からくりパレェド ~エクストラキャストは躍り狂う~ 作:紙ブクロ
~日本国外、とある屋敷~
「こちらでございます。中でマスターがお待ちです」
「ああ、案内ありがとう」
一人の男がメイド衣装に身を包んだ女性に促されて大きな扉の前に立つ。メイドは軽く会釈をするとそのまま自分の仕事に戻っていった。男が中に入るとそこには壁中に幾つものモニターが置かれた不思議な部屋だった。モニターは何も映してはいなかったがその画面が妖しく光っていた。
その前に車いすの男がいる。
「珍しいですね、貴方が私に直接話があるなんて…」
「そう言わんでくれ。私だって仕事以外ならば友とは直接会って話がしたいものだ。久しぶりだね、ミスター・モチズキ。いや、シロウ」
「ええ、貴方もお元気そうで」
そう紫朗は笑って返す。車いすの男は紫朗の方へ向きを変えるがモニターの逆光で顔がよく見えない。
「貴方から依頼された例のプロジェクト、順調ですよ。流石世界随一の大企業、優秀な人材が揃っていますなあ」
「言ったろう、今日は仕事で呼んだんじゃない。もっと楽にしてくれ。何か飲むかね?」
男は紫朗に飲み物を進めるが紫朗はそれを丁重に断る。
「では一体なぜ私を?」
「フム…、これは私の【蟲】から送られた情報なのだがね、君の息子さんのことだ」
「!? 私の? まさか流河に何か!」
男の話に驚き、動揺する紫朗。しかし、
「いや彼はもう進む道を己で選んだ、もうなるようにしかならんよ。問題はもう一人の方なのだ」
「大河が? 一体…」
紫朗が男に詰め寄る。男は勿体ぶるように一呼吸置くと、今日の主題を口にする。
「君のご子息が‥‥‥‥、【しろがね】と出会った」
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「学生の皆さん、こちらです。はぐれないようしっかり着いてきて下さいね~」
美術館の中、案内役の学芸員が声を抑えて学生達に注意を促す。校外実習で連れて来られた生徒の殆どはその声に気の抜けた返事で応える。
「世界の人形展、か。まあ、学校で授業よりゃ面白いかもな」
『お前さんホントに勉強嫌いじゃのう』
大河もその団体を後ろの方からのたりのたりとついて行く。
広いスペースの中に世界各国、大小様々な種類の人形が置かれている、その数は相当なもので優に数百体はあるだろう。
「ここに展示された人形の殆どは元々個人のコレクションでして、所有者の方の死後、引き取り手がいなかったものを友人だったこの美術館の館長が引き取られたものなのです」
学芸員は歩きながら展示物の説明をする。大体は壁のプレートに書かれたものと同じなのだが学生達の中にわざわざそれを読み込むものは少なかった。
「家族の誰かが引き取らなかったんですか?」
学生の誰かが質問をする。
「それが家族皆別荘の火災でお亡くなりになっていてね、知らないかい? 少し前のニュースで話題になっただろう?」
と、壁に掛かった写真の人物を指さす。[故・安西 康夫]という札の上にある写真には、いかにも裕福な実業家といった感じの面構えだ。
大型の休みに家族そろって泊まった別荘が、不審火により全焼。家族全員焼死したという事件だ。当時かなり騒がれたニュースで、大河にも記憶の片隅に思い当たるものがあった。なんだか少々縁起でもないものを見ている気持ちになっている。
『ほ~~~! 綺麗な細工じゃのう~!』
以外にも蒼太郎はこの人形展を楽しんでいるようでしきりに感嘆の声を上げながらふよふよと大河の周りを回っている。
「なんだよ、お前こういうの好きだったのか?」
『好きかはわからんけど、なんだか懐かしい気分になるんじゃぁ』
「ふ~ん…」
『お前さんはつまらなそうじゃの』
「そういうわけじゃねえけどよ、しろがねの奴を見ちまうと、どれもな~んか印象がなくてよ…」
『あぁ、あれは確かに凄いからのう』
