モンスターハンター 〜舞い踊る嵐の歌〜   作:亜梨亜

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 亜梨亜と申します。

 モンハンはあまり詳しい方では無いのですが、ハンター達の生活に少しでも触れて頂ければと思います。

 それではどうぞ。


第1章 空を舞う剣
prologue


 後に、「荒々しくも眩しかった数世紀」と呼ばれるこの時代。大自然の中で人間は正しく、荒々しくも眩しく生きていた。それは大自然を狩るか、大自然に狩られるか。それこそが世界の真理であり、大自然と人間が調和している証でもあった。

 

 大自然の中で社会を作り、文明の下に自分達の世界を作り出し、その世界を守る為に生きる、人間。それとは逆に、大自然の中で様々な進化を遂げ、個人の世界を守る為に生きる強者、モンスター。人間の脅威となり得るモンスター達は人間よりも「強く」、常に「狩る」立場にあった。しかし、そのモンスター達を逆に「狩る」人間達がいる。

 

 人は彼等をハンターと呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足元を流れ続ける川は、数分前までは綺麗な蒼色だったのだが、今は少し赤みがかった水が時たま流れて来る。

 その理由は至極単純。目の前で二本の足で立ち上がり、両手を大きく広げ威嚇行動を取っている、青色の巨大な熊のモンスター、アオアシラが傷を負っているからだ。

 

 渓流。大昔の人々の暮らしの跡や、豊かな緑、そして澄んだ水が流れる滝が存在する、風情のある狩場だ。一般人も林業の為に足を踏み入れることも多々ある、比較的安全な狩場でもある。

 そんな比較的安全な狩場のエリア6。滝をバックにアオアシラと対峙するハンター、ヤマトは自らの得物である、太刀「鉄刀『禊』」の鋒を青熊獣に向け、眼光を鋭く光らせていた。身にまとった防具、「ユクモシリーズ」に傷跡はない。

 

「ヴォォォォ!!」

 

「!!」

 

 突如アオアシラが両手を大きく振りかぶった。攻撃が来ることを予想したヤマトは横に飛び退く。さっきまでヤマトがいた場所を、アオアシラの鋭利で凶暴な爪が襲った。

 アオアシラの攻撃はそれで終わらない。更に体をひねり、躱した先にいるヤマトを再度爪で攻撃する。ヤマトはそれを掻い潜るように躱し、太刀を横に振り抜いた。アオアシラの脇腹をスラリと切り裂き、アオアシラはうめき声をあげる。

 

 そのまま転がり、急な反撃を受けない為に距離を取り、アオアシラに向かうヤマト。黒い髪の毛と頭を守るユクモノカサが濡れてしまったが、そんなことを気にしてはいられない。

 

 アオアシラは怒り心頭といった様子でヤマトめがけて飛びかかる。その跳躍力はとてもその大きな図体からは予想もつかない。

 ヤマトは思い切り横に飛び、その攻撃を間一髪で躱す。しかしアオアシラはそのまま四足歩行の姿勢でヤマトに突っ込んで来た。

 

「しまっ……」

 

 思い切り飛んでいた為姿勢が良くなく、その突進を避けきれないヤマト。ダメージを少しでも減らそうと体をひねった瞬間、ヤマトの全身を強い衝撃が襲った。

 勢いよく吹き飛ばされ、地面を転がるヤマト。全身が軋むように痛み、立ち上がった瞬間に顔を顰めてしまった。

 

 アオアシラはそれを見て再度二本の足で立ち上がり、雄叫びを上げる。そしてもう一度飛びかかりの姿勢を取った。

 

「アオアシラなんぞにやられてたまるかよ……!」

 

 ヤマトの目が鋭く光る。アオアシラが今にも飛びかかろうかとしている所、ヤマトは太刀を構えてアオアシラに向かって飛び出した。そしてアオアシラの最大の武器であり最も硬い部位、腕甲に狙いを付け、太刀を振り抜いた。それに合わせてヤマトは腰を綺麗に引く。

 

