Infinite Devils Hunter   作:パン粉

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◆◇◆◇◆◇

 

 

「いや、いきなりすぎるっしょ」

 

 着替えて、一夏達に追い付いた悠李は、先程の千冬の話を話してみると、彼等もはぁ?、と言って疑問を浮かべた。

 

「しかも転入生って、絶対女だろ?一体誰が……」

「名前までは聞いてなかった」

「いい奴だといいな」

「そう願うよ」

 

 一夏が同情するように悠李に言った。彼の同居人は箒。何かと苦労が絶えないかと思うが、それは一夏の性格も原因してるだろう。

 

 代表戦に向けての練習を結局付き合うと言った悠李達がアリーナに入ると、悠李が改造したラファール・リヴァイブを、千冬が試運転していた。

 

 いつみても素早いそのIS。だが、千冬用に、スラスターの出力を落としているみたいで、大分穏やかなG負荷となっているようだ。綺麗なグラデーションの火花がスラスターから散り飛ぶ。

 

「どうですか、ラファールは」

「君の規格違いさには、心底驚かされるよ。一夏がへたっているのもわかる」

「僕仕様だったら、どれだけ耐えれますか?」

「吐血しかけるな。5秒は持たないだろう」

 

 殺人的な加速、と言いたいのか。更にスラスターを増やして、スピードをあげたら、身体がバラバラになりそうだ。

 

 こんなクセのあるISを使いこなせるかどうかは解らないが、教師の面子を守る以上、やるしかない。

 

「手合わせしましょうか?」

「いや、今回は一夏に直々に教えにきた」

「俺に?千冬姉が教えてくれるなら、百人力だな」

「織斑先生、では私も」

「ああ、そこの怪物と一緒になって、みっちり扱いてやる」

「あ、僕もやるんですね。なら正装に着替えてきます」

 

 そう言って悠李は更衣室へと向かった。制服でも、スニーキングスーツでも、あの男の性能は変わるまい。

 

 一夏とセシリアが各々の専用機を、箒が打鉄を展開する。アリーナの地面にふわふわと浮いている感覚は、一夏と箒はまだ馴れない。そのうち馴れるだろう、と割り切って、千冬の口頭で解説を聞く。

 

「相手がどんな戦い方をするのか、どんな武器の使い方をするのか……。武装を見た段階で推理するのが重要だ。武器が多彩になればなるほど、対策法は増えるが、弱点も見つけやすくなる」

「なら、武器が少ない俺は、弱点が見付けづらい、ってこと?」

「少ないなら、対策法は少なくなって対処しやすくなるだろう。相手の裏を掻く戦法を練らねばならない」

「それを見つける前に、まずは

基本的な動かし方をマスターしないとね」

 

 ほんの2、3分で、レザーブーツ、黒紫のロングコートに、黒のライダースパンツ。ハイネックのインナーの上には、ベルトが沢山着いた、半袖の薄いジャケットが見えた。

 

 悠李に取っては、これが正装。仕事をするときも大概はこの服なのだ。だが他の人間は「?」を頭に浮かべている。

 

「じゃあ、練習しましょうかね」

「いや、待てって。ISスーツを着ろよ」

「あれ嫌いなんだよね、圧迫感あってさ。これが僕の一番動きやすいカッコなの」

「まあ、どんな服装であろうが、ブラックモアには誰も敵うまい。一夏、試しに白式で生身のブラックモアと仕合ってみろ」

「千冬姉、こいつの強さは重々わかってるよ。生身で箒に勝ってるんだ」

「専用機だと勝てるかもしれないよ?かかっておいでよ」

 

 悠李が一夏から少し離れ、手招きして挑発する。千冬からもやれと言われている以上、やるしかあるまい。

 

 手加減しろよ、と一夏がぼやき、すーっとアリーナの地面を浮きながら距離を取った。千冬の合図で一夏と悠李が互いに突っ込む。だが、一夏にぶつかる前に、悠李が一瞬にして消えた。

 

「ど、どこだ!?まさかのステルスか?」

「真上だよん」

 

