とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
「初めまして。これから君たちの担当になりました、よろしくね!」
「・・・・チッ」
「・・パチパチパチ〜」
初顔合わせの時、正直すごく投げ出したくなった。
目の前の二人は無愛想で、協調性が無くて、常に人を小馬鹿にしたような態度だった。
少女は舌打ち、少年の方は拍手をせず、口で音を言っただけ。
『なんで俺がこんな事を・・・・』
そう思いながらも顔には出さず、その場は終始笑顔でいた。
俺が担当になってから1時間もしないうちに、二人の能力開発は始まった。
簡素な病衣に着替えた二人はそのまま、それぞれの円錐形の水槽へと入っていく。
人が入ったのを感知すると、水槽には徐々に水が溜まっていき、数分で溜まりきった。
そして、廊下から目の前の姉弟よりも少し幼い子供が男女一人ずつ入ってきた。
部屋に入ってきた二人は机に置いてあった錠剤を飲むと、すぐに倒れた。
「お、おい!?ちょっと君たち!?」
慌てて駆け寄って、揺さぶるが反応はない。
責任者に報告に行こうと立ち上がったタイミングで呼び止められた。
「・・・・・・バタバタうるさいわね。いちいち騒いでんじゃないわよ」
「ここじゃコレが日常茶飯事なの。誰かが倒れる度に騒いでたんじゃ身が持たないよ〜?」
何事もなかったかのようにムクリと起き上がる。
その代わり、水槽内の二人が昏睡状態となっていた。
「・・・・どういう事だ?何が起きている!?」
「たからうるさいっての」
「いやでも、あの二人が!?」
「いつもの事だよ、心配する程のものじゃないよ〜」
何が起きているのか、まるで理解できない。
現に危険な状態にあるにも関わらず、起き上がった二人はまるで心配していない。
まるで気にする方がおかしいかのような反応に俺は困惑した。
そして、たった今起きた二人の口調が水槽内の少年少女のモノだという事に少し経ってから気づいた。
夕方、今日の出来事を責任者に報告した。
『何、君が気にする程のものじゃない』
しかし、新米の意見が相手にされるのは余程優秀か、非常事態でもなければあり得ない。
ましてや、担当して1週間も経っていないのならば尚更だろう。
『君はまだ日が浅いだろう。仮に何かあった場合には私が対応するとも。君はただその日の出来事を報告に来るだけでいい。能力開発の様子を見て、伝えるだけさ』
何も言えなかった。
体が動かなかった。
『さぁ、今日の君の役割は終わりだ。また明日も頼んだよ』
あの二人は何の能力開発をしているのか。
『まぁ、担当なら知っておくべきだろうね。しかし、今日は、少しタイミングが悪くてね。申し訳ないがまた明日来てくれるかな』
そして、次の日。
昨日と同じように戸惑いながらも、報告に来た。
『昨日はすまなかったね。お詫びというわけではないが、何でも教えよう。まずは彼らの事からでいいかな』
目の前の人は、ゆっくりと椅子に腰掛け、一息ついてから話した。
そして目の前に二枚の報告書が置かれた。
【能力名:完全記憶<パーフェクトメモライザー>】
性別:女
正確な理由は不明だが、突如他人への憑依が可能となった。
憑依時には、ごく僅かな確率で、憑依先の能力を使うことができる。
一度憑依すると、相手の記憶と身体を自由に扱える。
憑依している間は自身の能力を使えないとのこと。
また、憑依時には元の体は昏睡状態となる事が確認されている。
なお、当現象の際に発生する副作用は解明されていない。
観察及び能力開発時には
【吸力放増<アプリターンドレイナー>】
性別:男
正確な理由は不明だが、突如他人への憑依が可能となった。
憑依時には、ごく僅かな確率で、憑依先の能力を使うことができる。
一度憑依すると、相手の記憶と身体を自由に扱える。
憑依している間は自身の能力を使えないとのこと。
また、憑依時には元の体は昏睡状態となる事が確認されている。
なお、当現象の際に発生する副作用は解明されていない。
観察及び能力開発時には
『
しかし・・・・いや、ならあの研究は。
『そうだね、彼らの能力とは何ら関係ないよ』
それなら何故。
『彼らは突然、他人に憑依出来るようになった。能力との因果関係は不明なのに、だ。しかも、記憶や意識を共有出来るそうだよ。その上、ごく稀にだが憑依先の人間の能力を使える』
そんな。
ならば、どうして放置しているのか。
どうして、能力開発を中止しないのか。
『おいおい、さっきも言ったじゃないか。“因果関係は不明”だと』
・・・・まさか。
『そうさ、ならば“解明”するしかないじゃないか』
・・・・。
『いいかい、私達は科学者であり、研究者。未知に挑むのは運命だよ?』
では、あの能力開発に意味は無いと?
