とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
お待たせしてばかりで申し訳ないとは思っています。
・・・・・思ってばかりで改めるとは言ってません。
はい、今回もいつも通りです。
作戦はこうだった。
・僕と姉ちゃんは本体を水槽内に入れ、意識体だけで例の部屋に侵入、憑依する。
・男が例の部屋に入り特殊ガスと称した煙を散布する。
・煙に紛れて二人が部屋から脱出する。
・そのまま男が用意した通路に向かい、この研究所から脱出する。
・男は二人が逃げるが逃げる時間を稼ぐために部屋に残る。
しかし、この作戦には問題点があった。
スーツの大人たちがどう動くか解らないのだ。
それでも、助ける為にはやるしかない。
だから、後のことは考えていない。
「まず意識体になったらすぐに侵入するんだ」
「侵入するのはいいんだけど・・・あなた、意識体見えるの?」
「残念ながら、見えない」
そう言って、男はストップウオッチを取り出した。
「だから、予め時間を決めておこう。ここからあの部屋まで、どれくらいで着いて、憑依できる?」
「・・・・対象との適合性にもよるけど、憑依して動けるようになるまで大体20秒くらい、かしらね」
「よし、じゃあ設定するぞ。安全のために君たちは、水槽内に入っていてくれ」
『準備できたよ〜』
『私も、いつでもいいわよ』
「・・・・・よし、開始だ」
三人は静かに、作戦を開始した。
ピッという、軽い機械音が聞こえるのと同時に、いつもみたいな浮遊感を感じる。
すぐにも目的の部屋へ侵入し、横たわっている男の子へと向かっていく。
少しばかりの異物感を感じながら、静かに指を動かす。
幸いなことに、姉ちゃんの方も成功したようで、隣に横たわっている女の子の指が、こっそり動いたのを確認する。
ここまでは成功している。
あとは男が入ってくるのを待つばかり。
「では、改めて結論を述べよう・・・・“C”及び“D”は処分とする」
自分に対して言われている訳ではない・・・そう理解できてはいても、やはり良い気持ちはしない。
ましてや、勝手に利用するだけして結果が出なければ“処分”という、『大人の都合』だけで全てを決められて、『はい、わかりました』とあっさり従うほど、素直には出来ていない。
そう考えていた時だった。
バタンッという、勢い良く扉が開かれた
そして、室内に煙が充満し始める。
「誰だ!?」
「何が目的だ!?」
周囲の男たちがたちまち騒ぎ始める。
しかし、そんな事は関係ない。
今はただ、この研究所から脱出することだけを考えて動くんだ。
だから僕たちは、開かれた扉を目指して走った。
「実験体が逃げたぞ!?」
「追え!」
『たった今、充満している煙はある特殊ガス。それを吸い込んだ者は1時間もしないうちに苦しむであろう。助かる方法は、逃げた二人を捕まえる以外にない。あの二人は解毒薬を隠し持っている』
突如としてそんなアナウンスが聞こえ、数秒もしないうちに終わる。
終わると、さっきのスーツの男たちが我先にと追いかけてきた。
慣れない体ではあるが、とにかく足を止めず指示された通りの通路へと向かう。
「・・・・・どういう、こと?」
しかし辿り着いた先は行き止まりだった。
「私が、知りたいっての。どういうことなのよ・・・これ?」
隣の女の子(姉ちゃん)に聞いてみても、答えは返ってこなかった。
むしろ、質問で返されてしまった。
「う〜ん、どうしたものか・・・・・っと」
振り向くと、既に男たちがあと少しの距離まで迫っていた。
男は静かに部屋に入り、座っている責任者に歩み寄った。
「急で悪いけど、話がある」
「何のつもりかな、○○?いきなり会議を邪魔して、『話を聞いて欲しい』だと?」
責任者は座ったまま、静かに顔を上げた。
「今回の事は少しばかり急ぎ過ぎたんじゃないのか?今まで通りなら、最低でも後一年は様子見のはずだ」
「・・・・ふむ」
「にも関わらず、今回に関しては『結果が悪いのは、憑依先に原因があるから』だと決めつけているように思えた」
「・・・・ふむ」
「だから、止めたんだ」
「こんな形で、かね?」
「悪いとは思ってる。だけど、もう少しマシな手段があったんじゃないかと」
「では、どう責任を取る?誰が『あの子たち』の代わりを用意すると?」
