Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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Prologue.3

◆◇◆◇◆◇

 

 

 試験が終わった三日後、ゆっくりと過ごしながら、入学式を待っていた悠李だが、入学式が終わって、教室に入ってからも、どこかのんびりとした雰囲気を出していた。空港で会ったセシリア、一夏が同じクラスということで、少し安心出来たのか、心にゆとりが出来たらしい。

 

 初のホームルームでは、副担任の山田麻耶が自己紹介をしたあと、この前会った千冬が、ドスの効いた声で自己紹介する。これで、ゆとりが壊される。女子の黄色い声がそれに勝ったおかげで。千冬は呆れた声を出した。毎年、このような歓迎を受けるらしい。人気者は辛いな、と悠李が同情しかけた。

 

 背もたれに身を任せ、リラックスしながら聞いていると、いつの間にか、生徒の自己紹介の時間になっていた。一夏がドギマギしながら答え、セシリアが高飛車な答え方をし、悠李が更に力を抜きながら、それらを聞く。

 

「ブラックモアくん」

「?」

「あの、自己紹介、君の番なんですけど」

「あぁ、はぁ」

 

 気を抜きすぎて、自分の番さえ忘れてしまっていた。少しだけ力を入れ、立ち上がる。クラスメイトが皆小さく見えた。勿論、彼の背が高いのもあるが。

 

 周りから見れば、柔らかい印象。身体は大きく、中性的な顔は綺麗に整い、背中まであるポニーテールが、悠李を女らしく見せた。

 

「ラグナ・ブラックモアです。イギリスのバーミンガム生まれ、ロンドン育ちです。男性はやっぱり少ないですが、仲良くしてくれたらうれしいです」

 

 緩やかに、そして手短に答えた後、席にすっと座る。ロンドン育ちは捏造である。彼の育ちはスラムであり、あのように華やかな風景は一つも見えない。何も知らない彼等は驚くこともなかった。

 

 だが、手短に答えたのがまずかったのであろうか。休憩時間で、彼は悪夢を見ることになった。

 

 見世物小屋にいるようで、周り、というか全員からの質問責め。好きな物は、趣味は、などと根掘り葉掘り沢山聞かれて、適当に答えて見るものの、それは延々と続いた。

 

(一夏は……いねぇ!!あの野郎!!)

 

 唯一同じ男の一夏を、早くも怨んだ。授業開始のチャイムが鳴り響く頃、一夏はポニーテールの女子と一緒に教室に戻ってきたが、早くも手を出したか?と悠李は疑った。

 

 授業を適当に聞き流しながら、8割暗記した教科書と共に過ごす。いつの間にか寝ていたが、それはもう授業の終わりであったため、チャイムですぐに起き上がった。一夏が教科書を電話帳と間違えて捨てたことを聞いた時には、流石に笑いはしたが。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

「一夏。君ってば、女の子に手を出すの早くない?」

「はぁ?」

「一個前の休み時間、ポニテの子と戻ってきてたじゃん」

「ああ、あいつは篠ノ之箒って言って、俺の幼なじみだよ。小五辺りであいつ転校したけど」

 

 へぇ、と頷く。幼なじみがいる幸運

、少し羨ましい。それだけ気兼ねなく接することが出来るのだから。自分には、そのような人、今はいない。その分少し肩身が狭い。一夏とも、既にかなり垢抜けた関係ではいるのだが。

 

「ちょっとよろしくて?」

「うん?どうしたの、オルコットさん」

 

 そこに割り込んでくるのは、セシリア・オルコット。一夏とは初対面になるのか。仲良くできればいいな、と悠李の願いが、少しだけ欠けた。

 

 腰に手を当てる。いかにもイメージ通りのお嬢様らしいポーズ。無理しているようには見えない。なるほど、彼女のタカビーはここにも現れるのか。

 

「いや、そこの織斑一夏さんとお話がありまして。私と一緒のクラスになれたことに、幸せに思うように」

「え、君、そんなに凄い人なのか?」

「一夏。彼女はイギリスの代表候補生でね、言うなればエリートの学生さんなんだよ。僕は彼女と、ロンドンの空港で知り合った」

 

 ちょくちょく解りやすく解説を入れては、一夏が頷く。なんでも知っているな、と感心しながら、自分の無知さを恥ずかしく思った。電話帳と間違える鈍感さに、逆に悠李は褒めたくなったが。

 

 自信たっぷりの自慢を聞いた二人。だが、大したことではないと思っていた。悠李は圧倒的な力で潰したのだから。

 

「入試で、唯一試験官を倒したこの私に……」

「それ、僕も倒したよ?」

「え?」

「1分半で、被弾ゼロ」

「俺も被弾ゼロだ。ただ、あっちが勝手に壁に激突したから、倒したとは……」

「な、なんてセンス……。まさか、男性は女性より強いという、四半世紀前の事が、今なお通用するのかしら……」

「いや、僕はその道の人だからね?動態視力とかは抜群にいいんだ」

 

