からくりパレェド ~エクストラキャストは躍り狂う~ 作:紙ブクロ
試験開始・~スプリンガルド~1
ロンドン郊外、夜の暗い街並みを一人の女が歩いていた。
いつもより残業で少し遅くなったものの、いつもの今だ古い景色の残る道を歩く。灯りはほとんどなく、月明かりが道を彼女以外に歩くものはいなかった。
ふと、建物の屋根の上で何かの気配を感じた。見上げてみてもそこには月があるばかりで、他には何もない。
「気のせいかしら…」
器を取り直してまた歩き出す、しかし今度ははっきりと【ナニ】かが目の前の屋根の上から道を挟んで向こう岸の屋根へと飛び移るのを目撃する。
【ソレ】は人のようであった。羽織った外套が風にはためき、頭には舞台衣装のようなシルクハットを被っている。しかし、その手足は異様に長く、おもちゃの人形のようににょろりと胴体から伸びていた。両目は炎に燃えて爛々と輝き、ハッキリとこちらを伺っていると分かった。
「ひっ……」
思わず口から息が漏れる、しかし両足はまるで地面に張り付いたように動かなくなりガタガタと震えだす。
ポン、と【ソレ】が屋根の上で跳ねた。まるで重力など置き去りにしたかのように高々と空へ舞い上がる。そして着地して足を屈め二度目の跳躍の時、まるで弾丸のような速さでもって彼女の前に降り立った。
近くで見ると益々異形の怪物であった。両目だけでなく口からも息をするたびに青白い炎が噴き出していた。
「やあ、お嬢さぁん…。ごきげんよう。今日はいい月夜だ…。散歩をするにはとおぉっても……」
怪物が女に話しかける。まるで地獄から響いてきているようなその声が女の耳から体中を這いまわる。その瞬間生存本能が恐怖を上回り足の自由を取り戻す。はじける様に怪物の脇を潜り駆け出していく。足がもつれこけようとも、命の為這いずりながら立ち上がる。
「……く…、くっくっく…、カカカッ、あきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!!」
その姿に、まるで喜劇の道化でも見かように嗤い弾ける怪物。そしてまたみを屈めたかと思うとビョンっと一跳びで女の頭上を追い越し立ちふさがる。
「レディ、おやすみの時間だ。素敵な子守歌を歌っておくれ…」
「い、いやああああぁぁぁぁぁぁあああ!」
夜のロンドンの闇に、一人の女の悲鳴が轟いた。
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日本、大河が【あしながおじさん】の別荘に来てから暫く時がたったある朝。
『彼の様子はどうかね、クィン?』
「どうもこうもありませんわ、
いつも通りスピーカーの前でクィンが主人に経過報告を述べる。
「このまま彼に暴れられては、ここを管理するメイドが一人も居なくなってしまいますわ」
「「「うぅぅ、しくしくしく」」」
クィンの言葉に傍にいたメイド達がわざとらしい泣き真似をする。
『そうかそれはすまないな。では仕上がりは上々といったところか…』
「えぇ、ただ少々頭脳の方はお粗末なままですが…」
『ハハハ、それもまた彼の長所になりうる。時には複雑な思考よりシンプルな行動が道を切り開くこともあるさ。さて、そろそろ、潮時かな。クィン、彼を呼んできてくれたまえ』
「承知いたしました。旦那様」
主人の言葉にクィンが動き部屋を出る、しばらくすると大河を引き連れて再び戻ってきた。
「あ~、どうもお久しぶりっス」
『あぁ、しばらくぶりだね。どうしたね? 随分大人しいな』
「いやぁここ数週間メシやら訓練やらすっかりお世話んなってるからサ」
そう申し訳なさそうに頭を掻く大河。
『なぁに、気にしなくていい。私は所謂君のパトロンさ』
「ぱと、ナニ?」
「パトロン。つまり後援者、支援する者、という意味です。常識ですわ」
「チッ、わ~るかったな馬鹿でよ」
「あら、自覚があるのでしたらまだ全くの手遅れというわけではありませんのね」
「んだとぉ!」
ケンカ腰で睨む大河の視線を涼しい顔でいなすクィン大河がここで生活するようになってからよく見られるようになった光景である。
『まあまあ、二人とも落ち着きなさい。ところでタイガ君。ここ数日の成長は大したものだ。こちらの用意したメイド達ではもう歯がたたん程にな』
