本編に先立ち、二人の関係をファイナルに移行する!
……はい、本編じゃなくてスミマセン。
ちょっと、復活のルルーシュの興奮が覚めなくて、熱吐き出す為に散文散らさせて下さい。
短いです。雑です。ネタバレあります。それでも良い方だけお付き合い下さい。
※加筆修正しました。
復活のルルーシュのネタバレありです!まだ、見てない人はご注意を!
流れる川のように、群れを成す人々の中を歩く。
男がいる。女がいる。子供がいる。老人がいる。その中を確かな足取りでしっかりと。
何となしに周りを見渡してみれば、道往く人の顔色はあまり良くない。ここに至る過程を考えれば、それも当たり前と言えば当たり前だし、陰鬱な空気を避けて集団から離れても良いのだが、この人混みは姿を眩ますには丁度良く、当てのない二人には、この人の流れは程よい指針でもあった。
暫く、言葉もなく、二人並んで歩いていく。男は女から受け取った荷物がずり落ちないよう片手をショルダーストラップに添え、女は友人から貰ったマスコット人形を片手で抱いて、お互いがお互いの側の手だけを手持ち無沙汰に空けて、プラプラと。
道が少し険しくなる。道程はなだらかな傾斜の丘に差し掛かり、視線を向ければ、一足先に頂上に到達した人の列が次々と丘の向こうに消えていくのが見えた。
ここまで来れば、もう、二人を見送った人達は彼等を見失ったであろうか。それとも、まだ見ているのだろうか。旅路を往く人々が着る民族衣装の明るい色合いは、女の目を引く髪の色すら目立たなくしてしまっているだろうから、もう見失っている可能性の方が高そうだった。
とはいえ、如何せん数が多い。姿を消すにはこの人混みはうってつけかもしれないが、これでは見失ってはいけないものまで見失ってしまう。
だから、だろう。
どちらからともなく、手を繋いだのは。
人混みにはぐれまいと、二人揃ってしっかりと手を結ぶ。互いの温もりは互いに若干の気恥ずかしさを感じさせたが、それでも結んだ手を離す事はなかった。
その手の感触を感じながら、前を見ていた女は川のように流れていく人の波にふと思った。
この流れは、まるで今までの自分の人生のようだと。
こんなに周りに人がいるのに触れ合わない。同じ方向に流れていくのに他人のまま、すれ違っていく。
本来あるべき人の流れから弾き出され、多くの人々とすれ違うだけの生き方をしてきた自分に本当にそっくりだった。
だから、今、この右手に誰かの温もりがあるのが嘘みたいで、確かめるように何度も握り直してしまう。
そんな行為を不思議に思い、男が女の方を見てくるが女は素知らぬ顔で前を見続ける。
見続けながら、嘘のような温もりを確かめ、女は染々と考えた。
一体、いつから、こんな簡単に触れ合うような間柄になったのか。
一体、いつから、二人である事が当たり前であって欲しくなったのか。
最初の頃はこうではなかった。互いが互いに距離が近くなるのを嫌い、必要以上に干渉する事はなかった。
なのに。
初めての感謝が嬉しかった。一人じゃないという言葉が嬉しかった。過去と願いを知っても拒絶されなかった事が嬉しかった。
約束が、――とても嬉しかった。
そして、気付けば、今や、自らが歩む終わりのない旅の連れ人だ。そんな人に巡り会えるなんて、昔の自分なら想像すら出来なかっただろう。
だから、やっぱり、信じられなくて、にぎにぎと温もりを確かめる。
長い夜の先に得た温もり。孤独な旅の終着点。幾度なく別れを繰り返し、その果てに辿り着いた、たった一人。
それは、女が長く願って止まなかったものだ。
そう思うと、本当に夢のようで。夢ではないと思いたくて、何度も何度も手を握り直した。
それが、しつこかったのだろう。あまりに続くにぎにぎ攻撃に辟易したのか、男は呆れたように溜め息を吐くと転じて攻勢に出た。
指と指を絡める。互いの指の間に指を差し込み、拳を握るように、しっかりと繋ぎ直した。
それは、まるで離さないと言うかのようにピッタリで。不安にならなくても一緒だと言っているように女には感じられた。
その手を、ぱちくり、と目を瞬せて女が見る。そうして、ちょっとだけ力を入れて、僅かにも動かない密着ぶりを確認すると、今度は男の横顔に視線を突き立てる。
男の横顔は、いつも通りだった。いつものように少し難しそうに顔をしかめ、むっつりと道の先を見据えている。
