Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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◆◇◆◇◆◇

 

 

 食事も終わり、ちょうど男子が入浴出来る時間帯だと思い出した悠李は、真耶を尋ねて浴場の鍵を受け取り、洗面器具を持って一人で大浴場へと向かった。鍵穴に鍵を挿して捻り、ドアノブを捻ってドアを開け、中に入った。当たり前だがそこには悠李以外誰もいない。脱衣所でさっさと服を脱ぎ、とても学生寮とは思えないくらい豪華な浴場に入った。シャワーで軽く身体を濡らし、自慢の長髪と肉体を丹念に洗って、IS学園自慢と言ってもいいくらいの豪華な湯舟に身体を沈めた。

 

「ふぃー。バスオイルとか浮かべたいねぃ」

 

 今日の疲れを取る為の風呂。身体も心も解れていく。立ち上る湯煙の行方を追うように、顔を天井に向ける。

 

 右手を上に掲げ、手の甲の蝶で視界を遮ると、軽く拳を握った。自然に魔力が右手に集まり、蝶が紫に光った。

 

「うーん、なんでか知らんけど、身体がいつもの軽さに戻ったねぃ。魔力も回路スピードが速くなったし」

 

 手をまた開くと、魔力が煙化し、湯気と一体化した。今度は左手を軽く握り、すぐに手の平を広げる。ブロック状の固形菓子が生成され、一口でそれを食べ、魔力操作を再確認する。絶え間無く身体中に巡る魔力。それを思うままに操れる今の感覚。

 

「AOSとドレッドノートで、さらに腕上がったかねぃ。試しに……」

 

 魔力を操り、更に精鋭化させ、右腕から刃を作り出す。30cm弱の剣、それで自分の左手の指を斬り、切れ味を確認した。傷はすぐに塞がるが、その精度に、悠李は自分で感動してしまった。

 

「素晴らしい……」

「……おじゃましまーす」

「魔力の操作もより正確に、精巧に……」

「悠李?気づいてる?」

「これなら……ん?シャル?」

「はぁ、もう戦いは終わってるのにさぁ」

「いやあ、調子がよかったからさ、魔力の動かし方を思い出す為にね」

「血は争えない、か」

 

 自分が入ってきても気付かない悠李を見ていて、シャルロットはいかに彼が創龍の影響を受けているかを感じた。悪魔やそれらの類との殴り合いこそ生きがいと言ってもいいほどだった。

 

 だが彼らの本心は、自分の大事なものを守り抜くための力を得たいだけである。そして、何かのためにその力を使って戦い守り抜くことが、彼らの一番大事にしている事であった。

 

「今なら、父さん以外なら誰にも負けないなぁ」

「悠李に勝てる存在自体が稀有でしょ」

「わからないよ?世界は広いからねぇ、一撃で首取られるかもしれないし、千冬さんにも負けるかも」

「有り得ないね」

 全くもって予想できない事態。それを考える悠李に、シャルロットは彼を少しおかしく思った。彼が死ぬことさえ有り得ないのに。

 

 湯船から立ち込める湯気。それが彼の今の思考を曇らせているのだろうか。それだったら、そこに漬け込んでもっと大胆に振る舞いたくもある。だが、悠李が応えてくれるかは別だ。

 

 だが、予想外というのは、いつだって起こるものである。今、シャルロットが浴場に入ってきたようなこともそうだ。

 

「そういや、なんでシャルがここに?」

「んー?疲れてる悠李の背中を流してあげようと思って」

「湯舟には身体を洗ってからつかるもんだよ。ざーんねん、タイミングが悪かったねぃ」

「ボクはこうやって、一緒に入ってるだけでも幸せだけどね」

「ふぅん、なるほど。つまりシャルは僕とお風呂でくっつきたいと。えっちぃ」

「んなっ、言ってないよそんなこと!?」

「くひひっ、冗談だよぅ」

 

 悠李はシャルロットをからかい笑った。彼女が頬を膨らませて怒る姿は、小動物にそっくりである。クスクスと笑いながら、悠李はシャルロットの背後に腕を回し、頭を優しく撫でてやった。愛おしく脆いコワレモノを労るかのように。

 

「やっぱり大切な存在だよ。君は、誰にさえも侵させたくない」

「……悠李。悠李は、ボク――いや、私を愛してるの?」

「もちろん。恋愛感情も薄々抱きつつある。けど、第一にキミは僕らの家族だ。家族は愛し合うもんだろ?」

 

 ──そうだ。

愛に飢えていた。元の家族、そしてBlack Cherryには、愛が溢れていた。もちろん、実の父親から愛は注がれていたのかもしれない。しかし、わがままであっても、もっと沢山の愛情が欲しい。

 

 それを満たしてくれるのが、悠李なのであろう。この胸の高鳴りと、頬の火照りは、それを感じている証拠に違いない。

 

 ぎゅっ、と悠李はシャルロットを抱き締めた。そうしてしてほしいように見えたからだ。湯船に浮かぶ波紋は止み、二人の姿を綺麗に映す。湯気に負けないくらいはっきりと。

 

