からくりパレェド ~エクストラキャストは躍り狂う~   作:紙ブクロ

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まさかホントにアニメ化しようとは…。


夜の激闘~前編~

「…いいかぁ、絶対余計なことすんなよ!」ヒソッ

『ヒィッ、分かってるよぅ…』

 

 

 翌日、のたりのたりと重い足取りで登校をする大河、その横には昨日の侍の幽霊?が並んで浮いている。

「たくっ、結局親父に聞いてもよくわからんっていうしよぉ」

 あの騒動の後なんとか紫朗と連絡が取れたモノの、倉庫の奥の物は大抵が結婚のとき母方が嫁入り道具として譲ってきたもので、前の持ち主や持ち物のいわくなどは分からなかった。その母方とは現状、関係を断っているので、聞きに行くこともできない。八方塞がりである。

「全くヨォ、こんな物騒モン持って登校せにゃならんとは厄日にもほどがあるぜ」

 そう言いながら手に持っている刀を見る。

『ごめんよー、でもどうしても離れたくないんじゃよぅ』

 大河に憑いてしまったことで、刀から離れた幽霊だが、大河が刀を置いて学校に行こうとした際、

 

『嫌じゃよううううううゥゥゥゥゥゥ!! おいてきたくないよううううぅぅぅぅ!!』 

 

 と大泣きするので仕方なく袋に収めて持ち歩くことにした。流石に警察も高校生が日本刀を持って登校をしているとわざわざ気づいて呼び止めることは無いであろうが、内心ヒヤリとする。

「チクショー、昨日は全然眠れなかったぜ」

 そういって公園の前の道であくびが出かかった時、突然公園の茂みを何かが飛び越えて出てきた。

「うおぅ!?」

 スカートがひらりと舞い、華麗に着地する。その美しいスタイルと輝く銀色の髪ですぐに誰か特定できる。

「しろがね? なにしてんだ」

 と、目で追うとその先に昨日小学校で見た少年、勝が立っていた。

「坊ちゃま、お顔に汚れが…」

 そう言って、公園で湿らせてきたのだろうハンカチで勝の顔を拭く。拭かれてる当人はなんとも気恥ずかしそうである。しろがね本人にその気はないのだろうがどうしても人目をひく光景である。

 あれは、小学生の少年にはつらかろう、と助け船を出すことにする。

「よう、しろがね。おっはよー」

「タイガ、おはようございます」

 大河の軽い挨拶に丁寧な挨拶が返ってくる。

「あ、お、おはようございます!」

 勝もしろがねに倣い、挨拶を返す。

「おう、勝もおはようさん」

「あれ? お兄ちゃんなんで僕の名前知ってるの?」

「へ? ああっ!!」

 勝と大河に面識はない、一方的に知っているだけである。もし正直に話せばしろがねが昨日小学校に忍び込んで勝を盗み見していたことがバレてしまう。

 焦って横のしろがねをみると、自分よりもうろたえて冷や汗を流して立っている。

「もしかして…」

「い、いや…、そのぅ」

「しろがねが話したの?」

「うえ? あ、あぁ」

「え、えぇ、そうです」

 勝の質問に思わず答える。

「しろがねが自分から!?」

「お、おう」

「じゃあ、お兄ちゃんもしかしてしろがねの友達!?」

「あぁ、一応」

「うわわわああ! 本当に!? よかったぁ! しろがねはあんまり他人と話さないから心配だったんだ~~~!」

 途端にはじけて大河に迫る。

「しろがね、友達できたんだね! よかったね!」

「え、えぇ」

 しろがねもあまりの喜びっぷりに思わず引いてしまう。

(なんだ、似たモン同士じゃねえか)

 思わず頬が緩む、結局しろがねが勝を心配していたように、勝も心配していたのだ。

「お坊ちゃま、そ、そろそろ行きませんと」

「あそうだった、じゃあねしろがね、お兄ちゃん!」

 そういって元気に駆け出していく。その背中を見送った後、

「ふう、ああ~、すまねぇしろがね。つい口が滑っちまって」

「いえ、こちらこそ、私と友人ということになってしまい、申し訳ありません」

「はぁ?」

「では、私もこれで」

 そういって去っていく。

「…なんだかなぁ」

 しろがねの言葉を脳内に反すうし、なんともいえない気持ちになる。どうやら思った以上に世間からずれているようだ。しかしずっと立ちすくむわけにもいかないので気持ちを切り替えていこうとすると、一人存在を忘れていたことを思い出す。言いつけた通り静かにしていたなと思って見てみると、それはなんとも間の抜けた顔でしろがねの言った先を眺めていた。

