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「射撃武器の特性は掴めているっぽいけど……」
「やっぱり馬鹿正直さが直ってないよね。いつでもゼロクロスに持ち込もうとしてる。その読みが簡単に予測できちゃうんだよねぃ」
シャルロットが来てから5日程経ったのだろうか。悠李のおかげもあり、一夏達ともより一層仲良くなった。いつものアリーナでの特訓で、シャルロットとメロンパンを食べながらレクチャーしている悠李が、一夏にウィークポイントを教えた。ある程度は改善出来てはいるものの、まだ及第点には程遠い。セシリアとの決闘時の回避能力はどうしたのかと悠李は疑いたくなった。
「でも、銃器は撃ったことがないんでしょ?その感覚を覚えれば、結構違ってくるんじゃないかな」
「僕のより、シャルの得物の方が使いやすいと思うからさ、そっちを貸してあげて」
「うん」
「そんなこと出来るのか?確か、他のISの武器は使えないはずじゃ」
「君さぁ……。何のために授業を受けているのさ。そのISの操縦者が使用許可を出したら使える、そう山田先生はおっしゃられていたよね?」
「一夏って、予習復習しないの?ボクやラグナに頼るだけじゃダメだよ」
軽く一夏に説教を垂れながら、シャルロットが"ヴェント"を一夏に渡した。構え方からなにからをちゃんと教えてやるが、ある問題が見つかった。
「センサーリンクは出来てる?」
「いや、探してるけど全然見当たらないんだ」
高速展開されるIS戦闘に置いては、射撃時にハイパーセンサーとのリンクを繋げる"センサーリンク"はほぼ必須の機能だ。一般的には、格闘向きの機体にも付いているのだが、"特殊のカタマリ"である一夏の白式には、それがさっぱり見当たらない。
「まあ、一撃必殺の離脱戦法が売りだからねぃ、その機能を切って、機動と格闘に特化させたんだろうね。仕方ないか……一夏」
「ん?」
「そのまま、あの固定された的を撃って」
「あ、ああ」
動いていない標的だから、センサーリンクは不要でいいだろう。勿論、あった方が狙いやすいのは違いない。一夏がトリガーを引き絞る。マズルが火を吹き、単発で弾が的に穴を穿つ。銃声に驚いた一夏だが、悠李のデスイービルよりは小さい音だろう。
「少し真ん中からずれたくらいかな?」
「やるじゃん、一夏」
「まあ……。でも、動かないと、あんまし俺の為にならないんじゃないか?」
「じゃあ、あの動く的を狙って――」
「ねぇ、ちょっとあれ」
「嘘っ、ドイツの第三世代型じゃない」
悠李の言葉を、周りのざわつきが遮った。その話題の目標は、ラウラ・ボーデヴィッヒが操る黒いIS。
「僕らと遊びに来たのかな?」
「にしてはこっちを睨み過ぎじゃない?」
シャルロットの言うように、主にに一夏を睨みつけている。ヘラヘラと悠李はこの状況を楽しむように傍観した。
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」
「嫌だ。理由がねえよ」
「貴様には無くても私にはある。貴様がいなければ、教官が大会二連覇の偉業を成し得たであろうことは、容易に想像できる。だから私は、貴様を。貴様の存在を、認めないっ!!」
「あーなるほど。妬きもち妬いてんだね。わかるわかる、辛いよねその気持ち」
「ちょっとラグナ、茶化しすぎ……」
「……そうだな。嫌でも戦わざるを選ないようにしてやろう」
悠李に怒りを感じたのだろうか、ラウラは機体に装着されたレールガンを、生身の悠李に向けて撃ち放った。一夏とシャルロットはそれを見て、"ラウラ"の身を案じた。
「うーん、お兄さん嬉しくなっちゃうね」
「なっ……」
悠李はエレクトロヘヴィを呼び出し、ボディでそれを受け止めた。弦にレールガンの弾が充填され、悠李はそれを掻き鳴らし、雷の蝙蝠と共にラウラにそれを返した。
「あんな武器だったんだな、あのギター」
「それより、大丈夫かなあの子?」
「あちゃー、止められちゃったかぁ」
悠李の反撃は、ラウラを遮る謎の壁によって受け止められ、彼女に当たることはなかった。ラウラも悠李の反撃に驚くが、彼のその行動は、戦いの始まりを意味するものだと解釈し、悠李に突っ込んでいった。
「小癪な……!!」
「当たらんねい。そんなんじゃあ、織斑先生悲しんじゃうぞぉ?"まるで成長していない"ってね」
「煽っちゃダメだよラグナ!!止めなって!人がいっぱいいるんだよ!?」
「あ、そだねい」
生身ながらも軽々とラウラの猛攻を避け続けた悠李だが、シャルロットの言葉で、右腕一本でラウラのISを制止させた。彼女の頭を手で押さえ付け、いくらラウラがスラスターを吹かしてもびくともしない。
「そこの生徒、何をやっている!!学年とクラス、出席番号を言え!!」
「ちっ……」
「なぁんだ、おしまいかぁ。今日のところはここまでだねぃ、また遊ぼうね」
ISを解除したラウラが足早にその場から立ち去る。教師の咎は受けたくないのは解るが、シャルロットには悠李から離れたい気持ちの方が強く見えた。悠李の剛腕もここまでとなると、やはり彼は人という枠組みから逸脱した生き物なんだな、とシャルロットは改めて実感した。そして一夏も、彼の強大な力に恐怖するラウラを見、嫌われてはいるが同情の気持ちさえ抱いた。
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一夏の訓練が終わって、悠李とシャルロットは二人で寮に戻る途中であった。悠李は教師にこっぴどく怒られ、二度と生身でISと戦わないように、と宣言書まで書かされた。が、それを守るような奴ではないのは誰しもが解っていたことだった。
「そういや、なんで蝙蝠が止まったのかねぃ」
「ボクが思うに、"Active Inertial Cancelar"――"活動・慣性力相殺機能"が、あのISには搭載されているんだと思う。技術大国のドイツが第三世代型に積んでいてもおかしくはないからね」
「運動エネルギー相殺かぁ。なるほど、でもあれは集中力を要すると見たね」
「うん。どうやら、意識していない方向には発動していない見たい。それと、同時使用も厳しそう」
「それに、完全には止められていなかったしね」
悠李の蝙蝠はある程度進んで止まった。本当はピタリと止まるはずだったのだろう。そして、運動エネルギーが電気エネルギーに変わり、彼女に感電をさせた筈だ。
相手がラウラの懐に入ればなんでも止められる、などは無いはずだ。実際、悠李の腕は動いていたし、あの程度ではまだまだ使いこなせていないように思える。
「遊び相手としては、中の下くらいかねえ」
「そこまで低い?君を除けば、恐らく1年生最強の実力があるよ、あの子」
「いや、シャルの方が強いね。"ここ"が柔らかい君なら、機体の性能差なんか全然当てにならないよ」
悠李は自分の頭を指差した。柔軟な思考力を持つという点では、シャルロットはラウラより遥かに頭は回るはずだ。それを活かせる能力もシャルロットには備わっている。
「機体を振り回すのはボーデヴィッヒさん。頭と共に機体を使いこなすのはシャル。どちらが強いか?僕はシャルに賭ける」
「そんなに期待されたら、勝つしか無くなるね」
悠李のおかげで自信が着いた。こういうメンタル面での励みは、中々無いものではある。だからこそ、それがシャルロットにとってとても嬉しかった。