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「そんで、生徒会長さんが僕に何の用で?」
「連れないわねぇ。もっとこう……再会の感動とかはないのかしら?」
「いや、帰って勉強したいんですけどねぃ?」
「私が手取り足取り教えたげるから大丈夫よぉ♪そ・れ・よ・り♪対抗戦、ペアは決まったかしら?」
何故か誰もいない生徒会室に、"更識楯無"に無理矢理連れ込まれた悠李。無論面識はあるのだが、楯無が悠李の年上なため、敬語を使ってしまう。
随分と和風な感じではあるが、ソファーなどがあることから、あまり纏まらない部屋であるというのが感じられる。ソファーに腰掛けるように言われ、悠李は遠慮なくどかっと座る。その隣に、やけにくっついて座る楯無に、悠李は気まずそうな顔をした。
「決まってないですよ。まだ、ね」
「あら、ちょうどよかった。じゃあゆーくん、簪ちゃんと組んでくれないかな?」
「かんちゃん?いるんですかぃ?」
「いるんですよぅ。日本代表候補生、でね」
更識簪。楯無の妹で、いつも楯無にくっついていた覚えしかない。悠李にも懐いていた覚えはあるが、あくまでも尊敬対象でしかないだろう。
「あの子、まだ専用機が使えなくて……」
「え?」
「ゆーくんのクラスの"織斑一夏"くんのせいでね、簪ちゃんの専用機、"打鉄弐型"の開発スタッフが、"白式"の開発に全員集中しちゃって、今は自分で機体を組み上げているの」
「ほう。それで?もう専用機で戦えるんですか?」
「ううん。まだ、学校のISを使ってる……。けど、実力は確かなはずよ?」
「そりゃあ、代表候補生ならあるでしょうよ」
「だからよ!!実戦で、どんな機体を使っても強いんだ、ってことを証明して自信を付けさせてあげたいの!!」
「つまり、彼女には自信がないと。でも、僕があまり出過ぎてはいけませんよね」
「勿論!だから、ゆーくんの知恵をあげて、一緒に戦ってほしいなって」
妹想いないい姉だが、悠李がそれをやることに意味があるのだろうか?自信は自分が付けなければならないだろう。動機付けぐらいしかしてやれないだろうし、それが簪の心を必ず動かすという保証はない。
「でも、考えてはおきますよ」
「ホントに?やったぁ、ゆーくん大好きぃ♪お礼にキスしてあげちゃうぞっ」
「いや、いいです」
「そんな遠慮せずにっ♪」
「なら……!」
悪乗りした悠李が、引っ付いて来る楯無をソファーに押し倒した。
彼女がその体制になると、笑顔は絶やさずも頬が紅くなっており、益々悠李を受け入れんとする体勢になっている。
「ゆーくんったら大胆!この数年間で、ここまでになっちゃうなんて、やっぱり血は争えないねぃ。んで?このまま私の処女をあげちゃってもいいんだけど?」
「……やめときますわ。僕、お腹空いてきたんで、帰りたいですねぃ」
「女の子を押し倒しといて食欲優先?それとも私を食べちゃったり?」
「それはまた今度でねぃ」
楯無から身体を離し、ゆっくりと廊下の方に動き出す悠李。楯無がその後に続き、悠李の背中に抱き着きながら、共に1年生寮へ。楯無は2年生寮へ行かなければならないのだが、この女は言って聞くような玉ではないだろう、と悠李は知っていた。
「いつまで僕に引っ付いてるんですかぃ?」
「んー……ラグナくんがキスするまで!!」
「ちょっ、バッ……!!人がいるのに……!!」
「え?ちゃんとラグナくんって言ったじゃない」
「あのね、楯無さん……」
力に物を言わせて楯無を引っぺがし、夕焼けに染まる屋外に楯無を放り出した。足早に自分の部屋に向かうと、シャルロットも楯無に負けない笑顔で悠李を出迎えた。
「おかえり、悠李♪」
「ん、ただいま。どしたのん?」
「あの、悠李がおぶっていた女の子、あれは誰かなぁ?」
「生徒会長・更識楯無。父さんの所に、昔修業に来た人で、僕の顔なじみ」
「紹介してくれればいいのになぁ♪中々、面白そうな人で……」
「妬いてんの?」
「まさかぁ。だって、この部屋で一緒に悠李と暮らしてるんだもん、この特権はボクしかないんだからさ、妬くわけないじゃん。それより、聞いてよ悠李」
楯無とは全く関係がなさそうだ。と、なると、シャルロットが笑顔な理由は一つしか考えられない。彼女は、他人の幸せにも笑顔で応えられる人だから、恐らくそれだろう。コートスタンドに上着を引っ掛けて、ベッドに腰掛ける。向かい側に座っていたシャルロットが悠李の隣に移動して、嬉しそうに話した。
「更に、一夏と篠ノ之さんの距離が縮まったんだよ!」
「へえ。どうしてだい?」