「そもそも、新たに用意する必要はない。確かに、あの子たちの意識は別の場所にある。でもあの二人の本体は僕が管理している・・・・そう言ったら?」
「・・・ほう?」
「彼らからは、意識体に起きた現象が、本体にも現れるというデータが取れている。これを基に俺に実験を引き継がせてほしい。勿論、責任者として」
「ほっほほほほほぅ。うんうん、良いだろう良いだろう。滅多にないお前の我儘だ。今回に関しては目を瞑ろう。期待しているよ○○」
「感謝するよ、爺ちゃん」
ジリジリと男たちが近づき、周りを取り囲まれていく。
捕まらないようにゆっくりと後退するも、背中に固い感触とゴツッという音が響く。
ちらりと見ると壁で、もう既に逃げ場は無かった。
「・・・・・姉ちゃん」
「・・・何よ」
「後悔・・・・してる?」
「どうして私が後悔すんのよ?」
「だって、僕が『助けたい』って言い出さなければ・・・・・」
こんな事にならなかったはずだから。
姉ちゃんは、あの男ともっと話せたんだから。
「後悔なんてこれっぽっちもしてないわよ。っていうか、アンタが言わなかったら、私の方から言い出してたっての!」
「・・・・・え?」
「そもそも、あの場面で『見捨てる』を選択する程の冷酷さを持ち合わせてたらねぇ・・・・・・・アンタと2年以上も一緒に大人しく実験体になんてされてないわよ。とっくに一人で逃げ出してるわ」
「ゴメン、やっぱりさっきの忘れて」
あぁ、なんだ。
こんなに簡単な事だったなんて。
ただ、自分の言いたいことを言って。
やりたいことをやって。
一緒にいるだけで良かったなんて。
「・・・・・僕って鈍いなぁ」
「今更自覚するんじゃないっての」
捕まったらどうなるのかなぁ、これからずっと水槽内で過ごすのかなぁ・・・・
男たちの手が近づいてくるのを見ながら、そんな事を考えていた時だった。
すぐ近くの壁が盛大な音を上げて崩れた。
僕と姉ちゃんは、ガラガラと壁が崩れ落ちていくのをただ見ているだけだった。
「オイオイ、んだよこれ。こんなにボロかったのかよこの研究所」
目の前にいた体格の良い男が一人、そんな事を言って崩れたところへ向かっていく。
ほんの一瞬だけ、壁にぽっかりと空いた穴で、太陽に反射して何かがキラキラと光ったように見えただが、気づいていないのか、体格の良い男は構わずに近づいていく。
「ハッ、何もねぇじゃねぇか。やっぱボロいって事だよ。気にする必要はねぇ。お前ら続けるぞ」
目の前で待機していた男たちは再びこっちに手を伸ばしてきた。
「さっさと片付けて次の議題に移るぞ」
そう言って男が再びこっちに歩き出そうとした時だった。
ズシャッ、と何かが音を上げて崩れ落ちた。
なんだろう・・・・そう音のする方を見ようとした時だった。
「ヒッ!?」
姉ちゃんの悲鳴が聞こえた。
「姉ちゃ・・・・ん?」
どうしたの、そう言おうとして姉の方を向くと、姉は震えながらある方向に指を差していた。
その方向は、さっきまで男が立っていた壁際だった。
真っ白な壁一面に対してぽっかりと空いた穴から入って来たのは・・・・・・大きな蜘蛛だった。
そして、その蜘蛛の口元にはさっきの男の下半身だけが倒れていた。
「なんだよ・・・・アレは」
目の前の男たちも、その存在を確認したのか、呆気にとられていた。
「ハッ、どうせ何かの茶番に決まってる。そうじゃなきゃ、あんなの、実際に存在するはずねぇだろうが」
また一人、今度はスポーツ刈りの男が蜘蛛に近寄っていく。
「ハァー、良く出来てんなぁ。見た目をそれっぽいし、ハリボテって感じもしねぇ。ふん、目が
「お、おい。そろそろ離れろよ?如何にも危険だって・・・・」
「へいへい、わかってるっての・・・・」
「は、早くしろよ!」
途端に目の前の男が慌て始めた。
それもそうだろう。
だって、大蜘蛛が今にもスポーツ刈りの男を食おうと、その口を開けているのだから。
理解していないのは本人だけだった。
「ったくよう・・・あん、やけに暗いな?ったく誰だよ灯り消した・・・・・・・」
ガパッと、たった今まで喋っていた男が大蜘蛛に、喰われた。
「う、うわぁぁっ!?」
今度はその場にいる全員が見ていただけに、混乱はあっという間だった。
気付けば年末。
半年ぶりに投稿しといて文字数少なくて申し訳ないです。(今回2度目の謝罪)
例の如く次の投稿は未定です。
前回は『追想は今回で終わるつもり』とか言ってましたが・・・・・はい、終わりませんでした。
それでは、また次回。