side真月
束「束さんはね、小さい頃から本に囲まれて育ったの」
真月「・・・・は?」
束の口から飛び出した言葉に思わず間抜けな声を上げる。
いきなり何を言ってんだコイツ?
真月「お前が読者好きなのは分かった、でもそれこのタイミングで言う事じゃあ無いだろ?」
束「人の話は最後まで聞けよ。とにかく束さんの周りには沢山の本が有って、目を閉じれば何だって調べる事が出来たんだ」
やはり話が繋がらない。コイツ本気で何を言ってるんだ?
真月「・・・ん?」
おいちょっと待て、今コイツ変な事言わなかったか?
真月「目を閉じればって、目を閉じちまったら何も見えないだろ?どうやって調べるんだよ」
束「・・・ああ、そういえばそこ説明してなかったね。束さんが言ってた本はね、現実にある訳じゃあ無いよ。束さんの頭の中にあるんだ」
真月「頭の中だぁ?そりゃどういう事だよ?」
束「そんなの束さんが一番知りたいよ。物心ついた時から束さんの中には沢山の本が有って、キーワードを入れて本を絞り込めば色々な事を調べる事が出来たんだ。要はアレだよ、頭の中にグー○ル大先生がいるような感じだよ」
真月「いや誰だよグーグ○大先生って。つまり、頭の中にコンピュータがあるみたいな感じか?」
束「○ーグル大先生知らないとかいつの時代の人間だよお前・・・。まぁ理解したならそれでいいよ。お前の疑問の解決が目的だしね」
束の話で大体理解出来た。つまり束は頭の中の本を読んで他人の情報を知る事が出来、情報が無い俺を不思議に思って調べに来たと言う事か。
真月「おかげさまで大体把握した。ところで質問なんだが、お前のその力、出来ない事とかあるのか?」
束「あるよ。まず未来の事は調べられない、未来について書かれた本が無いからね。私の中にある本は、過去から現在に至るまでのページは有るけど、未来のページは白紙の状態で、どうやっても未来については調べられないんだ」
成る程、あくまで今までの記録であって、未来の事が記された予言書の類は無いという事か。
真月「成る程な。他には何かあるのか?」
束「次に、『存在しないもの』は調べられないっていうルールがある。例えば、原始時代の人間が束さんと同じ力があったとしたら、その時代に存在しない車や電車なんかは調べられない。まずキーワードを指定しようがないから、このルールはあまり意味無いけどね」
つまり、その時代に存在しないものはそもそも本として現れないという事だろう。恐らく、束が俺を調べられないのはこのルールが原因である可能性が高い。
真月「どうやって俺を見つけたんだ?今までの話を聞いた感じだと、俺を特定出来たとは思えねぇ。一体どうやって俺がその調べられないやつだって事と、場所を割り出したんだ?」
束「別に難しい事じゃあ無いよ。この街についての本を出して、街にいる人達をマーカーで表す。その後名前が本に載ってる人のマーカーを全部消せば、ハイ終わりだもん」
真月「随分と手間かかってそうだが、まぁ確かに分かりやすいな。で?どうだ、俺の名前は出たか?」
俺がそう聞くと、束は目を閉じた。数分後、束は若干不機嫌そうに目を開けた。
束「無い。お前偽名とか名乗って無いよな?基本的に人の記録なら名前出せば一発でヒットする筈なんだけど全く見つからない、おかしいよお前」
成る程偽名か。確かに『真月零』は偽名だ。当たり前の様に使ってたから忘れていた。
真月「おかしいのは本じゃなくてあくまで俺なのな・・・。分かった、『ベクター』で調べてみてくれ」
俺のその言葉を聞いて束はまた目を閉じた。それから暫くして、束は目を開けた。
束「見つかったよ。それにしてもちょっと信じ難いね、異世界から来たって事」
・・・・そう来たか。
薄々気づいてはいたが、今の束の言葉で確信にかわった。
此処は俺の居た世界じゃない。
最初はハートランドよりも遅れた感じがしてたから、過去にでも飛ばされたのかとでも思ってたのだが、デュエルモンスターズが余りにも普及してない点がそれを否定していたのだ。
