からくりパレェド ~エクストラキャストは躍り狂う~   作:紙ブクロ

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主役は遅れてやってくる

 ビーストとドラム、二頭のぶつかり合う中、何とか近づこうと試みるが、

「うおぉ!? 危ねえ!」

 迂闊に近づこうものなら肉の塊か凶器のごとき爪が襲ってくる、不用意に行けば漏れなく落命するだろう。

『今は無理じゃあ! 様子を見てあのバケモンが疲れるのを待つんじゃ!』

「んなこと言っても、このままじゃビーストより先にあっちのライオンのほうが…」

 と、二人が言う間に

「GROOOOoooooooo!!」

「Ga!?」

 ビーストの強烈な当たりによりドラムがまたも弾き飛ばされる。そのまま起き上がれずにいるところに、喉元を前脚で押さえ付けられ、トドメを刺そうとビーストはその凶悪な顎を開く。

「マズイ!?」

 止めを刺そうとする隙をついて接近し、

「オラァッ!」

 ビーストに向けて思いっきり刀を叩きつける。しかし、刃は分厚い肉に阻まれ、深くは入らず胴に浅く切りつけただけで終わる。

「なにぃ!?」

「GA!!」

 止めを邪魔されたビーストが標的を大河に移す、襲ってきた爪を即座に躱す。勢い余って近くのショウウインドウに突っ込むビースト、その隙をついて、一時退却をはかる。

『走れ~~~~~~!!』

「もう走ってるよ!」

 死に物狂いでビーストから離れるためにアーケードの中をかける。後ろからビーストの慟哭が聞こえる。人の足ではすぐに追いつかれるだろう。

「おい、どういうこった? 流走(コイツ)ナマクラか!?」

『馬鹿言うんじゃねぇよう! お前さんの扱いが悪いんじゃあ! しっかりと刃筋を立てんと切れるもんも切れねぇよう!』

「じゃあ今教えやがれ!」

『そんな簡単なことじゃねぇよ! 何度も何度も木刀振って…、危ない!!』

「うおおっ!?」

 追いついてきたビーストの攻撃を間一髪で倒れこむように跳んで躱す、がそのまま壁際に追い込まれてしまう。

『あぁ、追いつかれた! もう死ぬ~~~』

「お前ぇはもう死んでんだろ!」

 大河とビースト、お互いに睨みあった後、

「GRRRRRRRAAAAAAAaaaaaaa!!!」

 咆哮とともに襲ってくる。

「! これでも喰らえっ!」

 その時、偶然近くにあった消火器を拾い、ビースト目掛けて発射する。モロに顔面に被せてビーストの視界を奪う。

「こいつはおまけだ!」

 

   ゴン!!!

 

 そのまま消火器そのもので殴り、怯んだ隙に再び逃走する。

「おい、何でもいい! オレでも出来る攻撃はねえのか!?」

『う、うぅ~、あるにはあるけど……、危険じゃよ』

「それしか無いなら、やってやるさ!」

『わかったよぅ! なら、先ずは奴の隙を作らんと…』

「! あそこだ!」

 そういって一つの販売ブースの中へと逃げ込む。すぐに視力の回復したビースト後を追ってそこにやってくる息を押し殺して身を隠す大河。

『何でここに逃げ込んだんじゃ?』

(ちょっと考えがある。それより、さっき言ってた奴、どうやるんだ)ヒソリ…

『あぁ、それはの…」

 

 ビーストがゆっくりとブース内に侵入してくる、そこは大小様々な時計を置いている区画でそこかしこからカチリカチリ針の進む音が響く。ビーストは鼻を床に近づけ、臭いで見えない獲物を探っていく。 

 一歩一歩と歩を進めていたその時、

 

    ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッッ!!!!!!

