Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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◆◇◆◇◆◇

 

 

『ラグナは悪魔だったわ。私やセシリアなんか、足蹴にするぐらいの』

『勝ちたいのでしたら、一夏さんは迷い無くラグナさんと組むべきです』

 

 一方、一夏はラグナのことを色々と考えながら寮に戻っていた。悠李に頼まれて、お茶をセシリア達に買ってきたシャルロットと組む、なんて宣言をしたのだが、セシリアと鈴はそれを断固として反対していた。

 

 やはり、悠李の行動には納得がいかない。止めるべきものを止めない、それが許せないのだ。だが、悠李にだって予測出来ないことはあるだろう、そんなことはもちろんわかってはいた。

 

 後ろからシャルロットがゆっくりとついて来る。彼女は終始浮かない顔をしているが、やはり一方的に組ませたのが悪いのか。

 

「そんなに、ラグナと組みたいのか?」

「え?いや、まあ、組みたいっちゃ組みたいけど……」

「けど?」

「一夏とラグナを組ませたら、一夏が大変そうだし」

 

 自分がどう大変なのかはわからないが、恐らくラグナの実力に振り回されてしまう、というようなことを言っているのだろう。その点では、シャルロットと組んだのはある意味正解とも取れる。

 

「でも、ラグナは誰と組むんだろう?」

「誰でもいいだろ。どうせあいつと組めば優勝間違いなしなんだから」

「まだ怒ってるの?確かにラグナに勝てる人なんて、ここには多分いないけど……」

 

 シャルロットは一夏に呆れさえ感じた。あの時、悠李が止めに入ったら、恐らく悠李はセシリアと鈴に怒られるし、第一、3対1なんか誰も好みはしない。頭の固い相方に、彼女は溜息をついた。

 

 寮に着き、部屋に入ると、シャワーの音がするのが聞こえた。悠李が浴びているのか、と思うと何故かシャルロットはドキドキした。

 

「ふぅ……。あ、おかえり」

「ただいま……悠李。上は着ようね」

「え?ああ、わかった」

 

 上半身裸で出て来た悠李に服を着るように促した。服から見ても解らない、細いイメージだった悠李だが、かなり筋肉質だ。胸板は厚く、腕は丸太のように太く、ゴツゴツしている。腹筋はボコボコと隆起して、背中もまるで岩山のよう。なるほど、だからあれだけの怪力を発することが出来るのか。

 

 黒いタンクトップを着て、下はライダースパンツ。大分軽装な悠李だが、これも一応仕事着らしい。便利屋には、決まった服装などないのであろう。

 

「悠李は、対抗戦は誰と組むの?」

「まだ決まってないねぃ。君は、一夏と組むんだろ?名コンビになれそうじゃないか、バランスもまとまってるし」

「ボクは、悠李と組みたかったんだけどさ」

「僕以外の人と組むのも重要だよ?色んな人とのペアを経験しなきゃ」

「ブラックモアくん、デュノアさん、お邪魔しま……す」

「あれ、山田先生」

「……すごい」

 

 ノックをして入ってきたのは真耶。最初に目に入ったのは、悠李の鋼の肉体。そして、部屋に広がる楽器とDVDに雑誌。特別待遇だから仕方はないとしても、これは流石に驚くしかなかった。しかし、怒る気は全くないようである。

 

「やっぱりお金持ちなんですね!!それにブラックモアくんの身体……」

「ははは……。それより、ご用件は?」

「あ、はい。本日から、男子も浴場が使えるようになりました!勿論、時間制限はありますが」

「ボクにはあんまり関係のないことのような……」

「ま、そだねぃ。僕も今、シャワー浴びたばっかりだし」

「それと、ブラックモアくんのペアについては、ブラックモアくん自体が決めない限りは抽選になるみたいですよ?中々決まらないらしくって……」

「引いたら、本当に当たりクジですねぃ」

 

 景品として優勝まで貰えるのだ、結果として一石二鳥になるだろう。悠李はタオルを頭に被せたまま一人掛けのソファに腰を降ろした。常に机の上に放っていたドライフルーツに手を伸ばし、糖分を補給する。

 

