やはり俺たちの高校生活は灰色である。〜古典部と奉仕部の邂逅〜 作:発光ダイオード
現在俺、折木奉太郎は、奉仕部という何だかよく分からない連中の部室に来ている。
事の発端は今朝のホームルームでの担任の話で、近日中に行われる全校集会で校長が“部活動選別宣言”なるものを発表すると言った事から始まる。学校中が大騒ぎをする中、古典部員は顧問の平塚先生から、昼休みに部室である地学準備室に来る様にと呼び出された。俺はクラスの当番で職員室に行く用があったので手短に済ませてから部室に向かう事にしたのだが、当然その頃には職員室に平塚先生の姿はなく、仕方が無いとはいえ呼び出しに遅れたとなれば多方面からの批難を受ける事が予想された。
足早に地学準備室へ向かった俺だったが着いた頃には話し合いの重要な節目は過ぎていて、批難こそされなかったが古典部存続の為に奉仕部という部活と合併するかもしれないという話を聞かされた。そして今日の放課後、その話し合いをする為に奉仕部に会いに行くという事を、半ば事後報告の様に了承させられたのだった。
教室の真ん中に置かれた長机の端に座った俺の隣には里志が、その隣には伊原、そのまた隣には千反田が席に着いている。そして、俺たち古典部と机を挟んで向かい合う様に奉仕部の連中が座ってこちらを見ている。これから見合いでも始まるのかと思うくらい妙な雰囲気が漂う。
俺は千反田の前に座る黒髪の女子生徒に目を向ける。その艶やかに流れ落ちる黒髪や大人びて凛とした顔立ちはまさにお嬢様といった感じで、容姿端麗とか才色兼備という言葉が似合っているように思えた。一方伊原の前に座っている女子生徒は美人というよりかは可愛らしく、純情可憐という感じだろうか。緩くウェーブのかかった明るい茶髪に軽く着崩した制服などいかにも今時の女子高生である。そして二人から少し間を空けて俺の前に座っている男子生徒は、割と整った顔立ちをしている様に見えるがそれを補って余あるくらいに目が腐り果てて死んだ魚のようになっていた。
このタイプの全く違う三人は普段の高校生活をしていたら絶対にかかわり合う事が無い様に思えたが、それをつなぎ止めている奉仕部というものに俺は少しばかり興味を持った。
しばらくの沈黙の後、少し離れた所に座っていた平塚先生に紅茶を催促され黒髪の女子生徒が席を立った。すると千反田も自分も手伝うと言って後に続き、二人は慣れた手つきでお茶の準備を始める。特に黒髪女子は相当手慣れているらしく、それが自分の日課とでも言う様に流麗な動きをしてみせた。千反田は棚から来客用であろう紙コップを五つ取り出し、机の上に置いてあった部員のコップと合わせて黒髪女子の側に並べる。
「必要な人は使って下さい」
それから千反田はそう言ってシュガースティックの入ったケースを机の真ん中に置いた。そうしていると、ふわりと紅茶の甘い香りが漂ってくる。何処と無く柑橘系の香りだがこれは何の種類だろうか。
「いい香りだね。いやー、せっかくならこの間のお茶菓子があったら良かったんだけどな」
「ふくちゃん意地汚いわよ」
里志のセリフに伊原が睨みを効かせる。
「すみません福部さん。事前に分かっていたら準備していたんですが、突然の話だったので…」
千反田はそう言って里志に頭を下げる。
「千反田、こいつは適当に言ってるだけだからあんまり気にするな」
俺が里志を睨みながら言うと伊原もうんうんと頷く。
「何?お前ら部室でお菓子なんか食ってんの?随分贅沢だな」
目の前に座った目の腐った男が話しかけてくる。
「別にいつもじゃない。それに贅沢と言うならお前たちだって立派なティーセットがあるじゃないか」
俺が言い返すと、目の腐った男は隣の今時女子に腕を掴まれる。
「ちょっとヒッキー!そんな風に言ったらダメっしょっ!でも、紅茶も飲めてお菓子も食べれるなんて、一緒に部活やったら楽しそうだねっ」
