魔法科高校の鏡の魔法師   作:烏鷺烏鷺

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横浜動乱編 6

作戦の変更とは、幹比古が美月にきてもらえば、今より早めに対処できるとのことだった。

俺からは

 

「この後、そこまで来るかな? 戦力の逐次投入は悪手だから、おこなわないと思うんだけど」

 

結果としては、人間の脳がパーツとして入った直立戦車が逐次投入がされてきたので、美月がきてくれたことにより、台数なども正確にわかり連携もしやすくなった。

 

美月がきたあと2戦したところで、深雪が美月にもう1つの警戒チームのことを聞いて考え込んでいたが

 

「どうしたの、深雪? 今さら考え込んじゃって」

 

「変だと思わない? なぜ敵はわざわざわたしたちが待ち構えているところへやってくるのかしら? こちらは十人しかいないのだから、わたしたちが居ない所をすり抜けていくことだってできるはずなのに」

 

「……足止めかも」

 

エリカの言うとおりかもしれないと思いつつ、だとしたら駅場前の人たちを人質にするのだろうが、どうやって(大量の)人質とともに脱出するつもりなのだろうかと考えていたところで、

 

「来たよ!」

 

幹比古からの新たな敵の襲来が発せられたので、目の前の戦いに集中することとなった。

 

 

 

直立戦車以外にも装甲車や歩兵も現れてきたので、加速系統魔法の一種である対物・放射熱複合バウンドの障壁魔法を張りながら、さらに神風の術……一種の気象系魔法であり、巨大化させれば竜巻となる……なども使い戦いを開始したが、ハイパワーライフルの弾丸も跳ね返したのには俺自身でも能力が予想より向上していたことに驚いた。

敵の攻撃も散発的になり、幹比古の雷撃魔法で沈静化したあと、ビルの陰に集まった。

 

「七草先輩がヘリで迎えにきてくれるそうよ。市民の脱出用とは別に、わたしたちが脱出する為のヘリも用意してくれたみたいよ」

 

まわりの敵が一掃できたところで、ヘリのローター音がきこえてくるから、迫ってくるのはわかるが目視できない。

気配とわずかながらにサイオン光を感じることから、ほのかの光学振動系魔法の迷彩だろう。

ヘリが着陸できないとのことで、ロープがたらされたので、それにつかまってヘリに搭乗した。

ヘリへの搭乗後は、主に上級生で編成されている警護チームへ向かうことになった。

 

もう1つの警護チームを迎えにいったつもりのヘリからは、警戒チームだけが戦闘としている状態であるが、すぐには脱出させることは無理だとヘリ内部では判断していた。

 

ほのかがかけていてくれる光振動系魔法による迷彩への干渉をきっぱりと言って、七草先輩が下への援護射撃を行うことになった。

相手から見えずに、上空からの攻撃という優位に立つためのお手本のような攻撃の上に、七草先輩の『マルチ・スコープ』を使用しながらの『魔弾の射手』により5分程度で鎮圧した。

七種先輩から

 

「お待たせ、摩利。ロープを下すから上がって来て」

 

「ああ、頼む」

 

この時、ある意味としては、全員が油断していたといえよう。

七草先輩にまかせて大丈夫だろうという安心感があった。

小銃を持って倒れたふりをした1人のゲリラ兵が狙ったのは、この気が緩んだ瞬間だった。

ゲリラ兵の行動を最初に気がついたのは渡辺先輩と俺。

 

「危ない!」「危険!」

 

ゲリラ兵からの小銃からの連射を、桐原先輩は紗耶香をかばいつつも左足を失なった。

その連射の最中におこなったのは気配をつかんでいたので、その気配に向かって斜め上方へ10Gを超える加速魔法をかけることにより、結果としてビルの壁にぶつけて、実質上の即死。

 

そのあと、ヘリの中から深雪が飛び降りた。

続いておりたいという衝動をおさえながら、まわりの気配をサーチしなおしていると、

 

「お兄様!」

 