「終わりですか?」

「はい!」

「わざわざありがとうございました。対抗戦、ボクも先生の為にも頑張りますんで、期待していてくださいね」

「私の為?」

「先生の顔の為でしょう。優勝したら、先生の教え子だから、というわけですよ。先生も褒められますし、鼻が高いでしょう?」

 

 悠李かシャルロットのペアが優勝すれば、の話ではあるが。しかし、実質ラウラ組とシャルロット・一夏ペア、そして悠李の三つ巴だ。どちらにせよ優勝は1組の生徒が必ず入る。絶対に、千冬も真耶も鼻が高くなるわけだ。

 

「頑張って下さい!!応援してます!!では失礼します!!」

「……ノせたね?」

「え?なんのこと?」

 

 シャルロットは言った意味が判っていないようだ。口説き文句のそれと同じ。しかも同性で、教師を口説くとは。悠李はふざけながらもそう思った。

 

 人を良い気にさせるのは、ある意味羨ましい能力とも思える。そのような能力があれば、仕事ももっと増えるだろうし、人付き合いもうまくなれるに違いない。

 

「さて、だぁれがなっかまになぁるのかねぃ。別に一人でも良いんだけどさ」

「簡単に、ボク達に勝てると思わないでよね」

「はいはい。いざとなったら、 AOSを使わせてもらうよ」

 

 対抗戦で、あのダンボールに包まれた武器を使うのか。遂に、あの武器の全貌が解るのか。

剣なのか、銃なのか?どちらでもいい、その武器を見て、対策を立てよう。シャルロットは用心深く、悠李戦の予想をした。

 

「試運転もしないとまずいねぃ、明日やるか」

「へっ?」

「見たいなら見に来てもいいよ?」

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 いつものように授業を軽くこなした放課後、悠李はアリーナの使用許可を取って、ダンボール箱を持ち、ドレッドノートを展開して空中に佇んでいた。人はあまり見当たらず、これなら大丈夫、と思い、ダンボールを手早く開けて、中の巨大な二丁の銃を取り出す。全長は悠李の足から胸ほどまである、無駄な装飾のない銃であり、小回りがあまり利かないイメージを初見では抱かせる。

 

 誰もいない地面を見計らって、そこに一丁だけ向けて、弾丸を放った。青紫色の細い光条が、地面を穿ち、3m程の深さの穴を空けた。

 

「うん、極細でもいけるねぃ」

「ラグナ!AOSってのを……」

「おや、シャルに一夏」

 

 二人で特訓をしにきたのだろう、一夏とシャルロットがアリーナにきた。この試射はシャルロットには伝えてはいたが、一夏はシャルロットから聞いていないようで、その銃の大きさに、ただ驚きを隠せなかった。

 

 続いて、2丁を横に重ね合わせ、胸の当たりから銃を構えた。先程の穴を狙い、更に太い光線を放つ。それは、シャルロットと一夏の横幅よりも広かった。

 

 クレーターを創り出した威力を見て、こんなものだろう、と悠李が思い、地上に降り立つ。AOSを吸収して、ドレッドノートを解除すると、制服のままの彼が出て来た。ISスーツを着ないのが、堅苦しいものを嫌う悠李らしい。

 

「凄い兵器だね?」

「ま、あれでも全体出力の30%しか出してないからね」

「えっ……」

「100%は、恐らくこのアリーナが吹き飛ぶなぁ」

「ありえねぇ……」

 

 恐らく、ISのシールドなぞ木っ端微塵であろう。それどころか、搭乗者さえ死にかねない。無論、最大出力で使うなど、馬鹿げたことはしないはずだが、かといって低出力でも驚異である。特に、近距離特化の一夏にとっては、ワンミスが命取りになるだろう。

 

 これでテストは終了、と悠李は言って、一人でアリーナから抜けて校舎に戻ろうとする。その所を、鬼の形相をした箒に捕まり、またアリーナに引き戻された。

 

「なんだよぅ」

「特訓だッ!!いつまで私を放置しているつもりだ!?」

「あ、ごめんなさい……」

 

 仕方なく悠李は閻魔刀を抜き、箒が打鉄を展開して悠李に斬りかかった。相当怒っていたのだろう、太刀筋がキレている。

「いつになく速いじゃない?」

「これだけはお前のお陰かも……知れん、がっ!!」

「まぁだまだ、僕には追いつけないねぃ」

 

