とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社   作:怠惰ご都合

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やっとまとまりました。


アクセラレータ

 ガストレアの牙に引っ掛かっていた服の切れ端の様なものを見て蓮太郎は思わずうめき声をあげた。

 政府が物量作戦をごり押しした時点で、犠牲者の存在は覚悟していたのに。

 ドラゴンは神経質そうに右足で地面を蹴り始めた。まるでランナーが走りだす前のように。

 視線を釘付けにされながら、震える手でポーチを漁るが、すぐに巨大な生き物に対抗できるような武器を持っていないことに気付く。

 

 「走るぞ」

 

 「俺が殿をやるから急げ」

 

 振り返ってと一言だけ言うと延珠とライは視線だけで了解を示し、アクセラレータから返ってきたので4人で走り出した。

 冷たい風が頬を叩く中、延珠は走っていた蓮太郎とライの服を掴むと二十メートル近く跳躍した。

 服の裾がはためき、空中で一瞬静止すると、自由落下の軌道を描き、猛烈な勢いで森が迫って来る。

 延珠は太い枝の一つを見定めると、そこに両足で着地し、再跳躍。今度は短く、五メートルほど離れた木の枝に飛び移ると、目にのとまらぬ速度で再々跳躍。

 蓮太郎は延珠にしがみつき、延珠が跳躍するたびにかかる強烈なGに耐えながらアクセラレータを見ると、蓮太郎はぎょっとした。アクセラレータの踏み込む足が、いきなり背後を爆破させていた。まるで足の裏がロケット噴射でも起こしたかのように、たった一歩で7メートルもの距離を弾丸のように駆けていたのだ。

 ライに聞こうとしたが、アクセラレータの後ろから獰猛なハンターは前傾姿勢になり、木々を踏み倒しながら追跡しており、生木を裂くバキバキという音が猛追してくるためそれどころではなくなった。

 そんな中で蓮太郎は、ハンターが翼を使わないことに気付き、行けると確信して拳を握った。

 

 

 蓮太郎が拳を握っている中、同じように延珠にしがみついているライは前方を見て、絶望に意識が遠のきそうになるが、なんとか耐える。

 

 「延珠ちゃん、崖よッ!」

 

 「妾につかまっておれ二人とも!」

 

 抗議しかけたところで、延珠は着地した幹に膝を乗せたまま大ジャンプしたものだから、舌を噛みそうになる。

 凄まじい速度で景色が流れ、崖を飛び出し、空中に躍り出た。

 ヒュオン、と強風が吹き、蓮太郎たちは一瞬奇妙な上昇感に見舞われる。

 慣性力と万有引力が打ち消し合い、ぴたりと空中の一点で静止した。

 見渡す限り森だった。自分の悩みも思想も決断も過去の遍歴も、すべてがどうでもいいとさえ思える瞬間。自分の矮小さを思い知らされる瞬間。

 

 ライはシルエットだけで二キロ近くもある棒状の人工物が天に向かってすらりと伸びているのを確認し、それが『天の梯子』なのだとと認識した。

 

 蓮太郎とライは突然、嫌な浮遊感に襲われ、慣性力が消え重力方向に身体が引っ張られた。

 二人は慌てて延珠にしがみつき、歯を食いしばって悲鳴をあげる事だけはこらえた。

 

 延珠は極めて冷静に、迫りくる地面の中から二本の木の枝を見定めて、落下と同時に掴み、枝が限界まで撓むと、延珠は手を離し下方の枝を掴む。

 延珠の腕に過負荷がかかりビキリという音が鳴るが、落下の勢いは減殺されず3人は落雷のように森の中に突っ込んだが、後ろから来たアクセラレータが落ちて行った3人より前に出て、空中で3人をキャッチすると重力のベクトルを反射して、ゆるやかに地上に降り立った。

 

 

 

 何時まで経っても痛みが来ない為、状況を確認しようと目を開けて見たのはアクセラレータだった。

 

 「あァ、そういやァ、説明してなかったなァ。俺の能力は運動量・熱量・光量・電気量なんかの体表面に触れたあらゆるベクトル、つまり力の向きを自由に操作や変換することが出来ンだ。さっきやったのは反射だ」

 

 どんな能力を使ったのか聞いてみるとあっさりと説明され、蓮太郎は目の前にいる少年の認識を改めることにした。

 

 

 「気をつけなきゃなンねェのは対戦車地雷、スプリング式跳ね上げ地雷、誘導型地雷、クラスター爆弾なンかの不発弾だ。ガストレア対戦があッたろ?そン時に撤退する際に自衛隊がばらまいて行きやがッた奴だ。万が一の為に俺が先頭を歩いてやるから、そこだけ通ってこい」

