Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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◆◇◆◇◆◇

 

 

 パーティーの翌朝。5時頃に眼が覚めた悠李は、まだ寝ている鈴を起こさないように、顔を洗い、TシャツとDPMで外廊下に出る。ちょうど、箒も部屋から制服を着、竹刀を持って出てきたので、悠李は挨拶をした。

 

「おはよう、篠ノ之さん」

「おはよう。早いな」

「なんか目ぇ覚めちゃったんだよね。篠ノ之さんは、部活?」

「ああ、とは言っても自主練だがな」

「付き合おうか?」

「そういえば、お前も剣を振るんだったな。では頼むとしようかな」

 

 その格好のまま、悠李は箒の後ろに着いていく。5分程で、立派な剣道場に着くと、箒は胴着に着替えるといい、更衣室に入った。

 

 壁に掛けられた竹刀や木刀、竹光を見、悠李は竹光を一本取ると、柄と鞘を握り締めた。

 

 一呼吸間を置き、素早く剣を抜刀。

 

「鈍ってるなぁ……」

 

 ほとんど視認出来ない速さなのに、悠李は残念がる。肩や手首をぐりぐりと回し、もう一回抜くが、全然満足に見えない。

 

「待たせたな、ん?竹光?」

「ああ、ちょっと練習してただけだよ。一応、こいつも僕のスタイルにあるからね」

「居合か?面白い、ちょうど、打ち込み用の木がある。それにやってみろ」

 

 箒が悠李の後ろの、傷だらけの丸太を指した。これに対して斬れ、ということか。

 

 お安い御用、と悠李は言った。ふう、と息を吐き、腰に鞘を当てる。

 

 ――不思議な構えだ、それが型か。

 

 まるで素人の様な構え。だが、箒は馬鹿にしなかった。彼の戦闘能力は馬鹿に出来ない。この構えだって、絶対なにかある。

 

「……ふんっ」

 

 悠李が声を漏らした途端、丸太が斜めにズレていく。そのまま真っ二つに切り分けられ、どすんと床に落ちた。

 

「そんな馬鹿な……。いつ抜いた!?」

「さっき。やっと戻ってきたみたい」

 

 真剣ではない竹光で物を斬ること自体有り得ない。それに出鱈目なその抜刀スピード。納刀まで、一瞬で終わらせてしまう、その流れに、箒は絶句した。

 やはりこいつは人ではない。人の皮を被った悪魔に違いない。そう疑う事に、彼女は何の懸念も抱いていなかった。

 

 悠李は竹光を投げ、元の場所に戻す。その反動で飛んできた竹刀を掴むと、剣の先を箒に向けた。

 

「やろうか」

「あ、ああ」

 

 いくら剣道で強かろうと、こいつとまともに打ち合える気がしない。だが、やるだけやろう。それから学べるものがあるかもしれな

い。

 

 構え、地面を蹴り、全身全霊を込めた一太刀を悠李に打ち込む。だが悠李はそれを竹刀で反らして流し、柄で箒の胸の中心を突く。ほんの少しだけ深く入り、箒が苦しそうに咳をし始め、悠李は落ち着いて箒の身体を心配した。

 

「ごめん、大丈夫?」

「ああ……。それにしても、見事な体捌きだ……」

「やられながらも、敵を褒めるなんて、あっぱれだね。流石」

「お前、本当は人間じゃないだろ……」

 

 ぎくり、と悠李は図星を突かれ、少しばかり焦りをみせる。この変化を箒は見逃さなかった。ぐいっと悠李の胸倉を掴み、更に深く話を聞こうとする。

 

「本当に、人間じゃないのか?」

「何をおっしゃる篠ノ之さん、僕は正真正銘の人間だよ」

「なら、それを示して貰おうか」

「どうやって示すのさ。いいから、ほら練習の続きをしよう」

「こうすれば……」

 

 人間だったら血が赤い筈だ。失礼ではあるが、悠李の手を引っ掻いてみる。

 

 いたっ、と顔を少し歪ませ、手の甲から赤い血が垂れた。箒が呆然とする。本当に、ラグナは人間だった――。

 

「す、すまない。調子に乗りすぎた」

「別に構わないよ。いいから、朝練の続きやろうよ」

「あ、ああ」

 

 竹刀を持ち直し、悠李と打ち合いを始める箒。今、自分がしたことの罪悪感で胸一杯なりながらもだ。

 

 ――私は、最低だ……。

 

 剣にその気持ちが出ないように打つのが、箒には精一杯だった。

 

 その傷が、1秒後には無くなっているとも知らずに。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 自室に戻ると、ちょうど着替え終わった鈴が、悠李に挨拶して、廊下に出る。朝食を取りに食堂に向かうのだろう。彼も制服に着替え、部屋の鍵を閉め、鈴と共に歩いていく。