「おい、どうした? もう行くぜ」

『…へ…、あぁ…』

「? なんかあったのかよ」

『…なぁんでかわからんけど、今なにか思いだしかけた気がしたんじゃぁ…』

 

 

 

 

 

 

======

 

それから数日後の放課後、

 

「ここか」

『へええ~~~、立派な寺じゃのう』

 今二人は地元の有名な寺の前にいる。玄関の石碑には《光明宗 大日派 芙玄院》と書かれている。

「なんでもここのお坊さんがよう、化物退治で有名なんだとよ」

『え!? ちょっと待っておくれよう。 そんなの怖いよう、止めようよう~~~』

「うるせぃ、他に相談できるところねぇんだ! いくぞ!」

『ひえええええっぇぇぇ」

 

 

 

 

~数分後~

 

「うぅむ」

 丁度他に来客も居らずすぐに住職と会えた二人は本堂に案内されてそこで一通りの説明を済ませた。

(顔、怖えええええええぇぇぇ!!!)

 目の前にいるこの住職、とにかく恐ろしい風貌である。二メートルあろう巨体に無数のしわの刻まれた顔、しかもその顔の半分は昔の火傷のあとであろうか、焼けただれていた。なるほど、この人なら化物と戦ったとしても納得がいく。

 だがしかし、

「すまんなぁ、拙僧では力になれんようだ」

 と頭を下げてくる。

「ええ!? そうなんスか!? でもここってみんなが化物退治してるっていってる寺ですよね?」

「あぁ、それなんだがなぁ、自分で言うのもなんだが儂はこんな風貌であろう? それで昔からわけもなくおそれられたり、化物も逃げ出すと言われたりでドンドン話が独り歩きしてなあ。何時の間にかそういう話になってしまっていたのだ」

 なんともしまらない話である。

「じゃ、じゃあ今までのオレの話は…」

「いや、心配するな、勿論信じておる」

「え?」

「これでも仏に使える身だ。尋常ならざるものごとを受け入れる心構えはある。それに修行の一環で武道を嗜んでいてな、お主の気配に混じって、微かに別の気配が感じられる」

『このお坊様、相当な使い手みたいじゃよ』ヒソッ

「じゃ、じゃあ信じてくれるんすか!」

 うむ、と頷く和尚。他に相談者もなく、不安だった大河にとってありがたい言葉だった。一度は自分の頭がイカレたのかと思ったこともある。思わず大きなため息が出た。

「弟ならば、なにか力になれるかもしれんがあの破戒僧めどこをほっつき歩いているのだか…」

 

 試しに経を読んだりしてもらったが効果は無く、今のところは打つ手なしということになった。ダメ元とは言え、重い足取りの帰り道となる。トボトボと乗ってきた自転車を押していく。

「ま、仕方ねぇか。何時でも相談に来いって言ってくれるだけでも有難いと思わなきゃ」

『ごめんよぅ、早くなんか思い出せるようがんばるよぅ…』

 何も手掛かりがない以上、この侍の幽霊が何か思い出すのを待つ、ということになった。今までは倉庫の中で時を待つのみだったが、今は外に出き、刺激を受けることによって何か思い出すのでは、という話だ。

「帰りにちょっと寄り道すんぜ」

『寄り道? あぁ、あのコのトコかい』

「おう、差し入れ持ってな」

 ガサリとプリンが三個入ったコンビニ袋を揺らすあのコ、とは勝のことである。

 今日の登校時、やけに眠そうにしていたので聞いてみると、夜ウサギ小屋の番をしているそうだ。この近辺の小学校で夜にウサギ小屋を襲う事件が起きているらしい、当然勝たちのところにもくるかもしれないということで、勝が番に立候補したということだ。しろがねも当然傍にいるだろうがそれでも少々危ない話である。

「大丈夫だと思うが、一応な…」

 そういって小学校の塀の横まで来た時、

 

 

キリ  キリ  キリ  キリ  キリ  キリ

 

 どこかで何かの擦れるような、楽器の絃が震えるような、そんな音が聞こえた。

 

『ッ! 今の音…、は…』

「おい、どうし…」

 急に様子の変わった相方に声をかけようとした時、ぬうっと【それ】は塀の向こうから現れた。

「な‥‥」

 まるで、悪夢がそのまま現実になったような光景だった。

 

