アイちゃんリアルへ行く   作:シュペルロ・ギアルキ

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節分番外編。
多分二人で過ごす初めての節分。


第?話 アイちゃんと節分

 今日も悟は軋む玄関扉を開けて帰宅する。

 

「ただ~い……」

 

「災いよ立ち去れー!」

 

「まっ!?」

 

 べちっ! と音を立てて悟の顔に張り付いたのはインゲン豆によく似た青々としたサヤ付きの豆。

 そしてそれを投擲したイビルアイは至って真剣な表情である。

 

「幸福よ来たれー!」

 

 べちっ!

 

「………」

 

「………」

 

 天使が通り過ぎること数秒。

 先に口を開いたのは顔から豆(インゲン豆によく似たサヤ付き)を剥がした悟だった。

 

「ただいまイビルアイ」

 

「あ、あぁ、おかえりサトル」

 

 その堅い表情と声質から自分は何か間違えたんだろうなということを察した感じのイビルアイも挨拶を返す。

 

「何を勘違いしたのかは何となく分かるけど、とりあえず一言言うなら食べ物は粗末にしない」

 

「あぁ、やはり間違っていたか…」

 

「うん、普通はこういうのを撒くんだよ」

 

 そう言ってコートのポケットから『フェイク・イリマメ(生分解性プラスティック製・50粒入り・税抜き400円)』の袋を取り出しイビルアイに手渡す。

 受け取ったイビルアイはしげしげと袋を眺めながら。

 

「随分硬質な豆だな。変にツヤテカしてて…。まずそう」

 

 食べる気満々なイビルアイを慌てて悟が止める。

 

「食べられないよ! プラスティック製だから! それは撒くだけ」

 

「え? でもなんか、歳の数だけ食べるとか聞いたぞ?」

 

「そんなの余裕がある人だけだよ。煎りバイオ大豆とか高いし。普通の家は精々合成豆のグラノーラでも食べるくらいさ。…と言うか食べるの? 250個…」

 

 歳のことを言われて段々ふてくされたような表情になっていくイビルアイだが観念したようにカクンと頭を落としつぶやく。

 

「……食べない…」

 

「そういうこと。じゃあ風呂に入ってくるからまた後でね」

 

「分かった。食事の用意をしておく」

 

「あと…これ……」

 

「あ、うん…」

 

 と、先程顔に張り付いた豆(インゲン豆によく似たサヤ付き)をイビルアイに手渡し、悟はバスルームへ向かうのであった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ふー、さっぱり…」

 

 などと言いつつ湯気を上げる悟がバスルームから戻ると、既にテーブルの上には今晩の食事が用意されていた。

 内容は主になにか黒くて太い棒状の物体である。

 え? みたいな顔をした悟にイビルアイは得意気に説明する。

 

「今日は法国料理の『エホーマキ』を作ってみたぞ。りあるでも今日食べるとテレビで聞いてな」

 

「異世界にもあるのか恵方巻き…」

 

 昔のスーパーとかコンビニがでっち上げた風習なのに…。

 

「まあ、私は食べたこと無いから想像で作ったんだけど」

 

 爆弾発言。

 

「いきなり不安だ。と言うかやめなよそういう意味不明にアグレッシブなクリエイティブを発揮するの」

 

「大丈夫、ちゃんと味見はした」

 

「調べてから作れってこと!」

 

「いんたーねっとはなんとか使えるようになったけどまだ漢字は難しくてなぁ…」

 

「あー…、いや…。そうか…」

 

 悟もだいぶイビルアイとの生活に馴染んでいて忘れがちになっていたが、イビルアイはまだ日本に来て日が浅い。1人でなんでも出来るというわけではないのだ。

 

「もういいや…。とりあえずもう食べよう」

 

「あぁ、そうしよう」

 

 そうして<?恵方巻き>に手を伸ばしたサトルをイビルアイが止める。

 

「まてまて、たしかエホーマキは東の方角を向いて食べるんだろう?」

 

「そうだっけ? あんま知らないんだけどアイがそう言うなら…」

 

 と、二人仲良く今年の恵方とはなんにも関係ない東を向いて恵方巻きに齧りつく。

 

 むしゃりむしゃりと無言で<?恵方巻き>を頬張る二人。

 そしてポツリと悟が…。

 

「さほど美味しいものじゃないな」

 

「もっとストレートに不味いって言ってもいいぞ」

 