 

 先程の箒とは逆に、道がわからない鈴に対して悠李が先導していくべきなのだろう。だが、彼女は何も迷わず足を進める。途中でちらちらと悠李を見てくるが、悠李は敢えてそれを無視した。

 

「気付きなさいよ!」

「いや、気付いてるけど、何かなあ、って」

「道を教えなさい」

「おいおい、知ってて歩いてたんじゃないのかい?」

「無論知らん。ついでに足も疲れたし、あんた、運びなさい」

「どうやって」

「肩車!」

 

 僕は父親か、と愚痴を零すも、渋々鈴音を肩車してやる。これは彼女の頭上が危なっかしいことになると思うが仕方ない。

 

 楽しそうにきゃあきゃあ騒ぎ出す鈴。悠李の首に足を掛け、落ちない

ようにする。食堂に着くと、悠李は屈んで鈴を下ろしてやった。パンケーキの食券を6枚ほど掴み、カウンターに出すと、調理場の中年の女性が1枚おまけしてくれた。

 

「お兄ちゃん、あの子は彼女かい?」

「違いますけど……」

「じゃあ、あの金髪のお嬢様?それともポニーテールの?」

「違いますよ。僕には他に好きな子いますんで。この学園にはいませんけど」

「若いっていいねえ!アタシの旦那なんか、40過ぎたら見向きもしなくなって」

「旦那さんも、魅力にやられて言葉が出ないだけでしょう。あなたは素敵ですよ、マダム」

「あら、うまいわね。気分がいいからもう一枚あげるわ」

 

「こんなに気立てがいいんですもの、だから貴女と結婚したんじゃないんですか」

「更に二枚!」

 

 計10枚のパンケーキに、デザートのジャンボストロベリーサンデーを持ち、鈴がいる席に座る。蓮華で粥を掬う彼女が悠李の朝食を見て、おおっ、と驚いた。

 

 広いテーブルの半分くらいが、悠李の朝食で埋まった。ソファに深く腰掛け、蜂蜜とブルーベリー、クリームを落とし、ナイフとフォークで上品に食べる。

 

「あんたもやっぱり男ねえ。朝からがっつり食べるんだ」

「一日の始まりのエネルギーだからねえ。一枚食べる?」

「ありがとう、いただくわね」

 ナイフで四等分に切り分けてやったパンケーキを、小皿に分けて差し出した。とても甘いパンケーキに鈴は、んー、と愉悦の声を漏らす。ははっ、と悠李が笑い、7枚目のパンケーキを平らげると、鈴は悠李の肩をばしばし叩き、満足感を強調した。

 

「朝からリッチな食事しちゃった!」

「女の子は甘いものが好きって、それ一番言われてるから」

「ああー、いいっすねえー。流石ラグナ、一夏と違って女がわかる!」

「唐変木と一緒にすんなって」

 

 全てのパンケーキを胃袋に納め、ストロベリーサンデーを食べはじめる悠李。彼も甘いものが好きなのか。どこか親近感が沸いて来る。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 部屋に戻り、歯を磨いて、先に教室に行ってると悠李が言うと、道がわからない私を迷子にさせる気か、と鈴が悠李に怒鳴る。はあ、とまた悠李が肩車して、鈴を教室まで運んでいくが、何故か1-1の教室で止まれと鈴が言った。

 

「いや、ここ僕のホーム教室」

「でも、今のところ専用機を持ってるクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」

 

 

 鈴がにやりと口角を上げ、悠李から飛び降りた。そのまま、入口に立って、ドヤ顔しながら、圧をかけて喋り始めた。はあ、と悠李が呆れるが、やめようとはしない。

 

「その情報、古いよ」

「?」

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

「鈴?お前、鈴か?」

 

 一夏がすかさず反応。昨日鈴から聞いた通りの関係だ。腕組しながら壁に寄り掛かり、鈴の戯れ事を聞いてやる。

 

「そうよ、中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

「じゃあ、ブラックモアの同居人って、こいつが……」

「何カッコ付けてんだ?すっげえ似合わねえぞ?」

「んなっ、何てこと言うのよ、アンタは!」

 

 一夏が結局それを台無しにした。悠李がくすりと笑うと、それにタイミングを合わせるかのように千冬が歩いてきて、鈴の後ろに立つ。

 

「おはようございます」

「ああ。昨日はごちそうさま。ところで……おい」

「なによっ」

 

 最早お馴染みの光景。新しくなった出席簿を鈴の頭に一閃。首から骨が軋む音がし、鈴が頭を押さえながら恐る恐る後ろを向く。

 

 それさえも爆笑の種にする悠李。腹を抱えて笑い、鈴が何か喚いて2組の教室に戻ると入れ違いに、悠李は教室に入った。

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