続けるよう頑張ります
『で、何処に行くのですか?』
『今回の聖杯大戦の監督役の所だ。お前を召喚すると同時に使い魔を送ってきてな。今後について話したいそうだ』
念話をしてきたのは、ガッツが先程召喚したイレギュラーのサーヴァント、アヴェンジャー。本来ならば、キャスターのシェイクスピアを召喚する筈であったが、何の因果かイレギュラーな存在を召喚してしまった。
別段、シェイクスピアを召喚する事に拘っていた訳ではないが、時計塔が用意した触媒を無視してイレギュラーを召喚したいう事にガッツは頭を悩ませた。
しかし、キャスターとしては異色な作家のシェイクスピアの扱いづらさ、戦力などを考えればアヴェンジャーの召喚はマイナス面ばかりということはない。
彼女のステータスは三騎士クラスに届くレベルであるし、クラス別スキルも他にはない利点だ。無論、サーヴァント同士の戦いはステータスで決まるものではないが、高いことに越したことはない。
彼女は本来ならば、存在しないはずの暗黒面に堕ちた聖処女。
とある時空において『彼女ほど悲惨な目に遭ったのならば復讐を考えていない筈が無い』という民衆の想いに寄生する形で存在の根拠とし、贋作の英霊を生み出し続けることで真作を上回り、乗っ取ろうと画策した竜の魔女。
『ふん、輝かしい英雄と組む事になるとはね。最悪な気分よ』
よほど組みたくなかったのか、彼女は露骨に嫌悪感を出し愚痴を洩らすが、こればかりは耐えてもらうしかない。ガッツは依頼を引き受けた立場なので、契約を反故にする様なことはできない。
ましてや、こんな序盤から赤の陣営と黒の陣営の両方と敵対する事になれば、敗北は言うまでもない結果になる。
『耐えろ。別に仲良くしろとは言ってない。ただ、敵対だけしなければ問題ない』
『はぁ、わかりました。わかりましたよ。敵対はしない、それでいいでしょ?』
そう言うとアヴェンジャーは黙り、念話をしてこなくなった。
この先の苦労を考え、ガッツは溜息をはいた。出だしからこの調子では、この先が思いやられる。
ただでさえ聖杯大戦というイレギュラーの聖杯戦争に参加しているというのに、召喚したのは触媒無視のサーヴァント。ガッツはこれ以上のイレギュラーは勘弁してくれと思うばかりであった。
☆
「お待ちしておりました。今回の聖杯大戦の監督役と“赤”のマスターを兼任する、シロウ・コトミネです」
招待主は少年の顔立ちで、大人びた微笑みを浮かべていた。
若いな、と思うと同時に漂う雰囲気が年齢に釣り合ってないなと思った。魔に携わる者なのだから、普通と比べるのはおかしいと言ってしまえばそれまでだが、シロウ・コトミネは明らかに異様であった。
彼の笑顔は胡散臭いとアヴェンジャーは感じた。彼が浮かべた達観の笑顔にアヴェンジャーは強い拒否感を覚えた。
しかし、ガッツは
「ガッツだ。どうせ情報は送られてんだろ。自己紹介はなしだ」
ガッツの物言いにシロウは苦笑した。
無論、シロウの元へガッツについての詳細は届いているが、こうも突っぱねられるとは思ってはいなかった。だが、シロウは特に気にした様子もなく軽く自己紹介をし、話を続ける。
「貴方が召喚したサーヴァントの事なのですが、なにやらエクストラクラスだとか」
「ああ。こっちもこの事態に予想外でな。アヴェンジャー」
風が届かない教会の中に、ふわりとした一陣の風が吹く。
「む、貴女は……まさか」
シロウはガッツに聞こえない程度の小声で呟き、一人物言いにふける。彼女を見てシロウが何を考えているのかガッツには分からなかったが、どうせ禄なことではないなと睨んだ。
アヴェンジャーはというと、姿を現した途端に一人で悩み始めるシロウの姿に、ただでさえあった苛立ちが更に増した。
「ちょっとアンタ、いい加減にしてくんない!? 人が姿現したのに一人考え事なんて随分イイご身分ね」
「アヴェンジャー、気持ちは分かるが落ち着け。シロウ神父、今のはお前にも非があるぞ」
ガッツがアヴェンジャーを諌めるため、フォローを入れる。
ついでに、シロウが悪いんだぞと忠告を入れとく。
「あ、ああ申し訳ございません。少し浅はかでした。こちらもサーヴァントをお見せしましょう。アサシン」
「心得た」
「……隣にいたのか」
そう言って現れたのは暗黒のようなドレスを身に纏った退廃的な美女。
ガッツが座っていた椅子のすぐ隣でアサシンが実体化した。隣から響く声にガッツは内心ぎょっとしながらそちらに目を向ける。どこかにいるとは思っていたが、まさか隣にいるとは思っていなかった。