今時女子はにっこりと笑う。その表情や仕草からコミュニケーション能力の高さが伺えた。しかし、今の発言から察するに随分と頭の緩そうな……いや、この段階での決めつけは早計だ。くわばらくわばら…。
俺が心の中で合掌していると、先程よりも増していい香りが漂ってきた。見ると黒髪女子がカップに紅茶を注いでいて、閉じ込められていた香りが一気に広がったんだと分かる。
「どうぞ」
そう言って千反田と黒髪女子はみんなに紅茶を配る。受け取った紙コップを覗くと、少し濃いめのオレンジがキラキラと揺れていた。確かに里志の言う様にお茶菓子が欲しくなるな…。
最後に千反田は平塚先生の所にも紅茶を持っていく。
「どうぞ。砂糖はなくてよかったですよね?」
「あぁ、ありがとう。いい香りだ」
平塚先生は紅茶を受け取り一口飲む。それから、一息ついて喋り始める。
「先程も話したが、今君たちに集まってもらっているのは奉仕部と古典部を合併したらどうかという私の考えからだ。まぁ、いきなりこんな事を言われて戸惑うのも当然だろうから、先ず君たちは互いの親睦を深める為に自己紹介などしてはどうかな」
平塚先生の意見に千反田が頷く。
「そうですね…。では最初に活動内容の説明と部員の紹介をそれぞれして、その後に部活を合併する上での疑問や意見を出し合うというのはどうでしょうか」
「えぇ、それで構わないわ」
黒髪女子も同意する。
「ではまず活動内容の説明を……ええと、どちらからしたらいいんでしょう」
名司会っぷりを見せるかと思ったが千反田は相変わらずの様で、黒髪女子の発言で最初は奉仕部から説明する事になった。
「奉仕部は本校生徒らの自己改革を促す事を目的とした部活よ」
「へぇ、何かすごいねぇ」
「そんな大層な部活だったか?」
感嘆の声を上げたのは奉仕部の面々だった。何故俺たちよりも先に驚くのか。
「建前上はそうなっているのよ。悩みや相談などの依頼を受けて、それを解決する手助けを行う言わば相談所的な部活動よ。他にも部活や委員会の依頼だったり、学校行事や生徒会の手伝いをする事もあるわ」
「なんかお前の話だけ聞いてると、すげぇちゃんとした部活みたいに聞こえるな」
腐り目男子がしみじみとしていると伊原が質問をする。
「依頼はどのくらいあるの?」
「月にひとつかふたつかな。そんなに多くないよ」
今時女子が答えるが、確かにそれほど多くない。案外楽な部活なのかもしれない。
「それ以外の時は何してるんだ?」
俺も少し質問してみる。
「基本的に自由に過ごしているわ」
「ヒッキーはずっと本ばっか読んでるよね」
「お前らはお茶しながらだべってるな」
そんな話をしている奉仕部を見ていると、里志がこちらに身体を寄せて話しかけてくる。
「どんな部活かと思ったけど生徒会の手伝いをしてるらしいし、意外とちゃんとした部活なのかもしれないね。それに生徒からの依頼を受けてるなんて、ひょっとしたらその内容によってはホータローが活躍する所が見られるかもしれないね」
随分楽しそうだが、まさかこいつは俺に推理でもさせる気ではないだろうか。
「やらなくてもいい事はやらない。そんな面倒な事俺はやらんぞ」
「そうは言っても部活が合併したら僕らの活動目的にもなる訳だし、ホータローにとってもやるべき事になるんじゃないかな。それに千反田さんだっている。きっとホータローは断れないよ」
俺はにやりと意地悪そうに笑う里志をじっと睨んだ。それからふと千反田を見ると、向こうもこちらに気付きにっこりと笑いかけてくる。今までに何度も千反田に振り回されてきたが、ここにきて更に好奇心を跋扈させるような事態になろうとは……俺は心の中で深くため息をついた。
「他に質問がなければ次は部員の紹介をするわ。まず、私が奉仕部部長の雪ノ下雪乃よ」