『おいおい、君は一体何を聞いてたんだい?そんなモノは最初から存在しないよ!』
・・・・・つまり、彼らは“犠牲者”である、と?
『まさか!?変な誤解をされないように今のうちに伝えておこうか。“私の実験に犠牲はいない”んだ』
・・・・。
『まぁ、今すぐに理解しろとは言わないよ。じっくりと考えてくれればいい。では、また会おう』
彼の言葉が正しいのか、それとも俺がおかしいのだろうか。
俺は何も考えられず、気づけば自室にいた。
それが2年程ほど前の出来事。
あれから俺はいろんな事を知った。
双子ヘの負担は勿論、憑依先の人間についても。
彼らは、
人間でありながら、使い捨ての対象として用いられること。
双子はそのことを知らされていないこと。
そして、憑依先として選ばれた子たちはその後、原因不明の事故に遭い消息を断っている。
実験の目的は能力の転写らしいが、幸か不幸か、今のところそれは起きていない。
「・・・・もしも〜し」
「うわっ!?ちょっと何、びっくりしたなぁ!?」
「『びっくりした』はこっちのセリフだよ。どんな手段で攻略したのかって話してたのに、急に止まって」
「あぁごめん、そうだったそうだった」
2年前のことから切り替える。
今、背後にいる少年に知られるのは望ましくない。
だから、それだけは伏せることにした。
その時は、偶々気になっただけで、特に深い意味はなかった。
水槽から出てきたばかりの少女に聞いてみた。
「少しいい・・・・かな?」
「・・・・」
「ちょっと・・・・・話を聞きたいんだ」
「・・・嫌」
断られて、思わず落ち込んでしまった。
「・・・チッ、何よ?用があるなら早くしてよね」
その姿が見苦しく見えたのか、彼女は歩きながら小さな声でそう言った。
「いつも同じ事の繰り返しで、嫌にならないの?」
「全然、だって能力開発だし」
「なら、この方法の意味とかは?」
「知らないわよ」
「今までで、一度も考えた事ないの?」
言ってから気づいた。
この聞き方は、彼女に失礼だと。
彼女の今までを否定するものであると。
「・・・・・ねぇ」
彼女は静かに歩みを止めて、ゆっくりと僕の方へ向き直った。
「あなたの聞きたいことって、沢山あるの!?」
「・・・そう、だね」
「今じゃないとダメなの!?」
「いや、そんなことは・・・・」
「なら悪いけど、またにしてくれるかしら?気が変わったわ!」
そして再び、彼女は歩き出した。
また別の日は昼食時に。
「ねぇ、今日もいいかな?」
「はっ、嫌よ。この前はあんな・・・・」
予想していた通りの言葉だった。
当然、許してもらえるなんて、思っていない。
あの聞き方が、彼女に嫌な思いをさせた事に変わりはないから。
いくら興味本位であったとしても、失礼だと言う事に他ならない。
だからこそ、
「この前は無礼な事を聞いてすまなかった」
謝るのだ。
「・・・・・」
「許されようなんて端から思ってない。今日は、謝りに来たんだ。ただ、それだけなんだ。邪魔をして悪かった。それじゃ」
そう言い終わって、この場を去ろうとした時だった。
「・・・・・・待ちなさいよ」
意外な事に呼び止められた。
「・・・何か?」
「もし許してほしいなら、パフェ奢りなさいよ」
「いや、だから許して欲しいなんて思ってないって・・・・・」