ビーストの一件の後のことを思い出す。夜が明けた後、しろがねになぜあの子守歌を知っていたか聞いてみたのだが白銀もよく覚えていないという。ただ、遠い昔、誰かに歌ってもらったような気がする、とだけしか分からなかった。
「さあ皆さん、今から見るのが今日のメインの展示物になります」
ボーっとしている間にかなり奥まで進んできたらしい学芸員がこの中でも一番大きなケースの前で学生を集めていた。
「この人形は安西氏の最後にして最高のコレクション、作者不明の大作【カーミラ】です」
ケースの中には人間と同じサイズの、美しいドレスを纏った人形が置かれていた。その顔は人形だからこそなしえる美貌備えていた。肌は人なら病的と評されるだろう程に白く、髪は輝く金色で中世の貴族を思わせるような大きな装飾が施されている。
一目似た瞬間大河の背中に怖気が走る。始めてみるそれに対してこんなに恐ろしい気持ちになるのは可笑しい。まさかと思い隣を見るとそこに身を震わせて凍り付く蒼太郎の姿があった。
「実はこの人形はさっき話した別荘にあったんだけど、事件の際、他が全焼した中で、この一体だけが焼け残っていたいわくつきのものでね…、【カーミラの呪い】なんて呼んでるんだよ」
学芸員のいかにもな語りを学生たちがそれぞれの表情で聞く中、
(おい、大丈夫か? なにがあった)ヒソッ
『ようわからんがこれは危ない気がするんじゃ』
(よくできた只の人形にしか見えんが…)
『あまり近づかんほうがいい…、ここを離れるんじゃ!』
「お、おう」
あまりの鬼気迫る様子に思わずうなずく、丁度学生らも移動するところだったのでついて行こうとした時、ケースの前にいた一人の客に目が留まる。
小柄な黒髪の女性でカバンを両手で握りしめている。控えめにメイクを施した顔はやつれ、目には隈が出来ていたがその眼光だけは鋭くカーミラを睨んでいる。
すると、おもむろにカバンの口を開けて中から何かを出そうとする。横目に見るとそれはなんとバールである。それを振る上げようとするのをみて咄嗟に腕を掴む大河。
「あ、あんた何してんだ!」
「!? 離してください! この人形は壊さないといけないんです! でないと……」
もみ合っている間に学芸員の一人が気付き近寄ってくる。
「君たち! 何をしているんだ!」
「へ? い、いやオレは何も…、あぁ!?」
弁解の為に一旦手を離した瞬間女性が逃げ出していく。その必死な後ろ姿を眺める大河達。
「一体何だってんだ…」
=====
「はあ、はあ、はあ……」
美術館の外まで逃げ出し、少し離れた広場で息を整える。
「…どうしよう、失敗しちゃった」
我ながら無謀なことをやったとは思う、しかし彼女にはその行動を起こさなければならない事情があった。
「申し訳ございません、お嬢様…」
「お嬢様って何のことだ」
「!? きゃあああ!」
突然聞こえた声に振り向くと、先程自分の邪魔をしてきた青年の姿がある。
「な、なんですか!? 捕まえにきたのですか!?」
思わず身構えるが相手の方はそんな様子はなくこちらをただ見ているだけだった。
「落ち着いてくれよオネーサン。ホントに話を聞きに来ただけなんだ」
「話し? なんですか一体…」
「オネーサンもしかして、あの人形についてなにか知っているのかい」
「! どうしてそんなことを?」
予想していなかった質問に質問で返す。
「なんとなく、アレはよくないものな気がするんだ、なあ教えてくれよ! どうしてあんなことしたんだ」
「…信じられないような話だったとしても聞きたいですか?」
「あぁ、教えてくれよ」
真っ直ぐ大きな目がこちらを見ている。なんだか分からないが信じてみよう、そう思った。重苦しくその口を開く。
「あの人形は、私の旦那様と、そのお嬢様を…、その手で殺したのです!」
=====
女性を追いかけて、話を聞く大河、片山と名乗った彼女は無くなった安西氏の下で働いていた元家政婦だという。
「あの日旦那様に言われ、私も別荘にお嬢様のお世話係としてお供していたのです」