「まあね、でもこのにくったらしいのからはまだ一本取れてねえけどな」
そういって、指でクィンを指す。
『それはそうだ、文字通りクィンは
「へ? あぁ~~、いやぁ~~、人間頑張れば何とかなるもんだなぁ~~! はっはっはっ!」
『儂が教えたんじゃよ~』
大河の横で誰にも見えずとも蒼太郎がアピールする。そもそもコーチがなくとも四六時中彼が憑いて回っているのだから、他の者は邪魔であった。
『ふむ、まあそういうことにしておこう。さて本題に移ろう。この間説明した通り、これより君にはオーディションとして私が提示したミッションを行ってもらう。ここまではよいかね?』
「! おう!」
『ミッションの間はこのクィンを監視役兼護衛役として君につけよう』
「げぇ! コイツついてくんのかよ!? 冗談じゃねぇゼ!」
「私もジョークであったならこの場で笑い転げていましたわ。大変残念です」
『仲が悪いのう…』
またしてもケンカしだす二人を置いて【あしながおじさん】が続ける。
『申し訳ないが必要なことだ。それに紫朗君の為にもオーディションで君を死なせる訳にはいかんのでね』
紫朗の名前が出た瞬間大河の顔が曇る、家を出て以来連絡は取っていなかった、定期的に【あしながおじさん】の方で様子を知らせていることくらいしか聞いていない。
「クソ…、分かったよ。それで、先ずは何をすればいいんだ?」
『それでは、第一の課題だ。タイガ君、君は…』
スピーカーより、その旨が言い渡される。
『【バネ足ジャック】を知っているかね?』
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そのころ、ロンドン郊外。ある路地の一角でサイレンがなり、人だかりが出来ていた。もうすでに警察が野次馬を制し、テープやバリケードで封鎖する。
「退けどえぇ! 道を空けろ!」
その人垣を大柄な一人の男がかきわけていく。その姿をみた警官の一人が男に向かって敬礼する。
「ジェイムズ・ストレイド警部! お待ちしておりました!」
「遺体は!?」
「こちらです、どうぞ!」
ストレイドと呼ばれた男が警官に案内されテープをくぐっていく。そこには、
「こいつは、ひでぇ」
無残に殺された女性の遺体が横たわっていた。胴体を正面から五本の裂創が走っている。女性の顔はおそろしい者でも見たように恐怖の形相で固まっていた。
「この傷跡、同様の犯行が今月でもう4人目です…。一体誰が…」
警官の言葉を聞きながらそっと女性の遺体の横に片足をつける。見開かれた瞼をそっと手で閉じて、呟く。
「
女性の無念を思い拳を握るストレイド。
「すまない、遅くなった」
「遅いぞ、ウォルター! どこで油売ってた!?」
「あぁ、すまない。この騒ぎで道が渋滞していてね。どれ…」
遅れて入ってきた男、ストレイドと。普段バディを組んでいる同僚ウォルター・ボーモンが身を乗り出し遺体を観察する。
「相変わらず酷いな。とても人間業じゃない…」
「市民の間ではロンドンの怪人が蘇ったと噂されています。迷惑な話ですよ」
「切り裂きジャックの復活ってか、冗談じゃねぇ! おい鑑識は!?」
「は、はいこちらです」
警官を伴い鑑識に話しを聞きに行くストレイド。ボーモンはそのばに残り、じっくりと遺体を観察する。
「切り裂きジャック…、か。それとも……」
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「うわ~~~~! すっげぇ! ホントにロンドンに来ちまったんだな!」
『綺麗な建物がいっぱいじゃ~~! それになんだか空気が違う気がするのう!』
ロンドンの街の真ん中、観光客よろしくキョロキョロと周りを見渡す者が二人、と言っても一人は見えないので日本人が一人騒いでいるようにしか見えない。
「あまり騒がないでください見っとも無い。観光で来たわけではありませんのよ」
一緒に見られたくないと大河達から少し離れたところでクィンが苦言を呈す。
「そんなこといてもよぅ! オレジェット機も海外も初めてだからさ!」
「旦那様のお話を聞いておりませんでしたの? これから貴方が探すのは、実際に人を殺した殺人鬼です」