 するとどうだろう、アオアシラの部位の中で最硬を誇る腕甲をいとも簡単に斬り落として見せたではないか。アオアシラは突如自分の武器を斬り落とされたことに驚き、そしてその痛みに怯み、後ろに仰け反った。

 

「オオオオオ!!」

 

 その隙を見逃さず、アオアシラに何発もの斬撃を浴びせるヤマト。やがて、アオアシラは力尽き、渓流の流れる水の下へ沈んだ。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、ヤマトさん!」

 

 渓流にてアオアシラの狩猟依頼を終え、村へ戻って来たヤマト。頭防具を取り、少し長めの髪の毛を露出させながら集会所の受付嬢に達成報告をし、報酬金を受け取る。

 

「毎度のことながら速いですね!今回移動時間の方が長いんじゃないですか?」

 

「そうでもねえさ。特に今回は最後の最後にヘマしたし」

 

 受付嬢、ミクは笑顔で話しながら、アオアシラ狩猟依頼用紙に済のハンコを押し、綺麗に分けられた依頼用紙入れの中の、達成済みの紙を入れる場所に入れていた。

 

「どうします?お飲み物の注文ならここでお受けしますよ?」

 

「じゃあビールを一つ」

 

 小銭をミクに渡し、空いている席に腰掛けるヤマト。ハンターの集会所はクエスト斡旋所でもあり、酒場でもある。周りの席は半分程埋まっており、ハンター達の喧騒が鳴り響く。

 

「よお!ヤマト!お前いつまでユクモシリーズ着てんだよ!」

 

「てめえ、今度はアオアシラ行ってたんだろ?一人で行って余裕そうに帰ってくんじゃねえか、おい!」

 

「うっせえな、ユクモシリーズが好きなんだよ。動き易いし」

 

 顔見知りのハンター達がヤマトに気付き、騒がしくヤマトに絡む。ヤマトも軽く言葉を返していると、ウエイトレスからビールが運ばれてきた。さして高い、物の良いビールという訳では無いが、きめ細やかな泡立ちが狩猟後のヤマトの喉を唸らせるには十分過ぎるのだ。

 ビールをぐっと呷るヤマト。ハンターになってまだ一年にも満たないヤマトだが、この喧騒の中のビールは最早快感だった。

 

 

 

 

 

 ハンター達の談笑を聞きながらビールを飲むヤマト。そんな中、集会所からハンター達が狩場に赴く為の扉がガタン、と開いた。誰かが狩りへ赴くか、或いは誰かが狩りから帰ってきたのか。何れにせよ、ハンター達は何の気無しにそちらを見る。

 

 ──そこにいたのは、雌火竜の素材を使った装備、レイアシリーズに身を包んだ、傷だらけの女ハンターだった。

 

「アマネさん!!どうしたんですか、その怪我!!」

 

 膝を付きぜえぜえと息を上げているアマネと呼ばれたハンターに駆け寄るミク。ハンター達もその傷だらけの様子を見て、騒ぐのを一度止め、その様子を伺う。勿論ヤマトもジョッキを机に置き、傷だらけのハンターを注視するように様子を伺っていた。十中八九モンスターにやられたことは間違いないのだろうが、全身を覆う鎧に自らの血と思われる赤黒い液体がこびり付いているのが、戦いの壮絶さと痛々しさを物語っている。

 

 女ハンター──アマネは息を上げながらなんとか立ち上がり、カウンターに腰掛けている小さな竜人族、ギルドマスターの元へ向かおうとする。ギルドマスターはその状況を見て酒を飲むのを止め、髭を弄りながらアマネの方へ向き直った。

 

「おお、アマネじゃねえか。チミがその怪我......何があった?」

 

 ゲホッと咳をしてからアマネが傷だらけで立つことがやっと、という風貌には似合わない程の目付きで話し始めた。

 

「見た事も無いモンスターに乱入された。流石にジンオウガを相手にしてからあんなのはゴメンだわ......痛っつ」

 

「見た事も無いモンスター?」

 

 集会所はざわめいた。


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