そこに、後悔も未練も見られなかった。見られないまま、ただ一つ残った温もりを大事そうに握っている。
馬鹿な男だ、と女は思う。
男は女と違う。望めば、零れ落ちた多くの温もりを取り戻せた筈なのだ。
裏切られた仲間の、恨まれた姉の、手放した友人達の、慕ってくれる臣下の、憎まれた親友の、そして、愛する妹の。
でも、その全てを振りほどいて。
男は、世界の片隅でひっそりと泣いていた女の手を取った。
そう思うと、本当に呆れてくる。何を好き好んで、こんな自分の手なんか取ったのか。
馬鹿だな。生真面目だな。面倒臭い奴だな。
そんな言葉が頭に浮かび………、口から出る事なく消えていく。
だって、しょうがないではないか。
だって、自分はそんな馬鹿な男より、きっと馬鹿なのだから。
今も、男の馬鹿に泣きそうになるのが、その証拠だろう。
だから、女は男に身を寄せた。怪訝そうに顔を覗いて来ようとする視線から隠れるように、ぴったりと男の肩に顔を寄せて。今の顔を見られないように。
そうして、荒野の丘を登り切る。
そこで、二人は足を止めた。いや、女が足を止めた。
だが、止めただけだ。女は男に問い掛けるような視線を向けて、男はそれに気付きながら、前だけを見ていた。
でも、気付いていた。
おそらく、ここが本当に分岐点。ここを下れば、もうかつての居場所は見えなくなる。
だから、女は足を止めた。本当に良いのか、とそう言いたげに。
それに気付いていた。そして、女の心情にも。
何だかんだで、気が弱く、優し過ぎる女なのだ。だから、踏み込む事を恐れ、傷付ける事を恐れ、自分の願いを見送ってしまう。
男はそれを知っていた。
だからこそ、男は後ろを振り返らなかった。
前だけを見つめて、歩みを再開した。
軽く手を引かれ、女も歩き出す。女の一歩前を行く男のその足取りに迷いはない。当たり前だ。だって、もう後ろに心残りはないのだから。
妹の笑顔が見れた。親友の笑顔が見れた。仲間の笑顔が見れた。慕ってくれた人達の笑顔が見れた。
十分だった。
かつて、願った世界は其処にある。それを託せる者達も其処にいる。
もう、憂いはない。
ならば、自分に残ったものは一つだけだ。
だから、男は歩いていく。少しの間の後、再び男の横に並んだ女の隣で、その温もりを逃がさないようにしっかりと女の手を握りしめながら。
丘を下る。開けた視界の先に広がるのは、変わり映えのない風景。
赤土と岩肌の目立つ広い大地。乾いた空気に風が混じり、さらさらと砂が流れていく。
見上げれば、疎らに浮かぶ白い雲の向こうに、色の薄い青空が高く広がっている。
どれもこれも女には見慣れた光景だ。長い年月の果てに、絵画であれば色すら摩耗する程に良く見た光景。
ああ、でも、何故だろう。
そんな見慣れた風景に、心が動くのは。
終わりのない道の先を、この光景の先を楽しみに思ってしまうのは。
やがて、道が分かれる。ここまで一本だった人の流れは此処に来て、三本に分かれる。
どれを選ぼうか。どれを選んでも同じ事には変わりない。どの道を選んでも、その先に道は続き、終わる事なく巡っていく。
でも、今は、それすらも楽しみで仕方なかった。
女が男を見る。男も女を見る。全くの同じタイミングに笑みが零れる。
言葉は要らなかった。だから、一度だけ、繋いだ手を握り直し、二人は同時に同じ方向に足を踏み出した。
―――そうして、歩いていく。
男が問い掛ける。
何処に行きたいと。
女が答える。
何処にでも行きたいと。
―――これから先も、ずっと、同じ方向に、同じ歩幅で。
男が問い掛ける。
何をしたいと。
女が答える。
何でもしたいと。
―――長い旅の先に色付いた、奇跡色の明日に向かって。
男が呆れる。
本当に我儘な女だと。
女が笑う。
そうとも。私は世界一我儘で。
―――二人、歩いていく。
あの最後のC.C.の泣き笑いだけで良かったと思えた。
長い旅の苦労が報われて、本当に良かったと思います。それだけで満足でした。
そんな想いが爆発して書いてしまいましたが、思いっきり脇道なので、熱が冷めるか公開が終了するか、はよ本編書かんかいと突っ込まれたら消すと思います。
※まだ映画見てないという人と加筆で多少マシになったかなと思うので、暫くは残しておきます。でも、やっぱり、勢いで書いた話は冷静になると少し恥ずかしいので、作者が羞恥に耐えられなくなったら消すかもしれません。