 裏稼業――彼等の生業とする、悪魔狩りにおいて、己の持てる全てを使い、戦うのだ。賭けるものは自分の生命。代替品はなく、だからこそ生き抜くためのタクティカルセンスはここの誰よりもあるはずである。

 

 チャイムが鳴り、セシリアが驚きを隠せないまま、席に座る。悠李も歩いて戻り、また脱力しながら話を聞きはじめた。

 

「今回は、戦闘における武装の特長や、戦闘スタイルについての授業だ。だが、その前に、クラス代表を決めたい」

 

 教壇の千冬が言う。正直、どちらもどうでもいい。代表も、多分興味本位で一夏か、セシリアになるだろう。自分がやるのはまっぴらごめんだ。

 

「クラス代表は、生徒会の会議にも出席し、再来週行われるクラス対抗戦にも出場する、責任ある役職だ。いわば、クラス長だ。自薦、推薦は問わない。やりたいものはいないか」

「はい、織斑くんを推薦します」

「お、俺!?」

「お前以外に織斑一夏はいないだろ」

 

 やはり、というか、何というか。一夏がまたおどおどしながら言うが、悠李はすかさず突っ込んだ。

 

 悠李に、助けてと言わんばかりの視線を送るが、無視する。腹いせと言わんばかりに、いきなり声を上げた。

 

「ハイハイ!じゃあ俺、ラグナを推薦しまぁす!!」

「えー」

 

 悠李がぶぅたれた。だが、それさえも通ってしまい、立たされることに。

「候補にこの二人だな。他には?誰もいないのであれば、無条件で当選――」

「納得が行きませんわ!!」

 

 そこに待ったを入れたは、やはりセシリア・オルコット。完全に怒っている。なぜだかは知らないが。

 

 彼女の言い分を聞いてみよう。みな、静かに彼女に注目した。

 

「男がクラス代表など……。いい恥晒しです!!そのような屈辱を、一年間通して味わえと!?」

 

 くだらない。思わず吹き出しそうになってしまったが、なんとか堪えた。だが、そんな反応をするのも彼一人。完全に浮いてしまっている。

 

「実力からすれば、私が選ばれるのは当然……。なのに、珍しいという、そんな理由だけで、こんな極東の猿共と安易に決めるなど!」

「えー……。僕一応イギリス人……」

「イギリスだって、大したお国自慢無いだろ!?世界一マズい料理ランキングで何年覇者だよ」

 

 ぐさっ、とセシリアの頭に槍が刺さった。確かに、そこは否めないのだが。

 

 道端の料理屋は、確かにマズい。何を意図して作ったのか、まるでわからない。

 

「イギリスにも美味しい料理は沢山ありますわ!!ねえブラックモアさん」

「うーん……。焼きすぎ・揚げすぎの食文化は否めないけど……。でも、あることはあるねえ」

「ほら?それに、ロックやサッカーなどもイギリスが発祥です!!」

「ISは日本で生まれたんだけどね……」

「ぐぬぬ……。決闘ですわ!!」

「おおいいぜ、四の五の言うより解りやすい」

 

 本当に、安直で勝手な奴らだ。悠李はくすりと苦笑いしながら、二人を見た。

 

 止めなよ、と前の席の女子が言うが、面白そうだから放っておく。ハンデはどのくらいつける、とか、負けたら奴隷、とか色んな話が飛び交い、ついには千冬公認で決闘の予定が決まった。

 

「ブラックモアもやるんだぞ」

「嫌ですよー。何で僕がわざわざ二人の決闘に水差さなきゃならないんですか」

「いえ……。ちょうどいい機会です。貴方の実力も見せていただきますわよ、ブラックモアさん」

 

 完全に、巻き添えを喰らった。

 

 




◆主人公紹介
名前:神威 悠李
身長:186cm→188cm
体重:74kg(体脂肪率6.5%)
ヘアスタイル:黒のポニーテール
アイカラー:クリアブルー
コートの色:黒紫
種族:悪魔
悪魔の肉体と創龍の血を掛け合わせて作られたハイブリッドデビル
偽名:ラグナ・ブラックモア
(スペル:Ragna Blackmore)
性格:温厚

二つ名:嵐の覇者(ストームブリンガー)


[詳細]
創龍の一人息子。バーミンガムの教会で作られた。創龍が15の時(悠李は3歳)に拾った。
身体能力はクラウスそのものであり、悪魔であるため、人より何倍も頑丈であり、パワフル。
人との付き合いは少ない方。だが、その分友人を大切にする。
父親と違い、穏やかで、真面目。優しさの中に、厳しさを秘めている。
シャルロット・デュノア、更識姉妹とは幼い頃から面識がある。特にシャルロット・デュノアとは4年間寝食を共にした、いわば幼なじみ。

魔術も扱え、身体には蝶や鎖、炎などの呪印を入れている(任意で消せる)
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