屋敷着くと直ぐに業者のものが来て大きな荷物を置いて行った。それがカーミラであった。どこで見つけたかは知らないが安西氏はカーミラを手に入れるのに大層苦労したらしく、届いた時は大いに喜んで家のコレクションの中央に飾ったという。安西の妻も美しく豪華な姿に目を奪われた。只一人、二人の娘はカーミラを気味悪がって近づかなかったという。
「今思えば、お嬢様は敏感に感ずいておられたのです。あの人形が危険なことに…」
事件は別荘にきて二日後に起きた。家政婦である片山は主人たちが眠る本館ではなく、少し離れた使用人小屋に泊まっていた。いつもどうりに就寝につこうとした時、窓の外が妙に明るい。見てみると本館から炎が上がっていた。消防に連絡し、主人の安否を確かめるために本館に向かう。
「そして、玄関の扉を開けた時、私は見てしまったのです」
炎が揺らめく中、玄関ホール【それ】は蹲っていた。ジュルリ、ジュルリ、と何かを啜る音がする。炎に照らされたその姿を見たとき、【それ】が抱えていたモノの一部が覗く。
「小さな、腕が見えたのです…。そして何かを啜る音がやむと、アレは立ち上がりました。私は、恐怖で…動けなかった…」
そしてゆっくりと此方に姿を向ける、その口は紅く血で染められ、その腕には、
「お嬢様が! あぁ!!」
その後は無我夢中で逃げた。後のことは覚えていない。とにかく遠くまで逃げて、保護されたのは隣町のことだった。その後何度も警察に説明したが誰も取り合ってくれない。そうしている内にカーミラ人形は引き取られていってしまった。
「美術館に今アレが展示されていると知ったとき、最後のチャンスだと思ったわ。誰も信じてくれないなら、私が壊そうと…!」
そこまで言うと片山は泣き崩れてしまった。張り詰めていた緊張が解けたのだろう。
「片山さん、オレも人に言えない言っても信じてもらえない事に出会った事があるんだ、だから」
がしりと肩を抱き寄せる。
「あんたの事は信じる! 後は任せてくれ!」
ハッキリと宣言する、その時、誰にも聞こえない小さなため息がどこからか漏れていた。
=====
その日の深夜、
「よっしゃ、行くか…」
『あぁ~、気が進まんのう~~』
美術館の入り口、そこに大河達の姿がある。あの話の後、夜を待ち再び訪れていた。
『勝手に入って怒られんかのう』
「だぁからこうやってコッソリ忍び込もうとしてんだろう、いいから行くぞ!」
渋る蒼太郎を一喝し扉に手をかける、しかし、
「うん? ふんぬぬぬ~~~~~!」
扉はカギがかかっていて開く様子はない。
『どうするじゃよぅ、開かんぞぅ』
「分かってるよ! こうなったら
『ぴゃああああ! ムチャはやめろよぅ!』
などとやっているとき、
ビーーッ ガチャ
電子音と共に自動でカギが開く音がする。
『!? なんじゃあ!』
恐る恐るドアを引くと先程まで硬く閉ざされていた扉が簡単に開いた。
「わっかんねぇけど、とりあえずこれで入れるぜ!」
『なんか気味が悪いよう~~~。入りたくないよう~~~』
蒼太の愚痴を後ろに聞きつつ大河は中へと入っていった。
~美術館内・警備員室~
監視カメラのモニターを眺める影が一つ。
「……マスター、こちら対象の入館を確認しました。引き続き監視を続けます」
耳につけたマイクに状況を報告する。
『あぁ、よろしく頼む。…もしもの時は…』
「分かっております、事前にお伺いした通り、命令を実行致します」
「頼む」
「畏まりました」
そういってモニターの中の一人の少年を視線で追った。
「そろそろカーミラ人形があるところだぜ」
『お、おう』
暗い館の中、そろりそろりと歩いていく。夜の美術館は昼間とは違い例えがたい不気味さが漂っていた。その中を懐中電灯一つを照らしながら歩いていく。中では警備員ぐらいいるかと思っていたのだがそのような気配は無く、割とあっさりと奥まで行くことが出来た。
そしてさらに奥に進み、その光がカーミラ人形のケージを照らした時、
「な!?」
『中身がないじゃと!?』
昼間は確かにあったはずの姿が綺麗さっぱり消え去っていた。どういうことか二人が困惑していた時、
