事は向き合う事。

 彼女達に闇が降りかかった時、少しでも、それを見透せるように。

 理不尽な運命から、遠ざけられるように。

 例え、それが再び、今までを壊す事になろうとも。

 

 

 ――――また、ここで…………

 

 

 例え、二度とその世界に還れなくなろうとも。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、ここだ。アイツもよく使う抜け道だ。見通しが良さそうに見えるが、正門方面からは死角になっていて意外と気付き難い。監視カメラもないから、もしもに備えて守りを固めておけ」

「わ、分かった。手配しよう」

 学園の見取り図の上にトン、と指を置いて淡々と説明をするC.C.の言葉に従って、扇が団員達に指示を出していく。

 今、一行がいるのはクラブハウス一階の大ホール。

 そこを本陣と定めた黒の騎士団は、現在、敵の襲撃に備えて防御を固めている最中だった。

「それと、ここもだ。ナイトメアでは周りの建物が邪魔で突破は難しいが、生身なら話は別だ。乱戦に持ち込みやすいから狙われる可能性が高い」

 トン、トン、トン、とC.C.の細い指先が次々と見取り図の上を踊る。

 どこか面倒そうに、そして投げやりに聞こえるが、その内容は的確で早い。

 きちんとこのアッシュフォード学園という場所の特性を理解し、それに添って決められていく守備配置は戦略として十分通じるものであり、特に可笑しな点は見られない。

 ただ、普段、彼女の黒の騎士団への関心の無さや、やる気の無い態度からは、こんな指揮官のような姿は欠片も想像出来なかった為に、扇はC.C.が口を開く度に驚きを隠せずにいた。

「………おい、いい加減、その鬱陶しい態度はやめろ。不愉快だ」

 最初は気にも留めていなかったが、毎回、口を開けば、奇異なり戸惑いなりの視線を向けられ、ぎこちない応答をされれば、不快感の一つも湧いてくる。

 不機嫌だと全力で訴えてくる鋭い目付きで睨み付けられ、扇はその視線から逃れるように顔を背けた。

「す、すまない……。そ、それにしても、君も随分とこの学園について詳しいんだな」

 話を変えようとして、扇は思った事をそのまま口にした。

 それにC.C.は、何をそんな今更な事を聞くのか、というように眉を寄せながら、素っ気なく答えを返す。

「当たり前だ。ここは私にとってもホームのようなものだ」

「……ああ! 君もここの学生だったのか!」

 ポン、と納得したように手の平に拳を落とす扇。

 完全に的外れである。もう少し下世話な考えが出来れば察する事は出来たであろうが、良くも悪くもお人好しで通っている扇は、残念ながらC.C.の濁した物言いをきちんと汲み取る事が出来なかった。