その言葉を聞き、今まで浮かれていた大河の表情が一変して引き締まったものになる。
「今までに三人、いえこちらに来るまでに新たに犠牲者が出て計四人がバネ足ジャックによって殺されています」
「悪かった、気を付けるぜ」
「分かればよろしい。それでは、どういたしますか?」
「どうって、何が?」
首を傾げる大河。
「…はぁ。いいですか? これは貴方のミッションです。どう探すかは貴方が決めること。我々はそれを補佐し、援助するだけです、こちらから行動を指示することはありません」
「チィッ! わ~ってるよ! じゃあその現場に行こうぜ、なんか手掛かり見つかるかも…」
そう言っていこうとした時、うっかり前方不注意により前にいた男とぶつかってしまう。
「おっと…」
「あぁっ! オジサンゴメン!」
その時、その男の手から落としてしまったものを即座に拾い上げて返す。
「いやこちらこそ、写真を見ていたものでね。ぼーっとしていたよ」
栗色の髪のなんとも笑顔の優しい、いかにも英国紳士といった感じの男であった。
「へぇ、大事な写真?」
「あぁ、アルとリッチー。大事な子供たちの写真さ」
そう言ってこちらに見せてくれる。
「そっかぁ、じゃあ猶更落としちまってごめんなさい」
「なに、大丈夫さ。君は、日本人だね、観光かい?」
「あ、あぁ。そんなとこ。オジサンは地元の人?」
「いや、普段はオックスフォードにいるんだがね。少々やり残しの仕事があったようでね、それをすませにきたんだ」
そう言って写真を大事そうに懐にしまう。
「それでは私はこれで、良い旅を」
「あぁ、オジサンも」
そう言って別れ、それぞれの場所へと向かった。
「ところで、場所は分かるのですか?」
「あ!」
「はぁ…、ご案内程度ならこちらの範疇です。ついてきてください」
全く先が思いやられますわ、と誰に聞かせるでもなく呟くクィンであった。
現場に着くと沢山の野次馬が集まっていた。
「エライ人だかりだな」
『それだけ一大事ってことじゃろう』
遠くから眺めている訳にもいかないのでなんとか人込みをかきわけて近くまで行こうと試みる。
「ごめん、よ! ちょっと、通して…、おわあ!」
なんとか合間をくぐって警察のバリケードの前まで来た時、思わず突っ込んで警察の境界線を通り越してしまう。
「いててて、しまったぁ」
直ぐに立ち上がろうとした時、
「コラァ! 何やっている!」
その場にいた警察の中でも一際ガタイの大きな男が大河に詰め寄る。
「うわ!? ごめんなさい!」
「観光客か!? ヨソモンが現場を荒らしてんじゃねえ!」
そう言って大河の首根っこの服の袖を掴む。
「ストレイド、勘弁してやりなよ。躓いて転んできただけさ」
「お前は甘いんだよボーモン!」
「まあまあ、ほらこれ、君の荷物……!?」
ボーモンと呼ばれた男が大河の荷物を拾おうとした時、その中の一つ、長い布袋に目が留まる。
「これは…、ちょっと失敬」
「あぁ!? それは!」
ボーモンが袋の中身を見ようとする。焦って止めようとするがもう遅い、その中には武器として持っていた日本刀【流走】が入っていた。
「貴様!? なんだこれは!」
「ちょっと、お話に来てもらおうかな…」
「あ、アハハハハハ…」
大河のロンドン初日、その始まりは警察に連行という形で始まった。
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「一体どういうことですか主任!?」
ロンドン市警の一室でストレイドが吼える。
「あの小僧を取り調べすることなく釈放するなんて何を考えてるんですか!?」
「行っただろう。上からの指示だ。彼の素性は保証されている。あのブレイドも特権で持ち歩くことが許可されていた」
「そんなでたらめな話しがありますか!」
ドン!と机に拳を打ち付ける、しかしかれの上司はびくともせずそれを無視した。
「とにかくこれは命令だ。さっさと彼を留置場から解放しこの件は忘れて目の前の事件に集中しろ。……あぁ、丁度いい所に」
「私たちの所の者がご迷惑をおかけいたしましたわ」
振り向くとなんともこの場に似つかわしくないメイドの姿の女が立っていた。
「早く連れて出てってくれ。おい、ストレイド!」
