10月30日の日曜日は論文コンペ当日であって、風紀委員としてではなく、1生徒としてでむいていった。
リユウカンフウがでてきたということは、これまでの一高のまわりをうろついていたのは、最低限、大亜連合と他にもう1派がいるところまではわかる。
生徒をスパイにしたてあげるだけで、リユウカンフウがでてくるものだろうか? っと、頭をひねるが、わからないものは分からない。
今日は、何かおこるのではないかと、いう予感はあるのだが、その何かがわからないので、特殊なCADを持って、論文コンペ会場に向かった。
会場には千代田先輩が先にきているが、発表のサブである五十里先輩といちゃついているし、エリカとレオが警備にまざりたいとかで、千代田先輩を困らせるといるのだが、それは警備の邪魔なのか、五十里先輩といちゃつけないからなのか、内心は不明だ。
これに千代田先輩が
「芝崎君。この聞き分けのないお嬢さんに、貴方から何か言ってやってくれない?」
と、『貴方から』だから、丸投げモード全開だ。
「はぁ、俺に任せていただけるなら」
一瞬渋い顔をした千代田先輩だが、隣にいる五十里先輩をみてから、うなずいた。
とりあえず、エリカとレオを人通りの少ないところについてきてもらって、
「まあ、なんとなく、事情はわかるけれど、こういう時にこそ、達也の悪知恵をかしてもらうべきだろう?」
そう、俺も達也に丸投げする気まんまんだったのだ。
これで、一時的なのかもしれないが、エリカもレオも納得するあたり、達也への評価は同じなのだろう。
達也が到着して……当然のごとく深雪も一緒にいる……相談をすると「遊び」とか「友だち」にアクセントをきかせて、何かおこれば協力で、楽屋に出はいりするのは問題なさそうなことを言っていた。
エリカもレオもとりあえずこれで納得させたのは、見習うコツだなと思いながら、レオ達と行動を共にすることにした。
そのあと、幹比古と出会って、美月も少し遅れてくるという連絡があったとのことで、ロビーで合流してから、観客として5人で座れる席をなんとか確保した。
ほのかと雫が約束通りの時間にきたので、達也と深雪と裕子以外のいつもの昼食のメンバーで食事をとった。
各校のプレゼンをみて、中身が理解できるかはともかく、魔法をつかって、そのように動作させられるおかと、感心するばかりだった。
そして一高のプレゼンも終わって片付け作業に入り、三高は入れ替わるように設置の作業をおこなっている。
その最中に轟音とともに、会場にゆれがきた。
俺には轟音とゆれを感じとったあと、外部からの銃声らしきものが聞こえる。
連続音でないことから、ハイパワーライフルだろうと見当をつけたが、だとすると、ここ最近で一高に関することから考えてみると、大亜連合の関係だろう。
ここの警備はプロを手配しているということだし、あとは成り行きにまかせるだけだ。
そんな思いもつかの間、出入り口が一斉に開いて、侵入してきた集団のうち1人が、ステージにむかって銃声を響かせた。
「大人しくしろっ」
「デバイスを外して床に置け」
この状況は、プレゼン会場にいる全員を人質にとられたようなものだ。
そうすると侵入者のうち1人が、ステージ前の通路に立っていた達也と深雪が目についたのであろう
「おい、オマエもだ」
ってどうも達也はCADを手放す気はなさそうで、相手を観察している目のようだ。
まずは様子見をきめこんでいると、達也に怒声をあげる侵入者だが、達也は一向に動じない。
どちらかというと動揺しているのは、声をかけている侵入者の方だ。
それを侵入者の仲間が気がついたのか
「おい、待て」
銃声が1発。そして少し間をおいてから2,3発目の銃声として聞こえた。
しかし、達也の握りこんだ手の位置が動いただけのようにしか、普通はみえないだろう。
俺には達也の手からでたサイオン光が瞬間的に発したところまでは見えたが、なんらかの魔法でハイパワーライフルの弾丸を対処したのだろう。
あれは、春のブランシュの事件で、特別閲覧室のドアを破った時の魔法とほぼ同一なんだろう。
起動式を使わずに魔法を放つ点と、これだけのスピードがだせるとなると、先天性スキルなのか。