 察しの悪い扇に、これみよがしな溜め息を吐いて、C.C.は扇にも分かるように言葉を付け加えた。

「違う。私はアイツと同じ部屋で寝泊まりしている。詳しいのは、それで、だ」

 学生ではない、とそう自分で口にしたその言葉に、C.C.は僅かに眦を下げた。

 少し前に学生をしてみたい、と思った事を思い出したからだ。

 即物的ではない、今までの魔女なら一顧だにしなかった平凡な願望。

 C.C.本人に自覚はなかったが、確かに『明日』を思い描いた小さな望み。

 その事を思い出し、そして、それが、まだ果たされていない事をC.C.は少しだけ残念に思った。

 その一方で。

 回りくどい言い回しを省いて告げられた、見た目は若い少女の、自身が属する組織のトップとの同棲発言に、扇は口をあんぐりと開けたまま固まっていた。

 目の前の、親友の妹と然して年が変わらなさそうな少女がゼロの愛人と囁かれている事は扇も勿論知っている。

 だが、当人はそれを否定していたし、ゼロに関しても女を囲うような印象を受けなかったので、人の好い扇は噂を鵜呑みにせず、変な邪推をする事もなかった。

 しかし、蓋を開けてみれば、この通り。

 やはり愛人で、ゼロとこの少女はそういう関係なのか。

 生々しい想像をしてしまいそうになり、扇は慌てて頭をブンブンと振った。

「変な勘違いをするな」

 その表情と様子から、扇が何を考えているか察したC.C.が小馬鹿にしたような笑みを見せた。

「単に他に行くところのない私が、アイツのとこに転がり込んでいるというだけだ」

「そ、そうなのか。それはすまない」

「構わないさ。誰かさんは保護した女と爛れた生活を送っているようだからな。変な想像をしてしまうのも、無理はない」

 年齢に似つかわしくない口調で、たっぷりと皮肉の利いた言葉が少女の口から紡がれる。

 それを聞いた扇はギクリとゼンマイの切れた人形のように動かなくなった。

「な、や、その、俺と千草は確かに恋人同士だが、そんな……」

「無理するな。反応が女の味を覚えたばかりのガキのようだぞ」

 くくっ、と愉しそうに喉を鳴らしながら、C.C.は獲物をいたぶる猫のように金色の瞳を細める。

「まあ、確かに良い身体をしていたからな。お前も、大分楽しめたんじゃないのか?」

 明らさまに嫌味と取れるその発言に、扇の頬が先程とは違う意味で朱に染まる。

「ッ、――べ、別に俺はそんなつもりでッ! ……い、いや、それより、君、どうして千草を知っているんだ?」

「さあ? どうしてだろうな?」

 勿体ぶって扇をひとしきりからかい、先程不愉快な思いをさせられた分の仕返しが出来て満足したのか、C.C.は興味を失ったように扇から見取り図に視線を落とす。

 その傍ら、この、ある意味ゼロより何を考えているか分からない少女が、最愛の恋人について含む発言をした事に気が気でない扇。

 ひょっとしたら、と有りもしない不安と心配を感じて、少し強めに問い質そうと口を開きかけた時だった。

「――――要さん!!」

 その声に何もかもが吹き飛んだ。

「おや? 噂をすれば、というやつだな」

 面白そうにそう言うC.C.の視線を追って、扇もそちらに顔を向ける。

 視線の先、向かったのはクラブハウスの入口。

 そこに、ずっと心配して、気を揉んでいた自分の恋人。

 両脇を黒の騎士団の団員に固められ、不安の中に安堵を滲ませた表情の、千草、と扇が呼ぶブリタニア人の女性が立っていた。

「千草ッ!!」

 瞬間、たまらず扇は駆け出した。

 応えるように彼女も。

 事情を知らない一般団員達が何事かと視線を投げるその中心で二人が抱き合う。

「要さん……ッ」

「千草ッ! ああ、良かった……!」

 腕の中にその感触を感じ、ここにいるという実感をしっかりと確認する。

 束の間そうしていたが、腕の中の恋人の、要さんと自分を名前を呼ぶ声に、名残惜しく感じながらも扇は身体を離した。

「要さん、あの、一体何が……、ここは何処でしょうか? それに、その、彼等………」

 再会の喜びと安堵が過ぎ去り、再び不安と戸惑いが顔を出してきたのだろう。

 不安そうな顔で、おずおずと窺うように周りを見渡すヴィレッタに扇は安心させるように笑顔を作る。

「安心してくれ、大丈夫。ここはアッシュフォード学園だ」

「アッシュ…………?」

「ああ。ほら、前に学園祭をやっていただろう? あそこだ。そして、彼等、いや、俺達は……」

 言葉を切る。唇を湿らせて滑りを良くする。

 そうしないと、喉の奥に言葉が引っ込んでしまいそうだった。

「千草、その、すまない……。ずっと君に隠していたが、俺は、………黒の騎士団の一員なんだ」

「え…………?」

「隠していた事は謝る! でも、言わせてくれ! 俺は君を騙すつもりはなかった! 今だって、君に危害を加えるつもりはない! 寧ろ、逆だ!」

 恋人の瞳に感じられた自分への信頼が揺れたのを目敏く感じ取った扇が、慌てるように捲し立てる。

「ここに連れてきたのは、万が一にも君に危険が及ばないようにするためだ。誰も君を傷付けたりはしない、――いや、俺がさせないッ!」

 力強く言い切り、扇はヴィレッタの身体を抱き締める。

「か、要さん……?」

