とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
前回とは打って変わって投稿期間が空きましたが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
「遅い!」
少し離れた廊下の曲がり角では、姉のクレームが僕を迎えてくれた。
「姉ちゃんが歩くのが早いだけで、僕自身はそんなに遅くない思いま〜す」
「・・・・・・・・」
反論するも、姉は気にせず歩き出した。
置いてくのか待ってくれるのか、はっきりして欲しいなぁ。
「待ってよ〜」
全く、我儘な姉を持つと苦労するね。
「・・・・うーん」
「なに、やっぱりこっちの“孤高のアップルマウンテン”が良かったの?」
自分の目の前にあるパフェ(青りんご・ホイップクリーム・バニラアイス・りんごゼリーの順で二十層ほどもある)を見ながら僕は尋ねる。
「・・・・違う」
姉は自身の頼んだパフェ“聳え立つ柑橘マウンテン”を見つめながら答える。
(姉の頼んだのは、オレンジ・バニラアイス・金柑・オレンジピール・グレープフルーツ・バニラアイスの順に三十層もあるモンスター)
・・・・因みにアップルの方はスタンダードなグラスを15cm程オーバー、柑橘の方に至っては、縦長で細いグラスを20cmオーバーしている事から、当施設内では『ツートップ』と呼ばれている。
「じゃあ何さ〜」
「・・・・いつまでこんな所にいればいいのかって思ってね」
「飽きちゃった〜?」
「・・・・そうね、飽きたと言えば飽きた、かな」
「毎日、同じ事の繰り返しだもんね」
「・・・・はぁ」
「ひゃいふつらよね〜(退屈だよね〜)」
「・・・食べながら喋らないの」
「ふぁ〜い」
二人はパフェを食べながら、そんな会話を続ける。
「おいひいよれ〜」
「だから食べながら喋るなっての・・・・・はぁ」
「ホントにどひたの?」
この数分間だけで何度目かの溜め息を吐く姉と、パフェを食べながら尋ねる弟。
「・・・・・相談に乗ってくれる?」
「もひろ〜ん」
「・・・・・・」
「んぐっ・・・・話さないの?」
姉は一口、パフェを口に運んでからゆっくりと喋った。
「最近さ、やたらと絡んでくるじゃない・・・あの男」
「そうだね〜」
「見た目通り“適当”じゃない」
「そうだね〜・・・んぐ」
「いつもいつも面倒くさいでしょ」
「まぁ、実験中は目の前で監視してるし、終わったら終わったで話しかけてくるもんね〜」
しかし弟は知っている。
あの男が話しかけてくるのには理由があるのだと。
どうやら彼は教師になりたいようなのだ。
だから、姉弟とは“教師と生徒”という関係になりたいようで、実験時に絡んでくるのはそれ故だとか。
しかし、今回は相手が悪い。
自分の正面に座っているこの姉は、基本的に人と関わりたがらない。
たとえ相手が弟であろうと例外ではない。
今回も、“相手が悪いなぁ”と思っていながら、パフェを口に運んでいると・・・・・
「・・・ちょっとカッコイイなぁって」
「ぶっ⁉」
そんな感想に思いっきり吹いてしまった。
「・・・・汚い」
「いやごめ・・・い、痛い!!。鼻に、鼻に生クリームがぁぁっ!?」
「アンタに相談したのが間違いだったわ。私とした事が一生の恥ね」
「・・・・い、痛いぃぃぃ。うぅ、ゲホッ」
「ハイハイ。取り敢えず、お水飲んで落ち着きなさいな。うるさい」
「うぅ、アリガト」
心配されてるのか呆れられてるのか、どっちなのだろう。
いや、これは考えるだけ無駄なヤツだ。
きっとそうだ、そうに違いない・・・・ウン。
「何か言いたそうね」
「・・・・・ツンデレにも限度ってもんがあると思うんだけどなぁ」
「何か言った?」
「つまり僕にどうしろと!?」
“言え”と言われたから素直に感想を述べただけなのに、呆れられるのは何故なのか。
これを“理不尽”と言わずして何というのか、知っている人がいたら誰でもいい、僕に教えて下さい。
「・・・理不尽以外の何でもないでしょ」
「勝手に心を読むなぁ!!」
「上手くいくように取り持って欲しい」
「無視するなぁ!?」
「で、具体的には・・・・何か言ったかしら?」
「・・・・ナンデモナイデス」
結論、姉には勝てません。
くそぅ、生態ピラミッドかっての。
「じゃあ、具体案よろしく」
「・・・・ヘっ?」
「ちゃんとしたの考えといてね」
マジかぁ、丸投げかぁ、逃げたいなぁ。
今から全速力で逃げ出したいなぁ。
「逃げちゃだめよ」
「・・・うえぇ」
「当たり前じゃない、姉が困ってたら弟が助けるの。それが世の常よ」
「ち、因みに、弟が困ってたら・・・?」
ひょっとしたら聞かない方が良かったのかもしれない。
言わない方が幸せなのかもしれない。
それでも、万が一の可能性に縋りたいのが人間という生き物。
たとえ、結末が変わらないとしても。
「助けるはずないでしょ。むしろ嘲笑ってやるわよ」
・・・現実は、非常でした。
自分の用を済ませた姉はさっさとパフェを食べ終えて部屋に戻ってしまった。
後に残ったのは、スプーンを口に咥えたまま呆ける弟だけだった。
「・・・・との事をですが、いかがなさいますかそこの旦那?」
体勢はそのままに、そう呟くと後ろの席から声が聞こえてきた。
「俺に聞かれてもなぁ。・・・・・そもそも何さ、その口調。何処で覚えてきたのさ」
「アレはツンデレというか、9割ツンのデレ1割みたいな面倒くさい生き物なんで。どうやって攻略したのか聞きたくて」
「・・・・どうやって説明したものかなぁ」
ゆっくり振り向くと、男は、コーヒーと見つめ合っていた。
「心当たりはバッチリあるようで。なら包み隠さずに曝け出した方が楽だよ〜?」
「・・・しょうがないなぁ」
男は、意を決したように角砂糖を6個ほど、コーヒーに入れた。
え、半年近くも待たせといて文字数が少なかったのはどういう事かって?
・・・・・いやー、最近寒いですねー(現実逃避)
つまるところ平常運転ですね。
きっとこのサボり癖もいつかは治る事でしょう・・・・・・多分。
それではまた。