Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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◆◇◆◇◆◇

 

 

 授業も終わり、昼休み。ちょうど昼食時だ、と悠李はシャルロットを連れて食堂に行こうかと思ったが、一夏に誘われて屋上で食べることになった。その前に、売店で悠李とシャルロットの昼食を買おうと、一夏も連れてずらりと食べ物が並ぶ売店に行く。

 

「一夏は買わないの?」

「箒が弁当を作ってくれたんだと。だから俺はいらない」

「ラグナ、一夏は篠ノ之さんと恋人なの?」

「こいつが鈍感だからそこまでいってない。鈴さんともセシリアともねぇ」

「大変だねぇ、女の子達は。一夏が振り向いてくれなくて」

「なにか言ったか?」

「こういうやつなんだよ」

 

 まるでわざとやっているかのような、そんな気さえ伺える。惣菜パンと飲み物、デザートを買い、屋上に出た。天気も良く、見晴らしもいい。既に集まっていた一夏の犠牲者を、悠李とシャルロットは少し離れた距離で見る。

 

「もっと近寄れよ」

「そのテリトリーは、ねぇ……」

「流石に侵せないよ」

「?」

「ここまでくると、最早アッチの人としか……」

 

 悠李とシャルロットはパンの包装フィルムを剥がし、同時に一口かじる。息の合った二人の行動。まるで打ち合わせでもしているかのような動作だ。

 

「お二人は、随分と仲が宜しいんですのね?」

「うん」

「幼なじみだしね。僕たちの親が知り合いでね」

「へえ、にしては私と一夏より息ぴったしじゃない」

「阿吽ってやつだよ」

「それはそれで凄いな」

 

 しゃべるタイミングまで、非常にきめ細かく決められているようだ。二人のシンクロ、それは誰もが驚く技術であり、才能だ。

 

「そういえば箒、俺の分の弁当を持ってきてくれたんだろう?」

「あ、ああ……」

 

 てっきり一夏は忘れているものだと思っていた悠李。だが、食事のことだけは忘れないなんて、現金な奴、と悠李とシャルロットは一夏を心中で呟いた。

箒は自信なさ気に弁当を取り出し、一夏はワクワクしながら蓋を開けた。

 

「おお!」

「わぁ、綺麗なお弁当だね」

「うん、素敵」

 

 弁当を開けた一夏が驚く。悠李とシャルロットが脇から弁当の見た目の感想を言った。色合いは鮮やかであり、とても美味しそうだ。

 

「これは凄いな!どれも手が込んでそうだ……ん?箒、なんでそっちに唐揚げがないんだ?」

 箒の弁当には、唐揚げが一つもない。恐らく、失敗を重ねた挙げ句、一夏の分の唐揚げしか出来なかったのだろう。

 察してやれよ、と悠李が思う。無論、それは一夏と箒以外の誰しもが思っていた。

 

「こ、これはだな、ええっと……!わっ、私は、ダイっ、ダイエット中なのだ!だから一品減らしたのだ、文句があるか?」

「文句はないが、別に太ってないだろ?」

「唐揚げは太るよ?油断してたらね。特に女の子は」

「下手をしたらにきびも出来るし」

「前から思っていましたけど、一夏さんには紳士として不足しているものが、余りにも多いようですわね」

「仕方ないよ、こんな唐変木だし」

「合ってるけど納得したくない……!!特に女の子にとっては……」

 

 鈴がわなわなと肩を震わせる。本当の事を言っているのだ、それを変えられないのを悔しく思っているのに違いないし、一夏自身が気付かないのも腹立たしく感じているだろう。

 

「おおっ、美味い!」

「そっ、そうか。それはよかった」

「本当に美味いよ、ほら、箒も食ってみろって。あーん」

「……うん、我ながら、なかなか……」

 

「なのに、さらっ、てやっちゃうんだもん」

「流石、鈍感の為せる技」

「あんたら、本当、一夏をけなしてしかないわね」

「もしや……嫉妬ですの?」

「そんな馬鹿な」

「ありえないよ。それよりも、対抗しないと負けちゃうよ?」

 

 火付けをしたのはシャルロット。今頃思い出したかのように、鈴は酢豚が入ったタッパを、そしてセシリアはサンドイッチが入った容器を、それぞれ取り出した。鈴は安心して食べられる予感がするものの、セシリアは料理が出来るのか怪しい。お嬢様育ちの彼女には包丁を持たせることも怖い、そんなイメージが悠李にはある。