「信じてくれ! 俺の君への想いに嘘はない。俺は本当に千草、君の事が好きなんだ! だから……」

「要さん……」

 赤裸々に気持ちを告白する扇。

 自分を抱くその背中が時折、震えている事に彼の本気が感じられ、ヴィレッタは、ふっと顔を綻ばせた。

 そして、その背中に手を回そうとする。

 大丈夫だと、自分も同じ気持ちだと、そう応えるように手を持ち上げた時だった。

「お楽しみのところ、申し訳ないんだがな」

 二人だけだった世界を裂くように、無機質な声が無遠慮に投じられた。

 冷や水のようなその声に、ハッ、と現実に引き戻された扇がヴィレッタを離し振り向くと、つまらなさそうな表情でこちらを見る魔女の視線とぶつかった。

「乳繰り合うんだったら、後にしてくれないか。見ろ。副司令が、いきなり女と絡み始めたから、連中、どうしたら良いのか分からない、といった顔をしているぞ」

 クイ、と顎で周りを示すC.C.に促され、扇も周りを見回す。

 そこには、指示を仰ぎにきた黒の騎士団の団員達が、戸惑いを露に扇とヴィレッタを遠巻きに見ていた。

 そこで扇は、ようやく自分が衆人環視の中でどれだけ大胆な発言をしていたか気付いたのだろう。

 あたふたと、先程の強気な態度を忘れたかのように顔を真っ赤にして動揺している扇。

 それに構わず、C.C.は扇の身体に半ば隠れるようにして立っているヴィレッタを一瞥する。

「―――――ッ」

 射抜かれるような冷たい視線に、怯えたようにビクッ、と身体を震わせるヴィレッタ。

 その生娘のような反応に、フン、と鼻を鳴らすと、もう関心が無くなったというかのようにC.C.は彼女から視線を扇に戻した。

「私はゼロに報告してくる。お前も猿みたいに女に鼻息を荒くする前に、すべき事をすませておけ」

 冷笑を浮かべたまま、C.C.はくるりと踵を返す。

 その動きに合わせて、彼女の長く鮮やかな緑色の髪がふわり、と靡いた。

「…………ゼロ?」

 その光景が、矢鱈とヴィレッタの目に焼き付いた。

 ぼんやりとした瞳で、歩みに合わせて髪が揺れる魔女の後ろ姿から目を離せないまま、彼女は一つの単語を口にする。

 意識しないままに、呟いたその言葉がやけに胸を疼かせる。

「? ……ああ、大丈夫だ、千草。ここにこうして君を連れて来ることはゼロも了承済みだ。いや、寧ろ、彼が……」

 その呟きを不安か何かと勘違いしたのか。

 扇が安心させるように状況を説明しているが、ヴィレッタの耳には入らない。

 扇の姿が目に入っていないかのように、C.C.が消えていった場所を焦点の合わない瞳で見つめながら、ヴィレッタはどんどん大きくなる胸の疼きに従うように、もう一度、呟きを漏らした。

「ゼロ………、緑の、髪の………女」

 そう呟いた瞬間だった。

 カリ、と失った記憶が引っ掻かれた。

 ズキン、と鈍器で殴られたかのような頭痛がヴィレッタを襲う。

 ――――アッシュフォード。学生。黒の騎士団。関係者。ゼロ。記憶。欠落。正体。

 頭痛を皮切りに、次々と浮かび上がってくる記憶の断片を受け止めきれず、意識が混濁したヴィレッタは立ち眩んだように身体をふらつかせる。

「―――ッ、―――ッ!?」

 誰かの声が聞こえるような気がする。

 しかし、それを気にしている余裕はなかった。

 グルグル、と意識を掻き回される。ともすれば、暗闇に沈みそうになる記憶の奔流は、一つの映像が頭に過るのを最後に収束に向かった。

 ―――夜の倉庫群。

 ―――ナイトメアから投げ出されるようにして倒れているゼロらしき人物。

 ―――そこに近付こうとする自分。

 ―――そんな自分に銃口を向ける

 ―――緑色の髪の女。

 

「――ぐさ! 千草ッ!?」

 声が聞こえる。

 水の底から浮かび上がるように、次第に鮮明になってくる声に、ヴィレッタは自分の意識が現実に帰還したことを悟った。

「千草ッ!? 大丈夫か?」

 突如として、頭を抑え、ふらつき始めた恋人に必死になって扇は呼び掛ける。

 意識を失ってはいないようだが、どこかぼんやりとしていて、呼び掛けにも気付いていないようなその様子に、心配が募る。

「千草、具合が悪いなら、何処か……」

 休める場所に、と思い、彼女の肩を抱こうと扇は手を伸ばす。

 だが……

「―――――」

「千草?」

 それを避けるようにして、ヴィレッタは距離を取った。

 その動きがまるで扇の手を拒むように感じた為、扇は戸惑ったように恋人の名前を呼んだ。

「………大丈夫、です。ちょっと、緊張が解けただけで………」

 大丈夫、とそう口にするが、頭を押さえ、目を合わせようとしない。

 さっきまでの甘い感じが嘘のように感じられ、そんな不安を誤魔化すように扇は、もう一度大切な恋人の名前を口にした。

「千草、本当に―――」

「大丈夫……です。本当に気にしないで、…下さい。……扇、………さん」

 心配する扇の言葉を遮り、頑なに大丈夫だと口にし続ける。

 だが、やはり、あまり大丈夫そうに見えない為、扇は彼女の身体の心配ばかりで、他に気を回す余裕はなかった。

 だから、気付かなかった。

 最後に彼女が口にした言葉。

 その中に含まれた僅かな違和感に。

 

 

