からくりパレェド ~エクストラキャストは躍り狂う~   作:紙ブクロ

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ぶかぶかどんどん! ぶかぶかどんどん!

レディス & ジェントルマン!
さぁさ皆様、今宵ここでお送りしますのは、かの超大作!
あのアクション浪漫大活劇‼

ご存知の方もおられるでしょう。
しかし、
ただ普通に開演するのでは少々此の場では面白くない!
そこで少々我等なりの『味付け』を少し。

おきに召すかどうかは皆様次第!

さぁさそれでは、

開演でございます!


たいがとしろがね出逢うの縁

 …ゲームとかでよく選択肢を選ぶようなのあるよな。

 選ぶ選択肢によって話の筋が変わる奴。

 例えば、

 

・貴方は人前でう〇こを拾いますか?

⇒yes 素手でいきます

⇒no アホか

 

 て、簡単なのを続けていくとさ、時々とんでもない話に跳ぶんだよ。

 最近オレ、望月 大河(もちづき たいが)に起こった出来事がまさしくそれだ。

 

 最初は普通の日常だったはずなんだ。

 いつからこんなに大事になったのか…。

 

 アン? 

 いきなり何の話だって?

 確かにな、実はオレもよくは分かってねぇんだ。

 ま、聞いてくれよ。いったいどうしてこんなことになったのかを。

 事の始まりは…

 

 

 

==============

 

「大河! 何時まで寝とる! そろそろ起きんかバカタレ!!」

 

 いつもの朝、いつもの時間にいつもの怒号が響く。外はよく晴れて太陽の光がすがすがしい。

 

「んん~~、朝から無駄にうるせえなぁクソ親父がぁ」

 

 のそりと布団からはい出し、重い瞼を擦りながら起き上がる。短く揃えた黒髪をガシガシと掻きながら二階の自分の部屋から階段へ降りると、ベーコンと卵が焼ける匂いが鼻をくすぐり、食欲が睡眠欲を少しばかり押さえつける。

 リビングに入るとテーブルにはもう食器とおかずが二人分並べてある。この家には大河と父の紫朗(しろう)以外には生活していなかった。

「サッサとそのアホ面洗ってパパの愛情たっぷりの朝ごはんを食べなさい。でないと高校遅刻するぞ!」

「へぇへぇ、今やるとこですよ」

「返事はハイだ!」

「は~~~~~~いっと!(朝からウゼェッ!!)」

 父と息子二人だけ、親としては寂しい思いをさせんとしてなのか紫朗のテンションは基本常時高めである。幼い頃ならよかったが高校に入り、お年頃となった今では甚だ迷惑極まりない。

「最近はどうだ? 学校ではちゃんとやっとるか、お前も来年は受験生なんだからもう少し落ち着かんとなぁ」

「わ~ってるっつの! 耳にタコ出来るっての、その話!」

「パパの若い頃なんてなぁ、そりゃ~~~~もう」

「だあってメシ喰えっての。このクソ親父!」

「親に向かってクソとはなんだクソとは!? パパのことは、パパと呼びなさい!!」

「死んでもヤダね! クソジジー!!」

「貴様ァ‼ パパをクソ呼ばわりとはなんだ!? おしおきしてくれるわ!!」

 そういうやいなやどこからか得体のしれない装置を取り出してくる。

「昨今の婦女への暴行事件の多さに憂い、パパが開発したこの暴漢撃退グッズ『シビレル君』の威力、貴様で試してくれるわッ!!」

「!? 手ン前、クソ親父! またくだらねえガラクタ作りやがったな!」

 紫朗はフリーのエンジニアである。相当腕が良いらしく大手の企業から指導や技術提供をしているらしい。のだが、時々こうして発明と称しわけのわからないものを作る悪癖がある。

「バカモン! 発明といいなさい! それ、発射‼」

「ぎゃあああああ!? ちっくしょおおおお!!」

 

 ドタンバタン!と家の外まで響くいつものやり取りである。

「あら、また望月さんとこ。いつも元気ですねぇ」

「ええ、これを聞くと1日が始まった気がしますよ」

こんなものでも毎日やればご近所の名物になっているのだから大したものだ。

 

