Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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STAGE 1 クラスメイトは大抵女-Awaking Beast-
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◆◇◆◇◆◇

 

 

 頭を抱えながらも、決闘を承諾した悠李だが、正直、何をしなくてもセシリアには勝てると思った。こちらの戦い方は物理法則を無視したものばかり。それを予測出来れば、危ういかもしれないが。

 

 問題なのは一夏だ。勢い良く勝負を受けたくせに、今では完全にビビっている。元々こいつの所為なのに、と悠李は思った。

 

 どうしようどうしようと、纏わり付いて来る彼が鬱陶しい。デコピンして黙らせると同時、一夏の幼なじみである篠ノ之箒が、かなりキツい目付きでこちらを見て近付いてきた。

 

「一夏、そいつはお前の敵だろう!!馴れ合っていていいのか!?」

「僕はこいつとあのお嬢様達の被害者だっつぅの。敵じゃないし」

「そうだぞ箒、こいつは俺のバトルアドバイザーだ」

「勝手に決めんなよ。やってもいいけど、人間やめなきゃいけなくなるよ」

「楽しそうだな、寧ろ頼むわ」

 

 ドンドン箒の目付きはキツくなっていく。嫉妬だろうか、自分が一夏と喋っていることさえ、罪悪感を感じさせるようにしているみたいだ。

 

「一夏、そっちの篠ノ之さんが構ってほしそうだよ?」

「なっ……」

「幼馴染みなんでしょ?構ってやれよ」

「ああー。こいつはすぐ拗ねるからなぁ。なら、この三人で仲良くしようぜ」

「……ああ」

 

 箒が渋々返事をする。それほど自分は嫌われているのだろうか。

 

 いや、そんなことはない。ただ、箒は一夏が好きなようで、悠李に一夏が取られると思ったようだ。彼を見る目は、なぜか輝いていた。

 

「まあ、勝ちたいなら、動かしてみるしかないんじゃない?教師に申請すれば、アリーナ借りて動かせるらしいからね」

 

 提案すれば、一夏は首を縦に振る。話は早い。許可を取った後、彼等はアリーナへ移動した。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 一夏が打鉄を展開するのに手間取っている間、悠李は手をぐにぐにと解し、準備体操をする。そして、腰に手を付け、力――魔力を全身に込め、鎧を形成した。

 

「お、お前、専用機持ちだったのか!?」

「しかもその姿……新世代のISか?小型で、同調していそうな……」

「ああ、うん。ちょっと特殊な奴でね。じゃ、一夏。まずは軽く、手合わせと行こうか」

「お前、武器は?」

「有るけど、使う必要はない」

 かなり一夏を挑発した言い方。手を向け、くいっと指を曲げる。かかってこい、と言わんばかりに。

 

 一夏が馬鹿正直に、真っ正面から突撃していく。悠李はそれをひょいと飛んで、蹴りを入れながらかわした。

 

 かなり軽いその身のこなし。そして、突き刺さるような威力。エネルギーが1/10も削られた。

 

「つ、強い……!!」

「ほら、ぼうっとしない。殺す気で来なよ」

「うぉらぁっ!!」

 

 ブレードで横凪ぎ払い。それも、後ろにのけ反りながら、ブレードの軌跡をなぞるように、回し蹴り――旋風脚を放つ。更にムーンサルトで一夏を蹴り上げ、軽々と宙に浮かせた。

 

 素早く飛び、踵を落として、そのまま膝を腹に当て、地面に叩き落とす。シールドを無理矢理カチ割り、絶対防御を発動させて、手合わせが呆気なく終了した。

 

「くっそ、華麗過ぎて、何が何だかわからねえ」

「猪じゃないんだから、突進以外のことをやろうよ。これでも手加減した方だからね?」

「これで、か……」

「一夏、代われ。私が、ブラックモアと仕合ってみる」

 

 一夏が腰を上げ、いたたたと言うが、それを余所に、箒も打鉄を展開し、戦闘体勢に入った。

 

 更に舐めているのか、悠李は鎧――ドレッドノートを解除する。なんのつもりだ、と聞かれるが、更に楽しくするため、と答えた。

 