 

 ゼロ。

 

 何の前触れもなく現れ、大胆不敵に神聖ブリタニア帝国に反逆の意を表明した稀代の革命家。

 正義の象徴。最悪の反乱分子。

 ナンバーズの希望。ブリタニアの害悪。

 両極端な二つの側面を持つその仮面の男の正体は、全てが謎に包まれており、誰も知らない。

 ナンバーズなのか。他国の人間か。ひょっとしたら、ブリタニア人か。

 人々の不遇に涙する聖人か。全てを打倒し、上に立とうと考える野心家か。それとも、理想に燃える何処かの国の皇子か。

 好悪はあれど、老若男女問わず、様々な人間がその正体について憶測を飛ばしてきた。

 かくいうリヴァルもその一人で、シャーリーがあんな目に遭うまでは、級友やらと色々な推測を打ち立て、好奇心を満たしていた。

 その正体が、今、目の前に晒されている。

 多くの人達が知りたがっていた世界で最も謎に包まれた人物の素顔が。

 だけど。

 

 それを前にして、リヴァルは少しも喜ぶ事も楽しむ事も出来なかった。

 

 沈黙が降りる。

 先程までの騒がしさが消え、微塵も動かない凍りついた空気がその場を支配していた。

 誰も喋らない。

 あまりの事実に固まる者。何を喋って良いのか分からない者。静かに閉口する者。

 沈黙の種類は違えど、誰も口を開かない。

 全員、見慣れた顔なのに。長く付き合ってきた人ばかりなのに。まるで、初めて会った時のような、――いや、その時ですら、こんな居心地の悪さはなかった。

 今まで一度としてなかった張りつめた空気の重さに、誰もが呼吸が苦しくなるのを感じた。

「なん、……だよ」

 ぽつり、と雫が落ちるように、静寂に声が零れた。

 発生源は、悪友、とルルーシュと呼び呼ばれる仲だった少年。

 呆然としたように表情は固まっていて、感情らしいものは窺えない。

 しかし、それが色々な感情がごちゃ混ぜになって許容を越えてしまった為だとルルーシュは理解していた。

「なんで……、どういうこと、だよ………?」

 リヴァルの口が、歪に歪む。笑おうとしているのだろう。冗談だろう? と笑い飛ばしたいのだろう。

「…………………」

 だから、ルルーシュは無言で首を振る。冗談ではないと。嘘なんかではないと、そう言うかのように。

「ッ、そん……、だって、じゃあ………」

 ポロポロ、と形にならない言葉が破片のようにリヴァルの口から零れ落ちる。

 思考が完全に固まってしまい、何が言いたいのか分からないまま、意味を持たない言葉だけが零れ続けていく。

「――――そう」

 そんな混乱の激しいリヴァルの横で、新たに口を開く者がいた。ミレイだ。

「やっぱり、許せなかったのね、貴方は」

 別にゼロではないかと疑っていた訳ではない。

 でも、不思議なくらい、ストン、と胸に落ちた。

 それは、きっと、心の何処かで思っていたからだろう。

 こんな光景が、いつか現実のものになるかもしれないと。

「それが貴方の選んだ道なのですね、……ルルーシュ殿下」

 

 殿下、という言葉にそれを知らなかった三人が目を丸くする。

 ミレイを見て、ルルーシュを見て、……そして、ナナリーを見て、とを繰り返す。

「……元、ですよ。会長」

 そこで、漸く仮面を外してから一言も喋らなかったルルーシュが口を開いた。

 何時ものように淡い笑みを浮かべて、何時ものような口調で。

「それに少し違います。確かにブリタニアという国の在り方は許せませんが、私怨で動いている訳ではありません。今の俺にとって、復讐(それ)は過ぎ去っていったものに過ぎない」

