からくりパレェド ~エクストラキャストは躍り狂う~   作:紙ブクロ

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夜の激闘~後編~ そして、

「あれだ! 高速に乗るつもりだぜ!」

 

 仲町が声を上げる。前方にはあのトラックが走っている。

「おっしゃぁ! 横につけろ、乗り込んでやるゼ!」

「任せな!」

 仲町が車を寄せようとスピードを上げたとき、突然トラックの荷台に被さっていた布が爆ぜて中から敵の人形が現れる。

「なんだ? 気づかれたか!?」

「いいえ、あれは お坊ちゃま!?」

 よく見るとどうやったか、、勝が人形を奪い、荷台で暴れていた。

「ハハハ! 凄ェ! あの子も人形扱えんのかよ!」

「ナカマチすまない、私も出す!」

「へ? 出すって」

 仲町が言い終わる前に己のトランクからあるるかんを取り出す、結果こちらの荷台のテントもボロボに引き裂かれ仲町の悲鳴がもれる。

「ちきしょ~、ヤケだ! とっとと子供達助けちまいな!」

 スピードをあげる、向こう側では勝が必死の抵抗をしていた。手下共を何人かなぎ払って昏倒させるも、勝の懸糸傀儡脳の腕はとても戦えるレベルではなく、あっという間に奪われ、殴り飛ばされる。

「ち、手間賭けさせやがって、もういい! ここで殺せ」

  そういって子供達に近づく。

「みんなには…さわらせないよ」

 それでも立ち上がりクラスメートを庇う勝。

「じゃあ、おまえが一番に死にな!」

 人形の腕が振り下ろされる、その時、

「お坊ちゃまーーーー!」

 間一髪でしろがねとあるるかんが割って入る。

「人形遣いーーーー!」

 マチェット使いの山岸がしろがねに迫るが、

「おっとぉ、オッサンの相手はオレだ」

 そちらも間に大河が刀で防ぐ。

「クソガキーー! そんな(モン)へし折ってくれるぜぇ!」

 鋭い斬劇が襲いかかる、お互いの得物が衝突するたびに鈍く火花が散る。

日本刀(ポントウ)ってのはな、切り裂く事に特化してる分、防御性ねぇんだよ! どこまで持つかなぁ!」

 両者、つばぜり合う。山岸のせせら笑いが耳に這い寄る。

(クソッタレ! このままじゃ本当にへし折られちまう! 反撃しねぇと!)

 前に進もうと力を込めるが、

『駄目じゃぁ! そのままもうちょっと耐えるんじぁ!』

 侍の声が待ったをかける。

「でもよ、このままじゃ…」

『大丈夫じゃ…、儂を、いや、この【剛刃・流走】(ごうじん・るばしり)を、信じるんじゃ』

 目玉の無い、ただの【うろ】のようにしか見えないはずの両眼が、確かに真っ直ぐ大河を見据えていた。

「…チッ、しゃあねぇなあ! 付き合ってやるさツ!」

 そのまま一本距離を置き、再び激しい剣劇を耐え抜く。

 衝撃で手がしびれ、凶撃が頬をかすめる。それでも彼の言葉を信じて耐え忍ぶ。

 最初に異変に気づいたのは山岸の方だった。

(どういうことだ? 相手はどうみても素人、なのに一太刀も届かねぇ。

奴の持っている刀もおかしい、さっきから何太刀も打ち込んでいるのに一向に折れる気配がねぇ!

 

それどころか…、それどころかよぉ!

 

何で俺のほうが刃こぼれして(・・・・・・・・・・・・・)るんだぁぁぁぁぁ!!)