 箒が準備出来たのを確認すると、今度は悠李自身が仕掛けていった。突進。そこを、キレのいい縦斬りで狙うが、横に素早く滑り、片手で箒の腕を掴んだ。そのまま勢いに乗せて壁にむけて投げ飛ばし、ぶつかるタイミングで、ドロップキックをかます。

 

 まさかのシールドが3割減。生身でこれだけ動けるとは、化け物に違いない。殺しに行かなければ、勝てないのは本当か。

 

「死んでも、文句は言うなよ」

「殺す気?いいね、そうこなくっちゃ」

 

 殺気を込めて剣を振る。かまいたちが悠李を襲うが、横に脚を思い切り振り、かまいたちをぶつけ合う。その隙をついて箒が剣を突き出しながら体当たりをするが、見えない速度でブレードの切っ先に座り、へらへらと笑いながら手を振ってきた。

 

 まるでサーカスのピエロだ。奇妙な動きをする。そして、その予想が全く出来ない。

 

「それで殺気を込めているのかい?殺気ってのは、このくらいやらなきゃ」

 悠李が言った途端、彼の大きなオーラが、悪魔の様な化身を形成し、箒を脅した。

 

 一夏にも見える、そのとてつもない怪物。それは、強かで、恐ろしく、身動き一つした途端、全てを破壊してしまいそうなとんでもない魑魅魍魎。悠李がゆっくり腕を動かすと、背後のそれも、同じ動作を取った。

 

 拳が、空気を切り裂く音が聞こえる。悠李がそのまま箒にぶつけると、シールドを貫き、装甲を砕いた。箒の膝までが地に埋まり、身動きが取れなくなってしまった。

 

 顔面の鼻先ナノ単位で寸止めをしているので、彼女に大きな怪我はないものの、空気を切り裂いた真空波で、幾つかの切り傷が出来ていた。

 

 ブレードから、バク宙して降り、うなだれている箒を引っ張り上げる。しかし、相当落ち込んでいるようだ。

 

「はい、おしまい。なんだ、ちょっとしたら、剣で相手して上げようと思ったのに」

「そんな、まだ私には、力が足りないのか……」

「だって、予備動作デカいし」

「えぇっ!?超コンパクトだったぞ!?」

「振りも遅い。チャンバラごっこに見えた。確かに一夏よりはマシだから、それがこのISの特徴なのかもしれないね。ただ、自分が振り回さなきゃ」

 

 今の彼等は逆で、ISに乗せてもらって、戦わせてもらっている、というのが、悠李の見解だ。扱う身が、扱われているという。

 

 生身でこれだけあしらわれては流石に酷だろうが、その分言うことには説得力がある。彼がドレッドノートを使ったときと生身の時の蹴りの速度はほぼ変わらず速かった。無論、手加減していたため、見える速度にはしているのだが。

 

「毎日特訓だねー。一夏は……僕のコネで、オルコットさんの戦闘データを貰ったから、それを見て研究だね」

「どんなコネだよ!!」

「僕は軍人じゃないけど、イギリス軍上層部から、色んなモノを貰ってるんだよね。だから、後で僕の部屋来てね」

「ああ、そういえば、今日から突然寮に住めって言われたぞ。1017号室、お前の――」

「わ、私と同室か!?」

「あ、そうなの」

 

 先程の悔しさをさっぱり忘れ、驚きと喜びが混じった顔と声で一夏に話す箒。どこまでも、彼が好きなのだろう。心の底から惚れているに違いない。純粋で美しい恋愛感情は、見ていて応援したくなる。

 

 悠李は困った顔で笑い、「じゃあ後で」、と言いながら、わざと箒の耳元で囁き、戻って行った。

 

「やったじゃん、イチャイチャ乳繰り合っちゃえよ」

 

 勿論、箒に釘を刺すことを忘れずに。

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 夕方。着替えるのに手間取った一夏が、遅れて部屋に入ったとき、ちょうどシャワーを浴び終えた箒が、一糸纏わぬ姿で出て来た。

 

 無音の世界。だが、かなり気まずい空気だ。

 

「……きゃぁぁっ!!」

「ご、ごめ――」

「は、は、破廉恥なッ!!」

 