 騒がしい朝食を終え、大海が玄関へ向かう途中、

「大河、これを。今朝届いていた」

 そういって、一つの便箋を渡す。

「兄さんからか!? サンキュ! 休み時間に読むぜ」

 渡されたのは海外にいる年の離れた兄からの手紙である。優秀な医者であり、感染病の研究者、その手腕を買われアメリカの有名な大学で、ある『奇病』の研究に呼ばれているらしい。大河にとっては自慢の兄である。

「たまにゃ~帰って来ればいいのになぁ。毎日研究研究で飽きんもんかね、なあ、親…父?」

「ん? あ、あぁ、なに心配いらんさ。その内パツキンの嫁さんでも連れてフラッと帰って来るさ。何せ私に似てハンサムだからなぁ流河(りゅうが)は」

「いってろ、じゃあな!」

 

 道中、先程の紫朗の様子を思い返す。兄の話をしていると、時折父の顔に影が落ちる。何かを隠しているようだが、問い詰めるようなことは出来なかった。何か事情があるのだろう、僅かばかりのデリカシーでもそのぐらいのことは分かった。

「チクショー、面白くねぇナ…」

 一人、呟きながら学校へと歩き出す。

 

 

 

 

~学校・始業前~

 

キーン コーン カーン コーン

 

 始業の鐘が鳴り響く、教室ではそれぞれ友達と語らうもの、自習をするもの、ギリギリまで惰眠を貪るものとそれぞれに一日を始める準備をしていた。

 いつもと変わらぬ普通の日々、なにも変わらずに過ぎていくはずの時間。誰もが教室で平凡な生活をおくろうとしていた。

 

 

「おはよう」

「お前、宿題やった?」

「朝練たりぃ…」

 

 生徒たちの声が廊下まで響いてくる。

 

「わりぃ、借りてたノート忘れた」

「おいおい…」

「ちょっとそこ退いてよ!」

 

「…、ぜひっ…」

 

 一つ、息を絞り出すような、乾いた音が教室にこだまする。

 

「ぜひっ…」

 

 途端に、皆の目がその一角に集まる。

 後ろから二番目、窓際の席。そこに座る女生徒が今、苦悶の表情で己の胸を押さえる。

「ぜひっ…、ぜひっ…、」

 

 呼吸困難、全身を襲う激痛。想像を絶する症状が少女を襲う。あまりの苦しさにもはや人目を気にする余裕もなく、彼女の顔はおそろしく歪んでいく。

 体中から発汗し、顔は涙でグシャグシャになる、肺が上手く機能せずにまるで犬のように舌を出してぜひぜひと呻く。苦渋で歪んだ顔は引きつり、苦しそうなのにどこか嗤っているようにも見えてしまう。

「おい…、久々に来たぞ…」

「ど、どうする?」

 

「他者の副交感神経系優位状態認識における生理機能影響症(Z.O.N.A.P.H.A. Syndrome)」

 

 通称『ゾナハ病』、それが彼女の侵された病である。

 近年発見され、その発生源、原因、感染経緯、治療法全てが謎に包まれた病気である。

「これまずいんじゃねぇの」

「おい、先生呼んで来い」

 ゾナハ病を直接抑える薬などはないどんな治療薬も気休めにもならない、その症状を抑える手段は現在一つだけである。

「ぜひっ…、ぜひっ…、こ、これ…」

 彼女は喘ぎながらもカバンの中から一本のステッキを出す。

「こ、この、ぜひっ…、ステッキが…い、一瞬で…」

 そういって彼女がステッキを振ると仕掛けが動き造花が飛び出す。

「ほ、ほら…一瞬で、ぜひっ…、花、束にっ…ぜひっ、ぜひっ」

 呼吸困難に陥った人間が手品をやり出す、およそ信じられない光景である。しかしこの病気に限ってはこれこそが正しいやり方なのである。

「な、なあ。誰か『笑って』やれよ」

「む、ムリよ。あんなのじゃ…」

 『笑い』そう、それこそがゾナハ病における特効薬である、なぜかゾナハ病患者は他人の感情に敏感になり、自分以外の人間を副効果神経優位、つまり『笑わせる』ことでしか症状を抑えられないのだ。

