戦火の玉響   作:凱旋門

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一話

 少女は夜の山道をただひたすらに、腕を引かれるがまま逃げていた。

 ()() ()から逃げている途中に左の靴は脱げてしまい、また靴下も破けてしまったために足の裏はもう傷だらけだった。それでも少女は腕を引いてくれている叔父さんを信じて、痛みを堪えて走り続けた。

 日本の夏特有のじめじめとした空気は容赦なく私たちの体力を奪っていく。息もあがり、汗だくで意識も朦朧としていた。でも、少女たちは逃げる。()() ()に捕まれば命はないのだから、それも当然と言えた。

 しかし、その時突然、今まで少女の手を引いていた男が何かに撃ち抜かれたかのようにバタリと倒れた。

 叔父さんは少女の腕を掴んだままだったため、少女は勢いよく地面を転がり、木の幹に背中を打ち付けた。

 少女は幹に強く体を打ったせいで、体がうまく動かなかったし、動かすと激しい痛みがはしったが、それでも構わずに少女は木の幹に背中を預けるように地面に座った。

 額には何か液体が流れているのがわかった。それが転がった拍子に頭をきってしまって流れた自分の血液だと気づいたのは、すぐ後のことだった。

 叔父さんは電気をくらったかのように痙攣を繰り返している。

 そして()() ()は足音もなくまだ生きている叔父さんのすぐ側に近寄り、仰向けにすると、手にしたナイフを心臓の辺りに突き刺して、それをビィーーっと腹まで切り裂いた。

 少女はそれをただ眺めていることしかできなかった。それをやめさせたくても自分にはその力がないとわかっているからだ。そして、次が自分だということもわかっていた。

 ()()――まるでカラスのような姿をしたカラス男は、叔父さんの臓器を鷲掴みにし、それを食べる。グチャグチャと音をたてて人間を食しているのだ。

 少女はたまらず胃の中の物をすべてその場に吐き出した。そして次は自分なんだと改めて理解すると、恐怖で体が震えた。そして奴らの正体をもう一度思い返した。

 

 それは三ヶ月前のことだった。NASAが地球に向けての交信らしき非常に強い電波を観測したのだ。これをNASAは人類を超える知的生命体が近々地球に来るのではないかという仮説をたてた。そしてその次の日に、奴らは地球へと来たのだ。最初に来たのは一種類の宇宙人だった。とても侵略的で、各国の軍が交戦し、なんとか撃退に成功した。しかし、それ以来地球は何種類もの宇宙人に狙われるようになったのだ。

 その数、軍事力はとても各国の軍では対処できるものではなく、事態を重く見たアメリカ政府は国の枠組みをなくした地球軍を組織、すべての国が国連、そしてアメリカ政府の隷下に入るように要請したのだ。既に各国は小さくない被害を受けており、また勝てる見込みがないことからロシアを含めたほとんどの国がこれを了承。地球軍が組織された。

 そして、今はその戦争の途中なのだ。

 奴らはまるで何年も前にやっていた『ウルトラマン』シリーズの作品に出てきた怪獣や宇宙人とよく似た姿をしているが、その関係性はわかっていない。

 人間を家畜としてしか見ない侵略者。それが奴らだ。

 

 カラス男は叔父さんを実に汚らしく食べた後、こちらを向いた。月明かりしかないここでは姿をよく見ることは叶わない。だがそれでよかった。これから自分を食べる相手を見たいとは思えなかった。そしてできれば、生きて帰りたかった。

 しかし、少女の体は鉛になってしまったかのように動かなかった。

 寒気が走り、しかし体は暑くなる……という珍しい経験をしてしまった。

 カラス男はこちらに向かってゆっくりと歩く。

 カラス男が近づくにつれ、その姿がはっきりと見えてくる。はっきり言って、怖かった。

 そしてカラス男が目の前に来た。その時だった。

「うぉらッ!!」

 誰かがカラス男を横から蹴り飛ばした。

 何が起こったのかわからずに、しかし頭はもはや何も考えてくれず、ボーッとすることしかできなかった。

 カラス男と、割り込んできたカウボーイ風の男が戦っていた。

 だが次の瞬間にカラス男は突如巨大化した。

 巨大化、それが奴らの強さだ。奴らは追い詰められると巨大化する。それが一番の脅威といえた。こうなってしまっては、戦闘機か護衛艦がなければ敵わない。もはやカウボーイ風の男には何もできないだろう。

 しかしカウボーイ風の男は冷静だった。胸元からヘンテコな機械らしきものを取り出すと、どこからか出てきたカードを手に取った。

「ウルトラマンさん!」

 男はそう言うと手にしていたカードをその機械のリングに通す。

 カードは消えて、代わりに男の斜め後ろに銀色の宇宙人ご現れる。

「……ウルトラマン」

 気がつくとそう呟いていた。そう呟くほどに、その銀色の宇宙人は、少女の知っている『ウルトラマン』とそっくりだった。

「ティガさん!」

 男はそう言ってもう一枚のカードをリングに通す。するとやはり男の、今度は反対側の斜め後ろに銀色の宇宙人が現れた。そしてそれも少女が昔見たことがあるウルトラマンだった。

「光の力……お借りします!!」

 男はそう叫んで機械を天にかがげた。

 瞬間、危険なまでに明るい光が辺りを包み込み、それが消えると、そこにいたはずの男はいなくなっていて、代わりに見たこともない光の巨人がそこにいた。

 意識が朦朧としていた少女の記憶にあったのは、そこまでだった。




 続きを書くかどうかは、まだわかりません。

 ※この話はフィクションであり、実在の人物、団体、国家などとは何の関係もありません。そして、もしも誤字などがありましたらご報告をお願いいたします。感想お待ちしています。
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