「じゃあなんで・・・謝ったのよ」
「それは、興味本位で失礼な事を聞いたから」
「だから、自分が謝ればそれで終わるって?」
「・・・・?」
「あなたの謝罪に付き合わされた私はどう、反応すればいいっていうのよ?」
少女は俯いたままそう言った。
「・・・ハハ」
あまりにも一方的で子供っぽいその反応に、俺は思わず笑ってしまった。
「・・・・何よ」
「いや別に、君はまだ子供っぽいなぁと思って。なんかゴメン、勝手に落ち着いてるとか思い込んでた」
「・・・・失礼ね」
「そうだよね。勝手に付き合わせたんだから、その分はそれ相応の対応をしないといけないよね」
俺は笑いながら、彼女の正面に座った。
「それで、どのパフェをお望みでしょうかお嬢様?」
「・・・・・ふん」
・・・・ここのパフェって、サイズも値段も桁違いだなぁ。
はたまた別の日。
実験中のタイミングにて。
「暇そうだよね」
話しかける相手は水槽内で浮いている二人の姉弟。
『・・・全くよ』
『絶賛退屈中で〜す』
「や~実は今ちょっと、ごたついててさぁ、取り敢えず憑依先の子たちが来るまで雑談でもどう?甘い物でも食べながら」
俺は手に持った袋から大量の菓子類を机の上に出した。
しかし、姉弟の反応は薄い。
『・・・そもそもさ〜』
『この状態でどうやって食べろっていうのよ?』
そう、二人は今、水槽内で浮いている状態にある。
確かにこの状況では食べようにも食べられない。
「なら、出れば?」
気づけば俺はそう口走っていた。
「別に憑依先の子たちが来るまで水槽に入ってないといけないとか、逆に憑依先の子たちが去るまで水槽内で待機してないといけない・・・・なんて取り決めはないはずでしょ?」
『・・・・・いや、でも』
『それは・・・・何か違うって言うか』
二人からは明らかな困惑を感じた。
恐らく、今までで自分で選択するという機会が少なかったのだろう。
「いやいや、何も間違ってなんかいないよ。だって、“自分で決める”ってそういう事なんだから。それとも、水槽内で食べたいの?酷い味にしかならないと思うけど」
俺は、手元の開閉スイッチを押した。
あくまで決めるのは
無理強いをするつもりはない。
『・・・・・・ふん』
『・・・・・ハハ』
姉弟はゆっくりと水槽から出て菓子へと近づいてくる。
恐る恐る食べ始める。
「・・・おい、しい」
「・・・・まぁまぁ、ね」
やっぱり子供は素直が一番だよね。
「・・・・・というのが思い当たるんだけど」
心当たりを話し終えた俺は、ゆっくりとコーヒーに口をつけた・・・・甘ッ!?
そんなに砂糖を入れたはずは・・・・・あったわ。
「ふ〜ん?」
目の前では少年がニヤニヤと笑いながら、話を聞いていた。
「多分、違うと思うな〜」
そんな事を言いながら少年は席を立つ。
「じゃあ何なのさ。教えてよ、ほらこのコーヒーあげるからさ」
「甘ったるそうなんでお断りしま〜す。理由に関しても、自分で気づいてね」
言い終わると少年は歩いて行ってしまった。
うーん、他になんか理由あったかな。
考えながら、再びコーヒーに口をつけた。
いや、これ飲めるのか?
まぁ・・・・・・頑張れ自分。
前々回辺りから続いてる追想ですが、多分あと1〜2話ほどで終わるかもと思います(他人事)
次はどこの話に繋げようかなぁ。
それでは、また次回。