 

 突然横にあった目覚まし時計が鳴り響く。

「GRUUUU!!?」

 一瞬、ビーストの気が大河から逸れる。そのタイミングで飛び出す大河。

『今じゃあ! ドてっぱらに思いっきり突けええええええぇい!!』

「オオオオオオオオオオッ!!」

 全体重を乗せた全身全霊の【突き】、それを骨や分厚い筋肉に守られていない腹に目掛けて突き出す。これならば切っ先さえ通れば素人でも人を殺すことが出来る。

 ズブリと両手に生の感触が伝わる。

「通った!!」

『まだじゃ! そのまま腹を抉れえええい!』

「オラァッ!」

 渾身の力で更に深く刀身を食い込ませる。横から耳をつんざくビーストの咆哮があがる。確実にダメージを通した、しかし、相手は人間ではなく、規格外の猛獣である。刃が通った次の瞬間大河を振り払う暴れだす。

「うおおおお!?」

『踏ん張るんじゃあ! 今放したらその瞬間引き裂かれるぞぅ!』

 ビーストの身体にしがみつき、振り払われまいとするが、ビーストは自分の身体ごと商品棚に倒れこむ。何百kg

もの衝撃が大河の身にかかる、たまらず手を放してしまった。

「ぐふぅ!?」

『ああぁ! 頑張れ! 立つんじゃ、は、早く』

 蒼太郎の声で何とか意識は飛ばなかったが、体は先程の衝撃で動くことが出来ない。

「Grrrrrrrrr」

 息がかかりそうな程の距離にビーストがいる。すぐには襲い掛からず、己を傷つけたこの獲物に警戒の色を示す。

(クソゥ! 動けよオレの身体!)

 少しの間、様子を伺っていたがもう抵抗できないと悟り止めを刺そうとビーストが歩を進めようとしたその時、

 

   ゴインッ

 

 

 ビーストの頭に何者かがスパナを投げ来む。

「Grr?」

 大河とビーストが投げ込んだ相手を見やる、そこには…

 

「やい、ビースト、お前もおしまいだぞ。 来い!」

 

 自転車に跨った勝の姿があった。

 

 

 

 

=========

 

 

少し前、大河がビーストとの戦闘に加わった時、

 

「私は…、姉さんが憎かっタ!」

 

 リーゼが勝に隠していた本音を吐露する。

 何をやっても自分より上手く、完璧だった姉ヘレン、そしてリーゼが失敗した時にはすぐにリーゼの頬を叩き冷たく叱責した。

 

 

    タランダ、あなたは何にもできないんだから、私の言うとおりにしていればいいのよ

 

 

「そしてぶたれるたびに…、私は憎んダ…。姉さんがいるから私はダメなんだ、姉さんに圧しつけられてしばられているから、私は何もうまく出来ないんだっテ!」

 

 

    姉サンサエイナケレバ 私ハ自由ニナレル!

 

 そして望んでいた時は突然訪れた。

 その時思った、姉さんが死んだのは自分のせいだと、あのビーストはこの世に悪魔がつかわした自分の醜い心そのものだと。

「リーゼさん、そんな…」

「でも、おかしいノ…。 姉サン死んだのに、自由に…なれないの…」

 一卵性双生児、姉と同じ顔の自分。何をしていても水や鏡に姉の姿があった。

 その姉の眼が囁く

 

 

 

    タランダ

 

    私ノ

 

    復讐ヲ シナサイ

 

 

 すべて罰だと思った、姉を憎んだ自分への。

「姉サン死んでかラ…、私、ドラム以外の猛獣を使えなくなっタ…、いつも聞こえる姉サンの声。きっと姉サンは、私を上手に操ってくれていたのだワ… 姉サンがドラムを上手くあつかうように…」

 だから、ビーストの後を追い、日本にやってきた。姉の後を追い、死ぬために。

「そうしたらまた…、天国の姉サンに…、しかって教えてもらえるカラ……、

 

 えっ?」

 

 消え入りそうなリーゼを突然勝が抱きしめる。

 

「マサル…さん…?」

「誰も…何かに操られることなんて…ないのに!」

 少し前までの家と遺産に縛りつけられていた自分、過去と己の役目に縛られているしろがねの顔がよぎる。自分も同じだったからこそ今のリーゼが苦しんでいると痛いほどに分かった。