 そして彼女も手品でクラスメートを笑わせようとしているのだ。

 しかし、残念ながらそもそも彼女は内気な性格であった。好んで人を避けたことは無いが進んで関わることも今までしてこなかった人物である。

 だのに、何の因果か突然人前にでなければ生きていけぬ病気になった。

 そんな彼女が、症状が出て呼吸困難になっている状況で人を笑わせられるか、否である。

「つ、次は…ぜほっ!」

 次のネタを取り出そうとするが手足がしびれて思うように動かない。とうとう手を滑らせてボールを落としてしまう。

「おい、ヤバいんじゃねえの」

「ちょっと男子どうにかしてよ」

「ふざけんな! 保健委員いるだろ!」

「でもよぉ、もし、もしもよぉ…、アイツに触っちまって、その…、病気がよう…」

 移ったら、そんな言葉を飲み込んで誰もが手を出せずにいる。

 

(…どうして誰も笑ってくれないの? 助けてくれないの? どうして? こんなに苦しいのに、こんなに痛いのに! 嫌だ、嫌だ嫌だ! 死にたくない! 生きたい! 誰か助けて! 誰か、誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か!!)

 

「ぜひっ、ぜひっ、ぜひっ、ぜひっ、ぜひっ、ぜひっ、ぜひっ」

 

「誰かいけよ」

「アタシ嫌よ! アンタが行きなさいよ!」

 頼みの綱のクラスメート達はとうとう醜い擦り付け合いを始める。

 ふざけるな、こんなに苦しんでいるのに誰一人自分に手を伸ばさないのか。それならばいっそのことこの姿を嘲笑えばいいのにそれならばまだ役にたつというものだ。

 

(ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょ…)

 

「ひっでえ顔してんなあ。藤木サン」

 

 頭の上から声がかかる。顔を上げると男子生徒がかがんでこちらをのぞき込んでいた。

「ぜひっ…、望月、く…」

 声を絞り出して相手の名前を呼ぼうとするがうまく言い切ることができない。その顔は知っている。隣のクラスの男子生徒、望月 大河。心配そうにのぞき込みながらも彼女に向けて優しく微笑んでいる。

「ダメだぜ、人を笑わせる時にゃな。先ず自分が笑わなけりゃよ」

 ほら、こんな風に、と言いながら自分の口の端を手で挟んでミョイ~~~ンと引っ張り上げる。

「?」

「なに? これじゃダメか? じゃあこれならどうだ!」

 そういって次々に変顔を繰り出す大牙。仕舞いには鉛筆を鼻に突っ込んで変なポーズをとりだした。その突然の光景に教室にいる全員が唖然としている。

「よ~し分かったそれならとっておきのォォォ!!」

「お、おい」

「あん?」

 見かねた一人が側に近寄る。

「そんなことできるならお前がどっか連れ…」

「うるっせえええええええ!!!! 他人面してんじゃねえぞ! オラお前も面貸せ!!」

「う、うわ!? なにすんだ止め…」

 男子学生に跳びかかりなにをするかと思えば顔にペンで落書きをしていく。

「どうだ!? これなんか傑作だろう!」

 そういって羽交い絞めにした生徒の顔を彼女に向ける。いったいこいつはなにをしたいのだろう?

「くそう、これでもダメか。それじゃあ…」

 ニタリ…、と他の生徒に向かって凶悪な笑顔を向ける。

「お前ら全員に手伝ってもらおっかな~~!」

 

「「「「「は?」」」」」

 

「これより、全生徒顔面顔芸大会じゃああああああぁっ!!!!!」

 

「「「「「なんじゃそりゃああああああ!!!!!」」」」」

 

 地獄が始まった。目についた生徒を捕まえて片っ端から顔に落書きをしていく。

「ふざけんなお前これ油性じゃねえか!」

「じゃかあしい、黙ってオレに顔面差し出せや!」

「きゃああああ!? ちょっと女子もなの!」

「男女平等じゃボケナス! せっかく素で面白い顔してんだから有効活用させろや!!」

「なんだとこの野郎!!?」

 

 酷い有り様である。さっきまで黙って自分を囲んでいた者たちが今は蜂の子を散らすように逃げている。そのどれもが皆酷い顔である。すると、

 

「おい、なんだここのクラス!? 凄えことになってるぞ!」

「アッハハハハハ! ちょっとあれみてよ、みんななんて顔しるの!?」

 

 騒ぎを聞きつけた他クラスの生徒が窓からその様子を鑑賞している。外から見ればそれはなんとも滑稽な映像であった。

 

(笑ってる。私たちを見て、笑ってくれてる)

 

 そう認識した瞬間、彼女の身体がいっきに苦しみから解放されていく。息ができる! もう痛くない! もう苦しくない!