アサシンはサーヴァントとして現界する際、クラス別スキルとして『気配遮断』を獲得することができる。霊体化した状態で『気配遮断』を使ってしまえば、ガッツは元よりアヴェンジャーですら察知することは出来ない。
ガッツ、そしてアヴェンジャーもまた今回のアサシンはアサシンの語源となった『ハサン』と違うと踏んだ。彼らは己の肉体、能力、技術を極限まで高めて暗殺をする者であり、彼女のような美女はそのイメージに当てはまらない。
彼女のイメージとしては、暗殺というよりも謀殺だろう。
「──嫌な女ですね」
アヴェンジャーの囁きにはガッツも同意するが、この場で声に出さないでもらいたい気持ちの方が強かった。もし聞こえたらどうするつもりだったのだろう。
「よろしくな、ガッツとやら。アヴェンジャー殿もな」
アサシンは男性を誘惑するような、魅力的な笑みを浮かべながら手を差し出す。
一般男性ならば、その誘惑に耐えることなく魅力されていただろう。
「……よろしくな」
しかし、ガッツはぶっきらぼうに応え、彼女の手を取ることはなかった。
「チッ」
アサシンはガッツの態度に気に入らないようで、小さな舌打ちを洩らす。
「……さて、まずは現状の報告です。ユグトミレニア一族は既に六騎のサーヴァントを保有しています。唯一、アサシンのみが合流を果たせていないようです」
「真名が判明した者はいるか?」
「一人、いますね。ここルーマニアの英雄であるワラキア公ヴラド三世。他はステータス程度です」
シロウは懐から書類を取り出した。ガッツは軽く礼を言って受け取り、ざっと中身に目を通す。そこには六騎のステータスが載ってはいるが、やはり最重要情報であるスキルや宝具などは記載されていなかった。が、ガッツは元の知識で判断できた。
「それで、コッチのサーヴァントはどうだ?」
「セイバーのみが合流していませんが、悪くはありませんよ。ランサーとライダーはヴラド三世に拮抗できる力を持つと断言できるサーヴァントです」
「……そうか」
原作通りか、とガッツは一人心で呟く。
「さて、それでは───アヴェンジャーの真名を教えて戴けますか?」
シロウの言葉にアサシンがクスリと笑い、アヴェンジャーの苛立ちと敵意が露わになる。シロウの真名を教えてくれ、という問とアサシンの笑いが気に触れたらしい。
「あー、悪いな。教えたいのはやまやまなんだが、知らない」
「はい?」
ガッツの答えに思わずシロウは聞き返してしまう。それ程おかしな答えだ。サーヴァントを従えるマスターが真名を知らないとは、普通では有り得ない状況だ。
無論、ガッツのは嘘だ。
彼は召喚してすぐにアヴェンジャーから真名を聞いているし、別段知られても致命的なまでのモノではないが話す気にはならなかった。
これはただの、シロウへの嫌がらせだ。
「……困りましたね。共同戦線を張る以上、そちらがどのような宝具を使用するのか確認したかったのですが」
「心配するな、こっちはこっちで勝手に動く。そちらに迷惑を掛けたくないからな」
それなりの理由を適当に述べ、身廊をアヴェンジャーと歩き出す。
「別に迷惑ではないのですが……残念です」
「────すると、貴様らは我々とは手を組まないと?」
「そうは言ってねえさ。別々に行動するだけだ」
ガッツは教会から出ると、アヴェンジャーを霊体化させ、脇目も振り返らず教会から離れていく。
転がるように階段を駆け下りていき、急いで自分達の拠点へと向かう。
『マスター、あの神父の顔見た? 虚をつかれたあの顔。見てて最高だったわね! いい気分よ』
『そいつはいいが、地が出てるぞ』
神父の困り顔で気分が高揚したのか、アヴェンジャーは地の口調がでていた。もっとも、ガッツも先の一件でスカッとしたが。
☆
「このような事態になるとは厄介ですね」
「だが、シロウ。お前ならばあのアヴェンジャーの真名を見抜けるのではないか?」
「……ええ。見抜いてはいるのですが」
ジャンヌ・ダルク。救国の乙女。
聖処女と呼ばれた少女があのような者だとは、にわかには信じられないことであった。
「彼女がジャンヌ・ダルクとはどうも信じ難い。本当にあそこまで堕ちたのか?」
真名が判明して尚、不気味なサーヴァント。アヴェンジャーの存在は、シロウにとって厄介であった。
fgo大爆死。爆死仲間募集。
続きは恐らく一週間以内か後