達也から特殊鑑別所へ入るための手段の提示があった日の放課後、風紀委員会本部に達也を引き連れる形でと一緒に入った。
その場にいたのは、風紀委員長の千代田先輩がいるのはメールを事前にだしておいたから当然として、前風紀委員長の渡辺先輩がいるのも、ここでよくみかけるので違和感はすでにない。
俺ががおこなった関本先輩への面会申請に対する返答は
「芝崎くんは良いとして、他はダメ」
俺自身が面会をするのは許可はおりた。
しかし、当然のごとく達也はそれでは納得せずに
「……理由を教えてください」
「ダメなものはダメ」
あまりにも、シンプルすぎる拒絶の言葉だが、俺からある提案をした
「達也の方は、深雪さんのいる前で中条先輩へ申請すれば?」
達也が生徒会室でこの話をしなかったのは、実質風紀委員長が管理しているからであるのだが、深雪にわかるからとついてくることになるだろう。
千代田先輩と渡辺先輩の顔色が変わった。
皆の記憶に残っている雪の女王やスノークイーンの異名をとった生徒会長選挙を思えば、この場がどうなるのかが。
渡辺先輩から、
「花音、まあ待て、ちょうど明日、あたしと真由美で関本の様子を見に行く予定にしていたから、それに同行だったら良いんじゃないか?」
「まあ……摩利さんと一緒なら」
この一言のあとちょっとした調整が入って、俺も渡辺先輩たちと一緒に行くことになった。
風紀委員長がいけない……五十里先輩の護衛を優先しているためで……のだから、かわりとして風紀委員の誰かが特殊鑑別所へ面会しに行くのは断れるわけでもなかった。
翌日の放課後は八王子特殊鑑別所へ行くのに、色々と行きたがっていたメンバーはいたが、結局は渡辺先輩、七草先輩、達也に俺のメンバーで行くことになった。
千代田先輩は4人分の委任状のみ手配したので、他に行きたがっているメンバーが特殊鑑別所へ入るのは無理という結論になるんだけど。
特殊鑑別所は入管こそ手続きが面倒だった以外は、そこをすぎればすんなりと関本先輩の部屋のそばまでこれた。
渡辺先輩は関本先輩の部屋へ直接入るので、七草先輩、達也に俺は、隣の隠し部屋で様子を見聞きすることになった。
魔法をつかって、複数の香水から自白剤を作るのは、渡辺先輩の特技らしい。
魔法を使えば検知をされて、警備員がくるはずなのだが、それもないのは、七草家の名前を使ったのかな?
俺としては、関本先輩がどうして、ハッキングをしようとした動機を知りたかったが、尋問していた内容の流れで、
「司波の私物を調べる」
というところが不思議だったが、達也と七草先輩の問答から宝玉のレリック『聖遺物』があるかと、達也は持っていないと答える。
まあ、普通はそんなものだよな。
七草先輩と達也の会話はここで、終わった。
非常警報が鳴ったせいだ。
警報がなったので、仕方がなく隠し部屋から廊下へとでるが、天井から下がっているメッセージボードには『侵入者あり……』と流れている。
七草先輩からの指示で達也がLPS端末の操作を行っている。
俺は念のために屋内の気配をサーチした。
薄い気配が探れたが、これはこの前の尾行していた男をおいかけていった気配と同じ。
達也との帰り道に気配を確認していたが、次々と入れ替わっているので、達也専任でついているわけではあさそうだ。
だが、警報がなったのと同じタイミングで居ることが、この場合問題だ。
「以前、達也を尾行していたのをおいかけていった奴が近づいてくる」
「なるほど、こちらが本命ですか」
この言葉を聞いて、ようやく理解できた。
関本先輩の口封じにきたということだろう。
さて、気配を完全に消せない相手は怖くはない……そういいたいところだが普通のテロリストなどでは手に入らないハイパワーライフルを用意してくるようなところのメンバーが単身で送ってくるようなのが相手だ。
なんだか嫌な予感がする。
中央階段を俺と達也がほぼ同時に見てから、一拍遅れて渡辺先輩も気がついたように見始めた。
「えっ、なに?」
七草先輩だけが、気配をつかめていないらしい。
それもそのはずで、階段から現れた青年の気配の希薄さは、突然みたならば、人間としてより人形が置かれたという印象を受けるだろう。
そこで渡辺先輩が独り言のようにもらしたのは
「リユウカンフウ」
近接魔法戦技を扱う芝崎古流柔術でも、対人近接戦闘で世界の十指に入るというリユカンフウのプロフィールは頭に入っている。