 

「お、ようやく笑ったなあ」

 

 ふと見ると、この騒ぎを起こした犯人である大河がこちらを見て微笑んでいた。

「そうそう、そうやって笑ってるほうがずっといいぜ!」

 眩しいくらいの、暖かな笑顔。それが彼女に向けられている。そうだ、お礼を言わねば。

「あ、あの…」

「こら~~~~~!!! いったいなにをしとるか!!!!」

 言い終わる前に教員の怒声が飛んでくる。

「やべえ!? 逃げ遅れた!」

「大河お前か!? このバカタレが!! 職員室でみっちりしごいてやる!」

「あだ!? センセ、痛い! 耳が伸びる!?」

 今、礼を言わねば行ってしまう。

「待ってください!」

「「ん?」」

「ありがとう! 貴方のお蔭で助かりました!」

「…いいさ」

 そう彼女に返すと今度はクラスに向けて鋭い目線を投げる。

「…ゾナハ病は人から人へ感染する病気じゃねぇ。お前らもそう説明されたよな」

「で、でもよう…、まだ全然解明されてないんだろう? なら…」

「ありえねぇ」

 あまりの断言に質問した生徒はイラつく。

「なんでそう言い切れるんだよ! お前は!」

「言い切れるんだよ」

「な!?」

「オレの兄貴は、ゾナハ病の研究者だ」

 そう言い残して、教室を出た。

 

 

~職員室~

 

「まあ今回は、人命が係ってたってことで多めに見るが、あんまり無茶はするなよ」

「はい! すみませんでしたぁ! 以後、気を付けまっす!」

「ホントにわかっとンのかね」

「なんだ、望月またなにかやったのか?」

 隣から担任の声が聞こえてそちらを向く。

「えへへ、先生すんません」

「すんませんじゃなかろうが」

 こつん、と下げた頭を学級日誌で小突かれる。頭を掻きつつ上げると先生の後ろに誰か控えていた。

「あぁ、一足早く留学生紹介しとくか。ほれ、才賀」

「はい」

 呼ばれた相手が前へ進み出る。

 相手の姿を見た途端、思はず息を飲んだ。

 

 

「初めまして、才賀 しろがねと申します」

 

 

 まるで幻のように美しい女性がそこにはいた。

 

 

 透き通るような白い肌、芸術品のように完璧な配置で形づくられた顔貌、手足はすらりと長く、指先はまるで繊細なガラス細工のようにか細い。制服の上からでも胸、腰、臀部と彼女のプロポーションの良さがうかがえる。

 しかし、その中で特に目を引いたのは、

 

(銀、色だ…)

 

彼女の短く首までで整えられた髪の毛の一本一本、生え際から毛先まで、その全てが銀色に輝き、こちらを見据えている両眼も銀色の光を帯びていた。聖銀のように輝くそれに思わず目を奪われる。

「? どうかしました?」

「へ? あ、いやごめん! つ、つい」

「はは、そりゃ思わず見惚れちまうよなぁ」

「センセ、やめてくれよ」

 意地悪く嗤う担任。

「才賀。こいつはお前と同じクラスだ。少々喧しいが扱いを心得ていれば人畜無害だ。仲良くしてやってくれ」

「もっとマシな紹介出来ません!?」

「呼び出し食らっとる奴がなにいっとる」

 さすが担任、痛いところをついてくる。当のしろがねはポカンとしながらこっちを見てくる。

「あ~、えっと。オレは望月 大河ってんだ。よろしくな。クラスでわかんないことあったらなんでも聞いてくれ。力になるよ」

「勉学以外ならな」

「センセ、オレのこと嫌い?」

「覚えました、タイガ、この度は宜しくお願いいたします」

「あ、頭上げてくれよぅ」

 スッと頭を下げるしろがね。普通の動作のはすだが彼女がやるとなんとも絵になるから不思議である。

「じゃあ、私たちは教室にいってるからな」

「では、また…」

 そう言って背中をみせるしろがね、先生の後ろに隠れて気づかなかったが見ればかなり大きなトランクケースを引っ張て来ていたようだ。一体何が入っているのだろうか? いくら投稿初日でいろいろと物が入用といっても少しばかり大きすぎるようにみえる。それに、大河達の教室は三階である。重い荷物をもっての道中は女子には少々酷に思える。

