魔法協会のヘリポートに降り立ったところで、七草先輩がマルチスコープを使っていたようで、
「あの時の人だね……リユウカンフウだっけ? 逃げられちゃったんだ」
「リユウカンフウ!?」
「エリカ、知っているのか?」
「強敵よ」
「へぇ」
続いたのはエリカとレオだが、白い甲冑風からの気配はともかく、サイオンの密度が特別監獄所の時より跳ね上がっている。
前回は結果として時間稼ぎ役になった俺だが、今回の手持ちのCAD……念のためにと用意していたCADを含む……から考えると、まともな方法では太刀打ちできそうにはなさそうだ。
協会支部の中へと移動しながら、七草先輩から方針として、協会支部を護るチームとしては深雪、桐原先輩、壬生先輩、美月で、リユウカンフウには七草先輩、渡辺先輩、レオ、エリカに俺、リユウカンフウ以外には千代田先輩、五十里先輩、幹比古があたることになった。
リユウカンフウを相手するチームにまわったのは良いのだが、
「芝崎くん。今度は一人でつっこんでいくのは無しだからね」
「はい」
しっかりと釘をさされたが、俺が単独で行っても、五分以上に戦えるかはやってみないとまだわからないといったところなので、チームとしてどういう手が出せるのか、っというよりは手の出し方は、対人戦闘ではチームで戦うにしてもトップクラスである渡辺先輩が中心となって立案していった。
普段は渡辺先輩に対して不満げな態度をとるエリカも、そういう態度は出していないし、妥当な戦術だと思う。
魔法協会の中では他に戦闘スーツを借りることにした。
サイオンが強化されたリユウを相手に、防壁の魔法だけではこころもたなかったのと、以前の戦いで、リユウの動きが微妙に遅かったのは、渡辺先輩がその前日に魔法大学附属病院で怪我を負わせたからであろうというところからだ。
リユウカンフウを待ち構えているのは渡辺先輩で、その後ろに七草先輩が、射撃の準備をしている。
俺はレオと同じ場所で、エリカはリユウが通るであろうバリケードかわりの斜体の間の空間の反対側で、ともに隠れて待っている
リユウが渡辺先輩の真正面になるバリケードを破壊したら、そのまま渡辺先輩にむかっていった。
そこに、エリカが自己加速術式をつかって1.8mの大刀をリユウカンフウにたたきつけに行く。
その加速術式を合図にして、俺とレオがそれぞれの行動を起こす。
俺は、自己加速術式をかけるとともに、月光を発動する。
そしてレオは飛び出していたところへ、エリカの太刀がリユウが両手で受けて、地面の舗装ごとめくりあがるタイミングで、俺の月光の先端がリユウの肩にあたるが、斬れない。
しかし、サイオンがエリカの刀と俺の刀のところに集まっている。
レオも突撃していて、魔法を使わない上での突進力に薄羽蜻蛉(うすばかげろう)という極薄の硬化魔法によるカーボンナノチューブの極薄の刃を、足元への水平切りで終わるはずだった。
そこで致命的なミスがあった。
「せやぁ!」
レオの雄叫びだが、ここで声をあげずにいれば、リユウもそのまま足を斬られていただろうが、エリカと俺の剣圧をそのまま利用するようにレオへの飛び蹴り。
そこへ七草先輩の第一射。
大量の小粒なドライアイス弾がリユウにあたって、リユウの蹴りの起動をそらしてくれたおかげでレオは助かった。
着地の瞬間を狙うべきなのだが、俺の位置からリユウを狙うには中間にレオが居る。
着地の瞬間を狙ったのはレオたったが、身体の速度差もあってレオはリユウから虎形拳のもろ手突きで飛ばされている。
エリカは地面直前で切り上げる技術で、こちらは当たった。
しかし、鋼気功の前では力がたりずに表面をすべるにとどまって、リユウの突きで返り討ちにされたが、魔法でのガードが間にあったみたいで、車体へあたった音はレオほどはげしくない。
なぜかリユウに隙ができたので、再度月光の刃を振るうが、リユウが片腕をあげてガードをしようとしているところで、渡辺先輩が薬品入りのシリンダー容器を投げた。