大亜連合の鋼気功の使い手。
リユウはこちらを向いたが、視線の先は多分、渡辺先輩。
渡辺先輩が一高の三巨頭と言われているのは知っているが、1つの高校での高校生トップ3と、世界の十指ではさすがに格が違う。
そこで達也が一歩ふみだしたことにより、
「行きます!」
と俺は飛び出してしまった。
ここで行うのは、半鏡の魔法で自分の後に1枚を出して、達也たちからは見えるようにして、リユウからは見えないようにする。
そして、自己加速魔法に、古式の防壁の魔法で自分の身を守りつつ、すでにだしてあるのは、見た目はボールペンだが武装一体型CADで、風紀委員になってからCADを学校内でも自由に持ち歩けるということで、持ち歩き始めたものだ。
入っている起動式は刀型の明鏡とそれを縁取るクワッド(4倍)・リフレクトの魔法はあくまで概念ではあるがカーボンナノチューブに匹敵する厚みで50ナノメーロル程度に、魔法の名称は月光。
自己加速による剣速を生かして斬ることが目的の魔法だが、これだけ薄いと自前でくみ上げるクワッド・バンドの魔法よりも、それだけで切れ味がましている。
だが、リユウへの第一攻撃は、無数のドライアイスの弾丸だった。
その弾丸を感知したのをきっかけに、こちらへまっすぐにつっこんできたので、明鏡で相手の視界をふさぐ。
そこで、周りに気を紛らわせる隠形を行うと、これにはさすがにあわてたようで、リユウも後方に飛びのいた。
鋼気功の使い手は、その原理から外部の気配がよみとりづらくなる。
目くらまし程度であれば、気配でもある程度戦えるが、隠形も絡めると防御一辺倒になるはずというのが通説だった。
だがそこは超一流と言われる所以で、明鏡から離れた瞬間にこちらの隠形をみやぶりつつ、攻めに転じてきた。
そこに月光をカウンター気味に突き出して、攻撃の間合いが長いのを利用する。
相手の皮一枚ではあるが、切れて血が流れたところで、リユウは隠形をきりつつ、鋼気功の種類をかえようとしている。
そこで、感じたのはサイオンの爆風……達也の術式解体だろう。
その瞬間に相手の手にダメージだけでもと思ったが、間一髪間に合わず、薄皮一枚を斬るのに終わった。
そのあとは入れ替わり、立ち代わり攻撃をしかけあうが、円というより、魔法をからめて3次元的に動きつつ、足技を織り込んで、さらに月光できりかかるが、リユウの鋼気功を破るのに成功してはいない。
リユウの鋼気功の頑丈さに俺はへきへきとしているところだが、リユウカンフウからしてみれば、自分の距離に持ち込もうとしても、鏡のようなもので視認範囲をしょっちゅうせばめまれ、うまく自分の距離に近づいたと思ったら、目視外からの高い蹴りが存外に打撃となり、自分の本当の距離に持ち込めない。
しかもサイオンを消費せられているという自覚がある。
まさか、この高校生の攻撃の特性がと、距離をとったところで、またしても無数のドライアイスがきたので、とっさに前方の鏡乗の気配へ向かって突き進んだ。
俺は、このまま長期戦になれば、やれるという感触を得られていた。
まあ、達也や、七草先輩の援護のおかげもあるが、なぜかわずかに動作が鈍いところがある。
近接魔法戦闘では世界で十指に入るというリユウカンフウがそんな隙があるわけがないとおもっていたのだが、他に比べて反応が微妙に遅い。
そして、防壁にしくんだサイオン拡散の魔法がリユウカンフウのサイオンを極度に消耗させているので、それで鋼気功が使えなくなれば、勝ちと思ったのだが、一瞬の間をつかれてターゲットをかえられた。
ゆえに
「避けろー! 気配に向かっている」
気配がはっきりしているのは、渡辺先輩と七草先輩。
多分、狙っているのは七草先輩の方だが、はずれている可能性もある。
鏡は突破され……通用すると思っていたら最初から使っている……だが、心配は無用だった。
ターゲットにされた七草先輩の手前で、ばったりとなぜか倒れたのはリユウカンフウ。
半鏡の向こうにあったのは、渡辺先輩が作った無酸素空間で、七草先輩を襲う前に呼吸をしたために倒れたのであろうというのは、あとで知ったことだった。
伊達に対人戦闘が得意というわけではなかったわけだ。
眼鏡が壊れたので、新しく作り終えるまで、本SSの次話投稿は差し控えます。
予備の眼鏡だと、PCの文字が読みづらいです。