「ちぃっきしょおおおお!!」

 力任せに振り下ろされた鉈を大河は全霊で受け止める、その時、

 

        バキィンッ

 

 耐えきれなくなった鉈が悲鳴を上げ、ひび割れる。

「あぁ! 俺のマチェットがあぁあ!?」

『今じゃぁ!』

「おっしゃあ!」

 この機を逃さずに渾身の一撃を振り下ろす、お互いの刃が当たった瞬間、山岸の鉈が砕け散る。そしてそのまま追撃の為に拳を握りしめる。

「なんなんだよ、お前ぇ…、なんなんだよその刀はぁぁ…」

「『【剛刃・流走】』」

 拳が顔面にヒットし、車外へと吹っ飛ばす、もう追ってくることはないだろう。

「ハァ、ハァ、しろがねは?」

 とそちらを見ると、

「LES ARTS MARTIAUX! 炎の矢【Flèches enflammée】(フレッシュ アンフラメ)!」

 武器の人形の腕での連続刺突、相手の人形はバラバラに砕け散った。

「…心配するだけムダだな」

見回すと殺し屋たちは全て一掃していた、終わったと一息つきかけた時、突然トラック大きく揺れてスピードを上げる。

「どうして…?」

 勝が運転席をみるとさっきしろがねが破壊した人形のかぎ爪が運転手に刺さり絶命していた。その足がアクセルにかかりドンドンスピードを上げていく。

「クソ! なんとか運転室に…、ウオッ!?」

 大河が動こうとするが暴走する車は激しく揺れてとても席に移れそうにない。

「やべぇ、この先は高速のカーブだぜ、何とかしねぇと」

「でも、どうしたら…」

 その時、

「ぬへへへへへ~~~~!」

 妙な奇声を上げて誰かがトラックの車体に飛びついてくる。

「わ、誰?」

「芸人の兄ちゃん!?」

 声の主であるサーカス芸人、ノリユキが上手く乗り移ることに成功し、持ってきたロープをトラックに結び付ける。向こうの端は仲町のトラックに繋がっている。

「しろがねさん! 見ていてください俺たちの雄姿を」

「ラブウォーリアー!!」

 またしても奇声と共にロープをつたって誰かが渡ってくる。同じくサーカス芸人のヒロだ。この走るトラックの上でありながら見事に綱渡りを成功させてみせた。二人とも流石にサーカス芸人である。顔は涙と鼻水でなんともだらしがなかったが。

「あ、アンタらなんで?」

「「さあ! しろがねさん一緒に!」」

「私より子供達をお願いします」

「「ですよね~」」

 しまらない二人である。

 

 渡したロープを伝って子どもを一人づつ運んでいく。何とかほとんど運び終えて、後は大河、勝、しろがねの三人だけだ。

「しろがね、あるるかんなら僕ら二人運んで跳べるよね?」

「はい」

「よっしゃ、とっととおさらばしようぜ」

 その時、突然銃声が響く、弾は三人の間を通り、あるるかんに当たる。

「あんた達! 逃がしゃしないよ!」

 三人が振り返って見ると、人形遣いの女、成田が片手にナイフを持ち、こちらに銃口を向けている。車上が凍り付く。最後の最後で何ということか。

「しろがね…、お兄ちゃんと一緒に先に…」

「勝、しろがね。先行ってろ」

「え?」

「時間がねぇ、しろがねぇ!」

「っ! はい!」

 瞬間、大河の声に反応ししろがねは己の主人を守るための最適解を行う。あるるかんが勝を抱え飛び上がる、と同時に大河が飛び出す。

 しろがねと勝の目に大河の後ろ姿が写る、それはまるであの時の、【彼】の後ろ姿によく似ていた。

「お兄ちゃん! 駄目ぇええええええええ!!」

「死ねぇ!」

 銃弾が大河の肩をかすめる、が止まらない、そのまま突っ込む。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 己の身を省みない全体重をのせての体当たり、女である成田はそれに耐えきれずもろとも荷台に叩きつけられる。