そう言って話を進める黒髪女子は、どうやら雪ノ下と言う名前らしい。
「雪ノ下って、まさかあの雪ノ下さんですか?」
名前を聞いて驚く里志の声に全員が注目する。
「どうかしたのか?」
「ホータロー、前に僕たちが住むこの県には旧家名家が多いって話したのを覚えているかい」
いつだったかそんな話を聞いた気がする。たしか“桁上がりの四名家”とか何とか……。
「そういった家は地域社会に対して多大な影響力を持っているんだけど、旧家名家じゃなくてもそれに匹敵するくらいの家もあるんだ。例えば病院長の入須家や教育界の重鎮、遠垣内家。他には弁護士の葉山家なんてのもある。けど、そんな中でも頭ひとつ抜けているのは県議会議員及び建設会社長でもある雪ノ下家さ」
「建築会社の雪ノ下って大企業じゃないっ!それに県議会議員って…!」
里志の説明に伊原も驚く。この雪ノ下という女子はそんな有名な所のお嬢様なのか。確かに社名は至る所で目にするし、県議会議員であれば相応の影響力もあるだろう。俺はちらりと雪ノ下を見るが、当の本人はこんなこと言われ慣れているのか、全く気にする様子もなくすました顔をしている。
「しかも雪ノ下家の令嬢は、容姿端麗才色兼備。普通科よりも偏差値が高い国際教養科であるJ組に所属していて、学力テストでは常に学年1位をキープし続け、豊富な知識もあり、運動でも楽器等でも大抵のことは3日で修得してしまうんだ。その完璧さは多くの生徒の憧れであると同時に手の届かない存在、まさに高嶺の花と言っても過言じゃないよ」
「ほう、そんなに」
「噂によれば副委員長を努めた今年の文化祭の功績も、一重に彼女の手腕だとも言われているね」
「ゆきのんすごいねっ。なんか有名人みたい」
今時女子は里志の話を聞いて興奮した様に言う。
「別に他人からどう言われようと関係ないわ。それにしてもあなた、よくもまぁそんなに調べたものね。他人のプライベートを覗き見するのが趣味なのかしら」
雪ノ下は里志に冷ややかな視線を向けて言う。毒のある言葉だが、まぁよく知りもしない相手に自分の事をのべつまくなく喋られては当然の反応だろう……しかし里志の話ではこの雪ノ下という女子は正に完璧超人のようである。
「そうよふくちゃん、初対面の人に失礼でしょっ。ごめんね雪ノ下さん」
「データベースだからね。それに僕も、今年の文化祭の準備も総務委員として手伝ったし、全くの無関係って訳じゃないよ」
里志は伊原にまで謝らせておいて尚、話を続ける。
「そうだったの。でも…ごめんなさい。やっぱりあなたの事は記憶にないわ」
「まぁ、僕は会議には出てないしね…。総務委員として会議に参加したのは委員長だけだったし……。それはそうと文化祭と言えば一昨年の文化祭さ!近年稀に見る盛り上がりだったけど雪ノ下さんのお姉さんが実行委員長だったんだよね。雪ノ下陽乃といえばまさに…
「福部さんっ!」
調子に乗って喋り続ける里志の言葉を遮る様に千反田が声をあげた。
「…あの、あまり時間もないのでそういう話はまたにして、今は本題を進めましょう」
少し言いづらそうに話す千反田の前に座る雪ノ下は相変わらずのすまし顔だったが、心なしかその表情は鋭くなっている様に見えた。
「そうだね、少し話が脱線してたね。雪ノ下さんもごめんよ」
里志は我にかえり、二人に謝った。
「いいえ、大丈夫よ。では話を進めましょう。こちら、部員の由比ヶ浜さんよ」
「こんにちわ、由比ヶ浜結衣です。よろしくね」
雪ノ下に紹介され、由比ヶ浜はにっこりと微笑む。それから里志の方をわくわくした様に見る。
「なにか?」
里志は視線を向けられて少し身を引く。
「えっ?いやー、私もゆきのんみたいに何かないかなーって思ったんだけど…」
「何期待してんだよ…」
突っ込む腐り目男子。
「いいじゃん別にー」
それでも期待している由比ヶ浜に里志は申し訳無さそうに言う。