 

「……あれ、ヤバいね」

「うん……タバスコかな」

「見た目だけだよね、あれ。あ、一夏、それは……」

「食べちゃったよ……ぷぷっ」

 

 自ら死にに行ったようなものだ。しかし、作ってくれたものを、面と向かってまずいとは言えない。一夏は必死に、「独特な味だな」と誤魔化して、それを聞いたセシリアは本質が分からずに喜んだ。

 

「……ラグナ。そのいちごクリームをくれないか」

「はいよ」

 

 助け舟を悠李が出してやった。シェフ・オルコットに"おみまい"された一夏は、悠李の"濃厚いちごクリーム"なる激甘の飲み物で口直しした。

 

「本当、あんたは甘党ね」

「ああ、ならラグナさんにはこれを」

「ん?ありがとう」

 

 タマゴサンドらしき、二枚のパンの間に具を挟んだ物体を、悠李は受け取った。

 よくみたら、具は生クリームにバナナ。これなら安心して食べられそうだ。

 

「シャルにもあげてもいい?」

「ええ」

 

 半分に割って、シャルロットに渡す。一緒に口に放ると、甘いクリームとバナナが調和されていて、デザート感覚で食べることが出来る代物になっていた。

 

「自然が一番美味しいね」

「本当、デザートサンドみたいだよ」

「お口にあったようで、よかったですわ」

 

 ――以前、似たようなものをテレビで見たな。あの時、食べた人はエビアレルギーになったっけ。

 

 悠李は、自分とシャルロットが変な病気になる可能性がないことにホッとした。

◆◇◆◇◆◇

 

 

 放課後、いつもの様に、悠李は一夏の特訓に付き合おうとアリーナに行こうとしたのだが、教室でシャルロットと共に千冬に呼び出しをされ、今は職員室のソファに座っていた。千冬が大きな荷物と書類を持ってくると、

 

「どうしました?」

「ああ。まず、デュノア。お前はこの書類をよく見て、その後サインを頼む」

「見る前に、どういう内容なのかをさらっと教えていただけませんか?」

「お前の保護に関する書類、転入扱いとして提出せねばならない書類だ。ブラックモアは、これを」

 

 大きなダンボールに包まれたものを悠李が受け取った。サイズのわりにはやけに軽い。その時点で、悠李は中身がなにか気付いた。

 

「AOSですね?父さんからですか?」

「渡そうと思っていたが、忘れたらしくて、直接こちらに届いた」

「助かります。これ、最近まで調整中だったんで」

「ラグナ、中身はなんなの?」

「うーん……来るべきときには見せてあげるよ」

 

 書類を手早く仕上げたシャルロットが悠李に問う。千冬も中身は知らないので気になるところではある。

 

 二人でアリーナに向かい、既に箒、セシリア、鈴に絞られている一夏を見つけると、悠李は歩きながらドレッドノートを展開して彼の背中を軽く叩いた。

 

「すごい……。歩きながら展開なんて」

「ん?どったの鈴さん?」

「破格のスペックに驚いてんのよ。本当に、あんたのISは謎よね」

「まあね。さて、一夏。今日はどんな練習を――」

「その前に、私への稽古はどうした」

「あ、ははは……」

 

 忘れていた、とは言えない。悠李は笑って誤魔化しながら天上天下無双剣を取り出し、地面に突き刺す。

 

「なぁにも考えてないんだよねぃ……」

「おい、殴るぞ?」

「一夏と一緒にやるかい?僕対君達で」

「おっ、いいなそれ」

「流石のラグナさんでも、2対1は厳しいのでは?」

「全然。ガチでやり合うわけじゃないし。皆は見ていておくれよ。それで、二人に教えてあげて」

「わかった」

 

 シャルロットが異を唱えず快諾した。それに続くはセシリアと鈴。箒が打鉄を展開すると、本当に軽い、模擬戦の様なモノが始まった。

 

「うぉぉっ!」

「あっ、こら一夏!!」

「バカ正直過ぎるよ、君は」

 

 試射を兼ねて、レイジングブルを一夏に撃ち込んだ。M500よりも抑えられた銃声。だが、威力は十分にあるようで、振りかぶった雪平弐型を

弾き、一夏の身体が軽く吹き飛んでいく。それをチャンスと思った箒が、一夏の影に隠れ、悠李に切り掛かった。しかし、悠李は楽々ブレードを足で止め、それを足場にするかの様にスピンしながらゆっくりと踵を落とした。

