大会初日の開会式は、一高での発足式と同じく、テーラード型スポーツジャケットを着て、競技選手入場、そして校歌が演奏されて、そのあとはすぐに競技へと移るので、俺は皆と一緒に競技エリア内に用意してある一高の天幕へ行った。
まずは七草生徒会長が出場する女子スピード・シューティングの試合観戦を、関係者エリアではなく一般用の観客席で観るためだ。
これは、達也、ほのか、雫と一緒に行動して競技を観るのと、一昨日の懇親会で来ていることを知ったレオ、エリカ、美月に同じクラスでもそれまであまり話していなかった吉田幹比古だ。
定期テストの理論で3位に入っていていただけに興味はあったが、その日まであいさつをする程度の同級生だった。
七草生徒会長の予選は100発100中のパーフェクトだった。
達也が中心になって、七草生徒会長のスピード・シューティングの解説をおこなっているが、ドライアイスの亜音速弾の話で見えていなかったのが何人かいたのは、動体視力が必要な競技系を実際におこなっているか、自己加速・加重魔法で自分の身体を高速で移動させていくなかで見慣れていないと難しいだろう。
達也の話は、
「覚えておいた方がいいぞ、レオ。世界を『上手いこと騙す』のが、魔法の技術だ」
「つまり、あたしたち魔法師は、世界を相手取った詐欺師ということよね?」
「強力な魔法師ほど、極悪な詐欺師ということになる」
エリカのつっこみに、達也が律儀に答えている中身は印象深かった。
七草生徒会長の女子スピード・シューティングの競技も見終わったし、今度は渡辺風紀委員長がでている女子バトル・ボードだ。
渡辺風紀委員長は硬化魔法を最初におこなっているから、転倒する可能性はあっても、落下する可能性は無い。
途中、達也が漏らした
「硬化魔法の応用と移動魔法のマルチキャストか」
「あー、それだけなら俺もSSボード・バイアスロンでつかっているよ。もっとも俺の場合は、ボードと靴の位置を硬化魔法で固定しているだけだけど」
「ところで、硬化魔法って?」
レオが得意にしている魔法だけに、興味があるのだろう。
達也に解説をまかせて、渡辺風紀委員長のバトル・ボードでおこなっている動きを来年の参考用として見ていた。
そう、俺の出場競技はバトル・ボードではない。
SSボード・バイアスロンでのカーブで使用する加速魔法が独特で、予選通過は可能でも、次の準々決勝では、カーブで水面の動きを操作されたら、うまく対処できないだろうということで、加速魔法が比較的優位になるクラウド・ボールに出場することになった。
午後はスピード・シューティングで、主に七草生徒会長をみていることになった。
今日の九校戦の観戦イメージは、七草生徒会長で始まり、七草生徒会長で終わるという感じだ。
大会2日目は、まずクラウド・ボール女子の七草生徒会長を中心にして見る。
なんか、昨日の続きな感じになるが、相手がサイオン切れで棄権するのはあったとしても、それが1回戦なんて、珍しいのも見れた。
たいして午後の男子は、桐原先輩を中心に見るつもりだったが、初戦が優勝候補である三高との接戦を落としたのがポイントの入らない2回戦目ということで、一高にとっては痛い結果だ。
残りはクラウド・ボールで他の一高の先輩の試合を中心にしてみたが、桐原先輩の敗戦が一番高いレベルでの競いあいだった。
そのあとは、新人戦に出る俺は技術スタッフによるコンディションチェックを受けたあと、情報端末にレオからのメールが入っていたので見てみると
「達也の部屋へ遊びにいこうぜ」
となっていたので、時間を確認して、レオの部屋にいったん集合したところ、レオと幹比古は当然同じ部屋だからあたりまえとして、エリカと美月がいるのもこんなものだろう。
少々予想と反していたのは、まずは深雪がいたことで、ほのか、雫といったところに、夏休み前に一緒に帰っていたメンバーに幹比古が多いぐらいだ。
夕食前には、まだ早い時間に達也の部屋へ行くことにしたが、深雪が達也の部屋に行く時間がこの時間だったからだそうだ。
達也の部屋に入って目立ったのは、机の上の『剣』っぽいもの。
それに気がついたのはエリカも一緒だが、いち早く質問したのは、エリカで最数的な返答は、
「武装一体型CAD。武装デバイスという言い方もするな。完全に単一魔法に特化したCADと、その魔法を利用した白兵戦用の武器を一つにまとめた物だよ」
夕食後に達也とレオが外でテストするということで、見に行くのは遠慮した。
大会3日目は千代田先輩が出場するアイス・ビラーズ・ブレイクに、そのあとは渡辺風紀委員長のバトル・ボードだったが、ここで事故がおこった。
競技相手には『海の七高』と呼ばれている、七高の選手が入っていて、ある意味、昨年の決勝戦のカードと同じだ。
スタートとともに渡辺風紀委員長と七高の選手が、ダッシュをきめている。
先行していた渡辺風紀委員長がカーブの最中にそれは起こった。
七高の選手が減速するはずのところでの加速だ。
ここでオーバースピードだなんて信じられない。
そんな思いで見ていたが、その先にいた渡辺風紀委員長が、高度なターンをみせて七高の選手を受け止めようとしている。
一安心できそうだが、渡辺風紀委員長が受け止めようとした瞬間に、バランスを崩した。
見えていたのは受け止めそこなって、2人が飛んでいった先には渡辺風紀委員長が、七高の選手を受け止めていたために、受け身も取れずにフェンスにぶつかるところだ。
「お兄様!」
「行ってくる。お前たちは待て」
達也は渡辺風紀委員長の方へ向かっていった。
夕食時には、渡辺風紀委員長が全治1週間の大けがということで、運動はひかえなければならないということがわかった。
これは、一高にとって大きな痛手だろう。
大会4日目で、本戦はいったん休みとなり、これから新人戦が5日間続く。
今日の最初は女子スピード・シューティングで、一高の出番が終われば女子バトル・ボードの予定だ。
競技選手である雫はもちろんのこと、彼女の技術スタッフである達也もいないが、雫の競技が始まったところで、球状に広がる振動魔法のエリアについて解説してくれたのは、深雪とほのかだった。
雫の競技は打ち漏らしが無くパーフェクト。
他の滝川と、エイミィ(明智さんがそう呼んでと言っていたので)の競技もみたが、順調に80枚以上のクレーを破壊して、準々決勝進出となった。
そして対戦での雫の番だが、今度はクレー破壊の得点エリアより大きい、収束系のエリア魔法による衝突破壊と、中央部での振動系エリア魔法による破壊とのコンビネーション。
特化型CADは1種類しかできないから、形状が小銃形態とはいえCADは汎用型になる。
そのことに一番初めに気がついたのは幹比古だった。
それに対する説明は、深雪とほのかがおこなってくれた。
3人とも勝ち上がって、その上、女子スピード・シューティングは1位から3位まで独占するという快挙だ。
一高の天幕の中が、喜びにあふれている気はするが、少しはやめに、ほのかが出場する女子バトル・ボードを見にいった。
ほのかが行なった作戦は、最初に閃光魔法を水面に放って、スタートダッシュをきめて、そのまま単独でゴールインだ。
これでほのかは予選通過で、大会5日目で新人戦2日目となる明日の午後は、いよいよ俺の出場競技の男子クラウド・ボールだ。