とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社   作:怠惰ご都合

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前より間隔が短いとはいえ、それでも三ヶ月ぶりの投稿です。



お節介と波乱の芽

「・・・・オイ、一体何やらかしに来やがった」

 

転移したと思ったら、今度は聞き慣れた声がした。

しかし、辺りを見渡しても声の主が見当たらない。

目の前では、何故か蓮太郎が両手で足元をアピールしている。

指示通りに、ゆっくりと足元を見てみると・・・・

 

「・・・・・・早くどけ」

 

言葉では表現しにくい体勢の、一方通行(アクセラレータ)がいた。

 

「・・・・・・やぁ兄ちゃん」

 

そして何もなかったかのように、レイはその場を退いて、声をかけた。

 

「・・・・・・この状況で『やぁ』なんて言えるのは、お前かアイツぐらいだな」

 

「お褒めに写かり光栄で~す」

 

「どこをどう捉えれば、褒められてるなンて思えるんですかねェ」

 

アクセラレータの愚痴を聞き流しつつ、状況を確認する。

どうやら、現在はリムジンに乗っているようで、付近にはウェディングドレスに似た白い礼装を着た聖天子と、不幸そうな顔の蓮太郎、蓮太郎に膝枕されたまま気持ちよさそうに寝ている延珠、更にはこの空間で一番不機嫌な兄が揃っている。

 

「で、今回のお仕事は護衛なの蓮太郎?」

 

渋々と一方通行(アクセラレータ)の上から降りて隣に座り、不幸顔の青年に訪ねる。

 

「ああ、名指しでな」

 

「わお、蓮太郎君は絶賛モテ期ですか」

 

「・・・・断じて違う」

 

直後、延珠が勢いよく起きる。

これにより、蓮太郎の下顎に激痛が走る。

 

「・・・・うるせェ」

 

「兄ちゃん、お疲れ様です」

 

「・・・困らせてる本人に同情されたかねェよ」

 

「はは。んで、今日の会談相手は?」

 

「三下以下の悪党・・・・だと、そいつらに失礼だな。そいつら以下か」

 

「うわ、ばっさりしてる」

 

「どうでも・・・・・・・・おい、イニシエーター」

 

「・・・・・・む」

 

それまで騒いでいた二人が突然、静かになった。

 

「ねぇ兄ちゃん、何が・・・・むぐっ!?」

 

「邪魔だから伏せてろ」

 

「蓮太郎、嫌な感じがする」

 

突然、レイは頭を抑えつけられる。

そして、延珠の呟きに促されるままに、蓮太郎は窓の外を見る。

何もない。

そう言おうとした途端、一瞬だけ何かが閃いた。

蓮太郎は咄嗟に、延珠の頭を伏せさせ、聖天子に覆い被さる。

そして、窓ガラスが破砕された。

直ぐに狙撃によるものだと解る。

リムジンは急ブレーキ音を上げながら、標識へと激突した。

 

「・・・・チッ」

一方通行(アクセラレータ)は車の中で跳弾している銃弾を、面倒くさそうに外へと弾き出した。

 

既に延珠はドライバーを連れて外へと出ている。

蓮太郎は恐怖で動けない聖天子を連れ出そうとしている。

しかし、無情にも次弾が聖天子目掛けて襲いかかる。

 

「ハアアアアァァァァッ!」

 

延珠が叫びながら靴の裏で銃弾を弾く。

弾き飛ばされた延珠と入れ違いになるように、聖天子の護衛らしき人達が彼女の周りに現れる。

 

「・・・・面倒くせェ」

 

ため息をつく一方通行(アクセラレータ)と呆然としているレイ。

そんな二人に小さい影が一つ近づき、声をかける。

 

「もっしもーしって、ミサカはミサカは白いモヤシなあなたに声をかけてみる!」

 

「あァ?」

 

「・・・・ん?」

 

二人が見たのは、頭から毛布を被った奇妙な人間だった。

身長は小さく、一〇歳前後といったところか。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・あはは、それじゃ。もう迷子にならないでね~」

 

「やっと見つけたと思ったのに、今度はスルーなんて、いくらなんでも傷付くなーってミサカミサカはそれっぽく凹んでみたり」

 

その場を離れてようと歩き出す二人に、その少女は解りやすくしゃがみこんだ。

 

「・・・・ねぇ」

 

「・・・・ほっとけ」

 

「酷いなーってミサカはミサカは聞こえるように声を上げてみたり!」

 

「・・・・お客様」

 

「・・誰が客だオイ」

 

「・・・・ミサカはミサカは」

 

その名を聞いた途端、二人は足を止める。

 

「“ミサカ”だってさ」

 

「・・・・・・チッ、先に行ってろ」

 

「了解です、ロリコンお兄様~」

 

「・・・・さっさと行け。後で覚えてろよ」

 