 愛用の木刀を取ると同時、胴着に着替え、雷のごとき速度で、一夏に打ち込む。なんとか剣の切っ先を取り、直撃を免れたが、かなり身体が鈍っていたため、その一撃は重かった。

 

 こちらも剣道の経験はあるが、辞めて10年くらいにはなる。対して彼女は全国中学チャンプだ。女だとしても、流石に相手に出来ない。

 

 パッと手を離すと、入口に駆け、ドアを盾にする。だが、彼女は、急所を、ドアを突き破りながら的確に突いてきた。それを紙一重で避けながら、隣の部屋に逃げる。無論悠李の部屋なのだが、中に誰もいない。

 

「……あれ?ラグナ?シャワーか?」

 

 ドアのカギを閉める。シャワールームの戸を開けてもいない。バルコニーを見てもいない。

 

 ガチャガチャとドアノブを開けようとする箒。まずい、流石に他人の部屋だ、壊されたら溜まったもんじゃない。

 

 だが、その音も、次第に止んできた。そして、誰かの足音が、だんだん近付いて来る。

 

「どったの、篠ノ之さん。まさか僕の部屋でヤろうって?」

「違う!!あいつに裸を見られ……」

「ヤろうとしてたんならいいんじゃないの?」

「だから違う!!あいつが部屋に入ってきたと同時、私もシャワーから出て来て……」

「うん、どっちも悪くはないからね」

 

 ドアの外では、謎の大きなケースを持った悠李と箒が話していた。事の全てを話すと、呆れながら悠李は頭を抱えた。

 

 さっさと中に入りたいがために、ドアノブを回すが開かない。カギでも閉めているのだろう。

 

「仕方ないねぇ……。ぅおらっ!!」

 

 その場から、ドアに対し、ヤクザキックを放つ。カギが壊れ、ドアが開くと、ゆっくりと悠李は一夏へ近付いていった。

 

 ケースを置くと、災難だったね、と一夏に言ってやる。苦笑いしながら一夏も答え、ベッドによろよろと腰を掛けた。

 

「先程の模擬戦から思っていたが、なぜ蹴り技にこだわる?」

「こだわってないよ。出すのが楽なだけ」

「テコンドーか、ムエタイか?」

「自己流」

 

 スピード、柔軟性、威力、どれをとっても、人ではあるまい。先程のドアへの蹴り

は手加減していたとは言え、なかなか開けられるものではない。

 

「ああそうだ一夏、オルコット嬢のデータ、焼いといた」

「おっ、サンキュー。こんなメモリで収まるのか」

「それ、16GBあるから」

 

 言いながら、かなり大きな液晶テレビの電源を立ち上げ、悠李の手元の小型端末で、データを開いた。

 

 パーソナルデータ、ISデータ、戦闘履歴などが画面に英語で所狭しと表示されている。悠李がかたかたとキーを叩くと、日本語役の情報が出された。

 

「専用機の蒼い涙(ブルーティアーズ)は、中距離を主な戦闘域と置いた、射撃寄りのバランス型。イギリスの第三世代型で、小型の無線誘導射撃兵器が特徴なんだとさ」

「え、ということは、360度どこからでも攻撃が可能って事か?」

「そういうこと。オールレンジで、レーザーで蜂の巣にしようっていう戦法。一発避けたと思ったら、他の所から二発当てられた、っていうのもザラだね。だから、対処法は、このレーザー台の位置を常に把握しながら戦うことだね。もしかしたら、レーザー台同士を潰せる位置があるかもしれないし」

「なるほど」

 

 次に、戦闘中の動画が表れ、彼女がBT兵器を駆使して、相手を近寄らせない戦法が、たくさん流れている。だが、そこで気付いた点が一つ。

 

「レーザー台を動かすのに精一杯なのか?本人はまるで動いていない」

「ご名答、まさにこの時がチャンスなんだ。避けながら、何かしらアクションを起こせば、レーザー台を動かすのを止めて回避に移る。その回避を予測しながら、突っ込んでいくか、レーザー台を活かして、彼女に自滅させるか、どっちかだ」