「チィッ! こっちだ」
「ありがとうございます」
メイドの女と連れ立って歩く。横目に彼女を観察してみるが、無表情であるという以外なんらわかることがない。
「私の顔に何かついていますか?」
「!? 別に…。ただ上の奴らを動かせるなんて一体何者かと思ってるだけさ」
「私たちは害ある者ではありません。ただ、色々と各所にパイプがあるだけですわ」
「へ! そうかよ、オラ着いたぜ」
離している内に。留置場の檻の前に着く。大河様、とクィンが名前を呼ぶと、
「おっぜぇんだびょぅおぅ、ぐいんんんんん!!」
と奥から涙と鼻水まみれの大河が近寄ってきた。このまま放っておこうかと一瞬魔がさすが、取り合えず出すことにする。
留置所から離れ、大河が落ち着いたころに。
「で、で結局お前らは何しにロンドンに来たんだ」
「あら、大人しく上司に従ったわけではないのですね」
「それとこれとは別だ! たとえ上が何と言おうと事と次第によちゃあお前らをしょっ引くぜ!」
と、ストレイドが睨みを利かす。
「俺たちは、【バネ足ジャック】をやっつけに来たんだ。これ以上無差別に殺人なんてやらせるかよ!」
「な、何だとォ!?」
ストレイドにとっては信じられない話だった。しかし目の前の青年は真っ直ぐにストレイドを見つめてくる。
「それは、オレ達警察の役目だ! 素人が首突っ込むんじゃねぇ!」
「ダメなんだよ! そいつは普通の人間じゃねぇんだ! いや、人間ですらないかもしれない。相手できるのはクィンと、オレの持つこの【流走】だけだ!」
「ふざけるな! 【切り裂きジャック】やその【バネ足ジャック】なんぞはヴィクトリア朝時代の奴らが生み出した与太話だ! そんなものを…」
「いましたよ」
「あん!?」
「切り裂きジャックは知りませんが、【バネ足】の方は確実に存在していました」
「アンタ何言って…」
「証拠も御座いますわ。実在していたという証拠が…」
突如信じられないことを言い出すクィン。
「おい、クィンホントかそれ!? なんで今まで黙ってた!」
「聞かれなかったからです」
しれっと返すクィン。
「このやろ、じゃあその証拠ってのはどこにあるんだよう」
「……まさか、あそこか?」
ストレイドに思い当たるものがあった。
「ええ、流石警察関係者は知っているのですね。当時ありとあらゆる犯罪に関わる証拠、調書を集め展示、保管していた場所。ロンドンの闇が集められ現在封印されているところ、その名は、
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「暗いな…」
「アポイントメントはもうとってあります。
「警察関係者しか入れないってのに簡単にアポとりやがって。いや、今更か…」
警察署を出て三人は黒博物館へと赴いていた。まだバネ足が出る夜まで間があったし、他に手掛かりはないのでその証拠を見てみたい言う大河の一存で決まった。大きな門をくぐると薄暗いエントランスがある。
「おっさんはなんでついてきてんだよ。もういいだろ?」
「馬鹿野郎、お前らみたいな得体の知れない奴ら目を離せるかよ」
「お静かに、来られましたよ」
二人がクィンの声で騒ぐのをやめると確かに二階から誰かが降りてくる。
「お待たせして申し訳ありません。思ったよりお早いお着きだったのでお出迎えのタイミングを逃してしまいましたわ」
「構いません、急な訪問をしてしまったのは此方ですから。貴方がここの?」
「ええ、当館の
そういって出てきたのは黒いロングスカートを履いた金色の髪の女性だった。髪は頭の上で丸くセットしていたが何故か顔半分を前髪で隠しているので館の暗さも手伝って年齢を判別できないただ残り半分の顔は大変に整っていた。
「お望みの品は1837年からロンドン中を大騒ぎさせた怪人【バネ足ジャック】の品ですね。どうぞこちらへ、ご案内致します」
「おいおい、本当にあるのかよ…」
ストレイドが呟く。学芸員に従い奥の方へと案内される一同。犯罪者の愛用したナイフやデスマスク、クリミア戦争ででた銃弾のかち合い弾などを横目に進んで行く。
そして、ある展示物の前で学芸員が足を止める。
「こちらがお望みの品、怪人【バネ足ジャック】の左足になります」