「ごめんよ由比ヶ浜さん。残念だけど由比ヶ浜さんの情報は知らないんだ」
「そっかー残念。そしたら…私の自己紹介だよね。えっと、クラスはニ年F組で、誕生日は六月十八日で、血液型はO型で、座右の銘は“命短し恋せよ乙女”です。特技…って言うのか分かんないけど、初対面の人でも割とすぐ仲良くなれる所で、あっ…趣味は、り…料理です」
「…なんでそんなすぐバレる嘘付いちゃうの?」
「そうね…趣味と言うなら、せめて料理というカテゴリーに入るくらいにはならないといけないわね」
腐り目男子と雪ノ下は半ば呆れた様に言う。
「べっ、別にいいじゃん趣味なんだから。それにほら、まだ練習中だし」
由比ヶ浜は二人の反論にたじろぎながらも、自分に言い聞かせるようにうんうんと頷く。
「そういえば古典部のみんなは料理得意なんだよね?去年文化祭でお料理コンテスト優勝してたよねっ」
「いえ、そんな大した事じゃありません。私も料理が好きなだけですし…」
由比ヶ浜に聞かれた千反田は微笑んで答える。
「いやいや、千反田さんの料理の腕はちょっとしたものだよ。料亭で出されても遜色ないぐらいだと思うな」
里志は大げさに言うがこれは別に大言壮語という訳でもなく、実際に千反田は料理が上手だ。話によれば、去年の文化祭では汚染された河川も綺麗に澄み渡るほどに透き通った桂剥きを披露したそうだ。
「あれ、どうしたの摩耶花?」
「何でもないっ」
見ると伊原が頬を膨らませている。まぁ伊原もコンテストに参加していた訳だし、彼氏が自分の事を褒めてくれなければそりゃ怒るだろう。伊原も料理が下手な訳ではないが、まぁ千反田が相手じゃどうしようもあるまい。
「おい、痴話喧嘩を始めるなよ。伊原も、千反田の料理の腕は知ってるだろ。気にしてもしょうがない」
「分かってるわよっ!うっさいわねっ!」
伊原のあまりの権幕に身が強張る。せっかく仲裁に入ったというのに何故こんなに睨まれなければいけないのか。
「…では最後に、そこの端に座って目を腐らせているのが比企谷君よ」
様子を見ていた雪ノ下は区切りが付いたと判断したのか話を先に進める、何とも酷い紹介だが。
「…比企谷八幡だ…よろしく」
「短っ!えっ、ヒッキー自己紹介それだけ?」
「確かに比企谷君には誰も興味ないかもしれないけれど、それでも最低限というものがあるでしょう」
「お前ら、言いたい放題だな…」
雪ノ下が比企谷に忌憚のない意見をぶつけていると、里志が割って入る様に声を上げる。
「比企谷って、あの比企谷君かい?」
「知ってるのか」
俺が聞くと里志はうんと頷く。
「もちろんさ。彼は有名人だからね。なんて言ったって学校一の…」
そこまで言った所で里志は何か思い出した様に口を噤んだ。
「なによ、途中で止めないでよ。気になるじゃない」
「わたしも気になります」
「えーっと……」
伊原と千反田も続きが気になる様で里志に言い寄るが、里志は言葉を渋っている。奉仕部の連中を見ると、なんだかみんな気まずそうな顔をしている。
「別にかまわねぇよ。何を言われてるか知ってるし、どうせそんな噂あと半月もしたらみんな忘れて、俺はまた学校一存在感のない男だ」
そう言ったのは比企谷だった。それを聞いて里志は少し困った顔をしたが「そうかい」と返した。
「二人とも、この間の文化祭の閉幕式の事を覚えてるかい?」
「…たしか、文化祭実行委員長の子が挨拶の時ちゃんと話せてなかったよね」
伊原が思い出しながら言う。俺もその時の様子を思い返してみると、文化祭実行委員長は挨拶はしたがその口調はたどたどしく、なんと言うか無理矢理やらされている、そんな印象だった。そして俯いたままぼそぼそと途切れ途切れに言葉を発した後、ふらふらと壇上を降りてしまった。舞台下で聞いていた生徒たちもその覇気のない姿を見て心配していた。