 

 

===========

 

 

 

「うわああああ!」

 小学校、裏のウサギ小屋前で二人の子供が殴り合っていた。一人は勝で、もう一人は梶山という勝を虐めていたグループのリーダーである。舎弟である二人の男の子はしろがねにナイフを向けた行いにより、しろがねから文字どうり痛い説法を受けていた。そしてそれを男女二人のクラスメートが見ている。

 このままならどっちが勝っても人生の中のよくある日常の範囲で終わっていくだろう。

 しかし、この少年たちは最も最悪な日を選んで襲撃した。その日の客は、梶山たちだけではなかったのである。

 一番早く気付いたのは勝だった。

「しろがね、この音 近づいてくる!」

 見ると向こうから、巨大な人形二体が迫ってくる。かぎ爪のようになった黒い人形には中年の男が、逆立ちしたピエロのような人形にはタイトなドレスの女が乗っていた。二体とも足がローラーになっていて恐ろしいスピードで迫ってくる。

懸糸傀儡(けんしくぐつ)! やはりお坊ちゃまを狙って…!」

 勝は大企業サイガグループの社長の妾の子であったが社長の死後、ある理由で莫大な遺産を相続された、そのせいで今なお親戚達に命を狙われている。

 臨戦態勢をとるためしろがねが自分のトランクを引き寄せる。

 「みんな逃げろォオ!」

 反応の遅れたクラスメートたちをかばって襲われそうになる勝、

「あるるかん!」

 しろがねの声とともにトランクから黒い影が飛び出す、【それ】は相手の人形を弾き勝を庇う。しろがねのもつ懸糸傀儡、【あるるかん】である。まるでトランプのジョーカー、道化師の絵柄のような恰好であるが黒に身を包んだその姿は死神のようにも見える。左の片腕は無く、その代りか右の手に武器代わりの人形の腕を持っていたその姿がさらにその異形さを引き立たせる。