 

「あれが、ラグナ・ブラックモアってやつなの……!?」

「そういえば鈴さんはラグナさんが戦うのを初めて見ますものね。シャルルさんは?」

「ボクも初めて見るんだけど、やっぱり彼はレベルが違うよ。山田先生ともいい勝負するね、絶対に」

 

 力を抜いてもこの強さ。恐らく、一夏達は本気だろう。デスイービルとレイジングブルの撃ち分けが光る。また、この前披露した幻影剣も展開し、3本ほど射出する。幻影剣を壊すことは出来た一夏だが、なかなか悠李との距離を詰められない。馬鹿正直に前から行っても、好き勝手に遊ばれるだけ。かといって、回り込もうとも返り討ちにされてしまう。

 

 だが、今、箒が悠李の背後にいる。このまま不意を狙ってもいいが、それだけでは彼の思う壷。なら、と一夏は箒と挟み撃ちを狙い、悠李に突っ込んだ。

 

「やりましたわ!!」

「いや、ラグナは気付いていたみたいだね」

「え?」

 

 悠李は空を蹴ってさらに空中に飛び上がった。一夏と箒はぶつかる寸前で止まったが、悠李は地面に突き刺したままであった天上天下を、指を鳴らして取り寄せ、急降下しながら、二人の頭を剣の腹で叩いた。

 

「コンビネーションはいい感じじゃないか」

 

「これが軽くとか、嘘でしょ……」

「でも、本当に軽くやっちゃうのがラグナなんだよね。彼はいつもそうなんだよ」

「へぇ」

 

 少し痛いげんこつを頭に喰らったくらいの衝撃だ。一旦そこで戦いを止め、三人とも地に降りた。悠李がドレッドノートを解除し、箒と一夏がそれに続いた。

 

「連携は上手いよね。やっぱり射撃が出来ないのは痛いけど、無い物ねだりは出来ないし。でも、レンジの詰め方は良く出来てるよ。ただ、一夏」

「うん、一夏だね」

「俺?」

「君は素直に突っ込みすぎだよ。箒さんの動きに合わせてはいるけど、如何せん真っすぐ過ぎて、簡単に動きが読み取れてしまう」

「うむ。確かに、そうだな」

 

 瞬時加速中の方向転換は流石に肉体的負荷が大きすぎて不可能ではある。が、それでも考えるべきことは多い。

 

「ラグナは射撃をなるべく抑えたけど、もしボクやオルコットさんだったら、今頃蜂の巣じゃないかな」

「あれだけ移動法教えたのにねえ。

機体に振り回されちゃダメだよ。機体を振り回さないと」

「そうだな……。自分のレンジに相手を入れる術を考えないと」

「そのために、セシリア?いける?」

「はい、いつでも」

「鈴さんも、次に待機しておいて。君達のオールレンジユニットが、一夏の練習に必要になる。箒さんは……ボクとシャルでやるかね」

「ああ」

 

 適材適所。一夏をセシリアと鈴に任せるのは、箒は嫌だろうが、仕方ない。悠李とシャルロットは、一夏達から少し距離を取り、彼女の練習の面倒を見る。

 

「一夏にも教えたんだけどさ、近接型の戦い方は、相手を自分の間合いに引きずり込むこと。それは解るよね?」

「ああ、剣道でも実感出来るな」

「篠ノ之さんって、剣道やってるんだ。なら、尚更だよね。銃器を持った相手の対処法は、射線上に入らないこと。射線上だけじゃなく、ある程度予測されることも考えれば、射角度は広がるから」

「如何にこっちも射撃を予測するか、に尽きるね。シャル?」

「うん、任せて」

 

 口頭で簡単に説明したあと、シャルロットは彼女自身の専用機"ラファール・リヴァイヴ・カスタムII"を展開した。橙色を貴重とした、ラファールがベースのカスタムIS。悠李が彼女から前もってその機体の特徴を聞いていたから、彼はシャルロットに箒を任せた。

 

「ボクは動かずに狙うから、なるべくロックされないように半径1メートル以内に近付いてみて」

「なるほど。わかった」

 

 人が少ない今だから出来ることだ。そして、とても省エネ。悠李はほとんどなにもしなくて済む。ただ見て、それを箒にフィードバックするだけだ。

 

 一夏と箒二人から離れた距離で、彼ら二人を一緒に見よう。それだけでも、悠李はほとんどエネルギーは使わなくて済むし、二人を更に高みへ連れていけるだろう。

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