「うん。何故そうなったかと言うと、実は挨拶の前にある生徒から心ない事を言われたらしいんだ。そのせいでちゃんと挨拶ができず、文化祭は後味の悪いものになってしまった。実行委員長の友達はある生徒について言ったそうだよ、“信じられない。あいつがいなかったら文化祭は最高の形で終えれたのに”ってね。それからその噂は瞬く間に学校中に広まり、翌日からその生徒は学校一の嫌われ者とまで言われる様になったんだよ」
「その学校一の嫌われ者って言うのが……」
伊原はそう言って比企谷を睨むように見る。
「あくまでも噂だから実際の所どうなのかは分からないけど火のない所に煙は立たないとも言うし、比企谷君が穏やかならざる事を言ったのは確かだろうね」
里志の話を聞いて千反田は不安そうに比企谷を見る。しかし、俺たちの視線を一身に浴びる比企谷はというと、先程の雪ノ下同様そんなものは言われ慣れているとでも言う様にすました顔をしている。いや、実際はそう見えるだけで我慢しているだけなのかもしれない。俺は雪ノ下と由比ヶ浜を見たが、どちらかと言うとこいつらの方がよっぽど辛そうな表情をしている。特に由比ヶ浜は比企谷が悪く言われる事に耐えられないのか、両手をぎゅっと握りしめていた。しかしそれも限界で、とうとう口を開こうとする。
「でもっ」
そう言ったのは由比ヶ浜ではなく里志だった。先程よりも強い声で発せられた言葉に、俺たちは里志を見る。
「噂は噂さ。周りからの情報だけでその人がどんな人間なのかを判断しちゃいけない。噂や表面的なものだけで相手の事を解った気になるのは高慢ってやつだよ。僕たちはもっとお互いの事をよく知らなくちゃね」
「そうですっ。比企谷さんだって実行委員長の方にそう言ったのは何か理由があったのかも知れません」
千反田はうんうんと頷く。しかし、里志がこんな事を言うなんて少し意外だった。
「確かにその通りだとは思うが……随分らしくない事を言うな」
「まぁ、たまにはいいじゃないか。嫌うにしたって相手の事をちゃんと知った上で、それでも気持ちが変わらなければその時に嫌えばいい。摩耶花もその方が性に合うだろ」
笑って答える里志に、伊原はふぅとため息をついた後こちらを見てにやりとする。
「そうね…。まぁこっちにも似た様なのが居るしね」
何故ここで俺を見る。
「俺は全校生徒に嫌われた覚えはないぞ。比企谷と一緒にするな」
「何よ、中三の時にクラス全員に批難された癖に」
こいつ、嫌な事思い出させやがって。
「昔の話だろっ。この間、お前だって納得してたじゃないか。それに俺は全員に分かってもらおうなんて思わない。俺の事を分かってる奴らだけ分かっていればそれでいい」
「はいはい、そうですか」
伊原は依然にやにやしている。
「大丈夫です折木さんっ。私は折木さんの事をちゃんと考えてあげますからね」
千反田は意気込んで言う。その言い方だと誰も俺の事をちゃんと考えていない様に聞こえるが、俺は今失礼な事を言われているのだろうか。
「良かったじゃないかホータロー。ちゃんと考えてくれる人がいて」
里志はアハハと笑いながら言うので、俺はもう知るかと思いフンと鼻を鳴らした。
奉仕部の連中を見ると、先程とは違い表情も幾分か柔らかくなっていた。とりあえずこの教室に比企谷を責めようとする人間はいない、そう思い安心したんだろう。
「では、奉仕部の説明はこのくらいにしましょう」
「えっ、俺酷い事しか言われてなかった気がするんですけど…」
雪ノ下が話を閉めようとすると、比企谷が若干不満げに言う。
「そうは言っても、ない袖は振れないものよ。それにあったとしてもどうせ残念な話ばかりなんだし、これ以上恥の上塗りをする必要はないわ」
「まぁ仕方ないよヒッキー」
雪ノ下と由比ヶ浜に言われ比企谷はぐぅと唸り黙ってしまった。
まぁそんな感じで奉仕部の紹介は終わり、次はいよいよ俺たち古典部の番である。