保健室ではベッドに寝かされた壬生先輩がいたのと、達也、エリカ、深雪にレオが居た。
壬生先輩が目を覚ますころには、七草生徒会長、十文字部活連会頭、渡辺風紀委員長まで集まってきた。
襲ってきた主要メンバーには教職員が対応していて、七草生徒会長、十文字部活連会頭、渡辺風紀委員長でも生徒である以上、そちらには手がだせないということで、壬生先輩の事情聴取をおこなうのに、つきそうことになってしまった。
事情聴取は壬生先輩の方からいいだしたことだ。
話は壬生先輩が入学して、今回の首謀者とみられている剣道部の司に声をかけられて、剣道部に入部したころには、すでに司の同調者が少なからずいたこと。
生徒の自主的な魔法サークルを装って思想教育がおこなわれていたこと。
壬生先輩の話は、渡辺風紀委員長に指導を頼んだ時にすげなく断られてショックを受けたという話と、渡辺風紀委員長の方では、確かに断ったが、断り方は、剣の実力は壬生先輩の方が上だから、その実力に見合った相手と稽古してくれという話だった。
話として、結局は壬生先輩が一人勘違いしていて、自分のことを貶めていたというのが真相だったようだ。
壬生先輩が落ち着いたところで、達也があっさりと
「叩きつぶす」
宣言をしていた。
渡辺風紀委員長と七草生徒会長は、
「危険だ! 学生の分を超えている!」
「私も反対よ。学外の事は警察に任せるべきだわ」
との声も聞こえてきたが、
「そして壬生先輩を、強盗未遂で家裁送りにするんですか?」
その言葉に反応したのは十文字先輩だった。
「なるほど、警察の介入は好ましくない。だからといって、このまま放置することもできない。同じような事件を起こさない為にはな。だがな、司波。相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わる。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に、命をかけろとは言えん」
だが、俺の起こす行動の方向性は決まっている。
「一人で行くつもりか?」
「本来ならば、そうしたいところなのですが」
「お供します」
「さっきはCADがなかったから行動を起こさなかったが、今度はみてるだけでよいとは言わんよな」
「あたしも行くわ」
「俺もだ」
深雪、俺にエリカとレオが返答した。
ただし、そこで問題になったのはブランシュのアジトはどこかということになった。
そこで達也が
「分からない事は、知っている人に聞けば良い」
「……知っている人?」
「心あたりがあるのか、達也?」
達也はだまって、出入り口の扉をひらくと、小野先生がドアの前で、困惑交じりの笑みを浮かべて立っていた。
小野先生がなぜブランシュのアジトを知っているのかわからなかったが、地図データを小野先生から達也の情報端末へと送付された。
その地図では、徒歩でも1時間とかからない、バイオ燃料の廃工場。
達也と深雪とで、作戦が建てられている。
「そうだな。妥当な策だ。車は、俺が用意しよう」
「えっ? 十文字くんも、行くの?」
「十師族に名を連ねる十文字家の者として、これは当然の務めだ。だがそれ以上に、俺もまた一高の生徒ととして、この事態を看過することはできん。下級生ばかりに任せておくわけにもいかん」
「……じゃあ、」
「七草。お前はダメだ」
そのあとに、多少のやりとりはあったが、十文字先輩が「車を回す」と言って保健室を出た。そのあとレオが
「会頭と会長が十師属なのは分かったけどよ……遥ちゃん(小野先生のこと)って、何者なんだ?」
本人に聞いても答えてくれないだろうから、自宅のくそじじいにでもあとで聞いてみるか。
「その話はあとだ。行くぞ」
達也に続いて保健室を出ていった。
用意されていた車は、オフロードタイプの大型車だったが、助手席には桐原先輩がいた。
なぜかはわからないが、十文字会頭がのせてきているのだからいいのだろう。
そして、廃工場に向かった。
廃工場の入り口では、レオは車に硬化魔法をかけさせられて、入り口の門をぶちやぶった。そこから車で入って止まったところで、十文字先輩が
「司波、お前が考えた作戦だ。お前が指示を出せ」
「レオ、お前はここで退路の確保。エリカはレオのアシストと、逃げ出そうとするヤツの始末」
「……捕まえなくていいの?」
「余計なリスクを負う必要は無い。安全確実に、始末しろ。会頭は桐原先輩と浩で左手を迂回して裏口へ回って下さい。俺と深雪は、このまま踏み込みます」