「デュノアにいた頃は、こんなことされなかったでしょ?」

「うん。だから……今は、この温もりに、君の優しく大きな手に甘えたい……」

「もう、いつでも甘えていいんだよ。それに、君には一夏も箒さんもセシリアもいる。皆が君の味方だし、仲間なんだから」

「うん……。ごめん、なんでだろう、涙が……」

「いいんだよ、泣いて。涙は人間の証、宝物なんだから」

 

 悠李の真っ直ぐな優しさ。それは、癒しに来た筈のシャルロットを癒し、心を抱き、包み込んだ。彼女の顔には、喜びの涙が伝う。悠李は指で涙を掬ってやり、その手で彼女を更に胸に抱き寄せた。

 

「ごめん。悠李が刺された時、とても怖かったんだ。それが、どっと今押し寄せてきて……」

「ははっ、殺せる存在が稀有なんて言ったのは、キミじゃない」

「うん……。そうだね。悠李は死なないよ。ボクがいる限り」

「というか、まだ死ねないねぇ。やりたいことはたくさんあるんだ」

 

 悠李は強い。心身ともに。だが、シャルロットも、心の強さは悠李に劣らない。彼を信じる強さは、誰にも負けたくない。その想いは、誰にでもわかっていた。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 翌朝、眼を覚ますと既に隣のベッドにシャルロットはおらず、悠李は寝癖を直しながら、ついに来たかと呟いた。そう、シャルロットの素性をあらわにする日だ。

 

「今何時……?」

 

 顔を洗い、制服に着替え、時計を見ると、8時を既に過ぎていた。

 

 ――やばい。遅刻だ。

有り得ないミスをしてしまった。はあ、と溜め息を着き、開き直りつつも教室へ行く。身体から溢れる魔力を駄々漏れにしないように軽く抑え込みながら、廊下を歩き、教室の扉を開けた。

 

「すいません、遅れ――」

 

 教室内は色々とゴタゴタしており、何故か壁に穴が空いているし、鈴とラウラはISを展開している。悠李は何が起きたのかわからず、近くに座っていた者に聞いた。

 

「何があったの?」

「あっ、珍しいね。ブラックモア君が遅刻なんて。怪我は大丈夫?」

「うん、授業は受けられるよ。それより?」

「凰さんが織斑くんとデュノアさんの関係にキレて、その攻撃をボーデヴィッヒさんが庇ったんだよ」

「ふゥん。一夏とシャルは一緒にお風呂に入ったりしてないのにねェ」

「そうなんだ。私は、ブラックモア君とデュノアさんが相部屋だから、あなたたち二人が一緒に入ったって思ったけど」

「ん、まあね」

 

 否定とも肯定とも取れる曖昧な返事をし、真耶に近付き、まずは遅刻したことを謝った。だが真耶は、あまり早く来過ぎても貴方が怪しまれる、と言って彼の遅刻を正当化してくれた。

 

 確かに、普通の人間である、と思わせたい以上は、怪我の為に遅れてきた方がいいだろう。いつもは並大抵の人間ではない能力を見せている悠李で、しかも機能は刺されても暴れ回り、一夏に無傷の証明までしたのだから。

 

「一応、後で包帯巻いておいた方がいいですかね」

「そうですね。カモフラージュの為に、赤く塗っておいた方がいいです」

「はい」

 

 席に着こうと黒板の前から移動しようとする。その時、ラウラが悠李の行く手を阻んだ。彼女のにこやかな表情を始めてみては驚く。

 

 ラウラはISを解除し、地面に足をつけると、そのまま跪いた。なぜだろう、と悠李は疑問を抱く。

 

「師匠。どうか私を弟子としてお使いいただけないでしょうか」

「ねえ、誰がこんなこと仕込んだのよ?篠ノ之さんかい?」

「私の所為にするんじゃない!」

「弟子なんて、ガチで取りたくないんだよ。面倒だから」

 

 箒を弟子にすることさえ嫌なのに、二人も弟子がいるなんてことは絶対に御免だ。

しかも彼女は軍人、戦闘訓練は十分積んでいるはずだ。なのに、自分に弟子入りとは、お門違いにもほどがある。

 

「全力で拒否します、つか篠ノ之さんも破門」

「は?」

「自分でやれよ、そんなことは。一々人に頼るんじゃない」

「ラグナ、俺は?」

「君もだ、一夏」

 

 友達だからこそ、自ら強くなる道を探す努力を悠李は奨めた。席にゆっくり着き、今日もまた外を眺めながらのルーチンワークが始まる。




◆悠李くんの身体能力

握力:左右ともに3500kg
背筋力:80t
100m走(物理的に全速力):1秒50(時速240km)
5km走:1分20秒
立ち幅跳び:10m
垂直飛び:8m
肺活量:30L(機械が壊れます)
懸垂:終わらない
ベンチプレス:350kg以上

なお創龍のほうが化物の模様
足だけ悠李のほうが早いです
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