それはリユウのいたところで破裂をしたが、その時にリユウはすでに渡辺先輩の斜め後方に移動し、七草先輩の第2射は入ったみたいだが、そのまま速度をほとんど落とさずに進んでいる。
リユウの居場所は鋼気功をつかっていることから気配とサイオンで用意に認識できるので、渡辺先輩にせまったリユウを月光で受け止めた。
渡辺先輩は三節刀に『圧斬り(へしきぎり)』の術をだしているようだが、知覚速度はあってもそれに対応する自己加速術式をつかっても、身体の反射速度が足りなさそうなので、そこから離れるように誘導していく。
こちらは中距離を保ちながら、リユウと互いに細かく動き回っていくので、七草先輩はともかく渡辺先輩が手を出せなくなっている。
俺の役割は中距離での戦いだが、やはり得意なのは、近距離だ。
リユウの鋼気功の攻防の威力はあがっているが、スピードはあがっていない。
そこにつけこんでの、近距離戦だが、明鏡で目くらましをしながらでは、相手に直接的なダメージを与えられないのはわかっている。
それでも近接戦にして、相手の胸に左手のひらをあてるようにしながら、おこなうのは密教系古式魔法師が使う羂索(けんさく)の術式で、サイオン派のノイズを流すことによってキャスト・ジャミングと類似の効果が発揮できる。
達也が使うのは特定魔法に対するキャスト・ジャミングもどきだが、俺が使っているのは現代魔法の加速魔法に影響をあたえないキャスト・ジャミングもどきというべきだろう。
ゆえに、達也がキャスト・ジャミングもどきのことを偶然発見したということに不思議に思ったのだが……ふとそんなことを思いだしながらも、サイオンがリユウの外部へともれだしていないことと、スピードが格段に落ちたことで、月光の一撃を腹部に入れて、離れた。
その瞬間を見計らったように七草先輩が大き目のドライアイスをリユウの顔面へめがけて打ち出した。
それは身体で避けるよりも、鋼気功におおわれなおした、手でふさごうとしたリユウの行動パターンをよんでのことだろうが、手に触れる直前で、消えたように見える。
手の直前でドライアイスを個体から気体に変化させて、進行方向から考えると、二酸化炭素をリユウの顔面にあてて、肺の中を無酸素状態にしたと考えるべきだろう。
リユウはばったりと倒れていった。
倒れていた仲間のうちエリカが「あ~あ、負けちゃったかぁ」っというところは、敵をチームで倒したことより、エリカ自身が負けたことを認めるのが残念だというところが、ある意味エリカらしく、雰囲気がやわらいだ。
その他のチームおそれぞれ役割をはたして、十文字先輩からも軍が掃討戦に入ったことにより、魔法協会は周囲のみを自衛するまで縮小するということだったので、七草先輩のヘリでまずは一高に向かい、大部分のメンバーはそこでおりてから、各自帰宅していった。
11月7日の月曜日の朝の教室では、横浜の論文コンペ当日から昨日までの話でもちきりになっていた。
論文コンペの翌日である10月31日から1週間の休校であったから、実際に会って話してみたかったのだろう。
まずは、お互いに無事でよかったからはじまるのは定番として、特に大亜連合の艦隊が全滅とか、鎮海(ちんかい)軍港一体の地形が円形に消えてしまったとかで、マスコミでにぎわせていたのは『灼熱のハロウィン』というのが大勢をしめつつあるとのことだった。
話の中で協力な兵器もしくは魔法が使用されたということは、今後は日本でスパイ活動がさらに増えるだろうという話はでてきたが、
「一高周辺にでてこないだろう?」
一高内部ではこのような形であったが、そうでもなくなりそうと思わらざなくなったのは、翌年のはじめだった。
『横浜動乱編』は本話で終了です。
『来訪者編』からの新規投稿は不定期となりますが、よろしければご覧ください。