とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社   作:怠惰ご都合

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ほぼ半年ぶりの投稿になります。
お待たせしてばかりで申し訳ないとは思っています。
・・・・・思ってばかりで改めるとは言ってません。
はい、今回もいつも通りです。


僅かな抵抗の意識を示して

 作戦はこうだった。

 ・僕と姉ちゃんは本体を水槽内に入れ、意識体だけで例の部屋に侵入、憑依する。

 ・男が例の部屋に入り特殊ガスと称した煙を散布する。

 ・煙に紛れて二人が部屋から脱出する。

 ・そのまま男が用意した通路に向かい、この研究所から脱出する。

 ・男は二人が逃げるが逃げる時間を稼ぐために部屋に残る。

 しかし、この作戦には問題点があった。

 スーツの大人たちがどう動くか解らないのだ。

 それでも、助ける為にはやるしかない。

 

 だから、後のことは考えていない。

 

 「まず意識体になったらすぐに侵入するんだ」

 

 「侵入するのはいいんだけど・・・あなた、意識体見えるの?」

 

 「残念ながら、見えない」

 

 そう言って、男はストップウオッチを取り出した。

 

 「だから、予め時間を決めておこう。ここからあの部屋まで、どれくらいで着いて、憑依できる?」

 

 「・・・・対象との適合性にもよるけど、憑依して動けるようになるまで大体20秒くらい、かしらね」

 

 「よし、じゃあ設定するぞ。安全のために君たちは、水槽内に入っていてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『準備できたよ〜』

 

 『私も、いつでもいいわよ』

 

 「・・・・・よし、開始だ」

 

 三人は静かに、作戦を開始した。

 

 ピッという、軽い機械音が聞こえるのと同時に、いつもみたいな浮遊感を感じる。

 すぐにも目的の部屋へ侵入し、横たわっている男の子へと向かっていく。

 少しばかりの異物感を感じながら、静かに指を動かす。

 幸いなことに、姉ちゃんの方も成功したようで、隣に横たわっている女の子の指が、こっそり動いたのを確認する。

 ここまでは成功している。

 あとは男が入ってくるのを待つばかり。

 

 「では、改めて結論を述べよう・・・・“C”及び“D”は処分とする」

 

 自分に対して言われている訳ではない・・・そう理解できてはいても、やはり良い気持ちはしない。

 ましてや、勝手に利用するだけして結果が出なければ“処分”という、『大人の都合』だけで全てを決められて、『はい、わかりました』とあっさり従うほど、素直には出来ていない。

 

 そう考えていた時だった。

 

 バタンッという、勢い良く扉が開かれた

 そして、室内に煙が充満し始める。

 

 「誰だ!?」

 

 「何が目的だ!?」

 

 周囲の男たちがたちまち騒ぎ始める。

 しかし、そんな事は関係ない。

 今はただ、この研究所から脱出することだけを考えて動くんだ。

 だから僕たちは、開かれた扉を目指して走った。

 

 「実験体が逃げたぞ!?」

 

 「追え!」

 

 『たった今、充満している煙はある特殊ガス。それを吸い込んだ者は1時間もしないうちに苦しむであろう。助かる方法は、逃げた二人を捕まえる以外にない。あの二人は解毒薬を隠し持っている』

 

 突如としてそんなアナウンスが聞こえ、数秒もしないうちに終わる。

 終わると、さっきのスーツの男たちが我先にと追いかけてきた。

 慣れない体ではあるが、とにかく足を止めず指示された通りの通路へと向かう。

 

 「・・・・・どういう、こと?」

 

 しかし辿り着いた先は行き止まりだった。

 

 「私が、知りたいっての。どういうことなのよ・・・これ?」

 

 隣の女の子(姉ちゃん)に聞いてみても、答えは返ってこなかった。

 むしろ、質問で返されてしまった。

 

 「う〜ん、どうしたものか・・・・・っと」

 

 振り向くと、既に男たちがあと少しの距離まで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 男は静かに部屋に入り、座っている責任者に歩み寄った。

 

 「急で悪いけど、話がある」

 

 「何のつもりかな、○○?いきなり会議を邪魔して、『話を聞いて欲しい』だと?」

 

 責任者は座ったまま、静かに顔を上げた。

 「今回の事は少しばかり急ぎ過ぎたんじゃないのか?今まで通りなら、最低でも後一年は様子見のはずだ」

 

 「・・・・ふむ」

 

 「にも関わらず、今回に関しては『結果が悪いのは、憑依先に原因があるから』だと決めつけているように思えた」

 

 「・・・・ふむ」

 

 「だから、止めたんだ」

 

 「こんな形で、かね?」

 

 「悪いとは思ってる。だけど、もう少しマシな手段があったんじゃないかと」

 

 「では、どう責任を取る?誰が『あの子たち』の代わりを用意すると?」

 

 「そもそも、新たに用意する必要はない。確かに、あの子たちの意識は別の場所にある。でもあの二人の本体は僕が管理している・・・・そう言ったら?」

 

 「・・・ほう?」

 