 復讐ではない。

 その言葉は、ミレイには意外だった。

 驚き、目を見開いて、ルルーシュの顔を見る。

 シャーリー程ではないにしろ、事情を知る者として、ミレイもルルーシュの事は、それなりに見ていたつもりだ。

 だから、意外だった。

 少なくとも、ミレイが見ていた限りでは、皇族や皇帝の話になった時、ルルーシュの瞳から暗い光が消える事はなかったからだ。

「なら……、なら、どうして………?」

「それは――――」

「ちょ、待っ、待って、……待ってッ」

 二人だけで話を進めていこうとするルルーシュとミレイの間に割り込むようにして、リヴァルが声を上げた。

「どういうことだよ、ルルーシュ。殿下って何だよ。そんなの、俺、全然……、いや、それより、ゼロって…………」

 友達だと思っていた。

 だから、全てとは言わずとも、それなりにリヴァルはルルーシュを分かっているつもりだった。

 優秀なくせに、不真面目で。基本的にやる気がないくせに、いざとなると頼りになって。

 妹の事が大好きで、妹の事ならどんな些細な事でも直ぐに気付くのに、あんなに分かりやすい同級生の好意には全く気付かない朴念仁。

 少しばかりズレてるけど、気の良い、自分達と何も変わらない男友達。

 そうリヴァルは思っていた。

 でも、次々ともたらされる真実は衝撃的過ぎて。

 自分は本当は何も分かっていなかったと思い知らされた。

 言外に、友達ではなかった、と言われた気がしてリヴァルはクシャ、と顔を歪めた。

「なあ、本当に、ゼロなのか…………?」

「……ああ」

「なら…………」

 そう言ってリヴァルが後ろを振り返る。

 その視線が、口を開かず、じっ、とルルーシュを真摯な瞳で見つめている明るい髪の色をした少女に向かっているのを見て、彼が何を言いたいのか察したルルーシュは先んじて答えを告げた。

「そうだ。シャーリーの事は、俺のせいだ」

「何で――――ッ!!」

 それが引き金だった。

 箍が外れたように自分を抑える事が出来なくなり、リヴァルは声を荒げた。

「何でだよッ! 何で――――ッ!」

 感情が膨れ上がり、噴き出した。

 沸き上がる気持ちのままに、リヴァルは言葉を吐き出していく。

「何でお前…………ッ!」

 本当なら言いたい事は沢山ある。聞きたい事だって。

 でも、今は、ただ、ひたすらに。

 悲しかった。悔しかった。

 何も知らなかった事が悲しかった。

 何も言ってもらえなかった事が悲しかった。

 黙っていられた事が悔しかった。

 気付いてやれなかった事が悔しかった。

 それがとても悲しくて、悔しくて、――やりきれなかった。

「友達だろ? 俺達………」

「ああ」

「なら―――」

「だが、友達だからといって、全てを話せる訳じゃない」

「――――――」

 それにリヴァルは言葉を失う。

 突き放されたような気分になり、ガシャリ、と崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。

「すまない」

 クシャッ、と頭を抱え、いたたまれない様子を見せるリヴァルに向けてルルーシュが謝罪する。

「正体を知れば巻き込んでしまうと思った。知らなければ、危険な目に遭う事はないと………」

 そこまで言って、いや、とルルーシュは自分の言葉を否定した。

 確かにそう考えてもいたが、一番に思う、本当の理由は別だ。

 何時もなら、心の奥底に置いたまま、決して口にしようとは思わないだろう。

 でも、今、この時だけは…………

「失いたくなかった」

 きちんと本当の気持ちを晒け出さなければならないと思った。

「嫌われるのが怖かった。拒絶されるのが怖かった」

 苦しく感じる事もあった。優し過ぎて。

 この世界だけで十分じゃないかと思ってしまいそうになりそうで。

 怒りも悲しみも、押し流されてしまいそうで怖かった。

 それほどまでに、優しい世界だったから。

「ここから、弾き出されてしまうのが怖かった」

 結局、胸に抱え続けた想いを捨て去る事は出来なかった。

 でも、彼等と居る場所を慈しむ気持ちも失わなかった。

 何も捨て去る事は出来なかった。

 だから、ルルーシュは日常と非日常を抱え込んできたのだ。

「酷い奴だろう? 沢山嘘を吐いて、隠し事をしておきながら、平然と友達面をしているんだから。……絶交、してくれても構わないぞ」

「出来る訳ないだろッ、………ばかやろぅ」

 俯いたままではあるが、間を置かずに怒り混じりの返答が返ってきた。

 その台詞と反応が、事ここに至ったリヴァルのルルーシュへの想いを如実に表していた。

「すまない、……ありがとう」

 そんな彼に、ほんの少しだけ微笑を浮かべて、ルルーシュはもう一度謝罪と、そして、感謝の言葉を口にした。

 