桐原先輩が、先に走り出したので、俺は自己加速の術式で、軽くおいかけていった。
裏口を高周波ブレードでやぶった桐原先輩に、
「桐原先輩、気配とか、監視カメラとか把握できますか?」
「気配はともかく監視カメラか……」
「それでは、俺が戦闘を行きます」
入って感じる気配は、大きな集団が2か所で、他に気配は感じない。
電子機器類は、いたるところに配線が走っていて、覚えるのはあきらめた。
電子機器類が発する電磁波をとらえるのは五感外知覚魔法になる。気配に関しては五感外ではあるが体術として人s値されているところが微妙なところだ。
さて監視カメラだが、それ自体が問題なのではなく、それに銃火器が連動していた時のための用心だ。
だから俺がおこなったのは、服部副会長との対戦で使用した半鏡の魔法を使うことにより、天井のでっぱり部分を削っていくのと、それでも残る電子機器類に電源が入っているものには、放出系魔法の一種である「スタンガン」を発動する。
外部からの放電に耐えられても、内部の電子回路に直接スタンガン並の電圧がかかっただけで、電子機械は故障するからなぁ。
十文字先輩が無言でついてくるのは、敵よりもプレッシャーになるのは困ったものだ(おい)。
桐原先輩からは、
「進む速度が速くないか?」
「いえ、相手はどうも2グループにわかれていて、待ち受けている感じです。戦力の小だしをして、各個撃破の愚をおかさずに、まとめて対応しようとしているんじゃないんですかね」
どっちに対して待ち受けしているかはわからないが、1つの気配のグループはすでに、達也たちと遭遇しているようだ。
もう1つの気配のグループは建物の中央付近なので、裏口から入っている分、こちらの中央への到着は遅れかねないと感じている。
中央部へ進んで、目標となる中央のグループを目前とした壁のところで、大量のサイオン波を検知した。
「これはキャスト・ジャミング」
「こちらにむけられているのか?」
「いえ、達也に向けて発せられているのでしょう。桐原先輩、高周波ブレードは?」
残念そうに、首を横にふったので、俺は自分の指の先端に長さ1mほど高さ3cmほどの明鏡の魔法をつくり、その刃先と見立てる部分にクワッド(4倍)バウンドの魔法をかけ、直刀に似せる。
そして、その刀で金属製の壁を切り裂いた。
四角くその切り終えた直後に、中からのキャスト・ジャミングは止まったところで、壁を蹴り飛ばした。
中で立っていたのは達也ともう1人を確認しながら中に入り、後ろからついてきた桐原先輩が
「よぉ。コイツらをやったのは、お前か?……やるじゃなえか、司波兄。それで、こいつは?」
「それが、ブランシュのリーダー、司一(つかさはじめ)です」
桐原先輩の怒気が膨れ上がるとともに、高周波ブレードが発動した。
「テメエのせいで、壬生がぁぁ!」
「ぎゃああぁぁぁぁ!」
十文字先輩が入ってきた後には、腕が切断された男と、その他大勢には手足に穴があいていたところだった。
「やりすぎだ」
そう一言聞こえたが、達也のことなのか、それとも桐原先輩のことだったのか。
事件の後始末は、十文字会頭が引き受けてくれた。
俺たちの行為は、良くて過剰防衛、悪くすれば傷害・及び殺人未遂・プラス魔法の無免許使用だが、司直の手が伸びてくることはなかった。
現在、十師族の中の三番手が、十文字家。十文字家が関わる事件に、普通の警察が、関与できるはずもないのは、魔法師にとっての常識である。
あとさき考えていなかったなぁと反省はさせられるところだったが、結果オーライだ。
ちなみに、十文字先輩からは
「今見た光景を口外しないよう」
そういわれた。
達也の魔法は特殊だというのは認識しているが、大っぴらにしりと問題があるような類の魔法なのだろうかと考えられずにはいられなかったが、追及するには根拠が薄くそのままうなずいてた。
家への帰り道、今日みたいな高校生活は、もう無いよなぁっと、半年後に起こる横浜のことなどは予感すらのぼってこなかった。
『入学編』はここまでです。また、ここまでお読みいただきありがとうございます。
鏡の魔法師と言う題名ほど、鏡の魔法の種類は少ないのですが、元ネタは『魔法科高校の優等生 2巻』(コミック版)119ページで、ほのかが姿を隠すのに鏡のようなものを使う魔法のシーンから始まりました。
#多分、鏡ではない
鏡の中には別な世界があるといような都市伝説もありますが、『九校戦編』では新たな鏡の魔法もでてきます。
掲載まで少しお時間をいただきますが、引き続き読んでいただけますと幸いです。