ハイパワーライフルで打っていた侵入者が、ライフルをすててナイフに切り替えたが、普通の人間が多少の訓練を受けたからといって、ハイパワーライフルの弾丸を握りこんで対処した達也の相手になるものじゃない。
そう思ったが、達也がおこなったのは、腕を切断するというものだった。
こちらからは、達也の手先にサイオン光がみえたに過ぎないが、さっきの弾丸を止めた魔法と同一系統の魔法だろう。
残りの侵入者が茫然としているので、共同警備隊が侵入者に対して魔法を放ち捕獲行動に移っていた。
俺たちは目立つ格好となった達也の方へ向かい、今後の方針として正面入り口の敵をかたずけるということで、正面出入り口に向かうと、達也が先ほど使った魔法をカーディナル・ジョージに『分子ディバインダー』扱いにされていたが、達也の背中を追う形で移動することになった。
正面出入り口に向かったメンバーは達也、レオ、エリカ、幹比古に深雪と雫がいるのまではなんとなくわかるが、おもわず一緒の行動をしてしまったであろう美月にほのかまでいる。
最後方だった俺は、達也に首を引っ張られてレオがくいとめられてハイパワーライフルの餌食になるのを救っていた。
そこで、殺気を出している相手に使うのは、汎用型CADにある半鏡内に9G指定の重力魔法を入れた九校戦のモノリス・コードでも使った魔法をマルチキャストして、相手を気絶させていく。
気配を対象にして魔法を放てるといっても、照準をあわせるのに、中距離以上では目視より時間がかかり、その間に達也がエレメンタル・サイトを使用しているのに気がついた。
まあ、まわりにいるのは、ある意味気心が知れているメンバーだし、達也としても、もれてもなんとかなるとでも考えたのだろう。
「銃を止まらせてくれ」
達也が言って、深雪が2回魔法を放った直後には達也が出ていき、エリカも出て行ったが、俺は弾丸がでてこないことを確認してから出ていった。
その時、右手には月光を持ち、月光では刀型の明鏡とそれを縁取るクワッド・リフレクトの魔法で手近な相手を斬っていく。
リユウカンフウを相手にした時とは手に残る感触が異なる。
リユウを相手にしていた時には、斬るというよりは止められたという感じだが、こちらでは、試し切りと同じような感触だ。
ゆえに敵の命を奪う太刀筋を最初から選んでいたのだが、大亜連合は現在も停戦さえしていない相手国。
こちらが躊躇して、やられ返されるのはごめんだとばかりに、次の相手に向かっていった。
「達也たち!」
幹比古の声が聞こえる。
精霊魔法を使うのだろうと、相手から隠れるようにすると、幹比古からは自然に相手が見えるはずと踏んでの行動だ。
後方から風精を感じたところで、敵への攻撃がされた。
それで敵はついに敗走したが、達也たちが退いたので、俺も皆の元にいったんもどることにした。
戻った先では出番がなかったレオが本気なのかそうでないのかいじけていたりしたが、ちょっとしたところで期限をなおして、
「……それで、これからどうすんだ?」
「情報が欲しい。エリカも言ってたが、予想外に大規模で深刻な事態が進行しているようだ。行き当たりばったりでは泥沼にはまり込むかもしれない」
達也から情報がほしいと言えば、そこで雫が『VIP会議室』なるものの存在を言ったので、そこへ向かい、会議室で受信した警察マップデータのうち会場周辺の状態をモニターに映しだされると、危険地帯を示す赤色が海から内陸部へ拡大しているのが見受けられた。
そのあとシェルターに向かうという方針が現実的というのと、達也のデモ機のデータは消しておきたいということで、まずは一高のデモ機がおいてあるステージ裏に向かうことにしたが、そこで十文字先輩に会った。
十文字先輩は、とっとと脱出しないのかということだったが、こちらは、一応はデモ機のデータ消去と、バラバラに行動するよりは良いかと思ってという、達也がどうとでもとれる言葉を発したが、あまり細かいことは問われなかった。
達也と十文字先輩が話しているうちに、他の生徒はすでに地下通路を使って駅にあるシェルターへ向かったとのことだが、敵との遭遇戦の可能性があることに気がついた服部先輩が、沢木先輩とともに地下通路を先導している中条先輩のところへ行くように指示したのは十文字先輩だ。
そして十文字先輩を先頭にして、ステージ裏に向かうとなぜか7人もの人がいた。