「お兄様………」

 自分を呼ぶ声が聞こえた。いつもとは違う固い声音だったが、それでも、誰の声か、考えなくても分かる。

「――――――」

 一度、瞳を閉じる。

 当に覚悟していたとはいえ、気持ちを締めておかないと、毅然とした態度を保てるか分からなかったから。

 瞳を開く。

 自分の心が、ちゃんと落ち着いているのを確認すると、ルルーシュは今までずっと自分の全てだった愛しい存在に向き直った。

「ナナリー」

 膝を折って、正面から向かい合う。

 覗き込んだ顔は、困惑と悲しみに彩られていた。

「お兄様……」

 もう一度、ナナリーがルルーシュを呼ぶ。

 本当に目の前にいる人が兄なのか、確かめたいと言うかのように。

 ―――確かめなくても、もう分かっているのに。

「ああ、俺だよ。ナナリー」

 努めて、平常通りに、優しくルルーシュが答える。

 いつもは優しくて、温かくて、愛されていると感じる兄の声。

 だけど、今のナナリーには、とても残酷な響きだった。

「お兄様が、……ゼロだったんですか?」

 形の良い眉を、キュッ、と寄せて、声どころか身体も震わせてナナリーが問い掛ける。

 信じられない。信じたくない。嘘であってほしい。違うと言って欲しい。

 祈るように、そう思いながら答えを待つナナリー。

 しかし、兄の答えは残酷だった。

「ああ、そうだ。俺がゼロだ」

「………どうして」

 再度問い掛けるナナリーの声は苦し気だ。

 首を何度も振りながら、喘ぐように、必死に言葉を紡いでいく。

「どうして、ゼロなんかに……ッ」

 肯定されて、尚、ナナリーには信じられなかった。

 ゼロという存在は大罪人だ。

 多くの人を傷付け、苦しめ、半分だけ血の繋がった姉達を危険な目に何度も遭わせた。

 スザクも言っていたではないか。

 ゼロは間違っている。卑怯者だと。

 そんなゼロと兄が結びつかない。

 優しい兄としての側面しか知らないナナリーには、ルルーシュがそんな非道な行いをするような人物だとは、どうしても思えなかった。

「ひょっとして、それは、私の()ですか…………?」

 だから、思ってしまった。

 ひょっとしたら、何か事情があるのではないかと。

 やむにやまれぬ事情があって、兄はゼロになったのではないかと。

 そう思い至った時、ナナリーの頭に浮かんだのは自分の為ではないか、という考えだった。

「だとしたら、私は――――」

「違うよ、ナナリー。お前の()()ではない」

 もし、自分が原因ならば、自分が止めてと言えば、と思い口にしかけた言葉は、同じく口を開いたルルーシュの言葉に優しく遮られた。

「誰のせいでもない。俺は、俺の願いの為にゼロになった」

 どこまでも優しく、語りかけるようにルルーシュが言う。

「俺には叶えたい願いがある。望む世界がある。願う未来がある。創りたい『明日』がある。誰のせいでもない。あくまで俺が望み、選んだ道だ」

「それは、……それは、こんな事をしなければ叶えられないものなのですか?」

 口調こそ変わらないが、その言葉には幾分棘があった。

 無意識かもしれないが、ナナリーは責めているのだろう。

 思えば、ルルーシュの側を離れ、自らの思いを口にするようになってから、ナナリーは一度もゼロを肯定した事がなかった。

 優しい世界の中で、優しい想いを育んできたナナリーには、ルルーシュが思うよりも世界は希望に満ち溢れているのだろう。

 だから、悪を以て正義を為す、ゼロという存在を認める事が出来ないのかもしれない。

「……そうだな。ひょっとしたら、こんなやり方ではなく、もっと簡単で、もっと優しい道があったかもしれない」

 ユーフェミア然り。ナナリー然り。

 彼女達の言うような、優しく、緩やかでも、血を流す事なく、世界を変えていける道があったのかもしれない。

「でも、俺にはこれしか見つけられなかった」

 世界は人に優しくなんかなく、現実はどんな色であっても、一つの色に染まる事を許さない。

 優しさが芽吹くには、この世界()は欲望で穢れきっていた。

 だから、世界を壊すと決めた。

 この手を血に染めてでも、世界を変えてみせると決めたのだ。

「それに、こんな道であっても信じて付いてきてくれた人達がいる。背負った希望がある。俺の創る『明日』を共に見てくれると誓ってくれた奴がいる。……今さら、投げ出す事は出来ない」

「お兄様……」

 確固たる意志を示すルルーシュ。

 何度も世界に揉まれ、最後には宣言した通りに世界を壊した男の強い覚悟に、まだ、世界というものを知らないナナリーは返す言葉を無くし、ただ、兄の名前を呟く事しか出来なかった。