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!」
館内から突然叫び声が木霊する。
『ひゃああああああ!? 何じゃ!?」
「あっちだ! いくぞ!」
声の下方向へ走り出す。行ってみると二階へ上がる階段の手前で警備員のと思われる懐中電灯が落ちている。
「一体何が‥‥、!?」
拾い上げてみると、その手にぬるりと生暖かい感触を感じる。見ると大河の手が何かで真っ赤に染まっていた。
「こ、これは…」
『ひゃあ! た、大河!!」
その声を聞き蒼太郎が固まっていいる方向を照らすとそこには夥しい血の跡があった。真新しく、表面はまだてらてらと光っている。
その時、
コツン・・・ コツン・・・
何かが二階からゆっくりと階段を下りてくる。静かな館内を女性もののヒールの音が響く。と同時に、
ズルリ・・・ ズルリ・・・
と何かを引きずる音がする。
ゆっくりと音の方向へライトを照らす。その先にはこちらを見返す美しい人形の姿があった。一歩一歩階段を降りるたびにひらりひらりとドレスが舞う、しかしそれは昼間見た時と違い、前面が紅く染め上がっていた。だらりと下がった片手には何かをを掴んで引きずっている。
それは人であったものの塊であった。分かった瞬間、大河の背筋を悪寒が襲う。
「…ごきげんよう、坊や。今日の月は綺麗だったかしら?」
「!? 喋った!」
余りの驚きに思わず声が漏れる。
「おかしな事をおっしゃるわ。見ての通り、貴方と同じ様に口があり、貴方と同じ様に目と耳があるわ。ホホホ…」
おぞましい姿でありながら、カーミラ人形の仕草はその一つ一つが優雅で、芝居がかっていた。
「その人は、お前が殺したのか?」
「あぁ、【コレ】ね。別に…、遊んでいたら【壊れ】ただけよ…」
そう言って飽きた玩具を捨てるように無造作に死体を放り投げる。
大河の理性はそこで限界だった。
「手ん前ェエエエエエエエエエ!!!!」
手にした流走を抜きカーミラに躍りかかる。が、
「ホホホホホホッ!! 意気の良い坊や! 次の玩具は貴方ねっ!」
ひらりと踊るように剣戟を躱してく。
『落ち着けぃ!? 刀の振りがメチャクチャじゃぞ!』
横から蒼太郎が警告するが、頭に血が上った大河には聞こえていない。静かな館内に大河の怒声とカーミラの嘲笑が響く。
「そちらのリードだけじゃつまらないわ。今度は此方から!」
カーミラの手の爪が鋭く伸びて凶器となり大河に振り下ろされる、一撃目を躱すも次を避けきれず刀で身を庇う。なんとか防御するもその姿から想像できぬ膂力により弾き飛ばされる。
「ぐううう、チクショウッ!」
『だから言っとるじゃろう! 捨て身で勝てる相手じゃないぞう、頭冷せい!』
「チィッ…、悪かったよ」
幸いカーミラはまだこちらを弄ぶ気のようで追撃をしてこない。その間に距離を置き、息を整える。
「どうしたの? もう息切れかしら、人間て不便ねぇ」
「ウルセエ! お前をどう壊すか考えてただけでぇ!」
「アラ、そう。それは…、楽しみだわ!」
再びカーミラの攻撃が迫る、その爪の一つ一つを冷静に見て躱し、刀で逸らす。そして僅かな隙を見つけて振った刀の切っ先がカーミラの頬を掠る。
「!? 私の貌が! 己ぇ、只のガキじゃないわね貴方…」
「こちとらテッポー持ったヤクザやクソデカい猛獣とやりあってんだ! 手前ェみたいなガラクタに負けるかよう!」
二度死線を潜り抜けた、その経験が自信となって大河を突き動かす。確かにカーミラの爪は恐ろしいが、先日のビーストの爪の方が大河には恐ろしかった。
「おのれえええぇぇぇええ!」
もはや最初の芝居がかった仕草も忘れてその本性をむき出し襲ってくるカーミラ、その猛攻をさらに躱し、今度こそその躰に攻撃を入れる。
ガンッ ゴィンッ ギンッ
人に似たその容姿には似つかわしくない硬質な打撃音が響く、しかし攻撃は届くものの、カーミラのボディを断つには至らず、表面に刀傷を刻むことしかできない。