 

 その後、再び進むことを決めるとアクセラレータが言い出し、アクセラレータは森の中を進んで行ったので、3人も続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 アクセラレータの進んだ道を歩きながらも蓮太郎と延珠は警戒を解かなかった。

 時折蓮太郎は地面に耳を当て、延珠は高い枝に上がり危険が無いか確認した。

 アクセラレータはそんな二人に文句を言いながらも進む速度を遅くしていた為、ライは兄の態度を見て笑い、4人は遠くにともる明かりをとらえることができたのだった。

 

 

 

 用心深く近付くと茂みが途切れ、明らかに人工物と思われるものが石造りの建物が見えた。ごく小さな石積みの平屋で、入口には土嚢の壁が築かれている。

 ガストレア対戦時に築かれた防御陣地(トーチカ)もあるが、あちこちボロボロでほとんどその機能を失っており、今では風よけにしかなっていないのだろう。

 

 中から明かりが漏れていた為、影胤がいる可能性を捨て切れず、緊張で脈が早くなるのを蓮太郎は感じていた。

 3人に合図すると、銃を抜き腰を落として裏手から近付く。延珠は前から近付き、アクセラレータは横のガラスの無い窓から、ライが後ろについてきているのを確認して、ドアに耳を当てるとパチパチと薪がはぜる音が聞こえてきた。

 どうやら中で火を焚いているようだった。積まれた石の割れ目から炎が陰影を変えながら影を投げかけているのが分かる。蓮太郎は深呼吸を二回して、銃を構えると合図した通り3人と同時に飛び込んだ。

 

 「動くなッ!」

 

 蓮太郎は相手に銃を向ける。

 蓮太郎のXDと、相手のショットガンの銃口が交差するのはほぼ同時だった。

 そして蓮太郎は相手を見て絶句した。

 

 「お前は・・・ッ」

 

 蓮太郎が呟くと相手は荒い息をつき、うつろな瞳でこちらを見た。

 落ち着いた色の長袖のワンピースにスパッツ。およそ未踏領域の地獄に似つかわしくない装いだった。だが一番目を引いたのは血が止めどもなく流れでる痛々しい腕の傷だった。巨大な獣にかみつかれたのか、傷口が歯型の形に抉れている。

 蓮太郎はその少女に見覚えがあった。

 

 「お主、その銃を下ろさぬと、そっ首たたき落とすぞ」

 

 「身体の無事を願うッてンなら早くしろ、ガキ」

 

 「待ってくれ二人とも、こいつは敵じゃねぇ」

 

 冷たい恫喝と共に背後に忍び寄っていた延珠の蹴りが少女の背筋に、アクセラレータの腕が少女の腕に押し当てられていたのを見て止める。

 アクセラレータは何も言わずに腕を離したが、延珠は蓮太郎の言葉に驚き、何度か蓮太郎と少女を見比べたのち、しぶしぶと足を下ろす。

 すると少女は座り込んでしまい、蓮太郎は力なく座り込んでいる少女の元まで行き、目線を合わせる。

 

 「なあお前、防衛省で一回だけ会ってるけど、俺のこと覚えているか?」

 

 「ええ、勿論です」

 

 少女は苦しげな息を吐きながらも、蓮太郎の問いに答えてくれた。

 

 

 「まずは止血して包帯を巻きましょう。話はそれかでいいかしら?」

 

 ライはそんな少女の腕を見て尋ねると少女は賛成してくれた。

 ライは横で歯ぎしりをして蓮太郎を見ている延珠に気付いた。

 

 「そうよね、延珠ちゃんも知らないものね。この子と蓮太郎君の関係が気になるのよね」

 

 ライは悪戯っぽく延珠に言ってみる。

 

 「ああ、説明しろ蓮太郎!」

 

 延珠は顔を赤らめながら蓮太郎に聞いていた。どうやら、自分で言う分には構わないのだが、人から言われると恥ずかしいようだ。ライはそんな延珠の顔を見て笑っていた。

 

 「分かった。こいつは伊熊将監っていうプロモーターの相棒をやっているイニシエーターだ」 

 

 ライと延珠に言われ、アクセラレータからはどこか温かい目で見られた気がした蓮太郎は3人に向かって、初めて顔を合わせた日の事を話し始めたのだった。




アクセラレータが少しおかしいような気がします。
ライがSっぽい・・・
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