「すまない、ナナリー。分かってくれとは言わない。でも、どうか許して欲しい。愚かであっても、お前の兄が己の道を進む事を…………」

「お兄様!」

 ふっ、と優しく微笑みながら、そう言うとルルーシュは立ち上がる。

 それが、まるで訣別の言葉のように聞こえて、ナナリーは焦燥に駆られてルルーシュに向かって手を伸ばした。

 だが、その手は空しくも空を切るだけで終わる。

 手を伸ばせば、いつだって握り返してくれたその手の温もりがない事にナナリーは愕然とした表情になる。

 そのナナリーの表情を見ても、ルルーシュは手を差し出さない。

 ここでナナリーの手を握り返しても気休めにしかならない。

 自分の行く道に、ナナリーを連れていく事は出来ないのだから。

「ナナリー」

 それでも、ここで言葉を紡いでしまうのは、甘さか、優しさか。

「すまない、――愛している」

 そう言い切ると、未練を払うように茫然としている妹から視線をその後ろで控えていた咲世子に移した。

「咲世子、ナナリーを頼む」

「はい、お任せ下さい。ルルーシュ様」

 美しい所作で礼をするのを見てから、今度はミレイに。

「会長、学園にいる全員を体育館に集めて下さい。黒の騎士団に守らせます」

「……分かったわ。任せて」

 しょうがない、と言うように肩を竦めながら了承するのに頭を下げる。

 そして、未だ項垂れたままの友人に向けてお願い事を一つ。

「リヴァル。皆の事を頼む」

 返事はない。

 だが、その頭が確かに上下に動くのを確認すると、ルルーシュは頷いて、ニーナに視線を合わせた。

「ニーナ」

「――――ッ」

 名前を呼ばれたニーナが、ビクッ、と身体を震わせる。

 小さな悲鳴を上げて、怯えたように一歩後ろに下がったのを見て取ったルルーシュは、困ったように苦笑すると彼女に向かって頭を下げた。

「怖い思いをさせて、すまなかった」

「ルルーシュ……」

「それと、ユフィは無事だ。安心して欲しい」

「あ…………」

 思いがけず、敬愛する姫の安全を知らされて、ニーナは両手を口元に持っていきながら、安堵とも取れる言葉をぽつん、と落とす。

「今トウキョウを黒の騎士団が攻めていて、これから、政庁にも攻め込む事になるが……、皆とユフィの安全は保証する」

「本当に? ……信じていいの?」

「ああ。俺が妹に甘いのは君もよく知っているだろう?」

 そう言われれば納得するしかない。

 小さく笑むルルーシュに、心の強張りが解けたのか、ニーナも小さく笑顔を見せて、頷いた。

「分かった。……信じるね?」

「ありがとう」

 そう言って、もう一度、頭を下げる。

 

 そして。

 

 最後に。

 ずっとルルーシュから目を離さず、彼を見つめ続けていた少女に、ルルーシュは向き合う。

「……シャーリー」

「うん」

 互いに視線を逸らさない。

 心も静かである。

 ルルーシュは覚悟を決めており、シャーリーもまた、ここに至るまでに覚悟を決めていた。

「俺は、君の父親を見殺しにした」

「……うん」

「分かっていて、見捨てた」

「………………うん」

 生死は問題ではない。意識の問題だ。

 ルルーシュは助けようと思えば、シャーリーの父親を助けることが出来た。当たり前だ。知っていたのだから。

 C.C.が先に動いていたからというのもある。

 でも、何より覚悟が足りなかった。

 本人達の気持ちはどうあれ、シャーリーはルルーシュに()()()()