 箒が突いてきた所を狙い、閻魔刀の尖端を打鉄の尖端にぶつけた。箒の腕が跳ね上がり、胴ががら空きになった所を、悠李は箒の懐に深く踏み込んで侵入し、閻魔刀を逆手に持ち替えて、峰で薙ぎ払った。

 

「うわわぁっ!?」

「惜しかったねぃ」

「くっそぉぉ……」

「何の為のISだよ、もっとスラスター吹かして勢いを付ければいいのに」

「いいのか、吹かして?」

「僕は禁止事項を出した覚えはないねぃ」

「なら、再び参る!!」

 

 今度は、スラスターから火を吹かして、悠李に剣を突き出したまま突進してきた箒。先程の数倍、スピードも威力も上がった。先程より数倍も手応えがあると言いながらも、悠李は閻魔刀一本で一太刀を受け止めた。悠李の腕はびくともせず、ただ彼女の剣を力強く受けているだけである。箒自ら悠李から離れ、彼の振り払いをかわして、その動作の余韻を見て、悠李の頭からブレードを振り下ろす。

 

「貰ったっ!!」

「Too easy(チョロいっ)!!」

 

 その場で駒のように悠李が回り、その勢いを乗せた回し蹴りでブレードを弾き、また右逆手に持ち替えた閻魔刀で箒を下から打ち上げた。片手でも1mは浮き上がり、悠李は追撃として、左足で飛び蹴りを絡め、シールドアーマーがついているのを良いことに、閻魔刀で打鉄を唐竹割りのように峰打ちした。

 

「強ぇ……」

「あれはもう、人間が敵うレベルじゃないね。戦車と戦闘機を持ってこないと」

「ほら、立って。まだまだ、特訓は終わらせたくないだろう?」

「わかっているじゃないか……。こちらも、今のでお前から色々と盗んだからな」

 

 ふーん、と興味なさ気に、悠李は箒をあしらった。その次の瞬間であった。

 

 箒が、打鉄のブレードを、悠李を下から掬い上げるように振った。不意を突かれたのか、悠李は少し反応が送れるも、バク宙してそれを避けた。そして宙にいる最中、箒がどこで覚えたのかは知らないが、スティンガーを繰り出し、悠李の首を刎ね飛ばそうとする。悠李は首を後ろに反らして避け、ブレードを片手で掴むと、そのまま箒を片手で持ち上げた。

 

「なかなか、泥棒さんの技術はついたじゃない」

「おっ、降ろせ!!」

「はいよ」

 

 わざとのぶつからない程度に一夏の近くに放り投げた。箒のバランス感覚と打鉄のアシストで

姿勢を保つが、好きな男の前でここまでやられると立つ瀬がない。が、一夏は箒の事を大絶賛し始めた。

 

「お前、いつそんなに強くなったんだ?ラグナを少し追い詰めたじゃないか!!」

「あ、ああ……?私は負けているんだが……」

「それでもすげえよ!いやぁ、流石だなぁ、箒は」

「そ、そうか……!照れるな……」

 

 この隙に、自分は校舎に戻ろう。忘れていたことがある。悠李はそそくさとその場から立ち去って校舎に戻り、教室に戻って自分の机から読み掛けの本を取り出した。これを忘れていただけであるが、自分の机が砂糖で汚れていたのもあり、軽くハンカチで拭き取った。

 

 これで用事は済んだ。悠李は教室から出て、自室に戻ろうとした。だがその途中、怪しげな気配を身体で感じ取った。

 

「なんだ……?」

「さっすが、気がつくのは早いわねぃ」

「その喋り方……僕みたいだねぃ」

「ま、あなたのことは、結構知ってるからね、"悠李くん"」

 

 自分の名を知っているのは、教師とシャルロット、箒しか、この学園にはおるまい。だが、それ以外にもいるというのか。

気配から、居場所を探知して、その人物を探り当てる。当人は、青い髪をした女子。ニコニコと笑顔をくれ、悠李の肩に手を置き、そのまま勢いよく抱き着いた。

 

「ゆーくんひっさしぶりー!会いたかったよーう!!」

「か……刀奈、さん?」

「そうそう!生徒会長兼みんなのアイドルの楯無さんだよー!!」

 

 かつての創龍の弟子であり、姉のような存在が、そこにいた。

 

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