そこには、丁度足からくるぶしの少し上あたりであろうまでの部分が置かれていた。しかしそれはとても人の
者ではなかった。足の形こそ履いている靴から推測するに人と似ていたがそこからはまるでスプリングのように螺旋を描いた足が伸びている。正に【バネ足】であった。
「おい嘘だろ? こんなガラクタが証拠? ふざけんじゃ…」
そうストレイドが横目に他の二人を見るとそこには真っ青な顔をした大河の顔があった。
「人間じゃねぇ…、そうか! 当時のバネ足ジャックも人形だったのか!」
「正気か? こんな事あり得ねぇ」
「あるんだよ。そして、戻って来たんだ。またこのロンドンに」
「それはあり得ません」
ここでまたクィンが口を挟む。
「
「え? そんな記録はございませんわ」
「これは【私共】のほうの記録です」
学芸員の質問にクィンが答える。
「まぁ! 是非そのお話をお聞きしたいですわ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。こんがらがってきた! 話を整理させてくれ!」
テンションのあがった学芸員を制しストレイドが口を開く。
「この際一旦お前たちの与太話を飲み込むとだな、1837年当時にバネ足ジャックは存在していた」
「うん!」
「だがそのバネ足ジャックはもう誰かに破壊されていて、この世にはいない!」
「ハイ、確かな記録です」
「じゃあ、結局今このロンドンを騒がせている奴は何なんだよオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「うわわ!? 落ち着けっておっさんん!」
とうとう我慢できずに吼えるストレイド、大河の肩をつかんで揺らしだす。その時、今までずっと静かにバネ足を睨んでいた者が言葉を発する。
『大河、コレ、おかしいぞぅ』
「あん!? 今それどころじゃ…」
『新しすぎる』
「…どういうことだ?」
ストレイドを引き離し、バネ足に見入る大河、その様子に皆が注目する。
『塗装や汚しで分かりにくくしとるが、1837ってえと今から150年以上前じゃろ。それにしてはこの足は
「そんな事分かんのか?」
『どうしてか分からんが見極める知識が儂にはある』
「おい、急に一人でブツブツとどうしたんだ?」
ストレイドが声をかける。
「え? え~~っとそのう、なんだかこの汚れ、ワザと塗ったみてぇだなって…」
「はぁ? 何言って…」
「!? 失礼します」
大河の言葉を聞き、クィンが動く。バネ足を鼻が擦りそうな程近くで凝視したあと、
「学芸員様、申し訳ございません、必ず元に戻します」
「へ? ああぁ!?」
返事を聞く間もなくどこからか工具を取り出して足を解体し始めた。
「貴重な資料が! 怒られるの私なのに!」
「これは…」
「どうした!?」
「…外は上手く汚しで加工し、分かりずらくなっていますが、中のパーツは一目見て分かるほどに新しい。とても100年以上経過したものに見えません」
「何だと! ……本当だ」
「じゃあ、このバネ足は、偽物」
「そんな…」
思わずみんなで顔を見合わす。最初に動いたのはストレイド。
「おい学芸員! ここに今まで物が盗まれたことは!?」
「ありませんよう! 常にその当時の最高のセキュリティを設備してるんですから!」
「じゃどうしてなんだよ!」
大河が頭を抱える。
「此処に入るのに何か他の出入り口は?」
「表の玄関だけです。入るにも必ず私が対応してご案内しております!」
「なら犯人は!」
「その中にいるかも!」
「直ぐに今までの来場者の名簿を」
「は、はいぃ!」
長いスカートの裾をたくし上げて疾走する学芸員直ぐに分厚い名簿を抱えて戻ってくる。
「これです!」
「ストレイド警部、ご確認を。この中で警察関係者の氏名と顔を知っているのは貴方です。
「よし、じゃあ最近のから…」
そういってページを開くが直ぐに彼の手が止まり、一つのページを凝視する。
「おいおっさん! どうしたんだよ、誰かいたのか!?」
「何で……、何でお前の名前があるんだ! ウォルター・ボーモン!!」
そこに乗っていたのは彼の長年の親友である相棒の名前であった。
ロンドン詳しくないので其処らへんは何となくでお願いいたします。