 「彼らからは、意識体に起きた現象が、本体にも現れるというデータが取れている。これを基に俺に実験を引き継がせてほしい。勿論、責任者として」

 

 「ほっほほほほほぅ。うんうん、良いだろう良いだろう。滅多にないお前の我儘だ。今回に関しては目を瞑ろう。期待しているよ○○」

 

 「感謝するよ、爺ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジリジリと男たちが近づき、周りを取り囲まれていく。

 捕まらないようにゆっくりと後退するも、背中に固い感触とゴツッという音が響く。

 ちらりと見ると壁で、もう既に逃げ場は無かった。

 

 「・・・・・姉ちゃん」

 

 「・・・何よ」

 

 「後悔・・・・してる?」

 

 「どうして私が後悔すんのよ?」

 

 「だって、僕が『助けたい』って言い出さなければ・・・・・」

 

 こんな事にならなかったはずだから。

 姉ちゃんは、あの男ともっと話せたんだから。

 

 「後悔なんてこれっぽっちもしてないわよ。っていうか、アンタが言わなかったら、私の方から言い出してたっての!」

 

 「・・・・・え?」

 

 「そもそも、あの場面で『見捨てる』を選択する程の冷酷さを持ち合わせてたらねぇ・・・・・・・アンタと2年以上も一緒に大人しく実験体になんてされてないわよ。とっくに一人で逃げ出してるわ」

 

 「ゴメン、やっぱりさっきの忘れて」

 

 あぁ、なんだ。 

 こんなに簡単な事だったなんて。

 ただ、自分の言いたいことを言って。

 やりたいことをやって。

 一緒にいるだけで良かったなんて。

 

 「・・・・・僕って鈍いなぁ」

 

 「今更自覚するんじゃないっての」

 

 捕まったらどうなるのかなぁ、これからずっと水槽内で過ごすのかなぁ・・・・

 

 男たちの手が近づいてくるのを見ながら、そんな事を考えていた時だった。

 

 すぐ近くの壁が盛大な音を上げて崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕と姉ちゃんは、ガラガラと壁が崩れ落ちていくのをただ見ているだけだった。

 

 「オイオイ、んだよこれ。こんなにボロかったのかよこの研究所」

 

 目の前にいた体格の良い男が一人、そんな事を言って崩れたところへ向かっていく。

 

 ほんの一瞬だけ、壁にぽっかりと空いた穴で、太陽に反射して何かがキラキラと光ったように見えただが、気づいていないのか、体格の良い男は構わずに近づいていく。

 

 「ハッ、何もねぇじゃねぇか。やっぱボロいって事だよ。気にする必要はねぇ。お前ら続けるぞ」

 

 目の前で待機していた男たちは再びこっちに手を伸ばしてきた。

 

 「さっさと片付けて次の議題に移るぞ」

 

 そう言って男が再びこっちに歩き出そうとした時だった。

 ズシャッ、と何かが音を上げて崩れ落ちた。

 

 なんだろう・・・・そう音のする方を見ようとした時だった。

 

 「ヒッ!?」

 

 姉ちゃんの悲鳴が聞こえた。

 

 「姉ちゃ・・・・ん?」

 

 どうしたの、そう言おうとして姉の方を向くと、姉は震えながらある方向に指を差していた。

 その方向は、さっきまで男が立っていた壁際だった。

 真っ白な壁一面に対してぽっかりと空いた穴から入って来たのは・・・・・・大きな蜘蛛だった。

 そして、その蜘蛛の口元にはさっきの男の下半身だけが倒れていた。

 

 「なんだよ・・・・アレは」

 

 目の前の男たちも、その存在を確認したのか、呆気にとられていた。

 

 「ハッ、どうせ何かの茶番に決まってる。そうじゃなきゃ、あんなの、実際に存在するはずねぇだろうが」

 

 また一人、今度はスポーツ刈りの男が蜘蛛に近寄っていく。

 

 「ハァー、良く出来てんなぁ。見た目をそれっぽいし、ハリボテって感じもしねぇ。ふん、目が赤い(・・)ってのは新種だからか?」

 

 「お、おい。そろそろ離れろよ?如何にも危険だって・・・・」

 

 「へいへい、わかってるっての・・・・」

 

 「は、早くしろよ!」

 

 途端に目の前の男が慌て始めた。

 それもそうだろう。

 だって、大蜘蛛が今にもスポーツ刈りの男を食おうと、その口を開けているのだから。

 理解していないのは本人だけだった。

 

 「ったくよう・・・あん、やけに暗いな?ったく誰だよ灯り消した・・・・・・・」

 

 ガパッと、たった今まで喋っていた男が大蜘蛛に、喰われた。

 

 「う、うわぁぁっ!?」

 

 今度はその場にいる全員が見ていただけに、混乱はあっという間だった。

 

 

 

 

 




気付けば年末。
半年ぶりに投稿しといて文字数少なくて申し訳ないです。(今回2度目の謝罪)
例の如く次の投稿は未定です。
前回は『追想は今回で終わるつもり』とか言ってましたが・・・・・はい、終わりませんでした。
それでは、また次回。
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