 一夏の頭上に、なぜか空中に足を付けて立っている悠李。雪片を上に振り、当たる直後に零落白夜を発動させるが、悠李はそれを軽くいなし、バック宙をして距離を取る。

 

 地面に降りて、脚を高らかに上げ、軽く飛んで、空気を挟み込むように脚を高速クロスさせた。

 

 突如生まれる、二つの真空刃。双刀が対象となり、顎<あぎと>を作っている。急いで真横に避けるも、一夏のシールドがえぐり取られた。

 

「うおぉっ!?」

「大袈裟だなぁ。それよりも、一夏はもう少し動かし方を練習すべきだね。ISのバリア分の移動を考えてない」

「それは感覚でしか掴めないだろうなぁ……。ラグナ、暫く付き合ってくれないか」

「僕よりも、セシリアや織斑先生の方がいいんじゃないかな。二人の方が、一日の長はあるわけだし」

「なるほど。じゃあ、動かし方を二人に教わってから、ラグナに戦い方を教わるよ」

「その方がいいよ。篠ノ之さんも、そうしなよ。織斑先生、セシリア、それでいいですか?」

「ラグナさんの考えに間違えは無いはずですから。それに従いますわ」

「ああ。では、今日は君は上がってくれていいぞ。ついでに転入生を迎えに行ってみたらどうだ?」

「はい。エスコートでもしてきますよ」

 

 悠李はコートを翻し、寮へと歩を向けた。鍛えてくれと頼まれた矢先からこれだが、仕方がないだろう。

 

 制服を、アリーナに置いてあったビニール袋に入れ、その格好のまま、自分の部屋へと入る。何故か閉めた筈の鍵が開いている。もしかしたら、転入生がこの部屋に入っているのではなかろうか?

 

 下足入れには見知らぬ小さい靴。やはりそうだ、転入生だ。ブーツを脱ぎ、スリッパに履きかえてカーペットの床を進んでいく。少し狭い廊下を抜けると、ベッドの上で、勝手に冷蔵庫のコーラを飲んでいる、背丈の小さな、ツインテールの少女がいた。

 

「一夏!!……じゃなくて、なんだ。ラグナ・ブラックモアか」

「なんだ、って、なかなか酷くないかい?しかも勝手に人のジュースまで飲んでるし。君が転入生?名前は?」

「中国の代表候補生、鳳鈴音(ふぁんりんいん)。ま、忘れたきゃ忘れていいわよ」

「素っ気ないなぁ」

 

 初対面の鈴音に、ここまで冷たい態度を取られても、悠李はニコニコと笑っている。興味がない、という意思表示なのだろう。だが悠李も、恋愛対象としては興味がない。

 

 コートをスタンドに掛け、鈴音と向かい合うようにベッドに座る。真顔でコーラを飲み続ける鈴音に、悠李は尋ねた。

 

「君も、一夏の知り合いかい?」

「ああ、うん。小5からの付き合いでね。中3の頃に、私は中国へ戻ったんだけど……」

「なるほど。つまり君は一夏に惚れていると」

「そうそう!一夏は私の初恋の……って、どうしてわかるのよ?」

「判りやすいんだよ。というか、あれだけモテる一夏の周りに、4年もいたら惚れるだろうね」

 

 なぜモテるかは大胆わかる。彼は愛想もいいし、顔も格好よい。そして少し天然だが、熱いときは熱い男だ。それに、こんな女だらけの中じゃ、モテるに決まっている。

 

 対する悠李は何故かモテない。彼は顔は綺麗なのだが、常におちゃらけた性格の所為なのか、一夏が大抵持って行ってしまうのか。理由は本当に不鮮明なのだ。当の本人はさほど興味はないのだが。

 

「敵は多いのね、まあ予想は出来ていたけど」

「さて、誰が勝つことやら。織斑先生に勝てるコはいるのかな」

「げっ……。でも、絶対千冬さんにだって勝って見せるわよ」

「そりゃあ楽しみだ。どこまで食らい付けるのかね?」

 

 見世物としては非常に面白そうだ。あの姉に信頼されるのは一筋縄ではいかないだろう。

 悠李は立ち上がり、冷蔵庫の中からペットボトルのアイスティーを取り出し、キャップを開けながら、途中で取ったリモコンで自前の液晶TVの電源を付けた。今さらながら、白い壁紙の中で、赤いフレームの巨大なモニターは周りから浮いている。