「操られて上手に生きるよりも…、下手でも、自由に…」

 そして許せなかったリーゼを縛るものの象徴であるあの獣のことが、堪らなく許せなくなった。

 

「あんなトラ、僕と大河兄ちゃんがやっつけてやる!」

 

========

 

「来い!」

 そう啖呵を切って自転車をこぎ出す。二度までも邪魔をされたビーストは怒りのままに勝を追いかける。

「バ…馬鹿野郎、勝ぅ…」

 大河は後を追おうとなんとか立ち上がるが先程のダメージで上手く体が動かない。

『あのコ、どうする気じゃ?』

「タンクローリーに向かっている。…まさか!?」

 みると、途中で手を伸ばし落ちていたライターを拾う勝。

「漏れたオイルに引火させるのか? 止めろ! 勝ゥ!」

 叫んで止めようとするがもう遅い、

「ビースト、お前なんか… リーゼさんの歩く道にはジャマなんだよう! 

 

 燃えっちゃえええ!!」

 

ライターがオイルに投げ込まれる。

瞬間、

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!!!!

 

 

 

 大河の目の前が炎で埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声が、聞こえる

 

      …ねがい…

 

 夢で聞いた、あの声が

 

      お願い、助けて…

 

 あの時より、一層痛々しい響きで

 

      私の…、妹を!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 目が覚める。

 気づけば、崩れた商品棚の上で気を失っていたようだ。身体を動かそうとすると所々が激しく痛む。

『おい! 大丈夫かぃ!? かなり吹き飛ばされたけど…』

「あぁ、何とかな。それより勝だ…」

 

「マサルさん!」

 別のところではリーゼが生き延びた勝を見つけていた。一番爆発に近かったものの、上手く爆風にのって吹き飛ばされて無事だったようだ。

「リーゼさん、良かった無事だったんだ」

「マサルさんこそ! なぜここまで来ましたカ? なぜ…あんなムチャを!?

 

 死ぬのは……、私だけで…、いいの二」

「それは…、ちがうでしょ、リーゼさん」

 涙を流すリーゼに優しく語り掛ける。

「リーゼさんはあの時、僕を観客だと言ってくれた…、

 だったら リーゼさんは サーカスをやらなきゃ」

 勝は言う、芸人が最初から失敗を、ましてや死ぬことなど考えないと。

「ぼくは、タランダ・リーゼロッテの大サーカスを見に来たんだよ」

 そういって笑う。

「私の…、、サーカス…。でも、私…」

「僕を助けてくれたお兄ちゃんが言ってた…、何かあったら心で考えろって。

 リーゼさん! リーゼさんが一番やりたいことは何!? 死んじゃうことなのかい?

 本当に 本当にそれが一番‥‥」

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!」

 

 その時、爆発を生き延びたビーストが炎の中から飛び出す!

「ビースト!」

「まだ生きてーーーーー」

 ビーストが勝たちに襲い掛かる寸前、

「オラア!!」

「GROOOOO!!」

 回復したドラムが間に割って入り、大河が二人を庇い、勝とリーゼを突き飛ばす。

「まだ生きているなんて…、はっ!」

「…‥動くな、勝。そこにいろ」

 間近にビーストがいる。すぐにでも襲い掛かれそうな距離で。もはや大河になすすべはなかった。それでも、目だけは真っ直ぐにビーストを睨む。

「あぁ、来いよ、ビースト。そんかわし、腹にもたれちゃるからな!」

 ビーストの牙が大河に迫った瞬間、

 

      パシイイイン!!!

 

その場に乾いた鞭の音が鳴り響く。

 

「Hi!」

 

 全員の注目が、1人の少女に集まる。その中でいち早く、ビーストが動こうとするが、

「Stop Beast!!」

 凶獣の動きが止まった。

「リーゼさん……」

Step back!(下がりなさい) Beast」

 命令を続けるリーゼ、ビーストもその命令に逆らおうと足掻くが、

Step back!!(下がりなさい!)