深雪が大声で呼んだあとに気がついたのは、空中にいた達也の気配だった。

ヘリ内からでははっきりとはわからないが、達也が桐原先輩に魔法をはなった後に、桐原先輩の離れていた足がつながれて、破れていたズボンも元にもどっていたということだ。

 

 

 

全員がヘリに搭乗したが、周りは不自然なほど静かだった。

そんな沈黙をやぶれる人物がいた。

 

「……一体、何が起こったというんだ?」

 

当事者で桐原先輩だが、深雪もある程度は知っているようなんだよなぁ。

少しばかりまわりで話が続いて、結局は渡辺先輩が

 

「……司波、これだけは教えてくれ」

 

「何でしょうか?」

 

「達也くんの魔法は、どの程度効果が持続するんだ?」

 

「永続的なものです。通常の治癒魔法のように継続的な施術は必要ありません。運動の制限もありません。完全に、いつも通りの生活が可能です」

 

「治療魔法でないとしたら、いったい何を……」

 

「摩利! 他人の術式を詮索するのはマナー違反よ!」

 

「気になさるのは当然だと思います。皆さんに打ち明けるだけならお兄様も許してくださるでしょう」

 

深雪の言葉に、俺も含めて皆が他言しないという中、七草先輩は

 

「今から聴くことの一切を秘密とします。それは名倉さんたちも同様です」

 

「いえ、そこまで大げさなことではりませんが……」

 

そこから深雪が説明しだしたのは、

 

魔法の固有名称は『再成』。

エイドスの変更履歴を遡り、外的な要因により損傷を受ける前のエイドスをフルコピーして、現在のエイドスに上書きする魔法。

上書きされた対象は、上書きされた情報に従い、損傷を受ける前の状態に復元される。

そのあとの他の人物から質問などで、

 

「この魔法のせいで、お兄様は他の魔法を自由に使うことができません。魔法領域をこの神のごとき魔法に占有されている所為で、他の魔法を使う余裕が無いのです」

 

「……それで、達也くんはあんなにアンバランスなのね」

 

「ああ……それほど高度な魔法が待機していては、他の魔法が阻害されても確かに不思議はない」

 

まわりでは雰囲気が変わって、特に千代田先輩と五十里先輩が、人の命を何千人、何万人と救えるとか、それで人命を救えるなんてヒーローじゃないかとの話まででていたが、深雪から

 

「苦痛という感覚が、ダイレクトな情報となって自分の中に流れ込んでくるのです。肉体を解した情報ではなく『精神』に直接刻み込まれるのです。しかもそれが、一瞬に凝縮されてやってきます。今回、桐原先輩が負傷されてからお兄様が魔法を使われるまで約30秒の時間が経過していました。それに対して、お兄様がエイドスの変更履歴を読み出すのに掛けられた時間はおよそ0.2秒。この刹那の時間に、お兄様は桐原先輩が味わられた痛みを150倍に凝縮した苦痛を経験しているのです」

 

具体的に150倍と聞いたところで、皆の雰囲気が一斉にかわった。

しばらくは、ヘリの中で達也が味わう苦痛や、深雪がそのことに心を痛めているのを感じ取った沈黙が続くかと思われたが、美月が発した「あっ!?」っという叫びにたいして、深雪は沈黙を破らせようとしているかのように

 

「美月、どうしたの?」

 

「えっと、ベイヒルズタワーの辺りで、野獣のようなオーラが観えた気がして」

 

幹比古が呪符で確認して、

 

「少人数による背後からの奇襲です。恐ろしい呪力を感じます。戻りましょう。協会が危ない」

 

その間に七草先輩へ、前方の副操縦士から

 

「真由美お嬢様。魔法協会より十師族共通回線へ緊急通信が入っています」

 

「貸してください」

 

七草先輩がレシーバを耳に当てて状況を聞いたようで、

 

「名倉さん、協会にヘリを向けて!」

 

ヘリは協会へ向かった。

 

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