 

『明日の天気です。東京都は全体的に晴れで、少し気温が上がります。半袖を着てもいいかもしれませんね』

「半袖はこの下のジャケットしかないんだよなぁ……」

「そういやあんた制服は?」

「あるよ。着替えてくる」

 

 袋から制服を取り出すと、そのまま悠李はバスルームへ向かった。何故かこの部屋は他の部屋と違い、バス・トイレ別の湯舟付きなのだ。この優遇は悠李だからなのだろうか?

 

 悠李が着替えている間に、鈴音が部屋の中の物を物色し始めた。大して面白いものはなさそうだが、ツーバスのドラムセットや、ギターアンプ、この前新たに送られてきたレスポールやフライングVなどの楽器などを見る限り、彼が音楽を好きなのがわかる。そして、意外にもティーセット、ピザのレシピ本、料理道具など、あの外見から思い付きにくい、料理関連の物まで出て来た。しかし、こんなものは期待していなかった。

 

 鈴音が見付けたいのは、18歳未満購入・閲覧禁止の、思春期の少年少女が興味津々の本やビデオだ。悠李も人間だし、性欲は溜まる。悪戯好きな性格の彼女にとって、それを見付けて弱みを握ったり隠したりとして、この部屋の主に成り代わってやろう、と思い付いたのだ。

それはあまりにも突然だったのだが。

 

「定番なのはベッドの下よね」

「うんうん、よくある漫画やアニメのエロ本の隠し場所はそうだね」

「話がわか……早くない!?」

 

 白い制服に着替えた悠李が、鈴音の後ろに立って、うんうんと頷いていた。着替えるのに5分も掛かっていない。

 

「君には酷だけど、エロ本もホモビもないよ。一夏の寝込みを襲うんなら実力でやらないとね」

「しっ、しないわよ!!」

「したらしたで、織斑先生に殺されちゃうもんね」

 

 ペースは完全に悠李の物になっている。冷蔵庫からコーラを取り出して、ぐいっと喉に流し込んで、アンプヘッドの上にボトルを置いた。

 

 年代物(ヴィンテージ)のギターに、ベタベタと指紋がくっついている。塗装焼けなどがないようにしていたのだが。クロスで軽く拭いてそれを取り、布を鈴音にほん投げる。彼女はそれをひょいと避け、ベッドの上に布は落ちた。

 

「このレスポール、4000ポンドしたんだよね」

「いくらよ」

「日本円で、60万くらいかなぁ。ヴィンテージをこうも扱われちゃうと、困るなぁ」

「うげっ」

「ブラックモアくん!」

 

 鈴音へ脅しをかけたところで、ちょうど外から悠李の呼び出しがかかった。ドアを開けると、本音とその友人たち。本音が両手を突き出し、何かを催促しているようだが、他の子は別の理由らしい。

 

「らぐなんお菓子ちょうだい!」

「織斑くんのクラス代表就任のパーティをしたいんだけど、ブラックモアくんもどうかなと思って」

「無論行くよ。お手伝いもしたいし。牛馬の様に扱ってくれよ。ほんちゃん、ほれっ」

「わあ、チョコだぁっ」

 

 手の平からチョコを生み出し、本音に餌付けをして、鈴音へそれを知らせてから、パーティー会場らしい食堂へと向かった。

 




悠李くんの人間関係 家族構成内編

 (故)   (故)  (故)
  神     ク    朝
  威ーー┳ーーラ    倉┳?
  凪  ┃  ウ    由┃
     ┃  ス    姫┃
     ┃  │   ┏━┻━┓ 
     神  │   朝   朝
     威─┬┘   倉   倉
     創ーーー┳ーー音   由
     龍 │ ┃  姫   夢
       │ ┃     (初音島在住)
       神 朝
       威 倉
       悠 桜
       李 姫

創龍と音姫の実子は朝倉桜姫ということでございます
悠李の義母は音姫。桜姫は悠李の義妹。
由夢は叔母。
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