俺達デュエリストにとってデュエルは只のカードゲームじゃない。デュエルについてを学校で学び、プロデュエリストなんて職も普通にある。小さいガキからジジイまでデュエルをやっていく奴もいる。つまり、デュエルは人生そのものなのだ。
しかしこの街ではデュエルのデュの字も見かけなかった。幾らハートランドより昔だとしても変だ。
そう考えると、別世界と言われた方がすんなり納得できる。
真月「異世界ねえ、まあ薄々勘付いてはいたが、やっぱ驚きだぜ」
束「驚きなのはお前の過去だよ。とある国の王子やって、死んだと思ったらバリアンとかいう超常生物やってるとか、ラノベじゃないんだよ?」
真月「そこまで分かるのか、凄いなその力」
束「名前さえ分かればこっちのモンって事だね。でさあ、ちょっと質問があるんだけどさ、束さんのこの力には心当たりない?ホラ、バリアンの力の一つみたいな感じでさ、この力のルーツとか知ってない?」
真月「あるにはある。No.で調べてみろ。俺の事調べたならその単語も見ただろ」
束「No.・・・、ああこれね。なになに・・・、はあ!?」
目を閉じて少し経ってから、束は素っ頓狂な声を上げた。
真月「どうした、何かあったのか?」
束「どうしたもこうしたも無いよ!何だよコレ!?何だよヌメロンコードって!カード一枚から宇宙が生まれたとか誰が信じるんだよ!?あとアストラルって誰!?何だよドン・サウザンドとの戦いって!ドローでビッグバンが起こるカードゲームがあってたまるか!ツッコミ所が多過ぎなんだよ!」
どうやら束にはよく理解出来なかったようだ。まぁ無理は無い、同じ立場なら俺もそうなる。
真月「まぁ落ち着け。重要なのは其処じゃない。No.が一番のポイントだ」
束「アレが重要じゃないってどう言う事さ?」
真月「No.は持ち主に取り憑き、持ち主の欲望を増幅させて暴走させる。代わりに持ち主は人智を超えた力を得る」
束「人智を超えた力ねぇ・・・?例えばどんなの?」
真月「俺が知ってる奴だと、恐ろしく運が良くなるやつだな。周りの運を吸い取って、持ち主に絶対的な幸運を与えるっつー品物だ」
束「周りの運を吸い取るって、随分とエゲツないねソレ。それで、それと束さんに何の関係があるの?」
真月「お前のその力も、恐らくはNo.によるものだ」
束「マジで?束さんの中に見知らぬ人の記憶の断片があるとか嫌なんだけど」
真月「大マジだ。詳しく調べなきゃ分からんがな。さあ、もう結構話したろ、いい加減俺を解放しやがれ!」
束「嫌だね。まだお前については知りたい事が沢山あるんだ。全部調べるまでは出さないよ」
真月「ふざけんな!拉致監禁した挙句に人体解剖とか洒落にならねぇよ!他の人間に見つかったら即逮捕だぞ!」
束「大丈夫大丈夫、此処は束さん家の敷地内だし、此処は束さん専用の秘密の研究室だからね。誰かにバレるなんて事万に一つも「ここに居たのか姉さん!」・・・へ?」
束の言葉を遮るように現れたのは、今の俺と同じくらいの少女だった。
束「ほ、箒ちゃん?何で此処に!?」
箒「姉さんが夕食の時間になっても来ないからでしょう。ほら、早く行きます・・・よ?」
少女はその時になって初めて俺の存在に気がついたらしく、手錠で柱に括り付けられた俺を凝視している。
束「あの、その、ね、ねぇ箒ちゃん?これは、その、違うんだよ?別に何も悪い事はしてないからね?本当だよ?」
先程までの態度が嘘のように狼狽する束の言葉は聞こえてないらしく、少女は暫くの間フリーズし、やがて真っ青な顔で叫び出した。
箒「ね、ね、姉さんが人攫いをしたあぁぁぁぁ!?」
束「だから違うんだってばあぁぁぁぁ!?」
狭い部屋の中で、二人の少女の叫び声が轟いた。
次回予告
ミザエル「突如現れた箒という少女によって間一髪助かったベクター。彼女によって連れてこられた篠ノ之家で、ベクターの運命に大きな変化が訪れる」
「ならば、うちに住めばいい」
ミザエル「箒のこの一言に戸惑うベクター。奴に待ち受ける運命一体何か」
次回、インフィニットバリアンズ
ep.4 篠ノ之家
ミザエル「そんな事より私とタキオンドラゴンの出番はまだなのかナッシュ!」
ナッシュ「俺に聞くな!」