「げふっ!」

『大河! 綱を切るんじゃ!』

「グぅ…、分かってらぁ」

 何とか立ち上がる大河。力を振り絞り、刀を構える。

「こ…、このガキ、よくも」

「あばよ…、おばさん」

 刀を振り下ろす、ロープを切り、そのままトラックの荷台をを駆けだした。

「行かせるかぁ!」

 と、ナイフで襲い掛かる成田だが、

「オラァッ!」

「ギャウッ!!」

 顔面に刀の峰を叩きこみ、とどめをさす、もはや阻むものはいない。

『急げ!』

「オラアアアアアアアァァァァ!!!」

 仲町のトラックめがけてのジャンプ。向こうではあるるかんが待ち構えていた。

「タイガ!」

「お兄ちゃん!」

 間一髪、あるるかんが大河を掴む、殺し屋たちのトラックはそのままカーブに突っ込み、大看板に突き刺さった。同時に仲町が急ブレーキがかける。トラックはギリギリのところで止まることができた。

「と、止まった~~~」

「助かった~」

 遠くからパトカーのサイレンが聞こえる、どうやらやっと警察が来たらしい。

「ふいぃ~~~、終わったおわっt…」

「終わったではありません!」

「へ? しろがね何をそんなおこって…」

「お兄ちゃん!」

 一息ついた大河の元に鬼の形相をした勝としろがねがせまる。

「貴方は本当に無茶をしますね! 死にたいのですか!」

「どうして残ったの!? お兄ちゃんは関係ないのに!」

「わわわわわ!? ごめんって! でも何とかなったじゃねえか」

「何とかじゃ、済まないのです…」

「もう嫌なんだよぅ…、もう二度と、僕のせいで誰かが死んでほしくないんだよぅ」

 途端に泣き出しそうな顔になる二人、あの時、大河と【彼】の後ろ姿が重なった、二人にとってそれは大きな、大きなトラウマである。

 大河もそれをみて悟る、きっと二人は大切な誰かを今回のような事件で失ったのだろうと。

「ごめん、オレ考えるより先に身体が動いちまうからさ…、心配させたな」

「いえ、こちらこそ、申し訳ありません。少々、言い過ぎました」

「お兄ちゃんは僕たちを助けてくれたもん、だから、改めて言わせて…」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

merci(ありがとう)、タイガ」

 

 大河に対して礼の言葉を言葉を述べる二人、なんだか気恥ずかしくなる大河である。

「い、いや、オレは…」

「だから俺たち悪くねえって!!」

「信じてくれよおまわりさ~ん」

 向こうから仲町たちの声がする、見ると三人とも手錠をかけられて尋問されていた。

「ああ~、助けないと! その人達は違うんです!」

「あ! お坊ちゃま、お待ちください」

 勝たちが警察に割って入る、大河は立ち上がる気力が湧かず、その場でその姿を眺める。

『いい子じゃな』

「あぁ」

 しばらくその光景を眺めていたがどうやらひと段落したようだ、仲町たちの手錠が外されるのが見える。

「や~っと帰れそうだ」

 そういって立ち上がった時、

『ああああああああああああああ!!!!』

「なんだよ! 急に!」

 耳元で急に幽霊が叫ぶ。

『思い出した!』

「あん? 何を?」

『何って、名前! 儂の名前!』

「ふ~ん」

『なんじゃ、反応薄いのう、どうしたんじゃ?』

「疲れててそれどころじゃねぇや。で、なんだって?」

『何が?』

「お前ぇの名前だよ」

「あぁ」

 

 侍の声を横に聞きながら、勝たちの方を見る。こちらに手を振っているのが見えたので、こちらも振り返す。

 

『儂の名はの、(まなじり)

 

 子供たちが保護されていく、きっとこれからそれぞれの家に帰るのだろう。

 

(まなじり) 蒼太郎(そうたろう)じゃ』

 

 風は気持ちよく吹き、大河達の頬を撫でた。

 

 

 

 

 

 

=============

 

 

 数日後、その時は突然やってきた。

 

