とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
・・・更新頻度低くてすいません!
許可が下りた為、レイは嬉しそうに退院の準備を進めていた。
そして途中で、古城たちが見舞いに来たのを思い出した。
「・・・・古城と蓮太郎って、補習どうなったんだろ?」
呟くとともに、手を止める。
古城・蓮太郎・当麻の三人は授業があるにも関わらず、常に人助けなどを行っている為に成績がアレなのである。
そこで、呆れた担任の小萌ちゃんこと月詠小萌と副担任である那月ちゃんこと南宮那月は、今回の夏休みに補習期間を設けることにしたのだ。
だが、そんな教師の心鏡などお構いなしに自らトラブルに突っ込んでいく三人が補習を終えられるはずもない。
しかも迷惑なことに、監視役であるレイたちも補習に付き合わされてしまう。
しかし、レイと当麻は入院していた為、補習は行っていない。
では、古城と蓮太郎はどうなのか。
「二人とも、見舞いだなんだで理由つけて逃げてんのかもね~」
大方そんなところだろう。
「罰が当たらないといいけどね~」
因みに退院後、レイは古城たちの罰に巻き込まれることになるのだが、この時点でそれに気付くはずもない。
そして再び、手を動かすのだった。
午前中に退院したレイは学生寮へと帰る為に歩き出した。
歩いている中、背中に視線を感じる。
レイが走りだすと相手も距離を保ちながら尾けてくる。
振り返ってみるが、周りは人が多い為に誰がそうなのか判らない。
「・・・・・ま、いっか~」
深くは考えず再び足を動かした。
あの後、特に何も起きず学生寮へと到着した。
玄関のドアを開け靴を脱ぎ、リビングへと向かう。
そしてリビングのドアを開ける。
すると突然パパパン、という快音と共にと火薬の匂いが部屋いっぱいに広がる。
周りには古城たち、いつものメンバーが集まっていた。
「・・・・・えっと、何これ?」
訳が分からないまま立っていると、ライが近づいてくる。
「何って、あんたの退院祝いに決まってるじゃない。夏世ちゃん、すごく張り切ってたのよ?」
「・・・・・・はぁ」
呆けていると、夏世が手を引っ張ってきた。
「さぁ、こっちですよ!」
レイは手を引かれるまま、大人しくついていく事にする。
「姫柊?どうかしたのか?」
「先輩、やっぱりこれ、武器じゃないですか!?」
「お、落ち着け!?嘘は言ってないだろ!?」
古城は、クラッカーを持って震えている雪菜に対して弁明しようとしている。
「蓮太郎!クラッカーはもうないのか!?妾はまだやりたいぞ!」
「もうねぇよ!一人一本だ!・・・・つーか、木更さんも待てって!」
「でも里見君!せっかくのご馳走なのよ!?」
もう一方では、蓮太郎、延珠、木更の三人が言い合っている。
「当麻当麻、ご飯まだ!?私のお腹はもう待てないんだよ!」
「だぁ~!もう少し、もう少し待て!後、歯を鳴らすのを止めろって!」
テーブルの前では、上条とインデックスが必死の攻防戦を繰り広げていた。
「いつも通り、だよねぇ~」
「そうですね。じゃあ、レイさん」
夏世の問いに”始めよっか”そう答えようとした途端、
「おい問題児ども、私の補習をサボっておいてパーティを開くとは随分と偉くなったものだな」
突然の来訪者の言葉によって、部屋が静まり返った。
説明については簡単。
黒いゴスロリ服を着た南宮那月が現れたのである。
一瞬にして周囲の雰囲気を変えたその光景に、流石は「空隙の魔女」と魔族たちに恐れられるだけはあるな、とレイは感心した。
能力者・第四真祖・剣巫・民警が揃っているこの部屋に、物怖じせずに空間転移してくる攻魔官となると、如何に世界広しといえど彼女ぐらいだろう。
再び彼女の口が開く。
「何か言ったらどうなんだ?私の補習をサボったんだ。当然、罰を受ける覚悟はできてるんだろうな?」
「・・・・え、えっとね那月ちゃん」
彼女の注意でみんなが俯くより先にレイの口が開いていた。
「教師に向かって『ちゃん』付けはやめろ!・・・・・・何だ、一応は聞いてやる」
「このパーティはさ、僕の退院祝いなんだって。だからさ~、今日ぐらいは大目に見てくれないかな~?」
しばらくの沈黙は、扇子の閉じる音によって破られた。
「・・・・・いいだろう」
意外な返答に、一同は戸惑い、そして次第に表情が明るくなった。
「しかし、だ!その代わりに私からの条件には絶対に従ってもらうぞ」
そう言って、那月はレイ、当麻、古城、蓮太郎を部屋の隅に移動させる。
そして、夏世たちの姿を消した。
転送魔法だろう。
「今から学校の体育館に来い。安心しろそれほど遠くはない」
少し間を開けて那月の口から言い渡される。
「・・・・・言い忘れてたが、暁と上条は能力が関係していてな。転送できなかったが、文句は言わせんぞ?」
「じゃあ・・・・」
「里見も諦めろ。定員オーバーだ」
「はぁ!?」
「レイは、そこの三人を連れてこい。逃がしたら・・・・解っているな?」
「・・・・は~い」
レイが答え終わると同時に那月の姿は消えた。
「さ、行こっか・・・・・っと言いたいとこなんだけど」
三人を連れて外に出ようとするレイは、少し足を止める。
「・・・・どうかしたのか?」
古城の声にゆっくりと振り返りながら、レイは口を開く。
「・・・・那月ちゃんは『遠くない』って言ってたけどさ、『近くもない』ってことだよね。そもそもの話、近かったら転送魔法で行き来する必要無いんだから」
レイは苦笑いしながら三人の顔を見る。
三人はと言えば、絶望していた。
この時は八月の中旬で、日が高い。
外で走るには・・・・・まだ暑い。
次回に続きます。
・・・なんとか年明けまでには投稿したい!