「篠ノ之さんと一夏をボクが一度で相手したんだけど、それが距離を縮める原因になったみたい!」
「やるじゃん」
セシリアや鈴には悪いが、一夏と箒は一番似合っているペアだと、悠李とシャルロットは思っている。小さな頃から幼なじみの二人がくっつくのは、一番自然だ、というのが
二人の考えだ。実際、それは二人だけが思っていることにしか過ぎないが、これに賛同するものだっているはずである。
一夏が誰とくっつくのか、それは一夏じゃないとわからない。悠李だって、流石に未来は見れない。
悠李は身体を倒してベッドに横たわった。対抗戦のペアが本当にどうなるのか、知りたくてたまらない。簪と組むことになるのか、もしくはラウラと組ませられるのか。最終的には抽選になるらしいが、その抽選も不思議に思う。
「結局さ、悠李は誰と組むの?」
「誰でもいいよぅ。もうシャルとは組めないしさぁ」
「妬いてる?」
「かもねぃ。でも、決まりそうな気はしてきた」
――簪と会ってみるか。部屋がどこかはわからないが。
「日本代表候補生、その子が第一候補」
「えっ!?また、凄い人と組もうとするね……」
「一応、面識はあるからねぃ。ちょっと会ってみよっか。行ってくるわねぃ」
「部屋わかるの?!」
「いや、わからないけどねぃ。そこらに聞いてみるよぅ」
ベッドから跳ね上がり、ドアを開け、廊下に出た。適当に歩いていても辿り着くことは有り得ない。それは当たり前だが、悠李はそこまで焦ってもいないのでゆっくりとしていた。来る人来る人に笑顔で会釈をしながら、ポニーテールを揺らして。
「あれ?らぐなん?」
「あら、本音さん。聞きたいことがあるんだけどさ、更識簪さん、って子の部屋、知らない?」
闊歩していた時に、偶然にも、本音に会った。何か知っているかなぁ、と悠李は本音に聞いた。ダボダボの着ぐるみみたいな服を着た本音は、袖を振りながら元気いっぱいに悠李に教えてやる。
「かんちゃん?知ってるよー!!かんちゃんはねー……」
「……うん。ありがと、早速行ってみるよ」
目的も言わずに、悠李は簪の元に向かった。確実に会えるという保証はないが、しかし部屋はわかったのだ。
階段を飛び降り、壁を蹴って、早く移動しながら、本音に教えられた部屋に着くと、悠李はその部屋のドアをノックした。中から反応がないが、もう一回ノックする。
「あれぇ、いないのかねぃ?」
「……ラグナ、くん?」
「あっ、ちょうどだねぃ。やあ、久しぶり、かんちゃん」
いないから帰ろうか、と悠李が思った時に、右側から、楯無と同じ髪をして、眼鏡をかけた少女と出会う。この子こそ、悠李が探していた、"更識簪"当人だろう。
「久しぶり……ゆーくん」
「覚えていてくれたんだねぃ」
「忘れるわけ、ないわよ」
「そりゃありがたいねぃ。ああ、そうだ。本題、行こうか。かんちゃん」
「ね、中に入ってからでいいかな……?」
「あ、うん」
顔が紅く染まっているのを、悠李は見逃さなかった。"この子も僕に?"と思ったが、好かれることは悪いことではない。簪に続いて部屋に入る。やはり、悠李の部屋が特別なのか、とても質素なインテリアだった。
「それでさ、本題なんだけど」
「うん……なに?」
「対抗戦、僕と組まない?」
「……ごめん。私、まだやることあるから」
「専用機、かい?」
「どうしてそれを知って……」
「僕はかんちゃんのことなら何でも解るよぅ?手伝えることなら、僕は手伝うけど。でも、専用機じゃなくても、かんちゃんが強いこと、証明しないかぃ?」
「私は、専用機でも――」
「ああん、ダメよそんなネガティブじゃあ。"病は気から"よ。それに、今までのネガティブさを払拭する、どんでん返しをやりたくないかぃ?」
こんなに調子よく簪を誘うのも、楯無の為でもあり、簪の為でもあり、悠李自身の為でもある。ニコニコとした笑顔を、簪の顔に近付けた。簪の顔が更に紅くなるが、わざとそれを狙っているのだろう。
「ゆーくん、絶対勝てるって保証、ある?」
「あるねぃ。僕とかんちゃんが組むこと自体が、必勝の秘訣さね」
「ゆーくん……どうしてそんなに自信満々なの?」
「……かんちゃんがいるからねぃ」
口説き文句っぽく聞こえるだろう。その通り、簪は林檎みたいな顔になり、表情が照れながらも、久しぶりに見た笑顔になった。これなら、口説き落とせるだろう。悠李の思惑通り、簪がまじまじしながらも、口を開いた。
「ゆーくんのためなら……」
「……よっし!!ありがとねぃ、かんちゃん!!」
「明日から、練習しよっか……」
「そうだねぃ!!」
お待たせし致しました。ハーレムの開始になります。
留まるかどうか?さぁ……。