 

「あ~~、みんな、よく聞いてくれ。突然だが、才賀はこの学校をさることになった」

 

 その日、しろがねは登校することは無く、クラスメートは担任教師の報告により、その事実だけを伝えられる。途端に質問攻めにあう教師、だが彼もほとんどその事情を知ってはおらず、落ち着けと生徒に促す以外手は無かった。

 その横で大河だけはその報告を多少驚きはすれど、ある程度冷静に聞くことが出来ていた。たぶん心のどこかでこの事を予想してたのであろう。

 事件の後しばらく大河達の周りは騒がしかった。翌日こそ普通に登校したものの、子供たちの親の一人がPTAの会長であったのが災いし、保護者たちが校長室に怒鳴り込んできた。いろいろと文句を垂れたが結局のところ、一般生徒と勝を一緒にするなと言いに来たのだ。

 またどこで嗅ぎつけたか、次の日にはマスコミが殺到して校門を占拠した。勝が囲まれて面倒だったので大河が逃がそうとしてひと悶着起きたほどだ。

「まだ話は終わってないんだから落ち着け! …才賀から伝言を預かってる」

 その言葉に、シンと静まりかえる教室。

「皆に、『ありがとう、お元気で』と」

 簡潔で、らしい言葉だった。静かな教室に、誰かの鼻をすする音が聞こえた。

 

 

 

『…いっちまったんじゃのう』

「あぁ…」

 重い足取りで帰り道を行く。その日の学校は最初こそ皆悲しみに浸っていた者の、すぐにしろがねが来る前の、なんとも今までどうりの何でもない退屈なものに戻った。

「はぁ…」

 ため息をつき、角を曲がる、と大河の家の前に一台のトラックが止まっていた。

「あ、あのトラックは!?」

 その時荷台にいる者がこちらに気づいて手を振ってくる。

「大河お兄ちゃ~~~~ん!」

「勝?」

 トラックから降りてこちらに駆け寄ってくる勝、そして、

「タイガ」

 その後ろからしろがねがついてきた。

「よ、よお」

 面喰いながらもなんとか挨拶を絞り出すが、声が上ずる。妙な緊張感が走る。

「学校で聞いたぜ。止めるって」

「ええ、もうあそこにお坊ちゃまは居られませんから」

「そうか…、で、あのトラックにいたってことは…」

「はい、サーカスに」

「ホントは皆に黙っていこうと思ったんだ。でもね…」

「私もお坊ちゃまも、最後に貴方だけには、と…」

「そ、そうか、ありがとな!」

 嬉しくて、恥ずかしくてなんとも言えない気持ちになり、目を逸らす。頬は燃えるように熱くなり、心臓が跳ねる。

「大丈夫ですか? 顔色が…」

「だ、大丈夫! へーきへーき!」

 少なくとも大河は二人にとって特別な存在となったのだ、それが誇らしかった。

「じゃあ、僕たち行くね」

「タイガ、お元気で」

「あぁ、元気でな!」

 トラックのエンジン音が鳴る、二人が荷台に乗るとゆっくりと走り出す。

「バイバ~イ! お兄ちゃん!」

「お~う!」

 お互いに手を振り合う。少しずつトラックが小さくなっていく。

「しろがねーーーー! オレ達トモダチだぞーーーー! またなーーーーーーー!!」

「! …えぇ、またいつか」

 遠くてよく見えなかったが微笑む顔が一瞬見えた気がした。気のせいかもしれないがそうだったらいいなと思う。

 トラックが見えなくなるまで、大河は腕を振り続けた。

 

「…次は、何時になるだろうな…」

『さあの…、もしかしたら、意外とすぐかものぅ』 

 

 

 二人はまだ気づいていない、だがもう幕は上がり開幕ベルが鳴り始める。

 大河と蒼太郎、二人の物語が進みだす…。

 

 

 

 

 

 

 

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