狂戦士の如く   作:ポポン

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ジャンヌオルタ当たったので投稿

*誤字修正しました


2話 鉄塊

 

シロウの教会を離れて、半日。既に辺りは暗くなっており、夜が近づいてきている。

 ガッツとアヴェンジャーは半日かけ、ようやく拠点へと辿り着いた。

 

 魔術は一般人には秘匿するものである為、基本夜に聖杯戦争が行われる。もちろん、夜だから安全というわけでもなく、人避けの結界などを措置したうえで行うのが常識だ。

 魔術師は魔術を秘匿するものであり、痕跡を辿られてはならない。もし、それを行わなかった場合、粛清の対象となってしまう。

 

 聖杯戦争は夜に行われるものであるが、ガッツとしては、今夜は特に動こうとは考えてはいなかった。

 

 シロウ神父の悪口ばかり言うアヴェンジャーを放置し、ガッツは戦いの準備に取り掛かった。そもそも、敵が拠点に陣取っている状態で単騎で突っ込むのは愚策であり、論外だ。その為、今は戦いの準備に専念するのがガッツの方針である。

 

 ガッツは、拠点としてホテルの部屋を借りることを考えなくもなかったが、その考えは捨てた。世の中には、フロア一つ借りきって作った完璧な工房が、ホテルごと爆破するという手段によりその力を発揮することなく消え去ったことすらある。

 ホテルという場所は拠点としては脆弱と言わざるをえない。無論、デメリットばかりではなく、快適さ等のメリットも勿論存在する。が、そのメリットがデメリットを上回るということはない。

 

「……だからって、なんでここなんですか」

 

 呆れた表情で、アヴェンジャーはつい愚痴を零す。

 アヴェンジャーが呆れているのは、ガッツが『拠点』として選んだ場所である。アヴェンジャーは聖杯からの知識で、魔術師がどのような存在かは知っている。

 なのに───

 

「森で野宿ってどういうことよ…… もっと他にいい所あるでしょうに」

 

 辺り一面には木。明かりはガッツのおこした焚き火と、月の光のみ。焚き火のすぐ隣には少し大きめのテントが一つ置いてあるだけ。

 街は遠くはないが近くもなく、非常に中途半端な距離だ。だが、その距離がガッツには丁度良かった。

 

「文句言うな。上等な霊脈とまでは言えないが、それでもそこら辺の霊脈よりはマシだぞ」

「場所について言ってるの! 折角、現代に召喚されたのに街に泊まらないなんて」

 

 アヴェンジャーはがっくしと肩を落とす。過去に生きた彼女にとって、現代の街並みは珍しいものであり、興味が惹かれるものだった。

 にもかかわらず、拠点に選ばれた場所は森の中。現代の街並みなどあったものではない。街に泊まれると思い、若干ワクワクしていたアヴェンジャーにとって、期待を裏切られた結果となってしまった。

 

「悪いが、街の中に拠点は置かない。夜に街の中にいたら周りの奴らが犠牲になっちまうからな」

「なに、正義の味方のつもり? そんなの──」

「来やがったか」

 

 殺意の籠った、冷たい言葉によりアヴェンジャーの言葉は遮られる。

 周りの雰囲気が豹変したことによりアヴェンジャーも異変を察知し、戦闘態勢にはいる。

 

 空気は重くなり、地面からは武装した骸骨達が辺り一面に現れ始めたのだ。先程まで静まりかえっていた森が、戦場へと変わる。

 墓地でもない場所にも関わらず、次々と骸骨が現れるその光景ですら不気味だというのに、それら全てが剣や槍といった武器を持ってガッツ達に向かって来ている。

 

 普通ならば、いや、魔術師達にとってもこれは異常であろう。

 本来ならば、このような現象には必ず予兆があり、作り出した原因がある。しかし、今回のコレは、何の予兆もなく、いきなり始まったのだ。

 

「ちょっと、何よコイツら。敵マスターの攻撃?」

「いいや、いつもの事さ。俺は呪われてんのさ。神様って奴によ」

 

 もし、ガッツが普通の民だったならば。もし、アヴェンジャーがこの場にいなければ骸骨達に蹂躙されていただろう。

 しかし、違った。

 

 ガッツは手に現れた()()で骸骨達を一振りで薙ぎ払ったのだ。

 

 

 それは 剣と言うには

 

 あまりにも大きすぎた

 

 大きく ぶ厚く 重く

 

 そして大雑把すぎた

 

 それは正に 鉄塊だった

 

 

 

「アンタ、一体何者……」

 

 鎧を身に纏い、大剣を手に持つ彼はまるで慣れごとのように骸骨達を打ち倒していく。この世ならざる存在である骸骨達を倒していくその姿は圧巻であった。

 