 リーゼの気迫の前に屈してとうとう頭を垂れる。

『あ、あのバケモンが…』

「下がりやがった…」

「タイガさん、でしたネ。どうか下がって居てくだサイ」

「…いけるのか?」

「ええ、マサルさんが見てくれてうるカラ、それ二」

 大河を見るその目は、先ほどには無い力が宿っている。

「ゲストに何時までもステージを任せていてハ、アーティスト失格ですかラ…」

「!? ハハッ」

 最早そこには、さっきまで死にたがっていた少女は居らず、一流の猛獣使い(ビーストテイマー)が立っていた。

「ビースト…、あなたと私とドラムでスペクタクルしたかったわ。きっと素晴らしいショウになったでしょう。

 

 でも、あなたはお客様に牙を向けた。だからあなたを退場させます。この、タランダ・リーゼロッテが!」

「GRooooooOOOooooo!!!!」

 最後の抵抗をしようとビーストが吼える。それに対し更なる命令を下そうとするリーゼ、の前に動く1人の陰。

「!? お兄ちゃん!?」

「やられっぱなしは性に合わねえ!」

 ビーストの横を抜けてまだ腹に刺さったままだった流走を掴む。

「ビーストォ! 長かったお前の逃走劇も…」

 ビーストに足をかけて、それを力いっぱい引き裂く。

「これで終演だぜ!」

 鮮血が吹き出し、凶獣の慟哭が響く。そこに、

Drum(ドラム) GO!」

 ドラムが躍り出て、尻尾にあるその猛毒の棘をビーストの眉間に突き刺す。

 

「GieeeeeEEEEEEeeeeeeeeaaaaaaaa!!!!!!!」

 

 凶獣の断末魔が轟く、とうとうそのまま、ビーストは動かなくなった。

「やった…、やったよリーゼさん! お兄ちゃ…」

 そしてそれを最後に大河の意識は何処かへ飛んでいった。

 

 

〓〓〓〓〓

 

 

 

 真っ白な場所に立っていた。

 見渡す限り何もなく、暖かな光だけが大河をつつんでいた。

 あぁ、夢か、となんとはなしに理解だけばしていた、そして、これを見るのは始めてではない。

 ふと、背後に気配を感じて振り向く。

「あぁ、あんたか…」

 その者に声をかける。そこには知っている「顔」があった。

 

 

 

〓〓〓〓〓〓

 

 

『大丈夫かようぅ~』

「うおおおお!?」

 目を覚ます、と同時に目の前に蒼太郎の顔がある。もう慣れた顔だがやはり起き抜けに見るようなものではない。

「何でお前はいっつもいっつ……痛たたた!」

 文句を言おうとしたが体中の痛みで引きつってしまう。

『すまんすまん! じゃがあんまり動かんほうがいいよう』

「ここ、どこだ?」

 頭が痛みでハッキリし他ところで辺りを見回す。どうやらトレーラーの荷台に布団を敷いて、そこに寝かされて居たようだ。荷台は開いていて、外から月明かりが射していた。

『あの後大変じゃったぞう、急に倒れての』

 あの戦闘の後、白銀達が現場に駆けつけて大河を回収してくれたらしい。その後治療し奇跡的に大きな怪我は無かったものの戦闘の疲労から眠り続ける大河を 仲町サーカスが引き取ってくれたそうだ。

「助かったぜ、病院にいたら今頃色々質問攻めだろうからな」

『お礼ちゃんというんじゃぞう』

「分かってるって。それより勝は…」

『あぁ、あの子なら隣の【とらっく】に…』

「うあああああん!!」

「!? 勝!」

 突然の泣き声がしてトレーラーから隣を覗く。見ると、勝が悪夢にうなされて跳び起き泣き暴れていた。尋常じゃない暴れ方だ。あの小さな少年に一体どれほどのことがあったのだろうか。傍によろうと身体を動かすがケガで上手く動かない。

