side真月
俺が七皇を探す為に路地裏から出て街を彷徨う事はや2時間、俺は危機に瀕していた。
真月「腹減った・・・」
おかしい、今までここまで腹が減ったと感じた事はない。俺が真月零として遊馬達と行動してた時は、確かに食事を必要としていた。だがそれはあいつのクラスメイトとして振る舞う為に必要だっただけで、あいつらが居ない時は食事をとっていない。
そもそもバリアンに食事は基本必要無い、アリトやギラグは単に食べたかっただけ、メラグやナッシュは人間として生きて来たから食事をとるのが普通だったからで、バリアン体の俺らは食事をとらずとも活動出来る。そもそもバリアン体の俺らは口が無い。よって俺に腹が減るという人間に近い機能が有ったとしても、倒れそうになる程減りはしない筈だ。
しかし現に俺は倒れかかっている。この事実から考えるに、俺の体に縮んだ以外の異常があるようだ。
真月「それにしても流石にキツすぎやしねぇか・・・?」
俺が起きたのはつい2時間前、いくら腹が減るといっても2時間歩き回っただけで倒れそうになるのは変だ。太っていた鉄男の奴でも2時間動いただけでぶっ倒れたりはしなかった筈だ、もしかして俺は目が覚めた時間のよりずっと前からあそこで倒れてたのか?
真月「いや、考えるのは後だ。それよりも問題は・・・」
食料を手に入れるアテが無いという点だ。さっき持ち物を調べた時から気付いてはいたが、今俺は一文無しだ。それどころか身分を証明するものさえ無い。これでは何も手に入れる事が出来ない。水は公園の蛇口捻れば出てくるが、飯は捻っても出てこない。最悪店から盗んでくるという手もあるが、空腹で力が出ない今の状態では恐らく失敗するだろう。ここが何処かは知らないが、ハートランドと同じように警察機関は存在する筈、下手にやらかしてとっ捕まって素性聞かれてもまずい。
真月「コレ・・・詰んでねぇか?」
食べ物を買う金もない、盗みを働く体力もない、自分が何者かを証明するものもない、何か行動起こすにしても無いものが多過ぎる。これじゃあどうしようもない。
真月「・・・!?」
視界が歪み始めた。その場に立っているだけなのに辺りがクルクルと回りだし、足が体を支えられなくなる。なんとか意識を繋ごうとするが、意思に反して体は前のめりになり、瞼が落ちてくる。
真月「・・・クソが」
そう悪態をついたのを最後に、俺の意識は闇に落ちた。
side???
???「確かこの辺りだった筈・・・」
先程調べた情報を頼りに、街を歩いていく。
反応はこの辺で止まっているので、もうそろそろ見つかると思うけれど・・・
???「アレかな?」
道端で倒れている小さな少年。多分この子だろう。
???「よっと、軽いなぁ」
同じくらいの妹よりずっと軽い。まともな生活を送れていないのだろうか?
???「まーあどうでもいいか。私はコイツが何者か知りたいだだしー」
少年を米俵のように担ぎ上げた少年の顔を見ながら、私はそう呟いた。
side真月
真月「ううっ・・・、此処は?」
目を覚ましたら知らない天井があった。
どうやら何者かに運ばれたらしい。とりあえず辺りを見渡してみると、よく分からない機材やらカップ麺のゴミやらが散乱していた。
どうやら此処を使っている人間はだらしない性格のようだ。見た所人は居ない、離れるなら今だろう。そうに思い立ち上がろうとした所、何やらジャラジャラという音が足下から聞こえてきた。
真月「・・・マジか」
確認した結果、俺の足が手錠で柱にくくりつけられているのが分かった。これでは逃走は絶望的だ。
真月「空腹でぶっ倒れたガキを手錠でくくりつけて監禁とか、一体どんなイカれ野郎だよ犯人は・・・」
そう悪態をついたすぐ後に、何者かが近づいてくる気配がした。
???「イカれ野郎とか失礼だなお前、あのまま放置されて死ぬより百倍マシだろ。もう少し束さんに感謝しろよ」
そう言ってウサ耳をつけた珍妙な格好の女が俺の所に近づいて来た。
真月「お前は誰だ?」
俺の問いかけに、女はため息を吐きながら答えた。
束「年上には敬語を使えよクソガキ、さっき束さんって言ったよな私。数秒前の会話も思い出せないのか?」
真月「生憎、俺の周りに敬語を使いたいような年上が居なくてね、そこは勘弁してくれや‘‘束さん’’?」
束「チッ!いちいちムカつくガキだなお前・・・!まぁ良い、名乗ってやるよ。私は『篠ノ之束』、天才科学者だよ。さぁ名乗ってやったんだからお前も名乗れよ」
俺の物言いに腹が立ったらしく、舌打ちをしながらその女は答えた。
真月「随分と乱暴な自己紹介だなオイ。俺は真月零、家無し金無し戸籍無しの三重苦揃っちまったクソガキだよ」
束「どうしようもないね、束さんが拾わなきゃ絶対死んでただろお前。逆によく今まで生きてこれたね」
真月「まあそうだな。その点じゃあお前は俺の命の恩人って事になるな」
束「恩人だと思うなら少しはそれらしい態度を取れよ・・・。まぁそこは言っても無駄だろうから言わないけどさ、お前今束さんの事恩人だっていったな?」
俺とのやりとりがストレスに感じるらしく、束は少し疲れた顔をしながら俺にそう言った。
真月「言ったな。それがどうかしたかよ?」
束「恩人って事は多少なりとも恩義を感じてるんだよね?ならお前に聞きたい事があるんだけど」
真月「見返りを求めた時点で善行にはマイナス修正がかかるもんだぜ?別に構わねぇけどよ。それで?天才科学者様は俺みたいなガキに何を聞きたいんですかい?」
束「なんでそう人を腹立たせる言動を取るかなお前。別に大した事じゃないよ、お前が何処の誰なのか知りたいだけだよ」
真月「あぁ?そんな事聞くためにわざわざ俺を監禁したのかお前。俺の事知って何になるんだよ?」
束は俺の言葉にイラついた様子を見せたが、直ぐに落ち着いた態度を見せた。
束「お前が突然この街に現れたからだよ。束さんはこの街の人間の事は皆頭に入ってる。どういう経歴なのかも知る事が出来る。なのにお前については全く分からない。何処から来たのかも、どんな人間かも、まるで分からない。こんな事は今まで無かったんだ。だから聞くんだ、お前が何者で、どんな人間なのかをね」
真月「ちょっと待て。この街の人の事は何だって分かるとか言ったなお前。そりゃ何でだ?」
俺の質問に束は少し不機嫌そうな顔をした。
束「言うだけ無駄だよ。多分信じないだろうし」
束の言葉を聞いた限り、結構非現実的な方法らしい。
真月「とりあえず話してみろよ、信じるか信じないかは俺が決める事だ」
俺の言葉を聞いて、束はため息を吐きながら話し始めた。
束「束さんはね、小さい頃から本に囲まれて育ったの」
次回予告
アリト「束の一言に戸惑うベクター。イマイチ理解出来ていないベクターに束は自分の力について話していく」
次回、インフィニットバリアンズ
ep.3 束の能力
アリト「そういやナッシュ、俺の出番はまだか?」
ナッシュ「何故俺に聞く!?」