「しろがね」

「お坊ちゃますみません、遅れをとりました!」

 キリリとその両手両足の指のリングについた特別な糸を引き絞るそれと連動してあるるかんが動く。お互いににらみ合いのかたちになる。

「何でこんなことするんだよ。狙うんなら僕を狙えばいいだろォ!」

 クラスメートを巻き込まれた怒りで殺し屋に咬みつく。

「あらら、怒った? でも仕方ないのよ、この子たちに警察に通報されたら困るもの」

 まるで当然のように返してくる殺し屋、このままではみんな殺されると判断した勝は戦力を分断することにする。

「しろがねは戦って! 僕はン逃げ切るからそいつをやっつけて!」

 そういって駆け出す。男の殺し屋と人形がすぐさま後を追う。

「あのコが殺される前に、あなたは私を殺せるの? サァ、やりましょ外国の人形遣い! アンタにも興味があったのよ!」

 と同時にしろがねが動く。すぐさま移動して勝までの道を塞ぐ、同時にあるるかんの腕にある仕掛けを発動、

「あるるかん! 【(セント)ジョージの剣】」

 あるるかんの腕に無骨な剣が装備される。

「そんなもの!」

 敵の腕が迫るがすぐさまそれを剣で難なく破壊する。操る腕の差は圧倒的に上回っていた。

「なにぃ!?」

「私はあなたを殺せるわ、マドモアゼル」

 とどめを刺そうと迫るしろがね、

「チイイイィ! なめんじゃないよ! おい、山岸ィ!!」

「あいよォ」

 突然男が躍り出てしろがねに切りかかる。その手には鋭いマチェットを持っていた。咄嗟にかわすがしかし、

「ほらァ、こっちがお留守だよォ!」

 相手の人形があるるかんに攻撃する。

「クッ」

「オラ、よそ見してるとその可愛い顔に傷をつけちまうぜ!」

 人形戦に集中しようとするとすぐさま凶刃が襲ってくる。途端に形勢が悪くなった。

「アハハハハハ! ゴメンねェ! でもこっちは結局あんた達を殺せればいいのさ!」

「そういうことだ! 悪いねぇ!」

 何とか踏ん張るがそれでも長くは持たず、壁際に追い込まれる。

「とどめだ、嬢ちゃん」

 そして鉈が振り下ろされた瞬間、

「しろがねえええぇぇ!!」

 一人が割り込んで鉈を弾く。

「タイガ!? どうしてここに?」

「話しは後だ! ウオッ!?」

「邪魔しやがって! 手前を先に殺してやらぁ!!」

 山岸がターゲットを変えて襲ってくる。転がりながらどうにかそれを躱す。

「ちょっと、山岸! そんなガキに構ってんじゃないよ」

「お前の相手は私だ」

「ひぃ!」

 人形遣いをしろがねが、マチェット使いを大河が相手取るかたちになる。

「チクショー! しゃあねえな!」

 相手の凶器に対抗するため、大河も手に持った刀を抜く。夜の灯りに刀身が妖しく光る。

「ほぉ、いい獲物持ってんじゃねえか。そんじゃあ腕の方はどうかね!」

 相手の斬撃を紙一重で躱す、当たったら只ではすまない。

「ほらほらァ! しっかり避けな!」

 相手は余裕で、躱すか当たるかのギリギリのところで弄ばれる。苦し紛れで刀を振るうが尽く空を切ってしまう。

「クソ! 当たらねえ」

「なんだよ、トーシロじゃねえか。もういい、殺すか」

 そういうとさっきより早く一気に踏み込んで切りかかってくる。身が固まる、どう避ければいいか分からず頭の中が真っ白になる、その時、

『右上じゃ!』

 後ろから声がして咄嗟に刀で弾く。続けて襲ってくるが、

『左胴切り! 左袈裟! 右の切り上げ! 後ろに跳んで躱すんじゃァ!』

 後ろからの声どうりに斬撃が来てなんとか刀で受けきる。

「ユーレイか?」

『遅くなってごめんよう! でも奴の太刀筋はもうわかった!』

「! 頼むぜ!」

「クソ! 何だ急に!?」

 それから再び鉈を受けるが今度は侍の指示があってなんとか持ちこたえる、そうしているうちに、別の勝敗に決着がつく。

「あるるかん! LES() ARTS(ザア) MARTIAUX!(マシオウ)【戦いのアート】 聖ジョージの剣!」

「あぁ! 私のアンダー・ザ・ヘッドが!」

 しろがねが敵の人形を破壊する。

「いけぇ! しろがね!」

「はい!」

 そのまま勝を追いかける。

「ちぃ! 山岸、あんたのせいだよ!」

「うるせぇ! いいから、平に連絡して小僧ヤッたかきけぇ!」

 女はすぐに無線を入れるがまだ勝は捕まっていないようだ、すぐに無線の向こうが騒がしくなり、しろがねが駆け付けたと分かる。

「ははははははは! 手前ェら、もうお仕舞いみてぇだなぁ! ザマーミロ!」

「あぁ、まったくだ。お蔭でもっと面倒なことをしなきゃならん、おい!」

 山岸が呼ぶと数人の男たちが出てきてそれぞれにドスや銃などの武器を構える。

「な!? まだいやがったのか!」

「そういう事だよ。そこのガキどもと一緒に餌になってもらうぜ」

 

 

========

 

 

 

「クソォ! 連れていかれた!」

「お坊ちゃま…」

 勝はまんまと連れて行かれた。自分のせいでクラスメートや大河を巻き込むことが出来なかったのである。しかし、その思いむなしく子供たちは保険としてまだ人質になってトラックで勝共々連れて行かれた。残ったのはしろがねと大河だけである。殺されなかっただけ運がよかった。相手が後始末をする時間がなかった為である。

「おい、しろが…」

 声をかけようとして口を噤む。彼女は眼も当てられないほどに落ち込んでいた。今にも消え入りそうなほどであった。

 なんて声をかければよいか分からずいた時、

 

「お困りかい、おじょーちゃんら」

 