「味見したんじゃないの?」

 

「全部まとめてはしなかった…」

 

 食材一つ一つの味見はしたがトータルでの味の調和までは確認していなかったイビルアイだ。

 

 実際に食べてみると米の代用として片栗粉でとろみを付けた細切れのパスタと海苔の代用にした非常用弁当箱(副菜)(エマージェンシー・ランチボックス)から出したなんか黒っぽいうえやたらスパイシーな乾燥葉野菜がやけに歯と喉に絡みつき不愉快で、中に入っている豆(インゲン豆によく似たサヤ付き)の苦味と青臭さが香草焼きにした魚のほぐし身と乾燥葉野菜のスパイシーさと甘く焼いた卵焼きの甘さが味の不協和音を奏で非常に舌に五月蝿い。

 

 たしかに一つ一つなら美味しく食べられたのかもしれないが…。

 

「……ノルマは3本ずつな。私も食べるから…」

 

「……今からでも解体してバラで食べないか?」

 

「……それでもいいけど…」

 

 そんな感じにグズグズにグダグダな夕食を平らげ、リビングに向かいようやく落ち着いて食後の一服タイムを過ごす二人。

 お茶を飲みながら口直しにお菓子などをつまむ。

 

「あれでなんか、本当に幸運とかが舞い込んでくるのかな?」

 

「もういいじゃないか…。変なものを作った私が悪かったから…」

 

「…うん。でも言いたかったんだ」

 

「ぐぬぬ…」

 

 むくれるイビルアイの可愛らしい様子に少し溜飲を下げた悟もそれ以上は突っつかず、話題を変える。

 

「それじゃあ買ってきた豆で豆まきでもしようか」

 

「お、そうだな!」

 

 実は結構楽しみにしていたイビルアイがぴょんと飛び上がって肯定する。

 先程悟から預かったフェイク・イリマメの袋を取り出すと早速封を開ける。

 

「じゃあはんぶんこな」

 

「あぁ、ありがとうアイ」

 

 ザラザラと手のひらの上に半分より少し、いや、割と少なめの豆を受け取り、軽く手のひらの上で転がす。

 

「あんまり量がないからひとつまみずつ投げるか…。鬼は外ー!」

 

 バラバラと立てて悟の投げたフェイク・イリマメがフローリングの隅に転がる。

 

「災いよ立ち去れー!」

 

 ベチベチと音を立ててイビルアイの投げたフェイク・イリマメが悟の頬を直撃する。

 

「……福は内ー」

 

 バラバラ。

 

「幸福よ来たれー!」

 

 ベチベチ。

 

「…なんで俺に投げるの?」

 

 問いかけられたイビルアイがむしろ不思議そうに尋ね返す。

 

「むしろなんでサトルは私に投げないんだ? セツブンってのは豆を全力でぶつけ合う祭りだと聞いたが」

 

 私が全力を出すと悟が死ぬからそこは軽くやったが、とドヤ顔で続けるイビルアイに思わず「誰にだ!」と詰問しそうになったが口を開く前にふと思い出す。

 少し前に、何かの拍子に「節分といえばユグドラシルで人間と異形種に分かれて豆を全力でぶつけ合って勝負をつけるイベントがあった」なんて話したのは悟だったということを。

 

「今更だけどユグドラシルのイベントは悪意に歪みすぎているのではないだろうか…」

 

 などと小さく愚痴りながらもイビルアイに本当の節分の作法を教える悟。

 しかし…。

 

「でもこっちのほうがおもしろいじゃないか?」

 

 などとのたまうニコニコ顔のイビルアイを止めることは結局できず、フェイク・イリマメが無くなるまでイビルアイに豆をぶつけられ続けるのであった。




イビルアイが恵方巻きを大きな口を開けて頬張る描写を入れ損ねた…
だって隣で同じ方向向きながら食べたら見れないし…
恵方巻きの風習を考えたやつはそのへんもしっかり考えろよな全く!

正月番外編がなかったことについてはごめんなさいです…
マッポーの世で過ごすお正月についてイマイチ想像が追いつきませんでした…
悟の性格的に初詣とか行くの?とか…
お節とか今でさえ食べない家が結構あるというのに未来まで残っているのか?とか…
…来年頑張る

次回は多分バレンタイン番外編
ところで現在の番外編率5/12
………番外編とは一体……
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