一方通行(アクセラレータ)は嫌そうな顔をしながら、ミサカと名乗る少女へと近づいていく。

一言二言告げて、二人は共に歩いていった。

結果的に一人になったレイは、周囲を見渡して呟いた。

 

「ここ・・・・・・どこ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライは港湾地区(アイランド・イースト)にて、ドレスコードを決めた古城と雪菜に再会した。

 

 

「・・・・」

 

「・・・・・よ、よぉ」

 

「・・・お久しぶりですライ先輩」

 

二人の服装を見て微妙な顔になるライと、やや困惑気味の古城と雪菜。

そこは異様な空気に包まれていた。

 

「ねぇ、一ついいかしら?」

 

そんな中で先に口を開いたのはライ。

 

「・・・・お、おう」

 

周囲の空気が重苦しくなる。

そして、ライの口から出た言葉は・・・・・・

 

「古城ってさぁ、全っ然タキシード似合わないわよねぇ!あははははは!」

 

古城の服装についてだった。

普段あれほど面倒くさがりな友人が、真面目な顔してタキシードを着ているというのがトリガーとなった。

ライの笑い声が止んだのは、数分後。

 

「・・・・気は済んだかよ」

 

「えぇ、お陰様ですっきりしたわ!」

 

「そうかよ。・・・・・・くそっ、やっぱり来るんじゃなかったか?」

 

「・・・・あ、あの先輩。ライ先輩の様子、どこか普段と違いませんか?なんというか、こう陽気というか」

 

恥ずかしそうにしている古城に、雪菜は訪ねる。

 

「いやいや姫柊、それ騙されてるから。コイツ、いつもこんなんだから。つーか、普段は猫被り過ぎな位」

 

「は~、古城ってば失礼ね。素直にオンオフの切り替えが出来てるって言いなさいよ。それに、基本的にはレイを抑える為に動いてるんだからね」

 

「・・・・ホントに抑えてんのかよ」

 

「じゃあ普段からオープンにしましょうか?そうなったら誰がレイを制御するのかしらねぇ」

 

「・・・・悪かったよ、勘弁してくれ」

 

「そ、それでライ先輩は何故、洋上の墓場(オシアナス・グレイブ)に?」

 

今まさに停船しているのは戦王領域の貴族である、

アルデアル公ディミトリエ・ヴァトラーのクルーズ船である。

いくらアレイスターの遣いとはいえ、招待も無しに勝手に乗り込むのはマズイはず。

 

「・・・・実は仕事で来たんだけどさ、レイが見当たらなくて」

 

「あぁ、なるほど。・・・・って事は、ひょっとして鬼ごっこの結末は・・・・」

 

「全滅よ全滅。あんなチート教師に勝てる訳ないもの」

 

「・・・ですよね。えっと、すいませんライ先輩。私たちはそろそろ」

 

「そうよね。じゃあ、古城がやらかさないように見張っててね」

 

「俺はガキ扱いかよ!?」

 

「じゃあねぇ」

 

二人が船に乗り込んだのを確認し、ライはその場を離れる。

そんな時。

 

『姉ちゃん、今どこ~?』

 

よく知る声が頭に響いた。

 

「・・・・港湾地区(アイランド・イースト)よ」

 

『うわ、遠いな~』

 

「あんたの現在地は?」

 

『・・・・』

 

「別に怒らないから素直に」

 

『・・・・第一区と兄ちゃんの学生寮の間』

 

「はぁ!?」

 

『やっぱり怒るじゃん』

 

「いや、えー・・・・つまり何処?」

 

『こっちが聞きたい位だよ~。転送陣を通ったと思ったら、急に聖天子様のリムジンの中でさ~』

 

「・・・・まぁ、いいわ。わからないけどわかったから」

 

『それ解ってないって言えば?』

 

「取・り・敢・え・ず‼詳しいことは学生寮に戻ってから整理しましょう。流石に自力で帰れるわよねぇ?」

 

「う~ん、多分」

 

弟の曖昧な解答を聞いて、会話を打ち切る。

ため息をついて、レイは学生寮目指して歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・やっと見つけたわぁ、お姉様」

 

レイが遠ざかると、物陰から一人の少女が姿を現す。

 

「これでやっと遊べるね。ターゲットは壊してもいいんだっけ?」

 

更にもう一人、少女が姿を現した。

 

「えぇ、でもやり過ぎてはダ・メ・よ。直せないし使えなくなるから」

 

「勿論だよ、すぐに終わったらつまらないからね」

 

暗闇の中で、二人の少女の瞳は赤く輝いていた。

 

 

 




今回も読んで頂いてありがとうございます。
話を入れ過ぎて混乱してる・・・・なんて事はないですよ。
えぇ、決して。
次の投稿はいつになるかまだ決めてませんが、それでも待っていて頂けたら幸いです。
それでは、また次回

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