魔法科高校の鏡の魔法師   作:烏鷺烏鷺

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九校戦編 2

九校戦出場のために、バスの中で七草生徒会長を待っていて、その到着後にようやっと移動を始めた。

俺のバスでの隣の席には同じ競技に出場する1科生の1年生だが、実力主義者で現実の実力を認められる人物だ。

しかし、競技以外の共通の話題がなく、バスの中で七草生徒会長を待つ間で、話題はつきてしまっている。

 

バスでの移動中は、外の景色を眺めながめていると、「危ない!」という女性の声が聞こえた。

皆が、前方の車線を見ているので、そちらを見るとこのバスよりは小さいが、大型車がスピンををしながらこちらの進路上に向かってくるところだ。

 

バスが急ブレーキをかけて、減速している中で活動できるようにシートベルトをはずしている間に、すでに何人かが魔法を使ったようで「吹っ飛べ」「消えろ」「止まって!」と聞こえた。

しかし「バカ、止めろ!」との声も聞こえてきたのは、魔法の発動をやめろということだろうし、魔法が多重にかかったのもわかった。

このサイオンだとキャスト・ジャミングと同じく、普通ならまともな魔法をかけるのは難しいはずだ。

 

「対抗魔法いきます!」

 

2週間ほど前の会合のこと、キャスト・ジャミングの中でも俺が魔法が使えるということを皆も覚えているのか、反対の声はあがらなかった。

日常的に使用している汎用型CADの方で半鏡のバリエーションのひとつで、半鏡の魔法の表と裏の間の空間に領域干渉の魔法を入れ込むのだ。

この領域干渉の特性は現代魔法というよりは古式魔法の性質に近い面があり、通常通りに自分の周囲にかけるならば、地面との境が術が弱くなっており、そこに弾力性が発生する。

現代魔法の一般的な特性は、強い魔法が一方的に勝ってしまい、負けた魔法は効果を失うことだが、領域干渉は負ける部分はひずんで部分的に穴があいたりすることもあるが、もとの形状に戻るし、強い部分では、相手の魔法を完全に防ぐことが可能だ。

この特性から、半鏡の魔法を前方へ押し出すように自分から離していく空間に、古式魔法風の領域干渉の魔法を発動し、大型車へと向かわせる。

これにより、3次元世界での移動が、理(ことわり)の世界……現代魔法ではイデアにおける位置情報に対して干渉して、位置情報を無効化させることになって、魔法式が対象の大型車から離れ、離散するという形になる。

現代魔法の常識では、この世界に現れた魔法式に対抗魔法を放つのであるから、古式魔法風の領域干渉の干渉力が一見弱いのを隠す役目を半鏡の魔法もかねている。

 

そして半鏡の魔法が通り過ぎた大型車には3つの魔法式が残っていた。

全力をだすことができない対抗魔法とはいえ、なんつー、バカ力……もとい魔法力だ。

 

「わたしが火を」

 

その女性の声、深雪の声が聞こえた。

彼女なら、残りの魔法式によるサイオンノイズでも影響を受けないだろう。

そう思ったのだが、彼女が魔法を発動する前に、一瞬だが魔法式が大型車のところで吹き飛ばされた感じがした。

その瞬間に、振動系魔法の魔法式が大型車にかかって、火を鎮火させている。

その火が消えた状態の大型車となったところで、

 

「停止させる!」

 

十文字会頭が移動魔法の停止の壁で、受け止めていた。

 

しかし、大型車に視えた、あのサイオンの爆発の感じは、起動式や魔法式を直接分解する術式解体『グラム・デモリッション』ではなかろうか。

後ろに続く技術スタッフが乗っているCADの輸送車と、深雪がかけた魔法の距離を考えると、サイオン弾が届く距離、すなわち術式解体が届く距離でもある。

勘ぐれば、達也が魔法を放つ瞬間はそことわかっているからこそ、深雪がそれにあわせるようなタイミングで魔法を放ったのかもしれない。

それが本当だとすれば、達也にはまだどれだけの隠し玉を持っているのやら。

 

そんなことを思っていると十文字会頭に声をかけていた七草生徒会長が、深雪や俺に声をかけてくれた。

 

「魔法式を減らしてくれた芝崎くん。深雪さんも素晴らしい魔法だったわ。あの短時間にあんな絶妙なバランスの魔法式を構築できるなんて、私たち3年生にも難しいわね」

 

「なんとか対象の魔法式を減らすことができました」

 

「光栄です。会長。ですが、魔法式を選ぶ時間が出来たのは、市原先輩がバスを止めて下さったからのと、冷静さを保てたのは魔法式の数を減らしてくれた芝崎さんのおかげです。そうでなければとっさにどんな無茶をしてしまったのか、自分でも少し怖いです。市原先輩、芝崎さん、ありがとうございました」

 

市原先輩が減速魔法をかけていた?

そこまで見分けていたとは、魔法力だけじゃないと、春先の事件でも感じてはいたのだが、あらためて深雪も達也と同様に何らかの場数を踏んでいるのだろうと思った。

 

 

 

バスは、事故の影響で、警察の事情聴取とか、現場を通過可能にするための手伝いで、予定よりさらに遅れたが、無事に宿泊予定のホテルについた。

 

 

 

夕刻の九校があつまっての懇親会では、制服は1科生と同じ校章がついているブレザーを新調して使っている。

くそじじいはともかく、両親が喜んで作ったからだ。

 

懇親会での俺はというと、それなりに、厳密には男女で異なるが、同じSSボード・バイアスロン部にいるほのか、雫は帰り道でも一緒にいるので、すでに慣れたものだが、ほのかと雫の友人として紹介を受けた明智英美に、今回、その3人と仲が良くなったという美少年っぽい感じの里見スバルと話をして、他の女子生徒とも話す機会が増えてきた。

 

魔法師として才能があるのは美男美女の割合が高いという話もあるが、平均以上のかわいらしい女子生徒と一緒にいて居心地がいいのか、それとも、それに一緒にいることからなのか、他の男子生徒からはやっかみの視線を受けているのを、居心地が悪いと言ったらいいのやら。

ちなみに、俺の場合、まわりから言わせると平均よりは上らしい。

 

同学年の男子競技選手とも話せればいいのだが、特典が高くモノリス・コードのエースとして出る森崎がうるさい以上、そっちの顔をたてると言われていて、俺としてもどうしようもない。

 

そんな時間も来賓のあいさつになり、まわりはそのあいさつを聞いているようだ。

お偉いさんが話す内容なんてたいした変わり映えはしないから、適当に流してきいていたところ、檀上に突然パーティドレスを着込んだ女性が現れた。

驚いて少しの時間見入っていたが、何かがおかしい。

その女性の後ろは暗いのだが人影をみつけて、トリックにやられたと思った。

その人物から一瞬視線がきたのを感じたが数秒程度だろう。

女性がさっていったところで、紹介のあった九島閣下が現れた。

九島閣下からは

 

「まずは、悪ふざけに突き合せたことを謝罪する」

 

その言葉から始まり、もし今のがテロリストだったらとか物騒なことをいいだしたが、その後に続く九島閣下の言葉には

 

「魔法力を磨くのは確かに重要だが、工夫も大切だ、その工夫をこの九校戦で楽しむ」

 

工夫といわれても、すでに準備は終わっているのだから、来年に向けての話としてくれっというのが本心だった。

 

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