「あー、才賀サン、良かったら荷物運ぼうか?」

 銀色の目がこちらに向けられる。それだけで内心ドキリとする。大河とて男の子である。美しい少女と目線を合わせるのはこの年頃の青年には刺激が強い。

「い、いや、重そうだな~と思ってよ」

Merci(メルシイ)、ありがとうございます。しかし、これは私にとってとても大切なものなので、どうしても他人に任せる訳にはいかないのです」

「そ、そうか。ごめんな、呼び止めちまって。階段気ぃつけてな」

 はい、と頷いて担任とともに部屋を出ていく。

「ミョーなタイミングでの留学生ッスね」

「まあな、急な話しだったみたいだがあれだけ話せるならすぐクラスに馴染むだろう」

「そっスネ。じゃあオレも朝礼遅れるんで…」

「お前はまだダメだ」

「チキショー」

 まだまだお説教は続く…。

 

 

 

 

 

~校舎裏~

 

 数分後、

「はあ、長かったぜ」

 何とか授業開始を言い訳に説教から解放されたが、どうもそのまま教室に戻る気分でもなかった。そこで教師に見つからぬよう裏の死角になる場所に潜む。今は丁度ホームルーム中であろう。確か今日の一時間目は日本史だ。担当教師は生徒に甘めなので多少遅刻しようと顔を出せば問題あるまい。

 そう思ってコンクリの段差に腰をかけ、大きく深呼吸をしようと上をむいたその時、

 

    ズゥンッ!!

 

 と目の前に何かが落下してきた。

「!!? な、なんだぁっ!!?」

 

 バッと上を向く、そこで大河が目にしたものは、

 

    フワッ

 

 人が落下してくるところだった。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉおおぉおお!!? 危ねええぇぇ!!!」

 

 とっさで起き上がり受け止める体制に入る。すると相手もそれに気づいたのか空中で身を捻り受け止められ易い体勢をつくる。

 ドスンッとその両腕で抱きかかえたそれを見てさらに驚く。さきほど職員室であったあの銀色の留学生だ。

(りゅ、留学生が空から降ってきた!?)

あまりのことに固まってしまった大河の顔を銀色の両眼が見つめる。お互いの視線が合わさる。

(凄ぇな、良く見りゃ髪どころか眉毛やまつ毛の一本一本まで銀色だ…)

「あの…」

「へ?」

 驚き過ぎてあらぬ方向に向かった思考をしろがねの声が引きもどす。

「すみません。下ろして頂けますか?」

「あ、あぁ! ごめんよ、今下す!」

 腰を屈めると彼女はトンッと跳ねるように降りて所々よれた服装を正す。最初の落下物を見るとそれは彼女が引いていたトランクケースである。

(危ねぇところだった、一歩ズレてたら直撃ダゼ!?)

 当の彼女はパタパタと埃を掃い、服装を正すと改めてこちらに身を向けてきた。

「申し訳ありません。着地地点の確認を怠り、貴方の手を煩わせてしまいました」

「は? 着地だって?」

 とっさに上を見上げると三階の窓が開いてカーテンが揺れているのが見える。そこは丁度大河達の教室の窓である。

「おい、まさかあそこからって…、ちょっとぉぉ!?」

 目線を戻せば先程の場所にしろがねは居らず気づくといつの間にか学校の外壁を越えて向こう側に飛び降りようとしていた。あんな大きなケースを持ってどう上ったというのか?

「申し訳ありません、先を急ぎますので」

 そう言って壁の外へ消えていく。しばし、ボーゼンとする大河。

「…ずいぶんと変な転校生が来たもんだゼ」

 さて、どうするかこのまま教室へ戻るか、それともサボりを続けるか選ばなければならない。

 しかし、選んだのはそのどちらでも無かった。

 あの転校生、しろがねはこれまでの生活で見たこともない。この数分だけでも強烈なインパクトを残してくれた。

 早い話が、見ていて面白いのである。

「この向こうは隣接の小学校か…」

 そう呟くと壁から数メートル分離れ足に力を籠める。

「お次は何を見せてくれるのかねっと!!」

 バンッと弾かれるように走り出すとその勢いで壁を駆け上る。

 

 思えばこれが、最初の選択であったのかもしれない。この日を境に、この青年はこの世界に隠された巨大なからくり装置に巻き込まれる。

 その運命も、己の配役もまだ知らぬままに。

 

 

・しろがねの後を追いますか?

⇒yes 追いかける

⇒no 追いかけない

 

 

 

⇒yes 追いかける

 

 

 

 

 

 

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