 髪の一部が白髪、片目を喪い、片腕も喪っている。

 聖剣のような美しさはもちろん、見栄えの良さなどあったものではなく、人間には扱うどころか持つのも不可能なくらいの無骨な剣。

 そして何よりも、人外に真っ向から挑む彼の狂気じみたガッツの姿に息を呑んだ。

 

「ぼさっとすんな! てめえも戦いやがれ!」

「わ、わかってるわよ!」

 

 ガッツの一言で、アヴェンジャーは我に戻り戦いに参加した。

 アヴェンジャーとて、贋作といえど英霊の端くれ。サーヴァントとして召喚された彼女にとって、骸骨など恐れる存在ではなく、剣や旗で薙ぎ払っていく。

 

「喰らえ!」

 

 斬っても斬っても減らない圧倒的な数に、アヴェンジャーは痺れを切らし、手を振りかざして骸骨達を炎で燃やす。

 

 アヴェンジャーの炎によって次々と燃えだし、骸骨達はなす術もなく燃え尽きてゆく。

 

 武装した骸骨達もそれなりの戦闘力を持ってはいたが、常に戦い続けてきたガッツにとっては、それほど脅威ではなかった。それは勿論アヴェンジャーも同様だ。

 

「──終わりましたよ、マスター」

「おう。こっちも片付いた」

 

 最後の骸骨を燃やしたアヴェンジャーがガッツと合流する。骨の山となった辺りを見渡し、へえと感心した。

 

「やるじゃない。その馬鹿デカイ剣は見掛け倒しではないみたいね」

「当たり前だ。魔術を使うよりも大剣(コッチ)を振り回す方が性に合ってるんでな」

「……どこの脳筋よ」

 

 ガッツの使える魔術は強化と治癒。自身の身体に関する魔術をガッツは最も得意としており、他の魔術は殆ど習得していない。他の攻撃の魔術よりも彼の持つ大剣『ドラゴンころし』と鎧『狂戦士の甲冑』で戦った方が遥かに彼の戦闘スタイルに合っているからだ。

 事実、彼のドラゴンころしならば、そこら辺の魔術師は一撃で葬り去ることができる。

 

 魔術で身体を強化し、傷を治癒する。彼にとってはそれだけでも十分ありがたい効果である。

 

 下手な魔術を覚えるよりも、『強化』と『治癒』の精度をより高めた方が役に立つし、シンプルでわかりやすい。

 

「それよりも、呪いって何のことよ。アナタ、いつも骸骨に追われているのですか?」

「んなわけあるか。今日は偶然骸骨だっただけだ。どっかの馬鹿が呪いをつけたせいで、悪霊やらグールやらに襲われるハメになっちまったのさ」

「それはなんとまあ、ご愁傷さま。なら、神にでも祈ったら? 貴方が神を信じるのなら救ってくれるかもしれませんよ?」

 

 アヴェンジャーの素性を知っているガッツからすれば、彼女が本気でそう思っていないことぐらい容易に分かる。

 そもそも、ガッツは神に祈ろうとは思っておらず、その存在を善いとは思っていない。むしろ、自分をこんな目に合わせた悪しき存在として憎んでおり、そんな存在に祈りを捧げるなどもってのほかである。

 

「悪いが、奇跡だのなんだの既に聞き飽きたんでな。救いなぞ求めていない」

 

 ガッツはたちまち嘆息を洩らし、テントの中へ入っていく。中には寝袋と道具が置いてある程度で味気ないものであるが、テントということを考えれば当然ではある。

 いつもの事だ、と自分に言い聞かせるが、やはりホテルに止まりたかったな、という思いもあった。

 

「一先ず仮眠とるから、周辺の警戒は任せたぞ。敵サーヴァントが来るとは思ってねえが、何が起こるか分からねえからな」

「そうね。また奴らみたいのが現れたら、尻に火をつけてでもして知らせてあげるわ」

 

 ガッツはたちまち呆れた表情を浮かべた。とんでもないことを言っているが、ガッツは聞かなかったことにした。

 

「冗談。冗談ですよ、ッフフフフ」

 

 ガッツの反応を楽しみ、笑いながらアヴェンジャーは霊体化して姿を消した。

 アヴェンジャーの姿はなく、辺りは静まりかえっており、先程までの戦闘が嘘のようだ。

 

「はぁ。俺なんかにまともな英霊なんて召喚できる訳ねーか」

 

 一人呟き、自分のようなおかしな存在には、真っ当な英霊なんて無理だな、と自嘲した。

 それ以上考えるのはネガティブすぎると自重し、寝袋で朝まで泥のように眠った。

 

 

 

 

 

 




お気に入りが100を越えててびっくりです。
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