「因みに、ラグナ。お前はどんな戦法を取る?」

「レーザー台を動かしたと同時にイジメに入るね。2台掴んで、レーザー撃つ時に、それを彼女に向けたり。ま、動かさせないで開始10秒で潰すことも出来るけど」

「うわぁ……」

 

 本気でやりかねないからこそ困る。この言いぶりからするに、先程の箒や一夏に対して、全く力を出していなかった事になる。

 

 更に、悠李自身、オールレンジ攻撃は可能だという。射撃系では無いらしいが、それでも驚異ではある。

 

「ラグナ、お前は近接オンリーなのか?」

「いや?射撃も出来るよ。だって、このケースの中は銃だもん」

「え」

 

 先程担いできたケースを開ける。中には、サブマシンガン一丁と、大口径リボルバーが二丁、そしてその下に両刃の大剣と日本刀が二振りずつ。

 剣を手に取った瞬間、悠李の手の中に吸い込まれ、見えなくなった。

 

 天上天下無双剣(あまさげのむそうのつるぎ)と、閻魔刀。この二振りは魔剣と呼ばれる、この現世には存在しない物だ。魔界と呼ばれる地獄の世界の産物であり、悠李や創龍らは、それらを主に使って、悪魔狩りと呼ばれる仕事をしている。

 

 二丁の大口径リボルバー――一つは、デスイービルという、世界最強のリボルバーマグナム・フェイファー・ツェリスカの改造銃。そして、もう一つが、S&W M500。どちらも、超ド級の破壊力を持つキャノンだが、悠李はこれを愛用している。

 

 サブマシンガンはBIZON。対人用なのだが、IS武器にも見立てられる。創龍がロシアから取り寄せてきた特注品らしく、マガジンが二個も付いていて、弾丸も使えるものが異なっており、サプレッサーもレーザーモジュールも装着済み、弾切れの心配も威力不足もない、まさに至高の一本となっている。

 

 おふざけで一夏に銃口を向ける。無論セーフティは掛かっているし、マガジンも付けていないし、チェンバーにも弾は入っていない。空撃ちしてみて、サプレッサーの消音精度を確かめた。マズルフラッシュもないし、スニーキング・ミッションにも最適なサブマシンガンだ。

これまた光となり手中に消える。なんとも奇妙な現象だ。

 

「どうやってるんだ?」

「企業秘密。自分で考えてね」

 

 勿論正答は出ないだろう。このメカニズムは創龍と悠李のみ知っている。

 

 最後にギターケースを開ける。中には、ヘッドにFenderと描いてある、所謂ストラトキャスターなのだが、何かが違った。

 

 ギターを持ち、軽く手首を振るってみる。鎌の刃がばぁっと広がって、床に真空刃を刻み付けた。

 

 鎌のギターなど、見たことがない。弦は光り、稲妻も走っている。

 

「一段と、鳴いてくれそうだね」

「お前の武器は一体何なんだ!?ギターだったり鎌だったり、マシンガンだったり……」

「オルコットさんとの戦いにはわかるよ。このギターはエレクトロヘヴィ、鎌にもなる、重い鋼鉄音を奏でてくれるギターさ」

 

 また手首を振ると、形がギターに戻り、悠李はそれをストラップを使って提げ、紫色の弦を思い切り掻き鳴らした。

 

 耳に突き刺さるような、攻撃的なヘヴィ・ディストーション・サウンド。スタックされたアンプが部屋にあるのだが、それに繋いでいなくても歪んだ大音量がなる。

 無論、一夏と箒はエレキギターをよく知らないので、こういうものだと思っていたのだが。

 

「さて、必要な物は揃った。あとは食事かな」

「こんなにたくさんの武器を見たのは初めてだぜ……。驚きで俺も腹ぁ減っちまったよ」

「じゃあ一緒に行こう……、やめた。篠ノ之さん、一夏と仲直りする意味も兼ねて、二人きりで食べなよ」

「……!」

 

 なるほど、その手があったか。恋する純真な乙女は、目の前の歩く武器倉庫のアイディアに感謝しながら、それに賛同した。

 

 そうと決まったら、と箒は一夏の手を引っ張り、一目散に食堂へ駆け込んだ。二人の仲が急進展すればいいな、と思いながら、悠李も二人の跡をゆっくり辿っていった。

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