 常人では付いていくことも儘ならない、そんな過酷な運命の只中にルルーシュはいる。

 そんなルルーシュに近付き過ぎれば、どうなるか。

 それは『前回』で答えが出ている。

 だから、ルルーシュは選んだのだ。

 何もかも、全てを背負い、もう一度、旅路を往くと覚悟を決めていなかったその時のルルーシュは、彼女と彼女の父親を天秤にかけ、シャーリーを選んだ。

「打算で君の父親を見殺しにしたんだ。最低だ」

「うん……」

 そうして、徹底的に突き放した。

 父親の事で傷付いているシャーリーの心を抉るように、冷たい言葉を浴びせて、突き放したのだ。

 嫌われるように。自分から離れていってくれるように。

 ……もう二度と、あんな目に遭わないように。

「だから、これ以上、俺なんかを――――」

「うん、全部、分かってる」

 ルルーシュの言葉を遮り、シャーリーがにこやかにそう言った。

「大丈夫。全部、分かってるよ、ルル」

 シャーリーは馬鹿ではない。

 少なくとも、ルルーシュの事に関しては。

 だから、分かっているつもりだ。

 細かい事情はさておいて、それにルルーシュが苦しんでいたかどうかくらい。

「これでも一杯悩んだんだよ? ルルがゼロだと分かって、一杯泣いちゃったし、本気で結構塞ぎ込んだし」

 えへへ、と照れくさそうに笑うその表情に恨みや憎しみは感じられない。

 父親を生死の境に追いやられて、冷たく突き放されても、それでも、シャーリーはルルーシュを許した。

 正確には、死の直前にありながら、それでも、好きな人に微笑んでいられる程に強く揺るがない想いが、全てを凌駕した。

「ごめんね。私はルルを嫌いにはならないよ、……なれない」

 きっと迷惑を掛けるだろう。踏み込む事をルルーシュは嫌うだろう。

 それでも、止まらない。止められない。

「だって、私は、ルル―――」

「おい」

 そのまま一息に想いを告げようとするシャーリーだったが、それは叶わなかった。

 待ったを告げる声にそちらを向けば、何度か顔を合わせたことがある少女が、入口のところ、コンコンとノックをしながら扉に寄り掛かっていた。

「残念、時間切れだ、ルルーシュ。例の女が到着した。それとトウキョウでの戦いに動きが出てきた。そろそろ、指揮に戻れ」

「……ああ」

 短く返事をして、瞳を閉じる。

 そうすることでシャーリーとの会話を切り上げた。

 彼女の想いに驚きがあった事は否めない。でも、ルルーシュが揺らぐことはなかった。

「ルル……」

「ありがとう。でも、すまない。俺は、もう君を巻き込みたくないんだ」

 そう告げるルルーシュの顔は笑顔だった。

 内心を全て覆い隠した、仮面のような、そんな笑顔。

 それが無性に悲しくて、シャーリーは何も言えなくなってしまった。

 

 扉に手を掛ける。

 そのまま、出ていこうとしたルルーシュだったが、ふと振り返り、最後に全員の顔を見渡す。

 全員、あまり良い顔をしていなかった。

 自分がそんな顔をさせてしまった事に申し訳なさを感じながら、一人一人きちんと顔を見渡した後、ルルーシュは最後の言葉を口にした。

 

「さようなら、――――皆」

 

 扉が閉まる。

 パタン、と乾いた音を立てて。

 再び、日常と非日常が隔てられた。

 

 

 一階ホールまでの廊下を無言で歩く。

 横にC.C.を伴いながら、ルルーシュは何かを考えているのか、思案気な表情で足早に歩いていく。

「……………?」

 すると、ぽすん、と右肩に軽い衝撃が起こった。

 何だと思い、そちらを見れば、何を思ったのか、C.C.がルルーシュにもたれ掛かってきていた。

「おい。なんのつもりだ」

「疲れた。しばらく杖代わりになれ」

 そう言ってC.C.はピタリ、とくっついて体重を掛けてくる。

 そのせいで自然、足並みは遅くなってしまう。

「歩きにくい。離れろ」

「もうずっと、お前にこき使われてやってるんだ。少しは労れ」

 鬱陶しいと訴えるも、C.C.はどこ吹く風で離れず、そうこうしているうちに面倒くさくなったのか、ルルーシュは溜め息を吐くと、C.C.の好きにさせる事にした。

「全く……、余計な気を遣い過ぎだ」

「何の事だ? 私は疲れて、歩くのも面倒になったから、お前を杖代わりにしているだけだ」

 飄々と適当な事を言うC.C.。

 本当に気を遣い過ぎである。

 ルルーシュは生徒会の皆を切り捨てたつもりはない。

 ゼロだと明かしたせいで、もう今までのようにはいられないだろう。

 あの輪の中からも弾き出されてしまうだろう。

 立ち位置は変わってしまうかもしれないが、ルルーシュにとってはそれだけだ。

 皆を大事に思う気持ちは変わらない。やることは変わらない。

 ただ、一つだけ、心残りがあることを思い出した。

 自分の記憶以外からは消えてしまった約束。手に入れたかった『明日』があった事を思い出したのだ。

 それを叶えたい、と少し思ってしまった。

「……許されるだろうか?」

 都合の良いことを言っているのは分かっている。

 でも、同じ場所からではなくとも、同じ空を見上げる事くらいは許してもらえるだろうか?

「? 何か言ったか?」

「いや、……ああ、そうだ。C.C.、お前――」

 ついでに。

 一人、増えることも。

 

「お前、―――花火は好きか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――皆。

 

 

 

 

 ――――また、ここで花火を上げよう。

 

 

 

 

 ――――絶対。絶対に、もう一度。

 

 

 

 

 ――――皆で…………

 

 

 




 ……おや!? 千草の ようすが……!

 黒の騎士団総司令、副司令のプライベートが拗れる回でした。

 ちょっと、リヴァル苛め過ぎたかなーと思ったり。……シャーリーもですけど。苛めた分、彼等の想いの強さが表現出来ていたら良いなーと思います。

 今話の勝者はC.C.。
 女二人のラブアピールを妨害しつつ、自分はイチャコラ。やはり、メインヒロインは強かった。

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