とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
これで驚いてるんだから、もっと早くなったらどうなるんでしょうか。
・・・・実際にやるとは言ってません。
「どういう事・・・・なんですか?」
静寂を破ったのは、夏世だった。
当然、彼女には知る権利がある。
でもそれは、僕たちがやってしまった罪。
何度も忘れようとして、その度に思い出してしまう事。
「・・・・レイ」
「姉ちゃん」
「伝えましょう、ありのままを」
「でも・・・・・・それ、は」
「あなたは優しいままね」
「・・・・」
「能力で忘れる事ができない私に、責任を負わせない為に覚えてる」
「・・・・」
「だからこそ、伝えないといけないの。だって・・・・・・私たちの義務だから」
「レイさん、ライさん」
結論、姉の説得と夏世の視線に僕は負けた。
「僕と姉ちゃんは、ずっと同じ事を繰り返してたんだ。毎日、何週間、何ヵ月、もう覚えてないけどとにかく飽きるほど」
学園都市の高層ビル一つ。
外から見れば他のビルと同じだが、一度入ると一面真っ白。
そんなビルの一室には、円筒形の水槽が2つ。
それぞれの水槽の中に人が一人ずつ入っていた。
右の水槽には、少年。
左の水槽には、少女が。
双子は、いつからこの施設にいるのだろうか。
ひょっとしたらそれは、彼等にも解らないのかもしれない。
そんな白い部屋に、新たに二人の子供が入ってきた。
恐らく、今日の被験者だろう。
双子は最近、能力開発ばかり行っている。
目的は『能力の転写』を素養のない者に与えられるかというもの。
“素養のない”とは
『姉ちゃん、またやるの?』
『多分、そうなんでしょ』
『えー、もう飽きたって~』
「まぁまぁ二人とも、そんな風に言わないでよ。これも君達の為にやってるんだから」
話し合っていると、白衣を着た男が入ってきた。
その軽薄な話し方から判るように、いかにも“適当”を体現して生きているような男。
この男が絡むようになったのは、つい最近の事だ。
水槽内で退屈そうにしている僕たちが、能力開発に飽きてきていると感じた、この施設の責任者が僕たちの積極性を促すために担当になったらしい。
だが、そんな事は僕たちの知ったことではない。
この能力は僕たちが好きに使って、楽に生きていく為のモノ。
大人たちの考えなんて関係ない。
『また来たの?』
『暇なんだね~』
「おいおい、そんな冷たい事言わないでくれよ。俺も仕事なんだよ。本当なら家でゴロゴロしてたいんだよぅ」
『ふーん、だから何よ』
『そんなどうでもいい事、僕たちには何の関係も無いよ~』
「いやいや、俺の仕事は君達の積極性を促すためなんだよ。つまり、君達がいつまでも怠慢だったら俺の休みは無いって事なの。なぁ、関係大有りだろう」
『・・・・チッ』
『・・・・しょうがないな~』
「わかってもらえたようで何より。じゃあ、やってくれ」
男が合図を出すと、双子を目を閉じた。
そして、男の前にいた二人の子どもはその場に崩れ落ちた。
今からやるのは、目の前にいる子への憑依。
“憑依”といっても、双子の能力との関係性は不明だ。
最近、急にできるようになったから詳しい事は解明されていない。
だから、今からやるのは、その因果関係の追及の一環だった。
「・・・・う~ん」
「今回も成功、ね」
崩れ落ちた二人の子どもが目を覚ました。
しかしその口調は、さっきまで水槽に入っていた二人のモノだった。
「いやぁ、いつ見ても不思議だね。ホント、どうなってんのソレ?」
「私たちだって知らないわよ」
「それは大人の仕事だから、僕たちにはわかりません~」
「・・・・はいはい」
この“憑依”は対象の身体を操るだけでなく、記憶や思い出を見る事ができる。
しかし、良いことばかりではなく、当然欠点も存在する。
一つは、憑依している間は、本体がどうなっているか把握できないという事。
二つ目は、実際に憑依している精神体への影響・副作用がわかっていないという事だ
そして三つ目は、憑依先の本体・精神への負担が解らないという事だった。
「よし、じゃあ戻っていいよ」
「あれ、もういいの~?」
「本当、珍しいわね」
「確かにいつもだったら、“もう一セット”って言うんだけど、今日は予定が入っててね」
男が言い終わると、二人の子どもは再び崩れ落ちた。
『じゃあ、終了っと‼』
『そういう事なら早くこの水槽から出しなさいよ』
「・・・・はいはい」
再びの水槽内からの声に、男は渋々従った。
「ふぅ、やっと出れた~」
「いくら能力開発とはいえ、ずっと続けていると疲れるし、飽きも来るよねぇ」
水槽から出た双子は、少し体操して身体を動かしていた。
ずっと同じ体勢でいたから、いろいろとキツかったようだ。
因みにさっきまでいた二人が憑依していた子たちは、目覚めると素早く出ていってしまった。
「まぁまぁ。もう今日の分は終わりだから、そう愚痴らないでくれよ」
「はいはい、じゃあサヨナラ」
男が呆れていると、ライは別れを告げる。
「えぇ、冷たいなあ」
「だって今日はもう終わりなんでしょ?」
「・・・・それはそうなんだけどさぁ」
「ならあなたもここにはいなくていいじゃない。はいサヨナラ、ほらサヨナラ、じゃあねサヨナラ」
男は反論するが、ライは気にする素振りも見せず、さっさと部屋を出ていく。
そんな二人を見て、レイは笑っていた。
「姉ちゃんってば、相変わらずだね~」
「全くさ。もう少し優しく接してくれないかなぁ」
「ちょっと厳しいかなぁ」
「レイ君と二人だけの時もあんな感じなの?」
「まっさか~」
「・・・・じゃあ何で俺がいるときだけ」
二人が話していると、さっき出ていったはずのライが現れた。
「ちょっとレイ、早くしてよ。今からパフェ食べに行くんだから‼」
「パフェ‼なんだ、もっと早く教えてよ。さっさと行くのに~」
「あ、あの。俺のお悩み解消は?」
「あははは、また今度ね~」
項垂れる男を尻目に、レイは笑顔で走っていった。
今回から二人の過去に触れていきます。
どこまで書けるのか未定ですが、可能な限り続けていくつもりです。
・・・・すぐに終わっちゃったらどうしましょうね。
それではまた次回。