 変な奴らが声をかけてきた。一言で言うと泥棒、である。中年のいかつい男と若そうな二人組、揃って頭にほっかむりをして顔を隠している。見るからにあやしかった。

「お前ら何…」

「見てたぜ、全部」

「なに?」

「オレは中町、こいつらはノリユキ、ヒロオ、通りすがりの元サーカス芸人だ」

「それがどうした! 知るかよ!」

「おめえにゃ話してねぇ坊主。そこのじょーちゃんに話がある」

「話している暇はない」

 と行こうとして、

「そこにオレらの車止めてある。あのコが乗ったトラック追いかけんだろ、オレの条件呑んでくれたら送ってってやるぜ」

「ジジイ! 何勝手に…」

「タイガ。……条件は?」

 食って掛かろうとした大河を白銀が止める。

「おじょーちゃん芸人だろ? ニオイで分かるぜ。うちはまだ興行してねえサーカスだが…、あんたの芸に惚れた! この件終わったらうちの芸人になってくれ」

 とんでもない要求である。

「そしたら、すぐ手助けしてやらあ」

「手前ェ…、何勝手に…」

「頼みます」

「! しろがね」

「よっしゃ! すぐに回してくるぜ待ってな!」

 そういって車を取りに行く男たち。

「おい、いいのかよ」

「…構いません。お坊ちゃまの為なら」

「…そうかよ」

 そうこうしているうちに車がやってくる、なんとも昔ながらの三輪トラックだ。

「さあ、乗りなァ!」

「チッ! オンボロだけどしゃーねえか。行こうぜ」

「タイガ」

 乗ろうとしてしろがねに呼び止められる。

「なんだよ! 早く…」

「あなたは乗らなくていい」

「は? 何言って…」

「足手まといです」

 しろがねの目を覗く。その銀色の目は真っ直ぐに大河をみていた。

「冗談だよな?」

「違います、邪魔だからいらないと言っているのです」

 氷のような声だった。そのまま大河押しのけてトラックの荷台に乗る。

「出して」

「いいのかよ、あのにー…」

「いいから、早く!」

「わ、わかった!」

 トラックが出ていく。その後ろをただボーゼンと眺めた。

「…へ、いいさ。どうせ、元々カンケーなかったんだ。

 そういって、背を向ける。

『なぁ』

 侍が横から顔を出す。

 

『いいのかよぅ』

「……」

『行っちまうよぅ』

「…………」

「な、なぁ」

「………………」

『お~い、聞いとるかぁ』

「…ッ~!」

『お、お~い』

「ッッッッ~~~!」

『あ、あの…』

「ッッッッッッッ~~~~~~!!」

『大丈夫か~』

「あああああああああああ!! ホンっっとに腹が立つ!!!!」

『ぴいいいいい!』

 我慢の限界は越えた。もう止まらない。

「行くぞ! ユーレー!」

『お、おぅ! 追いつけるかの?』

「地元民だ! 大通りまでならムチャすりゃ追いつける!」

 そういって投げ捨てていた自転車にまたがった。

 

 

 

 

========

 

 

「大通りに出るぜ。あんな図体のトラックだ、行った道はここしかねえ」

 中町が荷台のしろがねに報告する。

「はい」

 返事をしたしろがねだが、その顔は沈んでいた。先程のことを思い返す。あの時の大河の顔が脳裏に浮かぶ。

(でも、ああしないと彼は無茶をする。もう二度とあんな思いはしたくない)

 思い出すのは、一緒に戦ったあの男の姿。関係ないのに首を突っ込んで、勝を守って消えていった。

(加藤…、鳴海、貴方のように)

 と、突然トラックが急ブレーキをかける。

「!? どうしたのですか!」

「あ~…、おじょーちゃん、すまねえ。こりゃちょっと止まるしかねえわ」

「どういう…」

 質問を返そうとした時、ばさりとトラックの幕が開き、一人が乗り込んでくる。それはしろがねがよく知るかおだ。

「タイガ!? どうして」

 問いに答えず、ドカリと荷台に陣取る大河。

「おっさん、さっさと出せ」

「足手まといと言ったでしょう! 早くおり…」

「うるっせえええええええ!!!!」

 怒号が響く。

「あぁ! 確かに聞いたぜ、だからあんときは乗らなかった! だから、その後は自由にやらせてもらうぜ!!」

「な、そんな」

 子供の言い訳である。

「勝が、子供たちが攫われてるんだぞ。このまま黙って帰れるかよ。どうしても下ろしたきゃ、あの人形でもなんでも使ってたたき出しやがれ!」

 その眼は真っ直ぐにしろがねを見ていた。その輝きが、あの男の眼と重なる。

「死ぬかも、知れないのですよ」

「そん時ゃ、あの世でハッピーになってやるさ」

 そういって笑う。しろがねは悟る、この手の男は口で言っても聞かないのだと。

「もう、かってなさい」

「おう、勝手にするぜ!」

 二人の言葉を待っていたように車が動き出す。戦いへの道行なのに、なぜかしろがねの心は軽かった。

 

 

 

 

 

 

「日本の男たちって、こんな人達ばかりなのでしょうか……」

「あん、何かいったか?」

 

 

 

 

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