「クソゥ、ビーストのあと、ちょっとは練習したのによう!」
『あぁ、違う違う! 力で振るんじゃないよう、体で振るんじゃ!」
「分かってんだけどよっ!」
そうしている間にも大河の息が上がっていく、対してそもそもそんなものをする必要がないカーミラの攻撃は衰える様子がない。
「私の躰を汚すんじゃないよ餓鬼ィッ!」
一瞬、大河の足運びが遅れる、その瞬間を強烈な一撃が襲い吹き飛ばされる。
「ガッ!?」
『だ、大丈夫かぁ!?」
「ホホホホホホホホホホホ! そろそろおしまいだねぇ坊や?」
カーミラが己の勝利を確信し嘲笑う。ゆっくりと近づき、止めを刺そうと爪を振り上げる。床にうずくまっている大河に蒼太郎が必死に声をかける。
『大河! に、逃げるんじゃ! 早く…』
「‥‥もう、いいや。ヤめたぜ…」
『へ…、何を言って…』
まさかの諦めの言葉にあっけにとられる。
「お休みの時間よ…、さよなら坊やあああぁぁぁああ!!」
爪が振り下ろされる、その時、
「オオォォォォオオッッ!!」
大河が立ち上がりつつ刀の側面を突き出して爪を擦り落とす、そのままの勢いでカーミラの顔面めがけ刀を打ち付ける、その衝撃でカーミラの顔がひび割れる。
「ギャアッ!?」
たまらず後退するカーミラ、しかし大河はそれを逃さない。
『た、大河、お主…』
「斬って壊すのが無理ってんなら、このまま叩き壊してやらぁ!」
開き直って呼吸など忘れてカーミラ目掛け刀を打ち込む。一発一発に渾身の力を込めてそのボディを砕きにかかる。
大河の打ち込みで徐々にヒビが入り、またそのヒビが更なる追撃で大きく割れていく。
「ギャアア!? 私の躰がぁ!!」
最早ボロボロで当初の美しさの欠片もないカーミラの姿、それでも壊されまいと爪を振り上げて最後の抵抗に出る。
「おのれ小僧ォォォォォォオオオ!!」
「ッッッッッッッ~~~~~~~~!!!!」
お互いの体がすれ違う、瞬間。
カツンッ・・・
渾身の抜き胴、大河の手元に今までとは違う手ごたえが伝わる。
「キィアアアァァァァア!!」
カーミラの躰は胴から二つに分かれ崩れ落ち、動かなくなる。それを見て大河も崩れ落ちその場にへたり込む。限界ギリギリの所であった。
「ゼえっ…、ぜぇっ…、ぜぇっ…」
『で、でたらめじゃァ、幾重もの打ち込みの中から一太刀の
「へ、へへ…、やったぜ」
「あぁ、大したもんじゃよお前さんは…」
刀を落とし、へたり込んだ大河と蒼太郎、お互い顔を並べてへらりと笑い合う。息を整え、そろそろお暇しようと膝に力を籠めようとした時、
「ギギ、ギギギgiギ、gigiyyy…」
「な、何だ?」
『大河!? 避けろぉ!!』
振り向いた瞬間、そこには両腕で這いながら飛び込んでくるカーミラの姿が、
「何!? まだ動け…」
「siネェ! こぞオoooooooooo!!」
刀を拾おうと手を伸ばすが防御が間に合わない。やられる、そう思った時。
「
空気の弾ける音がした、と同時に大河に迫っていたカーミラがはじけ飛ぶ。何が起こったか理解できずに振り向くとと暗い影の中から声の主が姿を現れた。
一人のメイドがそこにいた。
美しい金色の長髪を揺らし、こちらに歩いてくる。ゴシックのメイド服は濃い紫色で歩くたびに長いスカートがふわりと揺れた。なぜメイドなのかそんなことを考えることが不自然なほどにその衣装は彼女に似合っていた。美しく整った顔は無機質な雰囲気をたたえ、どこか最近知り合った彼女を思わせる。
「…
「じゃマwoするナ~~~~~ッ!!」
「
迫るカーミラに顔色一つ変えずにスカートの裾を少し持ち上げる、そこからガシャリと物々しい何かが落ちる。それを手元に蹴り上げ瞬時に組み上げる。
「
死神を思わせる巨大な大鎌と化したソレは一撃でカーミラを破壊する。
『す、凄い…』
「…なんなんだよ、いったい」
余りのことに呆然となる二人、そこへメイドが目線を向ける。
「旦那様が貴方をお送りしろと、ついてきて頂けますね?」
少しも表情を変えず、淡々とした声だった。