 その時、白い影が勝の傍に寄り添う。

「しろがね…」

「坊ちゃま、大丈夫です。しろがねがいますから!」

「う…腕 人形が‥‥」

 錯乱する勝をしろがねが優しく抱きしめる。

 

 

 

    かわいいぼうや 愛するぼうや

 

    風の葉っぱがまうようにぼうやのベットはひいらひらり

 

「こ、この歌は…」

 

    天にまします神さまよ この子にひとつ みんなにひとつ

 

    いつかは恵みを くださいますよう

 

 

「母ちゃんの子守歌、しろがねがどうして…‥‥」

 今しろがねが歌った歌はかつて大河が子供だった時に、枕もとで母が歌ってくれたのとまるで一緒だった。ありふれた歌ではない。どうして同じ歌をしろがねが知っているのか。

 その時、不意に大河の眼から堰を切ったように涙がこぼれだす。

「な、なんだ!? どうして?」

 心の奥から悲しい気持ちが溢れて止まらない。しかし大河にはそうなる理由は無かった。そして解る、この感情は自分のものではないと。隣に並んでいる蒼太郎をにやる。蒼太郎は前の二人をにて顔をクシャクシャにしながら嗚咽を洩らしていた。その眼からはもう涙など流れぬから、代りに繋がりを通して大河が泣いているのだ。

「蒼太、お前……」

『ごめんようぅぅ、でもなんでかわからんけど、あの二人をみてるとよぅ、悲しくて泣きたくなるんだよぅぅ…」

 この幽霊の気が済むまでは、この涙は止まらないらしい。

「はあ…、ま、いいさ。今回は世話になったしな。付き合ってやらぁ」

 深夜に一人の男の啜り声が響く。しかしそれを聴くものは、その場にたった一人しかいなかった。

 

 

=====

 

 

 翌日、電車で帰る大河の見送りにしろがねと勝、そして朝にやってきたリーゼが来ていた。リーゼはこのまま仲町サーカスのところに世話になるらしい。優秀な芸人とトレーラー(リーゼの所有物)が手に入るとなって、団長たちは小躍りしていた。

「わざわざありがとうな。忙しいだろうによ」

「そんなことないよ! 僕もしろがねも好きで来たんだ」

「ええ」

 勝の言葉にしろがねが同意する。

「あの…」

 その少しい後ろに控えていたリーゼが前に出てくる。

「タイガさんにはなんとお礼を言えばいいカ、貴方がいなければ私は…」

「いいってもう! お互い無事だったんだしさ」

「でも…」

 まだ何か言いたそうにするリーゼだが、電車の出発を知らせるベルが鳴る。

「あ……」

「あー! そうだ! オレリーゼさんに伝言があったんだ!

「え?伝言、ですカ?」

「あぁ、しばらく会えそうにないからオレに代りにってさ」

「ハイ、なんでショウ?」

 と首をかしげる。

「【火輪くぐり】、見事でした。いままでごめんなさい。きっといつかまた、同じステージに立ちましょうってさ」

 そこで扉が閉まる。ゆっくりと電車が走れ出し、やがて離れて行った。大河の伝言に首を傾げる勝。

「おっかしいなぁ、大河兄ちゃんが倒れてから僕たち以外に会ってないはずだけど…」

「ええ、一体どこで…、リーゼさん?」

 見ると、リーゼはその眼から一筋の涙を流していた。

「伝言の主、分かったかもしれまセン…」

「え?」

「勝さん、しろがねさん。タイガさんって不思議な方ですネ」

「…えぇ、そうね」

「うん、そうだね」

 電車が見えなくなっても、三人はしばらくそのホームでレールの先を見つめていた。

 

 

 

 

『何だったんじゃあれ?』

「うるせー。オレだってよく分かんねんだよ。それよりオレも見たかったぜ、火輪くぐり」

『おぉ! 凄かったぞぅあれは!』

「チクショー今度は絶対に見てやるんだ!」

『あぁ、また見に行こうな』

 二人は己の家へと帰っていく。何時か見る、素晴らしいショウに思いをはせて。

 

 

 

 

 

 

 




2018年10月、開演。
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