冬木の厄災。
瓦礫に埋もれる小さな身体。
俺は衛宮士郎に転生した。
衛宮切嗣に助けられ、育てられ、その意思を受け継いだ。
時は熟し、正義の味方という理想を胸に抱えながら学生生活を送る。
転生した俺は本場の衛宮士郎と違い、無謀な鍛錬はしなかった。
その代わり、予備知識として存在する投影に精を出した。
青タイツの男に槍を刺されて死んだ。
次に目を覚ました時、俺は瓦礫の下に埋もれていた。
何度も殺された。
友人に殺された。
杖にされた。
忠誠を誓ったはずのサーヴァントに殺された。
殺され続ける内に精神が摩耗し、繰り返される螺旋に飽きを感じなくなった。
そして、俺はセイバーと勝ち抜き、繰り返された螺旋から解放された。
その後、高飛びするように冬木の土地を去った。
自分が信じた理想を体現し、仲間と信じた者たちに裏切られ、生涯に幕を閉じた。
そして、俺は再び瓦礫の下で目を覚ました。
アーチャーと戦った。
二人の少女を救った。
それでも、俺の転生が留まることはなかった。
何度目の転生だろう。
見慣れた瓦礫の下で目を覚ました俺は1つの違和感に気づいた。
鞘がなくなっていた。
切嗣は助けてくれたが、俺の知る世界ではなくなっていた。
転生には知識と記憶しか持ち込めないが、黄金の聖剣やその鞘を始めとするアーチャーのエミヤやギルガメッシュ戦で蓄えられた経験は無限の剣製で生きている。
魔術回路の数も少なく、凛の補助なしには満足に固有結界も展開できない。
ミユを見つけたが、転生したての頃なら兎も角、数々の修羅場を潜った今の俺にはミユが世界を救うための道具にしか見えない。
その扱いは切嗣以上に冷徹なものだっただろう。
それでも、彼女は文句一つ言わず、俺に尽くし、いつか俺の手によって殺されると気づいていながら抵抗しなかった。
学校でも不可思議な少年を見つけた。
ジュリアン。
奴は間違いなく魔術師だ。
切嗣に言われた通り、ミユを屋敷から連れ出すことは自殺行為に等しい。
美遊が屋敷を逃げ出した。
家に帰ってすぐに気づいた俺は駆け足で探すが見つからず、その明くる日からジュリアンが登校することはなかった。
ジュリアンに回収されたのだとすぐに気づいた俺はあらかた目星をつけていた被災のクレーターに
ジュリアンに捕まった俺は魔術も使えなくされていたが問題ない。
世界は救えなかったが、何も救えなかった俺が最後に大切な人を救った。
いや、俺の中では既に大切な人ではなかったのかもしれない。
美遊が捕まった時点でジュリアンの目的はどうあれ、俺が美遊を使って世界を救うことはできなくなった。
誰も救えなかった俺が最後に偽善を振りまいてこの世を去る。
小さな独房で笑いながら舌を噛み切った。
そして俺は繰り返す。
次の世界では失敗しない。
美遊を犠牲にしてでも世界を救う。
そう胸に誓って。
そしてプリヤへ